侍女と令嬢、入れ替わってみました

天然爛漫

文字の大きさ
1 / 6

1.どうしましょう?

しおりを挟む
 公爵家のお茶会の帰りの馬車で、伯爵令嬢とその侍女が二人で頭を抱えながら、茶会での出来事に溜息をついていた。

「ど、どうしましょう。お嬢様。」
「なるようにしかならないわ。まさか、お茶会でエリオ様から婚約の申し出を受けるとは思わなかったしね。」
「そ、そうですが......」
「公爵夫人主催のお茶会というのがね......。」

 そう、今日のお茶会は公爵夫人主催のお茶会だったのです。伯爵夫人の体調が悪く、急遽出席できないこととなり、伯爵令嬢であるエリーゼお嬢様だけが参加するに至りました。

 いつものように侍女である私アリーリアと二人で準備をし、いつものようにお茶会に参加して、ささっと令嬢達からの嫌味を流し、ご婦人方からの婚約の勧めを受け流し、子息様との接触を避けるつもりでいたのです。本来なら侍女も同行する必要はないのですが、公爵家のお茶会で招待者も多いことから、給仕の手伝いに侍女も連れてきて欲しいとあったのです。

 そして招待状を受付の方に見せて連れて行かれた席が、何故かいつもと様子が違ったのです。いつもなら同じ爵位くらいの子息令嬢の席なのですが。

 公爵夫人と一緒の席を進められ、あれよあれよと席に着いた方々を見やると、公爵夫人と娘のミーシャ様、侯爵子息のエリオ様と、なんと王妃と王太子殿下までもが一緒の席にいらっしゃる。

 いつもの嫌味令嬢も下心のある子息も近づくこともなかったのは良いのですが、流石にこの面々は爵位が違うどころではないのです。

 公爵令嬢のミーシャ様も侯爵子息のエリオ様も同じ学園での学友でした。ミーシャ様は、エリーゼお嬢様の数少ない友人とも呼べる方です。
 エリオ様とは、何度か学友同士で買い物を付き添いしたのを覚えていますが、学園ではさほど親密であったとはお嬢様からは聞いていません。夜会でも数度、ご学友ということから踊りに誘われたことはあるようですが。

「ミーシャ様は気づいていらっしゃらなかったのでしょうか。」
「そうね。でも、卒業してから一年、ミーシャ様も王妃教育で会っていなかったし。」
「王妃と殿下まで居たんですよ。私、ガクガクブルブルものでした。間違いなく、不敬罪じゃないでしょうか。」
「露見したら、私も貴方も修道院は決定よね。ふふっ。」
「わ、笑いごとではないですよ! 私は兎も角、お嬢様は......。」

 そうなのです。お嬢様と私の恰好は、侍女と令嬢なのです。当たり前だろうと?
 そうではないんです。只今、お嬢様が侍女の恰好を、私が令嬢のようにドレスを着て着飾っているのですよ。所謂、入れ替わりということです。

 お嬢様と私は、髪がミルクティー色でストレート、目の色はダークブラウンで歳が私の方が一つ上で背格好が似ているのです。胸は、若干お嬢様には劣ります......、本当に若干ですよ!
 異なる点は、目付きがお嬢様は少し垂れ目で唇もプルっといい感じの厚みがあり、甘~い、御顔立ち。性格も御顔立ちの通り、おっとりとして優しさが表情から滲み出ているような感じなのです。

 対して私は、目付きが鋭く、唇も薄いくてどちらかと言うとキツイ感じでしょうか。キツイ顔つきとは真逆な性格で、せっかちで興味を持つと周囲が見えなくなるほど夢中になってしまう、あぁ我ながら良い所が思い浮かばない。

 ですので、家族やご友人が近くで見れば、露見してしまうのです。もちろん、化粧で目付きや口元は、お互いに似せているので、ちょい見ではわかりません。

 実は、この入れ替わりは今回が初めてではないのです。もう学園卒業してから今回で5回目だったりします。ちょっと二人で遊び過ぎちゃいました。てへ。

 遊び過ぎは少し冗談ですが、最近一部の令嬢からお嬢様が嫌がらせを受けているのです!
 婚約者がいないことを遊び好きだからだとか、ミーシャ様にいい顔したいから一緒にいるだとか、お茶をドレスに零すとか、皮肉や冷笑など、女性の僻みは恐るべしです。

