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第5話 衛兵の詰所にお邪魔します
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街の警備や犯罪者の取り締まりをしている衛兵さん達。
そんな人達の前に抱えられたままお邪魔する私。
「隊長殿、何処のお姫様を盗んで来られたんです?」
「人聞きが悪いよ? 私は騎士として公明正大かつ品行方正で居なければならないんだから。……建前上は」
(建前上なんだ? うーん、でも確かに真面目で堅そうみたいな雰囲気では無いかも)
「すみません、ありがとうございます」
桶に張った水で足を冷やしてくれる。
「少し熱を冷ましてから薬を塗った方が効くからね。弟君達が戻って来るまでは冷やしておこうね」
腫れて痛かった足が冷たい井戸水で冷やされてかなり楽になる。
プロイとニュクスは野菜を納品するためシルバを連れて街に残ってくれた。
「医者じゃ無いけど怪我は絶えない職場だから……私の見立てでは打ち身と足首が捻れただけだと思う。薬を塗って2~3日様子を見て、腫れが引けば問題無いと思うよ」
「ありがとうございます。衛兵さんのお仕事って大変ですよね……お怪我をされる事もあるなんて」
実際、詰所で内部の仕事をしている人達は怪我をしている人達も居るようだった。
現場で仕事中に怪我をして、治るまでは内勤している……のかな?
「まあ、悪い事ばかりじゃないよ。街の人達とは触れ合えるし城の中で窮屈な格好してるよりよほど楽だ。……面白いものも見れたりするしね」
ニヤリと笑いながら顔を覗き込まれる。
「いや見事な意見(こうげき)だったよ。君の立場が彼と同等だったなら彼も大人しく引き下がらざるを得なかったのだろうが……」
自分のやらかした事を思い出し、頬が熱くなるのを感じる。
「あれは……その……」
「君の意見は正しかったよ。僕達は正しい人間を護りたい為にこんな仕事をしている。だからこそ、無茶はしないで欲しいな。何かあった時は直ぐに衛兵を呼んで欲しい……自分の身を大切に、ね?」
「はい……ごめんなさい」
優しい顔で言われては素直に謝るしか無い。
私が迂闊だったのは間違い無いし……弟達の見本にならなきゃいけないのに熱くなったのは失敗だったと思う。
「私達もね……素行の良くない貴族を全て裁けたら良いんだけど。あまりに貴族の力を削ぐと隣国につけいる隙を生むからね……申し訳ない。なんとも加減が難しいんだ」
「隣国って、何かあるんですか?」
「ん? 街ではそれなりに噂になっているとばかり思っていたんだが」
不思議そうにする彼の後ろに衛兵さんが歩いて来るのが見えた。
「隊長、娘さんの身内だという子が来ましたよ」
「そうか、入って貰ってくれ」
扉からプロイとニュクスが入って来た。
「姉ちゃん……大丈夫?」
心配そうな顔をしたプロイが駆け寄ってくる。
ニュクスは静かに私の足を見ていた。
「大丈夫、冷やして貰って随分楽になったから。心配させてごめんね」
「良かったぁ。あまり無茶はしないでね。姉ちゃんに何かあったら俺……」
珍しく暗い顔をしたプロイの頭を撫でる。
やんちゃばかりするし、すぐ暴れたがるけど……可愛い弟なのだ。
「ほら、この薬を塗った布を当てて、この包帯を巻いて固定する……出来るかな?」
布と包帯を渡されたニュクスが頷いた。
「姉さん、痛かったら言って下さい」
優しい手つきで包帯を巻いてくれる。
これだけで怪我が治った気分だ……痛みが引いて来た……もう痛く無い……あれ?
「姉ちゃん、ほら。背中に掴まって」
プロイが背を向けて屈み、私におぶさるように言ってくる来る。
(痛みは無いけど……いきなり怪我が治ったら不自然だよね……)
大人しくプロイに背負って貰う。
「良い子達だね。お姉さんを大切にね」
「もちろん!」
「……はい」
エーゲルさんや衛兵の皆さんにお礼を言って、私達は街へ戻った。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「ニュクス、いつの間に治癒魔法なんて覚えたの?」
「……僕の魔法は姉さんとプロイを幸せにする為にあります。日々の修練は欠かしていません」
世界から失われた力を家族の為に使う。
途轍も無い話だけど、気持ちは嬉しかった。
「プロイ、ありがとね。足はもう大丈夫だし誰も見てないから降ろして良いよ」
「俺の力も姉ちゃんとニュクスの為にあるんだ。良い事したご褒美にもう暫く背負ってあげるよ」
世界を救った程の力を家族の為に使う。
途方も無い話だけど、やっぱり嬉しかった。
2人とも本当に優しいのだ。
「よし、じゃあ少し遅くなっちゃったけど美味しいもの食べに行こうか!」
「やった! 肉ね、肉! 行くぞー!」
プロイが走り出す。ゆ……揺れるルルル!
