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第34話 夜明け
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私とハクは表向きは無難に話を終わらせて、就寝する事にした。
エーゲルさんと陛下の判断を待って出来ることをしよう、と。
私は短めの仮眠を取った後、静かに準備を始める。
北の……ヴォラスを目指す為に。
「ハク、準備が出来たよ」
「うむ……本当に良いのであるな?」
私は迷わず頷く。心配が無い訳では無い。
それでも足を止める理由にはならない。
「旅人のフリをして国境を越えたいけど、うまく行くかな?」
「難しい所である。鷹の目の一件で何処まで北が警戒しているかによるのである」
シルバと荷馬車を使って商人のフリでも出来たら良かったけど、それでは街まで野菜を売りに行けなくなり弟達が困ってしまう。
「旅人のフリが出来ない場合は……あ、そうだ。ハクを売りに来たとかどうかな?」
「家畜扱いニャ!? まあ、それで通れるならそれでも良いのである」
私は荷物を背負って家を出る。
書き置きはしておいたしお金も置いてきた。
野菜の売り先も取引も何度も街まで一緒に行っているから2人なら大丈夫。
まだ日が昇らない静かな時間、物音を立てないように……
「ニャ!」
いきなりハクが声を上げたので驚いて飛び上がりそうになる。
振り返った私の目に映ったのは首後ろを持たれて暴れるハク。そんなハクを持ち上げているのは……プロイだった。
「プロイ……」
「姉ちゃん、黙って行こうとするのは酷いよ。モフモフの友達を助けに行くんだろ? 俺だって家族なんだから一緒に行くよ」
「ダメよプロイ! 遊びに行くんじゃないんだから……」
「遊びじゃ無いのを解っていないのは姉さんの方です」
私は声のした方向へと視線を上げた。
「ニュクス……どうして屋根の上に……」
「僕の怒りを伝える為に……姉さんを見下ろすという最大禁忌のひとつをもって表現しました。僕はこの位怒っているのです」
……正直解らないけど、怒っているのは理解できた。
「聖獣をどうにかしようという不埒な連中が国境を注視していない訳がありません。何かあった時にモフモフだけで姉さんを守れるんですか?」
「そうならない為に色々と考えて……」
「姉ちゃん、逆の立場だったら大人しく家で待ってるの? 俺やニュクスが危ない所に行くって知っても」
それは……狡い。何も言えなくなってしまう。
「麗しい姉弟愛だけど、少し待って欲しいかな」
更にこの場への参加者が増えてしまう。
音も立てずに歩いてくるのはエーゲルさんだった。
「エーゲルさん!? こんな朝早くに……」
どうしたのか、とは続けられない。
気付いた時にはエーゲルさんが目の前に居て、その手には剣が握られていた。
但しその剣は半ばで折れている。
「兄ちゃん、剣なんか持ってどうするつもりなのさ?」
プロイの手には折れた先の剣が握られている。
「君が剣を折るのを見るのは2度目だね」
薄く笑ったエーゲルさんが折れた剣を捨て、腰に差していた鞘もすてる。
代わりに背中に背負っていた剣を抜いて構える。
「陛下の命により……悪いが邪魔させてもらうよ」
そう言って、私達の前に立ちはだかった。
エーゲルさんと陛下の判断を待って出来ることをしよう、と。
私は短めの仮眠を取った後、静かに準備を始める。
北の……ヴォラスを目指す為に。
「ハク、準備が出来たよ」
「うむ……本当に良いのであるな?」
私は迷わず頷く。心配が無い訳では無い。
それでも足を止める理由にはならない。
「旅人のフリをして国境を越えたいけど、うまく行くかな?」
「難しい所である。鷹の目の一件で何処まで北が警戒しているかによるのである」
シルバと荷馬車を使って商人のフリでも出来たら良かったけど、それでは街まで野菜を売りに行けなくなり弟達が困ってしまう。
「旅人のフリが出来ない場合は……あ、そうだ。ハクを売りに来たとかどうかな?」
「家畜扱いニャ!? まあ、それで通れるならそれでも良いのである」
私は荷物を背負って家を出る。
書き置きはしておいたしお金も置いてきた。
野菜の売り先も取引も何度も街まで一緒に行っているから2人なら大丈夫。
まだ日が昇らない静かな時間、物音を立てないように……
「ニャ!」
いきなりハクが声を上げたので驚いて飛び上がりそうになる。
振り返った私の目に映ったのは首後ろを持たれて暴れるハク。そんなハクを持ち上げているのは……プロイだった。
「プロイ……」
「姉ちゃん、黙って行こうとするのは酷いよ。モフモフの友達を助けに行くんだろ? 俺だって家族なんだから一緒に行くよ」
「ダメよプロイ! 遊びに行くんじゃないんだから……」
「遊びじゃ無いのを解っていないのは姉さんの方です」
私は声のした方向へと視線を上げた。
「ニュクス……どうして屋根の上に……」
「僕の怒りを伝える為に……姉さんを見下ろすという最大禁忌のひとつをもって表現しました。僕はこの位怒っているのです」
……正直解らないけど、怒っているのは理解できた。
「聖獣をどうにかしようという不埒な連中が国境を注視していない訳がありません。何かあった時にモフモフだけで姉さんを守れるんですか?」
「そうならない為に色々と考えて……」
「姉ちゃん、逆の立場だったら大人しく家で待ってるの? 俺やニュクスが危ない所に行くって知っても」
それは……狡い。何も言えなくなってしまう。
「麗しい姉弟愛だけど、少し待って欲しいかな」
更にこの場への参加者が増えてしまう。
音も立てずに歩いてくるのはエーゲルさんだった。
「エーゲルさん!? こんな朝早くに……」
どうしたのか、とは続けられない。
気付いた時にはエーゲルさんが目の前に居て、その手には剣が握られていた。
但しその剣は半ばで折れている。
「兄ちゃん、剣なんか持ってどうするつもりなのさ?」
プロイの手には折れた先の剣が握られている。
「君が剣を折るのを見るのは2度目だね」
薄く笑ったエーゲルさんが折れた剣を捨て、腰に差していた鞘もすてる。
代わりに背中に背負っていた剣を抜いて構える。
「陛下の命により……悪いが邪魔させてもらうよ」
そう言って、私達の前に立ちはだかった。
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