付喪ライダー:付喪神の力と共に闘う轢過非日常生活

満部凸張(まんぶ凸ぱ)(谷瓜丸

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第2台目:Bブロック基地編

事後+章の終わり

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 数人の職員たちが急ぎ足で廊下を走る。
彼らは完全防備で武器を持った状態で、とある部屋の近くにまでたどり着いていた。
警戒体制で少しずつ部屋に近づいていく作戦なのだろう。

「じゃあ行こうか。みんなで行くかい?
物音はしないし、危険ではないだろうからねェ」

しかし、職員たちの1人が警戒心を向けることなく、部屋の中に一足先に向かおうとする。
もちろん、その行動を止めようとする者はいた。

「お待ちください細川様。まだ敵がいるかもって…………話聞かないんだもんなあの人」
「しょうがねぇよ。あの人はそういう人だ。正直、口を出すだけ無駄なのさ」
「どうする?  俺たちも突入するか?」

「おーい、何をしてるんだい。早く来なよ。みんなで行くんだよ。正直人手が欲しいんだ。危険はないからねェ~」

「どうする?  行く?  俺行きたくない」
「危険はないって台詞、今日で何回目だろうな」
「あの人の危険は俺らの危険と違うからな。あの人の危険はないは半分の確率だもんな」

「早く来なよ~左遷させるよォ?」

「「「はい行きます!!!」」」

左遷させられてしまうのはご勘弁。
職員たちは細川の言葉を信用して部屋の中に入っていく。
自分達の運を信じて半分の確率を引き当てないように祈りながら、彼らは突入する。



 その部屋はひどく荒れていた。この部屋で熊と熊が大喧嘩したかのようにそれはもうひどい有り様だ。
そんな部屋の中で細川は化け物の首を掴んでる。

「ねぇ?  安全でしょォ?」

「安全というか。細川様、なんで化け物の首を掴んでるんですか?」

「入ってみたら飛びかかってきたんだよ。だから取り押さえたのさ。
首だけで襲いかかってくるなんてよほど恨みでもあるのかねぇ。怖いなァ~」

職員たちは全員「(怖いのは冷静でいられるあなたですよ)」と思ったが決して口に出そうとはしない。
やっぱり、今回も危険はないというのは嘘だった。
細川の危険は職員たちの危険とは違う。レベルが違う。
おそらく、この首だけのモノも職員たちだけでは危険だったのだろう。
危険なモノ……。
職員たちは全員細川の腕に掴まれている首を興味深そうに眺めていた。
これが今回侵入してきた敵のうちの1体。
見るからに恐ろしい見た目である。

「嫌な宣戦布告だね。あんな都市伝説を信じるなんてどうかしてるさァ」

「…………(全員)」

細川の発言に全員が黙り込んでしまう。
あのモノが語っていた宣戦布告は館内全てに聴こえていた。
この場にいた誰もがあの宣戦布告を耳にしている。
しかし、信じられないのだ。都市伝説なのか真実なのか。それは自分達が知らない証拠もない情報だからである。
それでも、1人の職員が細川に勇気を出して尋ねた。

「……あの、本当にあの放送は都市伝説なんですよね細川様?
私も流石に信じませんが、もし本当ならば」

「確かに、非人道的な人体実験の数々とかが真実だとは思いたくない。
まぁ、深く考えるなよ。どうせ陰謀論だよォ。それより……」

細川は1人の職員の疑問を遮って、とある場所を指差した。
それは床。

「ウッ……!?(職員たち)」

床には今にも死にそうな……いやもう助かるはずもない人間だった者が転がっていた。



 細川は彼を指差しながら、職員たちに命令を下した。
それは正直、職員たちには乗り気ではない命令である。

「彼を医務室に運ぶのを手伝ってくれるかいィ?」

この今にも死にそうな死体を医務室に連れていく。
穴だらけになっている死体も同然の人間を!?
流石に左遷がかかっていたとしても職員たちは彼を助ける勇気は出てこない。
すでにもう彼は助からないだろうと諦めの表情が浮かんでくるのだ。

「…………(職員たち)」

「彼はまだ生きてるじゃないか。生きようと呼吸をしているじゃないか。
私が最後まで彼をなおす。だって彼はまだ若い青年だ。死ぬには早いよォ」

「…………いやでもやっぱり(職員たち)」

細川の訴えも空しく、職員たちは倒れている彼から視線を逸らす。 
確かに、あの服は新人選抜の受験者の服装だ。5人のうちの1人だ。

「諦めてはダメだ。君たち全員が諦めてこの子を無駄にするわけにはいかない。
まだここの関係者にもなっていない若者を死なせるわけにはいかないだろォ!!」

細川の再度の訴え。
その訴えは細川は目の前で死にかけている若者を本気で救おうと考えている。

「細川様…………(職員たち)」

職員たちにもそれは伝わったようだ。
そして彼らは自分の勇気の無さを恥じた。
これまでの自分たちの諦めの早さを恥じた。
そして、今彼らは決意する。
この死にかけている彼を助けるために一致団結して頑張ろうと誓ったのだ。

「やりましょう!!」
「担架を早く!!」
「急ぐぞ医務室に!!」

職員たちは死にかけの若者を担架に乗せる。
そして、彼らは細川の言う通り医務室に向かって急いで走るのだ。
死にかけの若者を連れて廊下を急いで走る職員たち。
そんな彼らの背中を見ながら、この場に残った細川は彼らに届くような大声で発言を付け加えた。

「いいかい?  みんな。
3階の医務室ではなく。地下4階の医務室だ。そっちの方が近いし安心だからねぇ~」

すると、細川の発言が聴こえたのか。職員たちは地下4階を目指して階段に向かうために曲がり角を曲がって行った。

「…………さて」

こうして誰もいなくなった部屋を細川は見渡す。
モノの残骸。立て掛けられたドア。死にかけの若者。
この部屋で何かが起こったのは明らかである。
しかし、細川はこの部屋で何があったかなど興味もないらしく。
備え付けられていた防犯カメラをジーと見つめながら独り言を呟いたのであった。

「今は観客のままでいいかなァ」
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