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第9話 迷惑な訪問者
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私はノックされたドアを開けて訪問者を確認する。
そこに立っていたのは見知らぬ男性だった。
「あの、どちらさ……」
最後まで言えずに口元を押さえられる。
「おおぅ……当たりだなぁ! 若くてなかなか可愛いじゃねえかおい!」
頭が追いつく前に押し倒される。
しかし次の瞬間、男はドアを割って外へ転がって行く。
「姉ちゃんに何してんだ!」
どうやらプロイに蹴り飛ばされたようで、怒りの収まらない弟はそのまま外へと駆け出して行く。
ニュクスも無言で後を追った。
「ちょっ……2人とも……危ないから……」
立ち上がろうとしたが腰が抜けて力が入らない。
(こんな事くらいで……! 前世では生き死にの戦場だって嫌になる程経験してるのに!)
『無理をするなであるアイリス」
「そうも……言って……いられない!」
私は這いながら外へ出る。
そして驚いた……。
家を取り囲む男達……さっと数えて30人は居る。
「ヒャハァ! 畑の食糧、金、女! ぜ~んぶ寄越せぇ!」
(うわぁ……なんて判りやすい悪党なんだろう……)
さっきは少し怖かったけど、なんだか1周回って呆れが勝った。
身体に力が戻って、私は立ち上がる。
「なんですかあなた方は! うちには盗るような物はありません、お引き取り下さい!」
「いやいや、もし金が無くてもお嬢ちゃんと食糧は頂いてくぜぇ……? おっと、妙な真似したらガキ共をやっちまうからな?」
何人かが弓を引いてプロイとニュクスへ向ける。
「……子供相手に武器を向けて、野盗には最低限の矜持も無いのですか? 脅すなら私に向ければ良いでしょう!」
「野盗扱いか! まあ似たようなもんかねぇ。俺達は傭兵集団『鷹の目』だぁ! わざわざ隣国から遊びに来てやったんだから歓迎してくれや」
説得は中々通用しないかも知れない。
ただ素直にこちらへ武器を向けてくれたのは良かった。
弟達に武器を向けられていると私も冷静には居られないから。
「おい、お前ら……姉ちゃんに何かしたら許さないからな」
プロイが怒りを露わにしたが、その肩をニュクスが叩く。
「もういいプロイ。姉さんに武器を向けた時点で……こいつらに生きる価値は無い」
ニュクスが指を鳴らす。
「あ? 何やって……ゴボッ!」
傭兵達が一人残らず倒れてのたうち回る。
「ニュクス、何したんだ?」
「魔法で喉の奥に小さな水を送り込んで……桶一杯ほどに膨張させただけだ……。お前達、陸で溺れる恐怖を魂に刻んで眠るが良い」
「うわぁ……辛そうだな」
一瞬で全員に……? どれだけ魔法を使えればそんな事が……
(って、そんな場合じゃ無い!)
「ニュクス! ダメ、本当に死んじゃうから」
「……死ぬべきでしょう……こいつらは……姉さんに危害を!」
「仕方ないなぁ。はい!」
プロイが次々と傭兵達の腹部へ拳を当てて行く。
とても痛そうではあるけど、次々と水を吐き出している。
「どう? 楽になった?」
プロイが笑顔で聞くと傭兵達が呻く。
倒れ込んだまま動かない傭兵達の中で、頭目らしい一人がなんとか立ち上がる。
「わ……悪かった……俺達は退くからよ……勘弁してくれや」
(大人しく帰ってくれるなら嬉しいのだけど……)
私は頭目へ歩み寄ってなるべく笑顔で話しかける。
「帰られるのなら何もしません。ただ……ここであった事は誰にも話さないで下さい」
弟達の事が広まるのは良くない。
プロイの方はまだ言い訳が出来ても、ニュクスの魔法を知られると悪用したがる人間に知られないとも限らないから。
とは言え……過激に全員口封じするなんて事も出来ないし……。
「……姉さんの慈悲に感謝するんだな。姉さんが本気になれば……更に恐ろしい事が起きていた」
「うんうん。本当は俺達より怖いんだぞ……俺もニュクスも泣かされるんだからな!」
(……それは悪い事をしたお仕置きにお尻を叩いた時の事を言ってるのかな?)
「ひ……これより酷いって……」
「あ、悪魔だぁぁぁぁ!」
「2度と来るもんか!」
傭兵達はよろけながらも必死に逃げ出して行く。
「誰が悪魔よ!」
怒鳴ってみても逃げ出す彼等の必死さが高まるだけだった。
何だか満足げな弟2人へ歩み寄り……頭を掴む。
「やあやあ、悪魔だよ」
プロイとニュクスが青い顔をする。
……全くもう。
「2人とも、危ない事しちゃダメでしょ。……助けてくれたのは嬉しいけど、2人が怪我したらどうするの。私はその方が辛いんだから……ね」
「うん」
「はい……」
「でも2人とも、ありがとう。気持ちは嬉しかったからね? 可愛い弟達のおかげで、お姉ちゃんは無事でした」
照れ臭そうにする2人を抱き寄せて考える。
(私が迂闊だったから危ない目にあったし、あわせてしまった。2人のためにも私がしっかりしなきゃ)
『ふむ。前世は聖女で生まれ変わって悪魔であるか。やはり君は面白いのである』
『ハク……お昼ご飯抜きにするよ?』
『ゴメンにゃ。ほら、お腹を見せるから許して欲しいニャ!』
こうして想定外の訪問者は帰って行った。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「くそ……あいつらこのままじゃおかねぇ!」
「団長……あいつらは危険ですぜ……もうやめときましょうよぉ。おらぁ溺れ死ぬのはイヤだ」
「馬鹿野郎! ここで退いたらどの道ただじゃ済まねぇんだよ……。くそ、こんな仕事引き受けるんじゃ無かった……」
そこに立っていたのは見知らぬ男性だった。
「あの、どちらさ……」
最後まで言えずに口元を押さえられる。
「おおぅ……当たりだなぁ! 若くてなかなか可愛いじゃねえかおい!」
頭が追いつく前に押し倒される。
しかし次の瞬間、男はドアを割って外へ転がって行く。
「姉ちゃんに何してんだ!」
どうやらプロイに蹴り飛ばされたようで、怒りの収まらない弟はそのまま外へと駆け出して行く。
ニュクスも無言で後を追った。
「ちょっ……2人とも……危ないから……」
立ち上がろうとしたが腰が抜けて力が入らない。
(こんな事くらいで……! 前世では生き死にの戦場だって嫌になる程経験してるのに!)
