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学園4年生編
18
しおりを挟むいやー、このお屋敷では随分と大きなペットを飼ってらっしゃるのね。体長5mくらいありそう~。
なんというか、エリマキの無いトリケラトプスって感じ?なんて動物ですかね~?まさか魔物じゃあるまいな?
「あれ?ベヒモスだよ。さっきからずっといたよ?」
チクショウ現実逃避させてもくれないのか!!
…ベヒモス!?地の最上級精霊、だったっけ!?なんでそんなのがここに…!
「前からシャーリィと契約したがってたんだよねえ。普段から度々タイミング窺ってたよ」
なんで?いや…なんで?
「ベ、ベヒモス殿…!?なななんと荘厳な御姿…!!」
ファーーー!!!タオフィ先生のスイッチが入った、ヤバい!!
「ではキッサン殿、僕達はこれで失礼する!!行くよ先生、ジェイル!」
「は、はい」
「もももうちょっと観察を!というか姫、契約してください!そして連れて帰りましょう!?」
断る!!!これ以上戦力は本当に要らんってば!!ヘルクリスの所まで飛んで行こうとしたら……
「………………………」
「………あの、離していただけません…?」
ベヒモスに服を咥えられ、身動きが取れない。なんなの…?
「契約して、だって」
「…なんで、僕なんですか?」
「うーん、話すと長くなるから…とりあえず移動しない?」
だからその移動が出来ないんだってば…。
「坊ちゃん、そろそろキッサン殿の視線が痛いんですけど…!」
「契約しましょう姫!!早く早く!!」
「もう観念しなよ。ベヒモスは敵には容赦無いけど、基本穏やかだよ?」
「おい、帰らんのか?」
「…………………」
「契約しましょうって!はあ~~~っ、この錆色のお身体に鋭い2本の角。そしてつぶらな瞳…是非じっくり観察させてください!!」
「坊ちゃん、早く帰りましょう!」
「結構役に立つよ?ぼく程じゃないけど」
「おい、ベヒモスを乗せるなら縮めるように。真体のそいつは見た目以上に重いからな」
「なんと!?ヘルクリス様、その辺詳しく!!」
「ざっくり言うと5t」
「「重っっっ!!!?」」
「………………」ぽっ
「でえええぇーーーーーい!!!!分かったよ契約するよ!後悔しないでよ!!?」
僕は聖徳太子じゃないんだ、いっぺんに聞き取れるかい!!!
もう勢いだけでそう言ったら…ベヒモスはその小さな目を輝かせてこくこく頷いた。可愛いじゃねえか…。
んー…名前は…どうしよう。まず移動してから考えようか。小さくなってくれない?
「先に名前欲しいって」
「だあああ!!!……はあ。ベヒモスか…べ、ベス。う~ん…トリケラトプス…トト、ト…トリ…トッピー!!
僕はセレスタン。君はトッピーでいいかな?」
ベヒモスはにっこり笑い…おお、久しぶりに魔力が繋がる感覚だあ…。契約が完了すると、ベヒモス改めてトッピーは小さくなった。
これは…パンダカーサイズのカバ!!!シンプルにデフォルメされた、長い尻尾で角の生えたカバ!!
「よろしく、よろしく。わいトッピー、いい名前」
「よ、よろしくね…?」
おおう…可愛い声。
契約も完了し、今度こそ帰ろう!僕はトッピーの体に触れた。こ、これは!!
