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第26話 黒幕
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「な、なにこれ?」
響く槌の音、威勢の良い掛け声。
笑顔で手伝うホークさん達も見える。
「え、姉ちゃん知らなかったの?」
プロイがキョトンとした顔で見つめて来る。
知らなかったとは何の事なのか。今まさに建てられていく建築物の事なのか、良い汗を流す職人さん達の事なのか。
「国王の命で傭兵達の住居を建築しているそうです。てっきり姉さんは聞いているものだとばかり……」
黒幕の事だった。
ニュクスも珍しく驚いた顔をしている。
そうだよね。お姉ちゃんも多分そんな顔をしてるよね。
「ふむ、なるほどであるな。あの顔には見覚えがある。吾輩やアイリスが城へ向かう途中で見た団体であるな」
「……あ!」
(そうだ、家を出て暫く進んだ所ですれ違った大荷物の団体……)
そうなると、エーゲルさんと話してすぐにこの団体を送り込んで来た事になる。
(判断も行動も早すぎるんじゃ……ううん、確かに住居が無いと困るし有難いんだけど……)
『はははは、驚かせてごめんね』
レオ陛下の笑顔が思い浮かび、頭を押さえる。
感謝より先に困惑を与えられた衝撃は体験しないと解らない頭痛を与えてくれた。
『折角だから驚かせたかったんだけど、やりすぎたかな』
「ねえ、姉ちゃん。あの人誰?」
「プロイ、私は今戦っているの。何かは判らないけど、何かの感情と」
「アイリス、深呼吸してから振り向くのである」
(プロイだけじゃなくハクまで……今の私にこれ以上の衝撃なんてある訳が)
振り返った私の目に映ったのは笑顔で手を振る黒幕だった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「何も倒れなくても……」
「すみません。私の何かが限界を超えてしまったみたいです」
ニュクスの煎れてくれたお茶を飲みながらレオ陛下と向かい合う。
何というか、信じられない。
お城の馬小屋より狭い我が家に王国の頂点が座り粗茶を飲んでいる。
別に卑下したい訳では無く、事実を並べたらこうなってしまう。
「こちらこそ申し訳なかった。依頼通りに建築が始められたのか確認するのと……君が助けた人達を見ておきたくてね」
微笑みながら優雅にカップを持つレオ陛下を見ていると動揺するだけ損に思えてくる。
悪気なんて微塵も無く、気にかけてくれたのだと判ってしまったから。
「ありがとうございます。陛下の……」
「待った。この格好を見てどう思う?」
いきなり何を……とは思うが見たままの感想なら……
「なんというか、普通ですね。街で見かけそうな……」
「そうでしょ? 供も連れずこんな格好をした王が居ると思うかい?」
居ます。目の前に。
「普通は……いらっしゃらないですよね」
「うんうん。なので今は気軽にレオと呼んでくれ。エーゲルもそうしてくれているから。畏った言葉も無しで」
とても心苦しい要求だけど……ここまでしてくれた相手に応えないのは不誠実だとも思う。
「解りました……レオさん、ありがとうございます。あなたのお陰で凄く助かりました」
「んー、まだ固くないかな?」
「年上を相手にこれ以上は無理です! もう……エーゲルさんに対しても同じ感じなのでこの位で許して頂けると助かります」
「そうか、エーゲルと同じなら仕方ないな」
レオさんは嬉しそうに笑ってお茶を続ける。
「しかし供も連れずに来るとは一国の王としてどうなのであるか?」
いつの間にかレオさんの膝上で丸くなっていたハクが言う。
(……あれも良い不敬なのかな)
「いやいや、一国の王だからこそ変装して一人で来たんだよ。軽々に行動するとアイリスちゃんの迷惑になりかねないからね」
それは、そうかも知れない。
王がよく解らない平民の家に出入りなどしたら混乱を招くのは間違い無い。
それに聖女マリアンヌ達の動きも怪しいと言っていたし……。
「それで、聞きたいんだけど……さっきの縄で縛られていた人達は何かな?」
「っ!」
私は言葉に詰まってしまう。
襲撃者の人達の事を話すべきかどうか……。
レオさんなら正しい答えを教えてくれるのか。
その正しさはあの人達の命を奪う物ではないのか。
部屋に誰かの溜息が聞こえる。
私のものか、レオさんのものか……
「あれはアイリスの命を狙ってきた襲撃者なのである」
「は……ハク!」
「ふむ、なるほど」
レオさんは笑顔を崩す事無く立ち上がり、外へと向かう。
「レオさん!?」
「これは……僕の失態だね」
