その未来は読了済みです~聖女候補生たちの離島生活~

大鳳葵生

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第一章 離島生活

24話 こんな未来は読了していません

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 私が夜、襲われた事件から数日。この離島生活が始まって十日目になりました。お昼の自由時間にはみんなで集まって誰に投票するのか気にしあっています。
 自分たちの投票先を話題にするのは禁則事項です。みんな自分が残れるかソワソワしている様子。
 投票開始は昼食後、投票終了は夕食まで。ここで脱落する聖女候補生は最後の晩餐となります。

 そして昼食を食べ終えると、教会前にある広場に投票箱がおかれました。あそこに投票が終わればすべての行程が終わります。

 私は投票用紙に名前を綴ります。自薦は不可。投票先はシスター・タチアナが確認するのでそのような行為はできません。

 私は未来視で確認している。本来の未来で脱落するはずだった彼女の名前を綴りました。彼女は自己犠牲精神で自らを囮にしようと、私の忠告を無視して一人出かけてしまった女性。

 真っ白な投票用紙に、私は『アレッサンドラ・ラファエラ・チマッティ』とはっきりと書き記しました。

 彼女が聖女として相応しいと、私だけが知っている。だから、この清らかな心の持ち主の彼女の名前は、私が書かなければいけない名前だ。

 真っ先に現れた私を視たシスター・タチアナが驚いていました。どうせ私のことだから遅刻ギリギリだろうと思われていたみたいです。そして彼女が私の投票用紙を確認します。


「確認しました。聖クリスチナの投票を受理します。あとはゆっくりと自由時間をお過ごしください。ただし、貴女はすぐにどこかに行ってしまいますので必ず騎士と行動するように」
「えー? そんなことないですよー?」
「そういうところが信用できないんですよ」


 シスター・タチアナは呆れた顔で私を見つめますが、優しい目で見つめられます。まるで心配してくれる姉のような表情。
 この島には優しいお姉ちゃんと、世話焼きな妹が多すぎます。


「では行ってきます!」
「こら! 私の話を聞いていましたね? ちゃんと誰かと行動するんですよ?」
「はぁーい!」


 走り去っていく私を見て、シスター・タチアナは少々怒り気味。その時、私は投票箱に向かう水色の髪の聖女候補生とすれ違いました。彼女は私にウインクします。私はそれに対してニッと笑顔を浮かべて返しました。

 走り去っていく私の後ろでは、彼女の投票が受理されたという声が聞こえたような気がしました。

 その夜、夕食を食べていた私達に、残った聖女候補生達の名前がボードに記されていました。

 そこに記された名前の中から何人かの親しくなった聖女候補生の生を確認していきます。


『カテリーナ・エレナ・コロカ』
『クラウディア・デル・ノヴェリ』
『フランチェスカ・ディ・アンジェリ』
『モニカ・エレナ・ピッチニーニ』
『サラ・ディ・アルカンジェリ』
『ステファニア・デ・コストナー』
『ヴィルナ・ガエターナ・クナップ』


 そして…………最後にもう一度名前を確認します。


『クリスチナ・フォン・アニェージ』


 しかし…………なぜかサーシャさんの名前がありませんでした。

 誰が誰に入れて、誰に何票入ったかは口外されません。ですが私は、きっと私の名前を綴ってくれたであろう彼女の綺麗な水色の髪を眺めていました。

「ここで辞退者の発表をします。アレッサンドラ・ラファエラ・チマッティがこの離島生活を辞退することになりました」
「!?」

 私の知らない未来。それは本来の未来では元々零票だったから公表されなかった事実だったのかもしれません。私は彼女の方に顔を向けましたが、そこに水色の髪の女性はいませんでした。

 私は同様しながら彼女を探します。そうだ、彼女ならきっとあの川で水浴びをしているかもしれない。私は飛び出した。

 その姿をシスター・タチアナに目撃されます。呼び止めようとする彼女の声。それを無視して私は走ります。

 あの川に行っても、彼女の姿かたちはない。もう探し回れる体力は残っていない。
 彼女との思い出のある川を眺めて私は修道服を脱ぎました。


「つめた!?」


 つま先を水面みなもに触れさせると、綺麗な円が広がります。私は足をひっこめる。この川は本当はこんなにも冷たかったんだ。サーシャさんの聖痕の力でこの冷たさまで濁らせていたんですね。

 しかし、私はその川に腰まで浸かりました。もう会えない彼女のことを考える。もしかしたらこの島を出たらばったり会えるかもしれない。その時は、思いっきり怒ってあげよう。

 彼女だってそれを望んでいるはずだ。私の知っている彼女は、きっと私に罪悪感を抱いている。だから、彼女のその気持ちを晴らすことができるのは私の行動だけなんだ。

 がさがさという茂みの揺れる音に気付いた私は、サーシャさんかと思い腰まで川に浸かった身体をそちらに向けました。


「あ」
「え?」


 そこにいたの藍色の髪の騎士。私たちは互いの時間が止まります。思考停止した私は数秒ののちに復活。現状を理解して思いっきり奇声を上げながら肩まで川に浸かりました。


「きゃあああああああああああああああああああ」
「す、すまない!?」


 こんな! こんな! こんな未来は読了してませぇん!!!
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