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第3台目:価値価値村
食材+食罪
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寝付けない。長与がそう思ったのは深夜の2時くらいのことである。
寝苦しいとか眠れないというわけではない。
無意識に寝返りをうとうとしても動かないのである。
まるで金縛りだ。
「…………」
意識だけは起きているが、体が動かせない。
長与は隣にいるエビルに声を出して助けを求めようとするが口が動かない。
けれど、どうやら目は動かせるようなので長与は目を見開いて何が起こっているのかを判別しようとした。
長与の予想では幽霊や妖怪などの恐ろしい存在が視界に映るのだろうと警戒はしていた。
怖い物を見ることになるのだろうと覚悟はしていた。
「!?」
だが、長与の予想は半分正解で半分不正解となる。
──長与が見たのは人間たちだった。生きている人間たちだった。
部屋に何人もの人間が長与とエビルを見定めるようにして居座っていたのである。
声が出せない。体が動かない。
長与は正直怖くて泣きそうになっていた。
周囲には見知らぬ人間たち。おそらく村人なのだろう。寝巻き姿でもなく普段着の老爺たちが長与をジーーと見つめてくるのである。
長与には意味がわからない。
「ッ……!?」
意味がわからないまま、長与は老爺たちから目を背けた。
反射的に目を上に向けざるを得なかった。
痛みだ。
金縛りで動かせない腕に走る傷み。
「管理人め。男子側には西を女子側には東をと決まりがあるのに」
「管理をあいつ一人に任せるべきではなかったか」
「ダメだ。女子はダメだ。罪がない」
そんな会話をしながら長与の様子については眼中にもないように。
彼らは長与の体にナイフを刺し続けてくるのだ。
「……!?」
腕、足、腹部、手。
あらゆる所を彼らはナイフで突き刺してくる。
だが、長与は金縛りで声も出せない。
隣にいるエビルに助けを求めることさえできない。
「エビ……ッ!?」
「血をなるべく落とせよ。調理する時に血は邪魔になるからな。割烹着が汚れてしまう」
「しかし残念だ。女子の方には罪がなかった。ワシは女子の方が好みなんじゃがな」
刺されながら、血を流しながら、長与はエビルの方に視線を向ける。
正直、なぜ自分がこんな目に合わされているのかなんて今の長与では考える力もない。
せめて、隣で眠っているエビルが無事なことを確認したかった。
「ル……ちゃ……ッ!?」
出血多量で心臓が止まってしまいそうだ。
彼らは何度も何度もナイフを長与の体に突き刺してくるのだ。
「今年はもう食材が手に入らんと思っていたが。よかったよかった」
「これッ!! 暴れるな。貴様の罪だ。貴様は同胞を喰った。あのスープの肉は貴様よりも前に来た旅行客の肉よ」
「1の余りを2が喰い。2の肉を我らが喰う。そして余りを3が喰う。
それがこの村の……価値価値村のルールじゃ」
「許してくれ。あの男の……あの料理人のせいで我らは人肉しか食えんくなった。我らはあの味が恋しいのだ」
長与は老爺たちの懺悔のような言葉は聴こえたが、言葉の意味を理解できるほど頭が回っていたわけではない。
「ん……」
ただ、途切れそうな意識の中で必死にエビルの方を見続けていただけである。
しかし、長与の意識が消えかけたその時。
長与を刺し続けていた老爺のうちの2人が暗闇で謎の黒い腕に襲われた。
顔を跡が残るほど片手で掴まれて、そのまま窓を突き破り投げ飛ばされたのである。
「なんだ?」
「いつの間に!?」
「何事!?」
老爺たちは長与を刺し殺すのを中断し、黒い影を見る。
だが、老爺たちに黒い影の正体を確認する時間もなく。
次々と窓の外へと投げ飛ばされてしまった。
これで部屋にはエビルと長与と黒い影だけになる。
黒い影はまずエビルの方へと近づくと、彼女を抱き抱えた。眠ったままのエビルを起こさないように優しく抱き抱えたのだ。
一方、長与に対しては……。
「………………………ッ……………?」
──パリッン!!
消えゆく意識の中で長与の体に落とされた物。
それはガソリンの入った瓶。
ガソリンの入った瓶は長与の側で割れる。
そして長与の体は割れたガソリンを浴びてしまった。
シューーーーーーーーッ
すると、長与の体は煙を発しながら、変貌していく。
そして煙が消えた後には怪人となった長与の姿が横たわっていた。
「これ……は?