ドアを開けたレオさんは、腰に下げていた剣を抜いた。
あくまで笑顔のままで。
響く槌の音、威勢の良い掛け声。
笑顔で手伝うホークさん達も見える。
「え、姉ちゃん知らなかったの?」
プロイがキョトンとした顔で見つめて来る。
知らなかったとは何の事なのか。今まさに建てられていく建築物の事なのか、良い汗を流す職人さん達の事なのか。
「国王の命で傭兵達の住居を建築しているそうです。てっきり姉さんは聞いているものだとばかり……」
黒幕の事だった。
ニュクスも珍しく驚いた顔をしている。
そうだよね。お姉ちゃんも多分そんな顔をしてるよね。
「ふむ、なるほどであるな。あの顔には見覚えがある。吾輩やアイリスが城へ向かう途中で見た団体であるな」
「……あ!」
(そうだ、家を出て暫く進んだ所ですれ違った大荷物の団体……)
そうなると、エーゲルさんと話してすぐにこの団体を送り込んで来た事になる。
(判断も行動も早すぎるんじゃ……ううん、確かに住居が無いと困るし有難いんだけど……)
『はははは、驚かせてごめんね』
レオ陛下の笑顔が思い浮かび、頭を押さえる。
感謝より先に困惑を与えられた衝撃は体験しないと解らない頭痛を与えてくれた。
『折角だから驚かせたかったんだけど、やりすぎたかな』
「ねえ、姉ちゃん。あの人誰?」
「プロイ、私は今戦っているの。何かは判らないけど、何かの感情と」
「アイリス、深呼吸してから振り向くのである」
(プロイだけじゃなくハクまで……今の私にこれ以上の衝撃なんてある訳が)
振り返った私の目に映ったのは笑顔で手を振る黒幕だった。
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「何も倒れなくても……」
「すみません。私の何かが限界を超えてしまったみたいです」
ニュクスの煎れてくれたお茶を飲みながらレオ陛下と向かい合う。
何というか、信じられない。
お城の馬小屋より狭い我が家に王国の頂点が座り粗茶を飲んでいる。
別に卑下したい訳では無く、事実を並べたらこうなってしまう。
「こちらこそ申し訳なかった。依頼通りに建築が始められたのか確認するのと……君が助けた人達を見ておきたくてね」
微笑みながら優雅にカップを持つレオ陛下を見ていると動揺するだけ損に思えてくる。
悪気なんて微塵も無く、気にかけてくれたのだと判ってしまったから。
「ありがとうございます。陛下の……」
「待った。この格好を見てどう思う?」
いきなり何を……とは思うが見たままの感想なら……
「なんというか、普通ですね。街で見かけそうな……」
「そうでしょ? 供も連れずこんな格好をした王が居ると思うかい?」
居ます。目の前に。
「普通は……いらっしゃらないですよね」
「うんうん。なので今は気軽にレオと呼んでくれ。エーゲルもそうしてくれているから。畏った言葉も無しで」
とても心苦しい要求だけど……ここまでしてくれた相手に応えないのは不誠実だとも思う。
「解りました……レオさん、ありがとうございます。あなたのお陰で凄く助かりました」
「んー、まだ固くないかな?」
「年上を相手にこれ以上は無理です! もう……エーゲルさんに対しても同じ感じなのでこの位で許して頂けると助かります」
「そうか、エーゲルと同じなら仕方ないな」
レオさんは嬉しそうに笑ってお茶を続ける。
「しかし供も連れずに来るとは一国の王としてどうなのであるか?」
いつの間にかレオさんの膝上で丸くなっていたハクが言う。
(……あれも良い不敬なのかな)
「いやいや、一国の王だからこそ変装して一人で来たんだよ。軽々に行動するとアイリスちゃんの迷惑になりかねないからね」
それは、そうかも知れない。
王がよく解らない平民の家に出入りなどしたら混乱を招くのは間違い無い。
それに聖女マリアンヌ達の動きも怪しいと言っていたし……。
「それで、聞きたいんだけど……さっきの縄で縛られていた人達は何かな?」
「っ!」
私は言葉に詰まってしまう。
襲撃者の人達の事を話すべきかどうか……。
レオさんなら正しい答えを教えてくれるのか。
その正しさはあの人達の命を奪う物ではないのか。
部屋に誰かの溜息が聞こえる。
私のものか、レオさんのものか……
「あれはアイリスの命を狙ってきた襲撃者なのである」
「は……ハク!」
「ふむ、なるほど」
レオさんは笑顔を崩す事無く立ち上がり、外へと向かう。
「レオさん!?」
「これは……僕の失態だね」
ドアを開けたレオさんは、腰に下げていた剣を抜いた。
あくまで笑顔のままで。
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