転生聖女は休まらない 〜スローライフがしたいのに弟2人が自重しない件〜

花月風流

文字の大きさ
5 / 74

第5話 衛兵の詰所にお邪魔します

しおりを挟む
 街の警備や犯罪者の取り締まりをしている衛兵さん達。
 そんな人達の前に抱えられたままお邪魔する私。

「隊長殿、何処のお姫様を盗んで来られたんです?」
「人聞きが悪いよ? 私は騎士として公明正大かつ品行方正で居なければならないんだから。……建前上は」

 (建前上なんだ? うーん、でも確かに真面目で堅そうみたいな雰囲気では無いかも)

「すみません、ありがとうございます」

 桶に張った水で足を冷やしてくれる。

「少し熱を冷ましてから薬を塗った方が効くからね。弟君達が戻って来るまでは冷やしておこうね」

 腫れて痛かった足が冷たい井戸水で冷やされてかなり楽になる。
 プロイとニュクスは野菜を納品するためシルバを連れて街に残ってくれた。

「医者じゃ無いけど怪我は絶えない職場だから……私の見立てでは打ち身と足首が捻れただけだと思う。薬を塗って2~3日様子を見て、腫れが引けば問題無いと思うよ」

「ありがとうございます。衛兵さんのお仕事って大変ですよね……お怪我をされる事もあるなんて」

 実際、詰所で内部の仕事をしている人達は怪我をしている人達も居るようだった。
 現場で仕事中に怪我をして、治るまでは内勤している……のかな?

「まあ、悪い事ばかりじゃないよ。街の人達とは触れ合えるし城の中で窮屈な格好してるよりよほど楽だ。……面白いものも見れたりするしね」

 ニヤリと笑いながら顔を覗き込まれる。

「いや見事な意見(こうげき)だったよ。君の立場が彼と同等だったなら彼も大人しく引き下がらざるを得なかったのだろうが……」

 自分のやらかした事を思い出し、頬が熱くなるのを感じる。

「あれは……その……」

「君の意見は正しかったよ。僕達は正しい人間を護りたい為にこんな仕事をしている。だからこそ、無茶はしないで欲しいな。何かあった時は直ぐに衛兵を呼んで欲しい……自分の身を大切に、ね?」

「はい……ごめんなさい」

 優しい顔で言われては素直に謝るしか無い。
 私が迂闊だったのは間違い無いし……弟達の見本にならなきゃいけないのに熱くなったのは失敗だったと思う。

「私達もね……素行の良くない貴族を全て裁けたら良いんだけど。あまりに貴族の力を削ぐと隣国につけいる隙を生むからね……申し訳ない。なんとも加減が難しいんだ」

「隣国って、何かあるんですか?」

「ん? 街ではそれなりに噂になっているとばかり思っていたんだが」

 不思議そうにする彼の後ろに衛兵さんが歩いて来るのが見えた。

「隊長、娘さんの身内だという子が来ましたよ」

「そうか、入って貰ってくれ」

 扉からプロイとニュクスが入って来た。

「姉ちゃん……大丈夫?」

 心配そうな顔をしたプロイが駆け寄ってくる。
 ニュクスは静かに私の足を見ていた。

「大丈夫、冷やして貰って随分楽になったから。心配させてごめんね」

「良かったぁ。あまり無茶はしないでね。姉ちゃんに何かあったら俺……」

 珍しく暗い顔をしたプロイの頭を撫でる。
 やんちゃばかりするし、すぐ暴れたがるけど……可愛い弟なのだ。

「ほら、この薬を塗った布を当てて、この包帯を巻いて固定する……出来るかな?」

 布と包帯を渡されたニュクスが頷いた。

「姉さん、痛かったら言って下さい」

 優しい手つきで包帯を巻いてくれる。
 これだけで怪我が治った気分だ……痛みが引いて来た……もう痛く無い……あれ?

「姉ちゃん、ほら。背中に掴まって」

 プロイが背を向けて屈み、私におぶさるように言ってくる来る。
 
 (痛みは無いけど……いきなり怪我が治ったら不自然だよね……)

 大人しくプロイに背負って貰う。

「良い子達だね。お姉さんを大切にね」

「もちろん!」
「……はい」

 エーゲルさんや衛兵の皆さんにお礼を言って、私達は街へ戻った。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

「ニュクス、いつの間に治癒魔法なんて覚えたの?」

「……僕の魔法は姉さんとプロイを幸せにする為にあります。日々の修練は欠かしていません」

 世界から失われた力を家族の為に使う。
 途轍も無い話だけど、気持ちは嬉しかった。

「プロイ、ありがとね。足はもう大丈夫だし誰も見てないから降ろして良いよ」

「俺の力も姉ちゃんとニュクスの為にあるんだ。良い事したご褒美にもう暫く背負ってあげるよ」

 世界を救った程の力を家族の為に使う。
 途方も無い話だけど、やっぱり嬉しかった。

 2人とも本当に優しいのだ。

「よし、じゃあ少し遅くなっちゃったけど美味しいもの食べに行こうか!」

「やった! 肉ね、肉! 行くぞー!」

 プロイが走り出す。ゆ……揺れるルルル!

「プロイ、馬鹿! 姉さんを背負ったまま……あー、もう!」

 賑やかな1日はこうして過ぎて行くのだった。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

「隊長、何ですかそれ? 折れた剣……ですよね」

「ああ。ちょっとね……街で拾ったんだよ。ところでさ、君は剣を素手で叩き折れる? こう、振り下ろされたやつ」

「はは、そんなの出来たらこんな怪我してませんよ。そんな腕があったら超一級の傭兵でも出来るんじゃないですか?」

「……そうだね。にもなれるかも知れないね」

 騎士は折れた剣を灯りに翳して見続けるのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下

akechi
ファンタジー
ルル8歳 赤子の時にはもう孤児院にいた。 孤児院の院長はじめ皆がいい人ばかりなので寂しくなかった。それにいつも孤児院にやってくる男性がいる。何故か私を溺愛していて少々うざい。 それに貴方…国王陛下ですよね? *コメディ寄りです。 不定期更新です!

政治家の娘が悪役令嬢転生 ~前パパの教えで異世界政治をぶっ壊させていただきますわ~

巫叶月良成
ファンタジー
政治家の娘として生まれ、父から様々なことを学んだ少女が異世界の悪徳政治をぶった切る!? //////////////////////////////////////////////////// 悪役令嬢に転生させられた琴音は政治家の娘。 しかしテンプレも何もわからないまま放り出された悪役令嬢の世界で、しかもすでに婚約破棄から令嬢が暗殺された後のお話。 琴音は前世の父親の教えをもとに、口先と策謀で相手を騙し、男を篭絡しながら自分を陥れた相手に復讐し、歪んだ王国の政治ゲームを支配しようという一大謀略劇! ※魔法とかゲーム的要素はありません。恋愛要素、バトル要素も薄め……? ※注意:作者が悪役令嬢知識ほぼゼロで書いてます。こんなの悪役令嬢ものじゃねぇという内容かもしれませんが、ご留意ください。 ※あくまでこの物語はフィクションです。政治家が全部そういう思考回路とかいうわけではないのでこちらもご留意を。 隔日くらいに更新出来たらいいな、の更新です。のんびりお楽しみください。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

処理中です...