 お嬢様が婚約しないのは、伯爵様が溺愛しているからで、今は婚約を全て断っているだけですし、伯爵様もお嬢様が好きになる方なら良いと言っているだけです。学園の時からミーシャ様とも親友なだけですし。完全なやっかみで煩わしいので、優しいお嬢様ではなく、特定の令嬢がいる場合は、私と入れ替わっているのです。
 考えただけでも腹立たしいです。まったく。

 今までは、夜会でもお茶会でも、嫌な特定令嬢がいる時で、出席者が多く壁の花や存在感を消せそうな時だけ。知り合いが居ても接触は控えていたのです。まぁ、お嬢様のご友人自体、先に話したお二人と片手で数えられる程度なので、問題なかったのです。

 だから、今回も条件が嵌り、ひっそりやり過ごすだけで済むはずだったのです。それがまさかの主賓席に、入れ替わった平民の私がいたのです。お、思い出しただけでも背中に冷たい汗がつつぅーと。

「あぁ、思い出しただけでも、あのテーブルは寒気しかしないんですが。」
「ごめんね。アリー。」
「私も今まで楽しませて頂いていたので。自業自得ではあるのですが。はぁ~、これからどうしましょう。」

 本当になぜこんなことに。後悔先に立たずとは正にこのことでしょう。

「アリー。その席での状況と会話、話してくれるかしら。できれば一言一句ね。」
「はい。いつも通り、記憶していますので。」

 記憶力だけは、人並み以上の私。エッヘン! でもその御陰で、また寒気が......。
 では、勧められた席に着いてからの会話を思い出して、お嬢様に報告です。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

実家を追放された地味令嬢、呪われた『氷の騎士』様の元へ身代わり婚。枯れた庭を癒やしていたら、旦那様の呪いも解いてしまい溺愛ルート突入です!

黒崎隼人
恋愛
「貴方の庭を、救わせてください」 実家で空気のように扱われてきた地味な伯爵令嬢リゼット。 彼女は、妹の身代わりとして「氷の騎士」と恐れられる呪われた侯爵、ギルバートの元へ厄介払いされる。 待っていたのは、荒れ果てた屋敷と、死に絶えた庭園。 そして、呪いに蝕まれ、心を閉ざした孤独な騎士だった。 しかし、リゼットには秘密があった。 触れるだけで植物を蘇らせる「癒やしの力」。 彼女がこっそりと庭を再生させていくうちに、頑なだったギルバートの心も次第に溶かされていき――? 「リゼット、君は俺の誇りだ」 これは、虐げられた令嬢が荒野を緑の楽園に変え、最強の騎士に溺愛される、再生と幸福の物語。

「お前みたいな卑しい闇属性の魔女など側室でもごめんだ」と言われましたが、私も殿下に嫁ぐ気はありません!

野生のイエネコ
恋愛
闇の精霊の加護を受けている私は、闇属性を差別する国で迫害されていた。いつか私を受け入れてくれる人を探そうと夢に見ていたデビュタントの舞踏会で、闇属性を差別する王太子に罵倒されて心が折れてしまう。  私が国を出奔すると、闇精霊の森という場所に住まう、不思議な男性と出会った。なぜかその男性が私の事情を聞くと、国に与えられた闇精霊の加護が消滅して、国は大混乱に。  そんな中、闇精霊の森での生活は穏やかに進んでいく。

結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました

ましゅぺちーの
恋愛
侯爵令嬢のアリサは婚約者だった王太子テオドールと結婚した。 ちょうどその半年前、アリサの腹違いの妹のシアは不慮の事故で帰らぬ人となっていた。 王太子が婚約者の妹のシアを愛していたのは周知の事実だった。 そんな彼は、結婚初夜、アリサに冷たく言い放った。 「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎ ギルドで働くおっとり回復役リィナは、 自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。 ……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!? 「転ばないで」 「可愛いって言うのは僕の役目」 「固定回復役だから。僕の」 優しいのに過保護。 仲間のはずなのに距離が近い。 しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。 鈍感で頑張り屋なリィナと、 策を捨てるほど恋に負けていくカイの、 コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕! 「遅いままでいい――置いていかないから。」

