26 / 74
第26話 黒幕
しおりを挟む
「な、なにこれ?」
響く槌の音、威勢の良い掛け声。
笑顔で手伝うホークさん達も見える。
「え、姉ちゃん知らなかったの?」
プロイがキョトンとした顔で見つめて来る。
知らなかったとは何の事なのか。今まさに建てられていく建築物の事なのか、良い汗を流す職人さん達の事なのか。
「国王の命で傭兵達の住居を建築しているそうです。てっきり姉さんは聞いているものだとばかり……」
黒幕の事だった。
ニュクスも珍しく驚いた顔をしている。
そうだよね。お姉ちゃんも多分そんな顔をしてるよね。
「ふむ、なるほどであるな。あの顔には見覚えがある。吾輩やアイリスが城へ向かう途中で見た団体であるな」
「……あ!」
(そうだ、家を出て暫く進んだ所ですれ違った大荷物の団体……)
そうなると、エーゲルさんと話してすぐにこの団体を送り込んで来た事になる。
(判断も行動も早すぎるんじゃ……ううん、確かに住居が無いと困るし有難いんだけど……)
『はははは、驚かせてごめんね』
レオ陛下の笑顔が思い浮かび、頭を押さえる。
感謝より先に困惑を与えられた衝撃は体験しないと解らない頭痛を与えてくれた。
『折角だから驚かせたかったんだけど、やりすぎたかな』
「ねえ、姉ちゃん。あの人誰?」
「プロイ、私は今戦っているの。何かは判らないけど、何かの感情と」
「アイリス、深呼吸してから振り向くのである」
(プロイだけじゃなくハクまで……今の私にこれ以上の衝撃なんてある訳が)
振り返った私の目に映ったのは笑顔で手を振る黒幕だった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「何も倒れなくても……」
「すみません。私の何かが限界を超えてしまったみたいです」
ニュクスの煎れてくれたお茶を飲みながらレオ陛下と向かい合う。
何というか、信じられない。
お城の馬小屋より狭い我が家に王国の頂点が座り粗茶を飲んでいる。
別に卑下したい訳では無く、事実を並べたらこうなってしまう。
「こちらこそ申し訳なかった。依頼通りに建築が始められたのか確認するのと……君が助けた人達を見ておきたくてね」
微笑みながら優雅にカップを持つレオ陛下を見ていると動揺するだけ損に思えてくる。
悪気なんて微塵も無く、気にかけてくれたのだと判ってしまったから。
「ありがとうございます。陛下の……」
「待った。この格好を見てどう思う?」
いきなり何を……とは思うが見たままの感想なら……
「なんというか、普通ですね。街で見かけそうな……」
「そうでしょ? 供も連れずこんな格好をした王が居ると思うかい?」
居ます。目の前に。
「普通は……いらっしゃらないですよね」
「うんうん。なので今は気軽にレオと呼んでくれ。エーゲルもそうしてくれているから。畏った言葉も無しで」
とても心苦しい要求だけど……ここまでしてくれた相手に応えないのは不誠実だとも思う。
「解りました……レオさん、ありがとうございます。あなたのお陰で凄く助かりました」
「んー、まだ固くないかな?」
「年上を相手にこれ以上は無理です! もう……エーゲルさんに対しても同じ感じなのでこの位で許して頂けると助かります」
「そうか、エーゲルと同じなら仕方ないな」
レオさんは嬉しそうに笑ってお茶を続ける。
「しかし供も連れずに来るとは一国の王としてどうなのであるか?」
いつの間にかレオさんの膝上で丸くなっていたハクが言う。
(……あれも良い不敬なのかな)
「いやいや、一国の王だからこそ変装して一人で来たんだよ。軽々に行動するとアイリスちゃんの迷惑になりかねないからね」
それは、そうかも知れない。
王がよく解らない平民の家に出入りなどしたら混乱を招くのは間違い無い。
それに聖女マリアンヌ達の動きも怪しいと言っていたし……。
「それで、聞きたいんだけど……さっきの縄で縛られていた人達は何かな?」
「っ!」
私は言葉に詰まってしまう。
襲撃者の人達の事を話すべきかどうか……。
レオさんなら正しい答えを教えてくれるのか。
その正しさはあの人達の命を奪う物ではないのか。
部屋に誰かの溜息が聞こえる。
私のものか、レオさんのものか……
「あれはアイリスの命を狙ってきた襲撃者なのである」
「は……ハク!」
「ふむ、なるほど」
レオさんは笑顔を崩す事無く立ち上がり、外へと向かう。
「レオさん!?」
「これは……僕の失態だね」
ドアを開けたレオさんは、腰に下げていた剣を抜いた。
あくまで笑顔のままで。
響く槌の音、威勢の良い掛け声。
笑顔で手伝うホークさん達も見える。
「え、姉ちゃん知らなかったの?」
プロイがキョトンとした顔で見つめて来る。
知らなかったとは何の事なのか。今まさに建てられていく建築物の事なのか、良い汗を流す職人さん達の事なのか。