「なにコレ…この弾力、ひんやり感!!ああ~…たまんねえ~…!」
「なんとお!?精霊殿、是非此方にもお身体に触れる許可を頂きたく存じます!!!」
「いいよ、いいよ」
「では失礼して…………!!はあぁ~…たまらん…」
うへえ…僕と先生は、うっとりとトッピーに頬擦りをする。なんだろう、この…硬いビーズクッションの表面を更に滑らかにしたような感触…クセになっちゃううう…ダメになっちゃうぅ…。
「ああ、キッサン殿…お金はテオファの口座に一週間以内に振り込んどいてね…。さようなら」
「はい…」
ヨミとトッピーは僕の影に入り(その様子を見たキッサン家の面々は目を丸くしていた)、タオフィ先生の術で飛んでヘルクリスのもとに向かう。
「ふむ、トッピーか。言っておくが、此奴のベッドは私が使っているからな」
「いいよ。わいは硬い床が好き」
ヘルクリスは大体ベッドか専用クッションで寝ている。ほら、合宿の時ラディ兄様が買ってくれたやつ。
さて…キッサン邸も遠ざかり、帰りはスピードを落としてのんびり帰る。お空の旅を楽しみつつ、影から出て来たトッピーに話を聞こう。
「で…どうしてトッピーは、僕と契約したかったの?」
「人間と精霊は、相性がある。あるじは、地属性とぴったりぴったり」
「ああ、そういう事でしたか」
ん?どうやらタオフィ先生は何かに至ったようだ。
彼が言うには…人間は親和性の高い精霊の属性ってのが、生まれつき決まっているらしい。
僕の場合は地。だからどうという事は無いけど、地属性の魔術が扱いやすい、地の精霊に好かれやすいとか。
あー…それで昔、僕が地の上級精霊を召喚した時出口で詰まってたんだ。ノモさん曰く、「召喚権争奪戦」が起こっていたらしい。俺が行く、私が行く、いや僕だ!って。
まあ結局、僕がノモさんを収穫した訳ですが。
それでトッピーは…「複数の最上級精霊と契約しているのに、何故地の自分が仲間外れなのか」と言う。いやあ…はは。
「それで、なんであそこにいたの?」
「あの辺、いい土。たまにバカンス。そこに、あるじ来た。チャンス、チャンス」
ほーん。まあ…大人しそうだしいっか。ただし僕と契約した以上、守ってもらいたいルールが1つだけある!!!
「あのね…あんまり、人間を傷付けないでね。人間って脆いから…」
「ん………わかった。それがあるじの望みなら」
「うん。ありがとう」
トッピーは僕の顔に頬擦りをしてきたので…ぎゅっと抱き締めてお返しするのであった。
※※※
「まあそういう訳で、家族が増えたよ!!それとテオファのお金は近々帰って来るから安心してね」
「「……………」」
公爵家に帰ると、お父様とバティストが変な目で僕を見る。なんだよう、トッピー超キュートじゃん!?
「……いや、何も言うまい…。ご苦労様。
テオファの今後についても決まったから、夕飯の前に少し話すか」
すっかり綺麗に片付けられたサロンに、ロッティも呼んで座った。
メンバーはお父様、僕、ロッティ、タオフィ先生。バティストとジェイル、デニスが控えている。
「お帰りなさい、お姉様!そちらが地の最上級精霊様ね?とってもチャーミングだわ!」」
「「「「(え、そう?)」」」」
む。ロッティの言葉に先生以外の男性陣が眉を顰めた。トッピーの滑らかボディ触らせてあげないんだから!!
「…こほん。我々は精霊殿を歓迎致します。どうか娘の力になってやってください」
「もちろん、もちろん」
「(声可愛っ)えっと…それでテオファだが、公爵家で正式に雇用する事となった。
ただ俺の推薦で国籍を与えようと思ったが…「身に余る光栄です。ですがボクも兄同様…頑張ってみたいんです」と断られてな。
本人には夢があるらしい。それを自力で叶える為にも…うちで3年間、勤める事になった」
おお…!なんかうちの使用人、国際的になってきてんね。メンズ三人衆から四天王になったし、トップは当然バティスト。
夢ってなんだろう?教えてくれるかなあ…。僕も何かお手伝い出来るかな?
「タオフィ先生も、それでいいか?テオファの安全は俺が必ず保証する」
「いいも何も、此方は感謝しかございません。どうか…弟をよろしくお願い致します」
先生は深々と頭を下げた。えへへ、一件落着、かな!?