『無理をするなであるアイリス」
「そうも……言って……いられない!」
私は這いながら外へ出る。
そして驚いた……。
家を取り囲む男達……さっと数えて30人は居る。
「ヒャハァ! 畑の食糧、金、女! ぜ~んぶ寄越せぇ!」
(うわぁ……なんて判りやすい悪党なんだろう……)
さっきは少し怖かったけど、なんだか1周回って呆れが勝った。
身体に力が戻って、私は立ち上がる。
「なんですかあなた方は! うちには盗るような物はありません、お引き取り下さい!」
「いやいや、もし金が無くてもお嬢ちゃんと食糧は頂いてくぜぇ……? おっと、妙な真似したらガキ共をやっちまうからな?」
何人かが弓を引いてプロイとニュクスへ向ける。
「……子供相手に武器を向けて、野盗には最低限の矜持も無いのですか? 脅すなら私に向ければ良いでしょう!」
「野盗扱いか! まあ似たようなもんかねぇ。俺達は傭兵集団『鷹の目』だぁ! わざわざ隣国から遊びに来てやったんだから歓迎してくれや」
説得は中々通用しないかも知れない。
ただ素直にこちらへ武器を向けてくれたのは良かった。
弟達に武器を向けられていると私も冷静には居られないから。
「おい、お前ら……姉ちゃんに何かしたら許さないからな」
プロイが怒りを露わにしたが、その肩をニュクスが叩く。
「もういいプロイ。姉さんに武器を向けた時点で……こいつらに生きる価値は無い」
ニュクスが指を鳴らす。
「あ? 何やって……ゴボッ!」
傭兵達が一人残らず倒れてのたうち回る。
「ニュクス、何したんだ?」
「魔法で喉の奥に小さな水を送り込んで……桶一杯ほどに膨張させただけだ……。お前達、陸で溺れる恐怖を魂に刻んで眠るが良い」
「うわぁ……辛そうだな」
一瞬で全員に……? どれだけ魔法を使えればそんな事が……
(って、そんな場合じゃ無い!)
「ニュクス! ダメ、本当に死んじゃうから」
「……死ぬべきでしょう……こいつらは……姉さんに危害を!」
「仕方ないなぁ。はい!」
プロイが次々と傭兵達の腹部へ拳を当てて行く。
とても痛そうではあるけど、次々と水を吐き出している。
「どう? 楽になった?」
プロイが笑顔で聞くと傭兵達が呻く。
倒れ込んだまま動かない傭兵達の中で、頭目らしい一人がなんとか立ち上がる。
「わ……悪かった……俺達は退くからよ……勘弁してくれや」
(大人しく帰ってくれるなら嬉しいのだけど……)
私は頭目へ歩み寄ってなるべく笑顔で話しかける。
「帰られるのなら何もしません。ただ……ここであった事は誰にも話さないで下さい」
弟達の事が広まるのは良くない。
プロイの方はまだ言い訳が出来ても、ニュクスの魔法を知られると悪用したがる人間に知られないとも限らないから。
とは言え……過激に全員口封じするなんて事も出来ないし……。
「……姉さんの慈悲に感謝するんだな。姉さんが本気になれば……更に恐ろしい事が起きていた」
「うんうん。本当は俺達より怖いんだぞ……俺もニュクスも泣かされるんだからな!」
(……それは悪い事をしたお仕置きにお尻を叩いた時の事を言ってるのかな?)
「ひ……これより酷いって……」
「あ、悪魔だぁぁぁぁ!」
「2度と来るもんか!」
傭兵達はよろけながらも必死に逃げ出して行く。
「誰が悪魔よ!」
怒鳴ってみても逃げ出す彼等の必死さが高まるだけだった。
何だか満足げな弟2人へ歩み寄り……頭を掴む。
「やあやあ、悪魔だよ」
プロイとニュクスが青い顔をする。
……全くもう。
「2人とも、危ない事しちゃダメでしょ。……助けてくれたのは嬉しいけど、2人が怪我したらどうするの。私はその方が辛いんだから……ね」
「うん」
「はい……」
「でも2人とも、ありがとう。気持ちは嬉しかったからね? 可愛い弟達のおかげで、お姉ちゃんは無事でした」
照れ臭そうにする2人を抱き寄せて考える。
(私が迂闊だったから危ない目にあったし、あわせてしまった。2人のためにも私がしっかりしなきゃ)
『ふむ。前世は聖女で生まれ変わって悪魔であるか。やはり君は面白いのである』
『ハク……お昼ご飯抜きにするよ?』
『ゴメンにゃ。ほら、お腹を見せるから許して欲しいニャ!』
こうして想定外の訪問者は帰って行った。
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「くそ……あいつらこのままじゃおかねぇ!」
「団長……あいつらは危険ですぜ……もうやめときましょうよぉ。おらぁ溺れ死ぬのはイヤだ」
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