「国王の命で傭兵達の住居を建築しているそうです。てっきり姉さんは聞いているものだとばかり……」
黒幕の事だった。
ニュクスも珍しく驚いた顔をしている。
そうだよね。お姉ちゃんも多分そんな顔をしてるよね。
「ふむ、なるほどであるな。あの顔には見覚えがある。吾輩やアイリスが城へ向かう途中で見た団体であるな」
「……あ!」
(そうだ、家を出て暫く進んだ所ですれ違った大荷物の団体……)
そうなると、エーゲルさんと話してすぐにこの団体を送り込んで来た事になる。
(判断も行動も早すぎるんじゃ……ううん、確かに住居が無いと困るし有難いんだけど……)
『はははは、驚かせてごめんね』
レオ陛下の笑顔が思い浮かび、頭を押さえる。
感謝より先に困惑を与えられた衝撃は体験しないと解らない頭痛を与えてくれた。
『折角だから驚かせたかったんだけど、やりすぎたかな』
「ねえ、姉ちゃん。あの人誰?」
「プロイ、私は今戦っているの。何かは判らないけど、何かの感情と」
「アイリス、深呼吸してから振り向くのである」
(プロイだけじゃなくハクまで……今の私にこれ以上の衝撃なんてある訳が)
振り返った私の目に映ったのは笑顔で手を振る黒幕だった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「何も倒れなくても……」
「すみません。私の何かが限界を超えてしまったみたいです」
ニュクスの煎れてくれたお茶を飲みながらレオ陛下と向かい合う。
何というか、信じられない。
お城の馬小屋より狭い我が家に王国の頂点が座り粗茶を飲んでいる。
別に卑下したい訳では無く、事実を並べたらこうなってしまう。
「こちらこそ申し訳なかった。依頼通りに建築が始められたのか確認するのと……君が助けた人達を見ておきたくてね」
微笑みながら優雅にカップを持つレオ陛下を見ていると動揺するだけ損に思えてくる。
悪気なんて微塵も無く、気にかけてくれたのだと判ってしまったから。
「ありがとうございます。陛下の……」
「待った。この格好を見てどう思う?」
いきなり何を……とは思うが見たままの感想なら……
「なんというか、普通ですね。街で見かけそうな……」
「そうでしょ? 供も連れずこんな格好をした王が居ると思うかい?」
居ます。目の前に。
「普通は……いらっしゃらないですよね」
「うんうん。なので今は気軽にレオと呼んでくれ。エーゲルもそうしてくれているから。畏った言葉も無しで」
とても心苦しい要求だけど……ここまでしてくれた相手に応えないのは不誠実だとも思う。
「解りました……レオさん、ありがとうございます。あなたのお陰で凄く助かりました」
「んー、まだ固くないかな?」
「年上を相手にこれ以上は無理です! もう……エーゲルさんに対しても同じ感じなのでこの位で許して頂けると助かります」
「そうか、エーゲルと同じなら仕方ないな」
レオさんは嬉しそうに笑ってお茶を続ける。
「しかし供も連れずに来るとは一国の王としてどうなのであるか?」
いつの間にかレオさんの膝上で丸くなっていたハクが言う。
(……あれも良い不敬なのかな)
「いやいや、一国の王だからこそ変装して一人で来たんだよ。軽々に行動するとアイリスちゃんの迷惑になりかねないからね」
それは、そうかも知れない。
王がよく解らない平民の家に出入りなどしたら混乱を招くのは間違い無い。
それに聖女マリアンヌ達の動きも怪しいと言っていたし……。
「それで、聞きたいんだけど……さっきの縄で縛られていた人達は何かな?」
「っ!」
私は言葉に詰まってしまう。
襲撃者の人達の事を話すべきかどうか……。
レオさんなら正しい答えを教えてくれるのか。
その正しさはあの人達の命を奪う物ではないのか。
部屋に誰かの溜息が聞こえる。
私のものか、レオさんのものか……
「あれはアイリスの命を狙ってきた襲撃者なのである」
「は……ハク!」
「ふむ、なるほど」
レオさんは笑顔を崩す事無く立ち上がり、外へと向かう。
「レオさん!?」
「これは……僕の失態だね」
ドアを開けたレオさんは、腰に下げていた剣を抜いた。
あくまで笑顔のままで。
0
あなたにおすすめの小説
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
聖女の紋章 転生?少女は女神の加護と前世の知識で無双する わたしは聖女ではありません。公爵令嬢です!
幸之丞
ファンタジー
2023/11/22~11/23 女性向けホットランキング1位
2023/11/24 10:00 ファンタジーランキング1位 ありがとうございます。
「うわ~ 私を捨てないでー!」
声を出して私を捨てようとする父さんに叫ぼうとしました・・・
でも私は意識がはっきりしているけれど、体はまだ、生れて1週間くらいしか経っていないので
「ばぶ ばぶうう ばぶ だああ」
くらいにしか聞こえていないのね?