「しかし…今回此方は弟を保護して頂いただけでなく、貴重な情報も戴いてしまいました。どうか報酬を支払わせてください」
あー…アレか。確かにバティストの調べた情報が無かったら、もっと面倒な事態になってたもんね。
ただお父様はバティストとアイコンタクトを取り頷き、先生に真剣な眼差しを向けた。
「お代は結構。ただこちらは…先生の目的が知りたい」
「………目的ですか?」
「そう。どうしてうちの娘とパスカルに近付いたのか…真意を知りたい。テノー王家の考えや、この先も貴方に大事な我が子を預けていいのか…図りかねているんだ」
お父様の発言の後、部屋に沈黙が落ちた。
がっつり疑われている先生は「うーん…」と唸った後…杖を取り出し、なんらかの陣を描く。
「…………!!!」
「あ、ご心配なく。全く害はありませんので~」
皆が警戒してるが、先生は気にせず描き続ける。そして完成すると…術を自分に掛けた。
「ねえヨミ、今のなんの魔術?」
「強力な自白の魔術だね。今の彼は、一切嘘がつけないよ」
「何やってんの先生!?」
「はあっ!?おい先生、自白とか精神に作用する魔術は禁忌のはずだが!?」
僕らはもうビビるしか無い。ただ当の本人はあっけらかんとしている。
「ふっ、殿下。何事にも抜け道ってのはあります。精神操作魔術は、他者に掛けるのは禁忌ですが…対象が自分なら問題ありません。
…これが今此方に出来る最大限の礼儀です。さあ、なんでもご質問どうぞ!」
「はいはーい!年齢身長体重スリーサイズ教えて!!」
「24歳、181cm、67kg。スリーサイズは把握してませんね~。姫、セクハラやめましょう?」
「じゃあ好きな女性のタイプは!?」
「ミステリアスなお姉さんです!あの、姫楽しんでます?」
「なるほど年上趣味かー!初めての彼女は何歳の時!?初キッスは!?」
「どちらも15歳でしたかね。誰か姫の口塞いでくれませんかね?」
僕がちょっと楽しくなってきたところで、隣に座るロッティに口を塞がれた。残念。
「…えっと…じゃあ気を取り直して。
どうして2年前、この国に来た?」
「もちろん最上級精霊殿とお近付きになる為ですとも。生態、能力、全て知りたい!完全なる探究心です」
「シャーリィとパスカルに近付くのはその為か?テノーから何か指示はあったのか?」
「当然精霊殿の契約者という、此方にとって尊敬すべき方々ともお近付きになりたくて!
それと国は全く関係ありませんよ?むしろ「皇国にご迷惑をお掛けするなよ!?」と陛下や同僚から念を押されてましたね~」
先生は次々お父様の質問に答えていく。その返答に怪しい点は無い。
「じゃあ…どうしてお姉様にはやたらと距離が近かったんですか?お姉様とパスカルは同じ立場では?」
「それがですねえ…此方が姫に近寄ると、王が面白い反応するんですよ。
物凄い形相で睨んでくるのが愉快で…つい揶揄っちゃうんですよね。姫に対する下心は一切ありませんのでご心配なく!」
そこまで言い切られると、安心だがムカつくな…。
「じゃあ…本当に、ただ単に精霊殿の研究がしたくて…近付いてるだけなんですか…?」
「此方は赴任当初からずっとそう言ってるんですけど…」
バティストが最後の確認をするも、先生は同じ答えを返すばかり。お父様達は特大のため息をついた。
「なんの為に…いらん用心をしてたんだ俺らは…!!」
「うーん、なんで信用してもらえないんでしょう…」
「そりゃー顔だよ!!先生、なんか企んでそうな顔してるんだよねー!」
「はっはっはっ、姫は基本お優しいけど、たまに笑顔で毒吐きますね!!此方泣いてもいいですか?」
ロッティも脱力している隙に僕は自由になった。もうちょい先生に質問して遊ぼうっと。
「じゃあ、僕達には「精霊の契約者」以上の感情は無いの?」
「いいえ?今はお2人に対して、精霊殿抜きにしても好感情を抱いております」
「ええ…照れるじゃん…。でも僕らが卒業したらどうするつもり?」
「此方はですねえ、王と姫がご結婚されたら、使用人として雇ってもらいたいなーと企んでおります!お2人と精霊殿と共にいられる最高の職場じゃないですか。
なんならお子様の家庭教師とかしますよ?どうです?此方結構有能ですよ?」
け、けっこん…子供!!先生はめっちゃ自分の売り文句を飛ばしてくる。まあ…前向きに検討します。
とまあ、大体知りたい事は聞けた。
結論。この人ただの面白いお兄さんだった。
「はあ…よくわかった。じゃあそろそろ術を解いて…」
「あ、待った」
お?もう終わりかと思ったら、ヨミがストップをかけた。なんか聞きたい事でもあるの?
「さっきから気になってたんだけど…タオフィ、シャーリィが女の子だって気付いてたの?」
「「「あ」」」
「ああ、以前水浴びを覗いてしまいまして……………ぁ」
……………は?水、浴び…?
先生は珍しく顔を赤くして……僕から目を逸らした。
水浴びって、まさか……剣術合宿の…!!