助けてくれたのか?」
怪人は金縛りが解けたようで普通に起き上がる。
自分の体に刺し傷はなく、立派なバイクの怪人が出来上がっていた。
怪人はすぐさま立ち上がり、黒い影の方を見る。
すると、黒い影はどうやら怪人に変貌する仕組みに対して興味を持ったようで、エビルを抱き抱えながら怪人に近づくと、その肉体に触り始めた。
「…………見た目怖ッ。てか本当に怪人になるんだ……ツンツン」
「誰だてめえ?」
黒い影と表現したが、移動したことで月明かりに照らされ始めた彼女の姿は影ではなかった。
ちゃんと姿があった。女性の姿だった。
それでも、怪人にとって彼女は初対面。
見た目だけでは彼女がなぜ助けてくれたのか、彼女がなぜエビルを守っているのか、彼女がなぜ怪人のことを知っていたのか、まったくわからない。
その事を察したのか、助けてくれた者は自分の正体について語り始めた。
「この身なりじゃわかんないか。改めて自己紹介。
私は飯居竜虎。『注射器』の付喪人にして不死身人肉の失敗作。人造の吸血鬼って感じかしら?」
寝苦しいとか眠れないというわけではない。
無意識に寝返りをうとうとしても動かないのである。
まるで金縛りだ。
「…………」
意識だけは起きているが、体が動かせない。
長与は隣にいるエビルに声を出して助けを求めようとするが口が動かない。
けれど、どうやら目は動かせるようなので長与は目を見開いて何が起こっているのかを判別しようとした。
長与の予想では幽霊や妖怪などの恐ろしい存在が視界に映るのだろうと警戒はしていた。
怖い物を見ることになるのだろうと覚悟はしていた。
「!?」
だが、長与の予想は半分正解で半分不正解となる。
──長与が見たのは人間たちだった。生きている人間たちだった。
部屋に何人もの人間が長与とエビルを見定めるようにして居座っていたのである。
声が出せない。体が動かない。
長与は正直怖くて泣きそうになっていた。
周囲には見知らぬ人間たち。おそらく村人なのだろう。寝巻き姿でもなく普段着の老爺たちが長与をジーーと見つめてくるのである。
長与には意味がわからない。
「ッ……!?」
意味がわからないまま、長与は老爺たちから目を背けた。
反射的に目を上に向けざるを得なかった。
痛みだ。
金縛りで動かせない腕に走る傷み。
「管理人め。男子側には西を女子側には東をと決まりがあるのに」
「管理をあいつ一人に任せるべきではなかったか」
「ダメだ。女子はダメだ。罪がない」
そんな会話をしながら長与の様子については眼中にもないように。
彼らは長与の体にナイフを刺し続けてくるのだ。
「……!?」
腕、足、腹部、手。
あらゆる所を彼らはナイフで突き刺してくる。
だが、長与は金縛りで声も出せない。
隣にいるエビルに助けを求めることさえできない。
「エビ……ッ!?」
「血をなるべく落とせよ。調理する時に血は邪魔になるからな。割烹着が汚れてしまう」
「しかし残念だ。女子の方には罪がなかった。ワシは女子の方が好みなんじゃがな」
刺されながら、血を流しながら、長与はエビルの方に視線を向ける。
正直、なぜ自分がこんな目に合わされているのかなんて今の長与では考える力もない。
せめて、隣で眠っているエビルが無事なことを確認したかった。
「ル……ちゃ……ッ!?」
出血多量で心臓が止まってしまいそうだ。
彼らは何度も何度もナイフを長与の体に突き刺してくるのだ。
「今年はもう食材が手に入らんと思っていたが。よかったよかった」
「これッ!! 暴れるな。貴様の罪だ。貴様は同胞を喰った。あのスープの肉は貴様よりも前に来た旅行客の肉よ」
「1の余りを2が喰い。2の肉を我らが喰う。そして余りを3が喰う。
それがこの村の……価値価値村のルールじゃ」
「許してくれ。あの男の……あの料理人のせいで我らは人肉しか食えんくなった。我らはあの味が恋しいのだ」
長与は老爺たちの懺悔のような言葉は聴こえたが、言葉の意味を理解できるほど頭が回っていたわけではない。
「ん……」
ただ、途切れそうな意識の中で必死にエビルの方を見続けていただけである。
しかし、長与の意識が消えかけたその時。
長与を刺し続けていた老爺のうちの2人が暗闇で謎の黒い腕に襲われた。
顔を跡が残るほど片手で掴まれて、そのまま窓を突き破り投げ飛ばされたのである。
「なんだ?」
「いつの間に!?」
「何事!?」
老爺たちは長与を刺し殺すのを中断し、黒い影を見る。
だが、老爺たちに黒い影の正体を確認する時間もなく。
次々と窓の外へと投げ飛ばされてしまった。
これで部屋にはエビルと長与と黒い影だけになる。
黒い影はまずエビルの方へと近づくと、彼女を抱き抱えた。眠ったままのエビルを起こさないように優しく抱き抱えたのだ。
一方、長与に対しては……。
「………………………ッ……………?」
──パリッン!!
消えゆく意識の中で長与の体に落とされた物。
それはガソリンの入った瓶。
ガソリンの入った瓶は長与の側で割れる。
そして長与の体は割れたガソリンを浴びてしまった。
シューーーーーーーーッ
すると、長与の体は煙を発しながら、変貌していく。
そして煙が消えた後には怪人となった長与の姿が横たわっていた。
「これ……は?
助けてくれたのか?」
怪人は金縛りが解けたようで普通に起き上がる。
自分の体に刺し傷はなく、立派なバイクの怪人が出来上がっていた。
怪人はすぐさま立ち上がり、黒い影の方を見る。
すると、黒い影はどうやら怪人に変貌する仕組みに対して興味を持ったようで、エビルを抱き抱えながら怪人に近づくと、その肉体に触り始めた。
「…………見た目怖ッ。てか本当に怪人になるんだ……ツンツン」
「誰だてめえ?」
黒い影と表現したが、移動したことで月明かりに照らされ始めた彼女の姿は影ではなかった。
ちゃんと姿があった。女性の姿だった。
それでも、怪人にとって彼女は初対面。
見た目だけでは彼女がなぜ助けてくれたのか、彼女がなぜエビルを守っているのか、彼女がなぜ怪人のことを知っていたのか、まったくわからない。
その事を察したのか、助けてくれた者は自分の正体について語り始めた。
「この身なりじゃわかんないか。改めて自己紹介。
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