「プロイ、馬鹿! 姉さんを背負ったまま……あー、もう!」
賑やかな1日はこうして過ぎて行くのだった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「隊長、何ですかそれ? 折れた剣……ですよね」
「ああ。ちょっとね……街で拾ったんだよ。ところでさ、君は剣を素手で叩き折れる? こう、振り下ろされたやつ」
「はは、そんなの出来たらこんな怪我してませんよ。そんな腕があったら超一級の傭兵でも出来るんじゃないですか?」
「……そうだね。英雄にもなれるかも知れないね」
騎士は折れた剣を灯りに翳して見続けるのだった。
そんな人達の前に抱えられたままお邪魔する私。
「隊長殿、何処のお姫様を盗んで来られたんです?」
「人聞きが悪いよ? 私は騎士として公明正大かつ品行方正で居なければならないんだから。……建前上は」
(建前上なんだ? うーん、でも確かに真面目で堅そうみたいな雰囲気では無いかも)
「すみません、ありがとうございます」
桶に張った水で足を冷やしてくれる。
「少し熱を冷ましてから薬を塗った方が効くからね。弟君達が戻って来るまでは冷やしておこうね」
腫れて痛かった足が冷たい井戸水で冷やされてかなり楽になる。
プロイとニュクスは野菜を納品するためシルバを連れて街に残ってくれた。
「医者じゃ無いけど怪我は絶えない職場だから……私の見立てでは打ち身と足首が捻れただけだと思う。薬を塗って2~3日様子を見て、腫れが引けば問題無いと思うよ」
「ありがとうございます。衛兵さんのお仕事って大変ですよね……お怪我をされる事もあるなんて」
実際、詰所で内部の仕事をしている人達は怪我をしている人達も居るようだった。
現場で仕事中に怪我をして、治るまでは内勤している……のかな?
「まあ、悪い事ばかりじゃないよ。街の人達とは触れ合えるし城の中で窮屈な格好してるよりよほど楽だ。……面白いものも見れたりするしね」
ニヤリと笑いながら顔を覗き込まれる。
「いや見事な意見(こうげき)だったよ。君の立場が彼と同等だったなら彼も大人しく引き下がらざるを得なかったのだろうが……」
自分のやらかした事を思い出し、頬が熱くなるのを感じる。
「あれは……その……」
「君の意見は正しかったよ。僕達は正しい人間を護りたい為にこんな仕事をしている。だからこそ、無茶はしないで欲しいな。何かあった時は直ぐに衛兵を呼んで欲しい……自分の身を大切に、ね?」
「はい……ごめんなさい」
優しい顔で言われては素直に謝るしか無い。
私が迂闊だったのは間違い無いし……弟達の見本にならなきゃいけないのに熱くなったのは失敗だったと思う。
「私達もね……素行の良くない貴族を全て裁けたら良いんだけど。あまりに貴族の力を削ぐと隣国につけいる隙を生むからね……申し訳ない。なんとも加減が難しいんだ」
「隣国って、何かあるんですか?」
「ん? 街ではそれなりに噂になっているとばかり思っていたんだが」
不思議そうにする彼の後ろに衛兵さんが歩いて来るのが見えた。
「隊長、娘さんの身内だという子が来ましたよ」
「そうか、入って貰ってくれ」
扉からプロイとニュクスが入って来た。
「姉ちゃん……大丈夫?」
心配そうな顔をしたプロイが駆け寄ってくる。
ニュクスは静かに私の足を見ていた。
「大丈夫、冷やして貰って随分楽になったから。心配させてごめんね」
「良かったぁ。あまり無茶はしないでね。姉ちゃんに何かあったら俺……」
珍しく暗い顔をしたプロイの頭を撫でる。
やんちゃばかりするし、すぐ暴れたがるけど……可愛い弟なのだ。
「ほら、この薬を塗った布を当てて、この包帯を巻いて固定する……出来るかな?」
布と包帯を渡されたニュクスが頷いた。
「姉さん、痛かったら言って下さい」
優しい手つきで包帯を巻いてくれる。
これだけで怪我が治った気分だ……痛みが引いて来た……もう痛く無い……あれ?
「姉ちゃん、ほら。背中に掴まって」
プロイが背を向けて屈み、私におぶさるように言ってくる来る。
(痛みは無いけど……いきなり怪我が治ったら不自然だよね……)
大人しくプロイに背負って貰う。
「良い子達だね。お姉さんを大切にね」
「もちろん!」
「……はい」
エーゲルさんや衛兵の皆さんにお礼を言って、私達は街へ戻った。
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「ニュクス、いつの間に治癒魔法なんて覚えたの?」
「……僕の魔法は姉さんとプロイを幸せにする為にあります。日々の修練は欠かしていません」
世界から失われた力を家族の為に使う。
途轍も無い話だけど、気持ちは嬉しかった。
「プロイ、ありがとね。足はもう大丈夫だし誰も見てないから降ろして良いよ」
「俺の力も姉ちゃんとニュクスの為にあるんだ。良い事したご褒美にもう暫く背負ってあげるよ」
世界を救った程の力を家族の為に使う。
途方も無い話だけど、やっぱり嬉しかった。
2人とも本当に優しいのだ。
「よし、じゃあ少し遅くなっちゃったけど美味しいもの食べに行こうか!」
「やった! 肉ね、肉! 行くぞー!」
プロイが走り出す。ゆ……揺れるルルル!
「プロイ、馬鹿! 姉さんを背負ったまま……あー、もう!」
賑やかな1日はこうして過ぎて行くのだった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「隊長、何ですかそれ? 折れた剣……ですよね」
「ああ。ちょっとね……街で拾ったんだよ。ところでさ、君は剣を素手で叩き折れる? こう、振り下ろされたやつ」
「はは、そんなの出来たらこんな怪我してませんよ。そんな腕があったら超一級の傭兵でも出来るんじゃないですか?」
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