「……その変態教師をとっ捕まえろーーー!!!!」
「「「おおおーーー!!!!」」」
「ぎゃああああっっっ!!?ま、落ち着いてください!まず話を…わーーーっ!!?」
お父様の号令に、バティストとデニスとロッティ(バズーカを構えながら)が先生に襲い掛かる!!先生は大慌てで部屋を飛び出して、僕以外全員後を追って行った…。
「は…はは…」
もう笑うしかねえ…。
その後先生はすぐに捕まった。頭にたんこぶをいくつか作り、黒コゲ状態で戻って来たぞ。バズーカ喰らったんだな…。
で、先生の言い訳は。
元々彼は、夜の空中散歩が趣味らしい。あの日も帰ろうとしつつ散歩していたら、あまり姿を現せないヨミが影の外に出ているのに気付き…遠見の魔術で観察していた。
すると…少し離れた所に僕がいるのに気付いた。なんの気なしに視線を向けたら…あらビックリ、女の子やんけ!となったらしい…。
「ですから…本当に偶然なんです~…。まあ眼福とは思いましたけど…あ、ごめんなさい。それにチラッとしか見てませんから!
ただまあ、それで王と姫の距離が近い事に納得いったんですよね。卒業後は彼らに雇ってもらおう!と思い付いたのはその時です。
でも王はまだ此方を敵視してますし。どこから口説こうか…考え中です」
そうですか…。まだ自白の術が掛かりっぱなしなので、本音のようだ。
その後たっぷりお父様からお説教を喰らい、彼は解放された。
なんかもう…今日は疲れたわ。夕飯まで部屋で休もう…僕はこっそりとサロンから出るのであった。
※※※
「お嬢様、今よろしいですか?」
部屋でトッピーの上に乗っかり寛いでいたら…テオファが挨拶に来た。部屋に招き入れると……
「………なんで、メイド服なの?」
テオファは何故かメイド姿。一緒に来たグラスも苦笑気味。
「おれと同じ服を用意したのに…シャルロットお嬢様が悪ふざけでメイド服も用意したんです」
「両方試したらボク、メイド服のほうが似合うんですよ。可愛いから」
うーん、テオファの被っていた猫が一斉に逃げ出したな?
お客様の前に立つ時は、ちゃんと正装するからご心配なく!と言われちゃ何も返せん。
グラスは今日、テオファを案内する事が仕事らしい。その前に…僕に挨拶と、お願いがあるとかなんとか。
「へ。僕のドレスルームが見たい…?」
「はい…。ボク、いつかドレスメーカーになるのが夢なんです。華やかなドレスを作りたいなって…ヘン、ですか…?」
うーん?まあドレスメーカーは女性が多いのは確かだね。反対に紳士服を作るテーラーは男性ばっかり。
でも…ヘンではないよ?
「応援するよ、頑張って!そうだ、いつか一人前になったら…僕のドレス作ってね!」
「は…はい!!ありがとうございます、頑張ります!」
彼は僕の言葉に、一瞬泣きそうな顔になってから笑った。
さて、僕のドレスが見たいんだね!?でも僕はそんなに持ってないし…ロッティと共有のドレスルームなんだわ。
なのでロッティにも声を掛けてから、4人で向かう。普段男性はあまり入らないから新鮮だわ~。
「さあ、ここよ。好きに手に取って見ていいわ」
「ありがとうございます、シャルロットお嬢様…!!」
中に入るとテオファは、目を輝かせてドレスを見て回った。初めて入ったグラスも興味津々だ。
「へえ…単にドレスがいっぱいある部屋かと思ったら、違うんですね。化粧台にバスルーム、ソファーセットまで」
「まあね。他にも…」
「……う、うわああああっ!!!」
「「「!!!?」」」
なんだ、テオファの絶叫が!?僕らは急いで彼の元に向かう、と…。
「こ、これはマダム・エクフイユのドレスでは!!?この装飾にデザイン、染色縫製…どれをとってもすごすぎるうぅ…!!」
「「「…………」」」
何事かと思いきや…彼は興奮しながらドレスを手に取っている。その様子は…タオフィ先生そっくり…。
「はーーーっ!!?なんですかこの型は!!初めて見ました、皇国の最先端ですか!?あああっ、こっちは自分の気に入った客でなくては、たとえ王族であろうと依頼を受けないと有名なマダムの作品じゃないですか!!?