落ちこぼれで婚約破棄されて周りから醜いと言われる令嬢は学園で王子に溺愛される

つちのこうや
恋愛
貴族の中で身分が低く、落ちこぼれで婚約破棄されて周りから醜いと言われる令嬢の私。 そんな私の趣味は裁縫だった。そんな私が、ある日、宮殿の中の学園でぬいぐるみを拾った。 どうやら、近くの国から留学に来ているイケメン王子のもののようだけど…

婚約破棄された公爵令嬢と、処方箋を無視する天才薬師 ――正しい医療は、二人で始めます

ふわふわ
恋愛
「その医療は、本当に正しいと言えますか?」 医療体制への疑問を口にしたことで、 公爵令嬢ミーシャ・ゲートは、 医会の頂点に立つ婚約者ウッド・マウント公爵から 一方的に婚約を破棄される。 ――素人の戯言。 ――体制批判は不敬。 そう断じられ、 “医療を否定した危険な令嬢”として社交界からも排斥されたミーシャは、 それでも引かなかった。 ならば私は、正しい医療を制度として作る。 一方その頃、国営薬局に現れた謎の新人薬師・ギ・メイ。 彼女は転生者であり、前世の知識を持つ薬師だった。 画一的な万能薬が当然とされる現場で、 彼女は処方箋に書かれたわずかな情報から、 最適な調剤を次々と生み出していく。 「決められた万能薬を使わず、  問題が起きたら、どうするつもりだ?」 そう問われても、彼女は即答する。 「私、失敗しませんから」 (……一度言ってみたかったのよね。このドラマの台詞) 結果は明らかだった。 患者は回復し、評判は広がる。 だが―― 制度は、個人の“正 制度を変えようとする令嬢。 現場で結果を出し続ける薬師。 医師、薬局、医会、王宮。 それぞれの立場と正義が衝突する中、 医療改革はやがて「裁き」の局面へと進んでいく。 これは、 転生者の知識で無双するだけでは終わらない医療改革ファンタジー。 正しさとは何か。 責任は誰が負うべきか。 最後に裁かれるのは―― 人か、制度か。

皇帝陛下の寵愛は、身に余りすぎて重すぎる

若松だんご
恋愛
――喜べ、エナ! お前にも縁談が来たぞ! 数年前の戦で父を、病で母を亡くしたエナ。 跡継ぎである幼い弟と二人、後見人(と言う名の乗っ取り)の叔父によりずっと塔に幽閉されていたエナ。 両親の不在、後見人の暴虐。弟を守らねばと、一生懸命だったあまりに、婚期を逃していたエナに、叔父が(お金目当ての)縁談を持ちかけてくるけれど。 ――すまないが、その縁談は無効にさせてもらう! エナを救ってくれたのは、幼馴染のリアハルト皇子……ではなく、今は皇帝となったリアハルト陛下。 彼は先帝の第一皇子だったけれど、父帝とその愛妾により、都から放逐され、エナの父のもとに身を寄せ、エナとともに育った人物。 ――結婚の約束、しただろう? 昔と違って、堂々と王者らしい風格を備えたリアハルト。驚くエナに妻になってくれと結婚を申し込むけれど。 (わたし、いつの間に、結婚の約束なんてしてたのっ!?) 記憶がない。記憶にない。 姉弟のように育ったけど。彼との別れに彼の無事を願ってハンカチを渡したけれど! それだけしかしてない! 都会の洗練された娘でもない。ずっと幽閉されてきた身。 若くもない、リアハルトより三つも年上。婚期を逃した身。 後ろ盾となる両親もいない。幼い弟を守らなきゃいけない身。 (そんなわたしが? リアハルト陛下の妻? 皇后?) ずっとエナを慕っていたというリアハルト。弟の後見人にもなってくれるというリアハルト。 エナの父は、彼が即位するため起こした戦争で亡くなっている。 だから。 この求婚は、その罪滅ぼし? 昔世話になった者への恩返し? 弟の後見になってくれるのはうれしいけれど。なんの取り柄もないわたしに求婚する理由はなに? ずっと好きだった彼女を手に入れたかったリアハルトと、彼の熱愛に、ありがたいけれど戸惑いしかないエナの物語。

処理中です...