その未来は読了済みです~聖女候補生たちの離島生活~

大鳳葵生

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第一章 離島生活

番外編 アレッサンドラ・ラファエラ・チマッティ

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 離島から離れるための船に乗せられる。見送りに数名の聖女が来ていたが、銀髪の聖女はそこにいなかった。

 あいつのことだ。きっとここに来ないという選択が正しい未来だと判断したのだろう。
 あたしは最後に少しくらい顔を見ておきたいと思ったが、もしかしたら見ない方がよかったのかもしれない。あいつはきっと別れのその瞬間まで、あたしが悲しい表情を作らない道を選んだんだ。

 きっとあいつはあたしに投票して、本来ならあたしは離島に残っていた。あたしがあいつを裏切ったんだ。だから、あいつに顔を合わせる資格なんてない。資格がないとあたしが考えるからこそ、あいつはこの場にいないのかもしれない。

 あたしは自分が聖女候補生だなんて納得ができなかった。あたしは物心ついたころには海の上。とある船の中だったんだ。それは海賊船だった。周囲が海賊の世界で育てられたあたしは、当然倫理観も善悪の基準も周囲の大人だった。だから海賊行為が悪いことだなんて認識はなかった。
 例えるなら、肉食動物がしている行為を殺しではなく、食事と捉えるようなもの。自分たちの略奪行為は生きるための行為はこれだと教わったから、そうしていたまで。

 少しずつ知識がついてきて自分が悪人であることを理解した。そのころあたりから略奪行為に躊躇いも生まれ始めた。ある日、あたしは船を降りることにした。育ててもらった恩もあり、海賊たちのことを通報まではしなかった。ただ、今彼らが無事であるかどうかはもうわからない。

 一人身で旅人をしていたころ、あたしは自分が今まで奪ってきた分を返すように誰かに与える側についた。そんな活動をして五年。あたしの身体には聖痕が浮かび上がった。学のないあたしにはそれがどういう意味か理解できなかったが、あたしの聖痕に気づいたとある貴族に勧められるがままにあたしはこの離島に訪れた。

 ここに行けばより多くの人を救えると知ったからだ。結果的に言えばあたしは聖女になれなかった。

 でも、一人の聖女候補生にあたしの思いを託すことができただろう。


「お前が聖女になることを祈ってやるよ。あたしでよければな」
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みんなの感想(3件)

柚木ゆず
2021.03.04 柚木ゆず
ネタバレ含む
2021.03.06 大鳳葵生

柚木ゆず 様
ご感想ありがとうございます。

書いたことがないパターンの作品でもあり、
試行錯誤しながら作りましたので、
構成を褒められてとてもうれしいです。

解除
柚木ゆず
2021.02.27 柚木ゆず
ネタバレ含む
2021.03.06 大鳳葵生

柚木ゆず 様
ご感想ありがとうございます。

クリスチナの内面はどこまで隠すか結構迷いながら書いていました。

解除
柚木ゆず
2021.02.23 柚木ゆず
ネタバレ含む
2021.02.27 大鳳葵生

柚木ゆず 様
ご感想ありがとうございます。

主人公、クリスチナのキャラクター性において口にする言葉と実際の思考に大きなズレがあるキャラかうたーですね。彼女はあの自分が最も正しいと思って行動しているため、周囲からは誤解されがちだったりします。

そういうところも含め、彼女と周囲の人間との関係性を楽しんでいただければ幸いです。

解除

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