間違いない…この隠された黄金の林檎の刺繍、マダム・アリアットの一品!!素晴らしいですお嬢様、マダムのお眼鏡に敵うとは!!!はっ!?そっちは…!」
と…テンション振り切ってるテオファが落ち着くまで…僕らはソファーに座って待つのであった。
こうしてこの日、公爵家にまた新しい仲間が出来たのであった。
※
その日の夜、使用人部屋にて。バティスト、バジル、グラス、フェイテ、テオファが揃っていた。
「テオファも増えたからね、部屋割り変えようか。バジルとグラス、フェイテとテオファでいいかな?」
「「「「はい」」」」
今まで男子3人で同室だったが、4人になったので2:2で分けるのだ。
ちなみに他の部屋割りは、バティストが個室。リオ夫妻、モニク&ネイがそれぞれ同室。料理長のロイは既婚者で、町に家があり通いなのである。
専属護衛騎士の2人は、それぞれのお嬢様の向かい部屋。
「もう今日は遅いから、明日変えよう。とりあえずテオファはタオフィ先生と客間に泊まってくれ」
「わかりました。……あの…ボク、フットマンになるんですか…?」
「そーそー。なんかマズかった?」
「いや、そうじゃないんです!!ただ…身長が、足りないんじゃないかな~って…」
テオファは役職とか要らないから、ただの下働きでいいからと言ったのだが…バティストが「折角だし執事、従者、従僕揃えよう!」と決定してしまったのだ。
「使用人の雇用に関しては、旦那様よりあたしのほうが権限あるからな!まー確かに従僕ってのは高身長、整った顔立ちってのが条件だけど…すぐ伸びんだろ」
「ええ伸びますとも、この此方のように!」
「先生は部屋に戻ってくださいねー」
何故かそこにタオフィ参戦。開いた扉の横でドヤ顔をするも、即座に追い出された。
「あのう、今更ですけど…僕は執事のままでいいんですか?やってる仕事、殆ど従者のグラスと同じですけど…」
扉を閉めるバティストの背中に、バジルが声を掛ける。
執事とは上級使用人で…家令のバティストに次ぐ立場なのだ。
「うーん、いいんじゃないか?いずれお嬢様が公爵になったら、バジルにあたしの後任やってもらうつもりだし。
でも確かに…どうして従者じゃなくて、執事だったんだ?」
「一言で言えば…シャルロットお嬢様の希望です。
それというのも、伯爵家ではシャルティエラお嬢様を気に掛ける使用人がいなかったので…唯一彼女の味方である僕に、権限を与えようとしたんです。
伯爵はシャルロットお嬢様の頼みならなんでも聞いてましたからね…僕はあっという間に執事でしたよ。給料は少なかったけど…。
今はお屋敷の皆がお嬢様の味方ですから…もう僕に、執事の地位は必要無いんです」
「おう…そっか…」
「ご心配なく。姫が結婚された暁には、此方がお守りしますから!!」
「先生は出て行きましょうねー。なんなのこの人、なんであたしらこんな面白い人警戒してたの?」
バティストは「今までの苦労が馬鹿みてえ」と言いながら、窓から身を乗り出すタオフィを突き飛ばし、窓と鍵とカーテンを閉めた。
「さて、今日はもう解散するか。
最後に連絡。近々お屋敷でお嬢様達が主催のお茶会するから、その時は全員給仕やってもらうぞ」
「俺も…ですか?」
姉妹も立場上、お茶会のホスト役をやらなければならない。そして公爵家の使用人はギリギリの人数なので、庭師であるフェイテも例外でなく給仕に駆り出される。
「もち。だいじょーぶ、フェイテはマナーも接客も完璧だから!お嬢様達に恥かかせるんじゃねーぞ!」
「「「「はいっ!」」」」
「では此方もお手伝い致しましょうか?何、宮廷魔術師時代にもご令嬢のエスコート等経験済みですとも!!」
「もうツッコむ気も起きねーわ。手伝いは結構ですよ、貴方一応教師でしょうが」
バティスト及び3人は、天井裏から顔を出すタオフィを完全にスルーした。弟であるテオファすら頭を抱えている。こっそり微笑んでいるが。
この日以降タオフィはしょっ中公爵家に遊びに来るようになり…それを知ったパスカルが怒り心頭に発するのは、言うまでも無いのであった。
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