と思っていたけど ササッと 捨てられてしまいました~
誰か拾って~
私は、陽菜。数ヶ月前まで、日本で女子高生をしていました。
将来の為に良い大学に入学しようと塾にいっています。
塾の帰り道、車の事故に巻き込まれて、気づいてみたら何故か新しいお母さんのお腹の中。隣には姉妹もいる。そう双子なの。
私達が生まれたその後、私は魔力が少ないから、伯爵の娘として恥ずかしいとかで、捨てられた・・・
↑ここ冒頭
けれども、公爵家に拾われた。ああ 良かった・・・
そしてこれから私は捨てられないように、前世の記憶を使って知識チートで家族のため、公爵領にする人のために領地を豊かにします。
「この子ちょっとおかしいこと言ってるぞ」 と言われても、必殺 「女神様のお告げです。昨夜夢にでてきました」で大丈夫。
だって私には、愛と豊穣の女神様に愛されている証、聖女の紋章があるのです。
この物語は、魔法と剣の世界で主人公のエルーシアは魔法チートと知識チートで領地を豊かにするためにスライムや古竜と仲良くなって、お力をちょっと借りたりもします。
果たして、エルーシアは捨てられた本当の理由を知ることが出来るのか?
さあ! 物語が始まります。
他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!
七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
異世界と地球がダンジョンで繋がった ー異世界転移者の私ー
白木夏
ファンタジー
2040年の初春、突如として地球上の主要都市に謎のダンジョンが出現した。
その特異性は明らかで、人口密集地を中心に出現し、未開の地には一切現れないという法則性を帯びていた。
人々は恐怖に震えつつも、未知なる存在に対する好奇心を抑えきれなかった。
異世界転移した最強の主人公のほのぼのライフ
主人公はあまり戦ったりはしません。
辺境で静かに暮らしていた俺、実は竜王の末裔だったらしく気づけば国ができていた
平木明日香
ファンタジー
はるか五億四千万年前、この星は六柱の竜王によって治められていた。火・水・風・土・闇・光――それぞれの力が均衡を保ち、世界は一つの大きな生命のように静かに巡っていた。だが星の異変をきっかけに竜の力は揺らぎ、その欠片は“魂”となって新たな生命に宿る。やがて誕生した人類は文明を築き、竜の力を利用し、ついには六大陸そのものを巨大な封印装置へと変えて竜王を眠りにつかせた。
それから幾千年。
現代では六つの大国がそれぞれ封印を管理し、かろうじて世界の均衡を保っている。しかし各地で異常な魔獣が出現し、封印の揺らぎが噂されはじめていた。
そんな世界を気ままに旅する青年がいる。名はブラック・ドラグニル。三年前からハンターとして魔獣を討伐し、その肉を味わいながら各地を渡り歩く放浪者だ。規格外の実力を持ちながら名誉や地位には興味がなく、ただ「世界のうまいものを食べ尽くす」ことを楽しみに生きている。
ある日、光の王国ルミナリア近郊で王女ユリアナが大型魔獣に襲われる事件が起きる。死を覚悟した騎士団の前に現れたブラックは、その怪物をわずか数十秒で討ち倒す。彼にとっては雑魚同然だったが、その圧倒的な強さは王国中に知れ渡る。王女は自由に生きる彼の姿に心を奪われるが、ブラックは次の目的地へ向かう計画を練るばかり。
だが彼自身はまだ知らない。
自らが竜族の末裔であり、世界を再び“統合”へ導く鍵となる存在であることを。
竜の封印が揺らぐとき、自由を愛する青年は世界の命運を左右する選択を迫られる。
これは、竜の記憶と人の魂が交錯する壮大なファンタジー叙事譚である。
神託が下りまして、今日から神の愛し子です! 最強チート承りました。では、我慢はいたしません!
しののめ あき
ファンタジー
旧題:最強チート承りました。では、我慢はいたしません!
神託が下りまして、今日から神の愛し子です!〜最強チート承りました!では、我慢はいたしません!〜
と、いうタイトルで12月8日にアルファポリス様より書籍発売されます!
3万字程の加筆と修正をさせて頂いております。
ぜひ、読んで頂ければ嬉しいです!
⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
非常に申し訳ない…
と、言ったのは、立派な白髭の仙人みたいな人だろうか?
色々手違いがあって…
と、目を逸らしたのは、そちらのピンク色の髪の女の人だっけ?
代わりにといってはなんだけど…
と、眉を下げながら申し訳なさそうな顔をしたのは、手前の黒髪イケメン?
私の周りをぐるっと8人に囲まれて、謝罪を受けている事は分かった。
なんの謝罪だっけ?
そして、最後に言われた言葉
どうか、幸せになって(くれ)
んん?
弩級最強チート公爵令嬢が爆誕致します。
※同タイトルの掲載不可との事で、1.2.番外編をまとめる作業をします
完了後、更新開始致しますのでよろしくお願いします
田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛
タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】
田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる