転生聖女は休まらない 〜スローライフがしたいのに弟2人が自重しない件〜

花月風流

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第43話 花

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 最後の杭が砕けた瞬間、眩しい光が広場を覆い……伸ばし切った私の掌の上には小さな聖獣が乗っていた。

「お姉様、やりましたね!」

「うん、ローサありがとう」

 ローサの背中から脚を下ろし、その背中を払う。
 私の手を取って立ち上がったローサは、私の手の中で動かないブーちゃんを見て息を吐く。

「聖獣様が……」

「大丈夫、これが普段の大きさだし……ちゃんと生きてるよ」

 僅かに身動ぎしたブーちゃんを見てローサが抱き付いて来る。
 私はその頭を撫でてから、広場へ視線を戻す。
 まだ全てが終わった訳じゃ無い。

「ローサ、ブーちゃんをお願い」

 彼女の手に眠ったままの聖獣を託して、私は振り返る。
 元の大きさに戻り大の字で地面に伏しているハクがいた。

「ハク、お疲れ様。そのまま休んでいてね」

「……すまんのである」

 一度だけハクの頭を撫で、弟達の元へと駆ける。

「プロイ! 大丈夫……みたいね」

「当たり前だろ~。俺が負ける訳無いじゃん!」

 頭の後ろで手を組んだプロイは、積み重なり気絶しているらしい兵達の前で笑顔を見せている。
 その足元には縄で縛られたデズンの姿もあった。

 (良かった……怪我も無いみたいだし、あとは……)

 離れたところで向かい合うニュクスとローブ姿の人物が見える。

「ニュクス!」

「……心配ありません」

 静かな声音で答えるニュクスの前でローブ姿の人物が膝をつく。

「つよ……過ぎる……人間の……域を超えてる」

「僕に勝てないのでは姉さんの足元にも及ばないな。さあ、降伏か死か……好きな方を選べ……」

「……私は私の仕事を全うする……」

「なら……これで終わりだ」

 ニュクスの眼前に鋭利な氷柱が現れ、ローブ姿の人物へと襲い掛かる。
 恐らく本当に殺したりしないと私には解る……それでも恐ろしい魔法だった。

 しかし、その魔法は相手のかなり手前で停止する。
 ローブ姿の人物がフードを脱いだ事にニュクスが動揺したのだ。

「えっ……」

 私も動揺して、それが声に出てしまう。
 だって……その姿は……世界でも珍しいとされる純粋な白髪で……

「姉さん……?」

 ニュクスの声が困惑を伝えてくる。
 それは無理もないと思う。相手の姿が私そっくりだったのだから。

「全ては神の願いのままに」

 そう言った私そっくりの彼女は一足で広場中央の台に飛び乗ると、膝をつき祈るように指を組んだ。

「な……どこにこんな魔力が! 命と引き換えに街ごと全員消し飛ばすつもりか……!」

 ニュクスの黒い瞳が金色へ変化する。
 膨大な魔力を使って抑え込もうとしているのが伝わってくる……

「プロイ! 姉さんを連れて離れろ……これは発動したら止められない類の物だ……完全には抑え込めない」

「ニュクスだけ置いていけるか! 俺がお前の盾になるから頑張れ!」

「馬鹿、そんな事言ってる場合じゃ……」

 庇い合い、言い争う弟達の前へと進み出て、私も目を閉じて指を組む。

「姉ちゃん! 逃げて!」
「姉さん!」

 叫ぶ弟達と対照的に、自分の心がなぜか穏やかになる。
 根拠なんて無いし、頼りになる神様なんて居ない事も知っている。それでも……

「大丈夫。きっと、大丈夫」

「お姉様! 聖獣様がお姉様の所に連れて行けと……!」

 ローサの声に目を開ける。
 私の横に膝をついた彼女の手には、目を覚ました聖獣が居て……

「ぐ……ダメだ……もう爆発する……」

 ありがとうニュクス。ここからは私の……

「アリス、ごめんね。一杯、迷惑、ね?」

「ううん。ブーちゃんが無事で……ちゃんと会えて良かった。あとね、今はアイリスという名前になったの」

「アイリス、良い、名前、ね。私と、また、友達、なって?」

「……また大変な目に遭うかも知れないよ?」

「だいじょぶ、ね? 今度は、アイリス、私が、護るの」

「ありがとう、ブーちゃん……」

 ブーちゃんの頭に左手で触れる。

『聖獣ブー、アイリス、へ……我が力、を捧げ、共に歩……むを誓う』

 聖女の印である四葉の1枚が黒く染まり光を放つ。

「僕もまだ……修練が足りなかったか……」

 ニュクスの膝が折れ、地面に手をつく。
 私やニュクス、ローサを護るような位置にプロイが立つ。

「っし、かかって来ーい!」

 プロイの声と共に、広場の台を中心に爆発が起こった。

 ニュクスが肩で息をして、両手を挙げたプロイが目を見開いている。
 私に縋り付くローサと、頭を抱えて伏せている街の人達も見える。

 その視線の先、台が有った場所を包み込むように、薄桃色の花びらが重なったように見える球体がある。

 ブーちゃんの持つ力、結界や盾を生み出す聖獣の力による物だった。
 微かに透けて見える花の結界は全ての爆発をその内へ抑え込み……花が散るようにハラハラと消えて行った。

「上手に、できた?」
「……最高だよ、ブーちゃん」

 私の指と小さな聖獣の手が打ち合わされた。
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