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第66話 いつの間にかの出会い
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「いやあ、今日も飯が美味いですね!」
「そりゃアイリス様が作って下さったからだろ」
「違え無ぇや」
笑顔で食事する『鷹の目』の皆や職人さん達を見て、私も笑みが漏れる。
家に帰ってきて早ひと月ほどになる。
以前と少しばかり……いや、結構形が変わったものの大切な日常が続いていた。
「しかし、ちょっとした街みたいになりやしたね。商店を出したいって申し入れもあるんでしょう?」
ホークさんの問いかけに頷いて返す。
そういった事への対応は私の独断で構わないとエーゲルさんは言ってくれていたけど、私なりの見解を加えて手紙に纏めた物を王都に送っている。
「王都にお店を持ってる商人さんが支店を出したい、とかだと簡単に判断も出来るんですけど。他国から旅をして来た行商人の方や、私の知らない街の商人さんだと判断に迷ってしまって……」
職人さん達もうんうんと目を閉じて頷いている。
「偽聖女やら何やら不穏な奴らも居やすしねぇ……他国の間者も居ないとも限りやせんから、身元がはっきりしてない相手は受け入れるのも考えもんでさぁ」
「そうなんですよね。でも……」
私が視線を向けた先には昼なのに屋根付きの休憩所で横たわる女性と、その横に座りパンを齧る少女が見える。
「ああ……そうですね。無理な行商して身体を壊しちまったらしいですし……休んで良くなりゃいいんですが。食事から薬まで聖女様の世話になっちまってるからって、涙流してやしたぜ。ああいうのは……見捨てられやせんか?」
「……どうかな? 私だって自分達の幸せを守るためには冷酷な判断を……」
「あ~、無理無理。ねーちゃんにそんな事が出来るわけねーし」
(むぅ……耳が良いなぁ)
その休憩所の方から、手を顔の前でヒラヒラさせながら歩いて来るのはプロイだった。
彼には親子の元まで食事を運んで貰っていたのだ。
私が直接行くと……何だか泣かれてしまうのでプロイにお願いしている。
「どう? 少しは良くなってるかな?」
「ん~……母ちゃんの方はまだ身体を起こすのも辛そうかな。娘の方は食欲一杯だから、パンとスープじゃもう足りないかも」
「そっか。それだけ食べれるようになったなら、女の子の方はお肉とか出してあげても……なんですか?」
頬に手をあてて思案していると、ニヤニヤ笑うホークさんの顔が目に入った。
彼は朝食の残りを飲み込むと笑いながら立ち上がる。
「いやいや、我等が聖女様は冷酷とは程遠いなあ、とね。御馳走さんでした。う~し、野郎共、今日も働くぞぉ!」
……流石に小さい子供を連れて身体を壊してしまった人を追い出したりは出来ないと思う。
別に私じゃなくても、だ。
「おっちゃんも姉ちゃんの事が解ってきたなぁ。いてっ」
生意気な顔をしているプロイの額を指で弾いていると、どうしてももう一人の弟であるニュクスの事が心配になる。
「ちゃんとご飯食べたかな。というか、そもそもちゃんと寝坊せず起きれてるのかな」
「ん? ニュクスの事かぁ。大丈夫じゃない? 一緒に居るヘルムスがしっかりしてるし」
「そう、ね。2人とも陛下に失礼な事してないと良いんだけど」
プロイと双子で私の弟であるニュクス。
そして前世から私を待ち続けていた魔人ヘルムス。
今この2人は家を離れて王都に居る。というのも……
『デュシスは君達魔人とも共存出来ることを他国に示したい。もし他国に隠れて生き辛い思いをしている魔人がいるのなら我が国で保護しても良い』
そう言ったレオ陛下に請われて、他国との話し合いや魔人探しの計画を立てるために王都へ向かったのだ。
とはいえ……
「簡単に世界が認めてくれたり隠れている魔人が出てきたりもしないよね……」
北の共和国は恐らく大丈夫。
一旦の現状報告と、移住……では無いがここに暫く住むための荷物を取りにローサが北へと帰国している。
彼女も彼女の父である共和国代表も頭の柔らかい考え方をする人達だし、他者に対して友好的だと思う。議会も恐らく話し合えば納得してくれるだろうと聞いている。
南は不明瞭だけど……東は絶対に難航すると考えられる。
200年前に一番魔族との争いが激化していた地であり、現在でも魔王や魔人に対しての軍備を怠らないような国だから。
(隠れてる魔人達が居たとして……数も解らないし居場所も解らない。そして、ヘルムス達のように友好的に出来るかも判らないから簡単じゃ無いよね)
「きゃー!」
高い悲鳴が聞こえて思考に沈んでいた意識が浮上する。
視線を上げると例の女の子とプロイ、更に魔人バイアンが追いかけっこをして遊んでいる所だった。
「なんだ、びっくりした……まったくもう。プロイ、バイアン! まだ本調子じゃ無さそうだから無理はしないでよ~」
今の内に少し様子を見ようと、寝込んだままの母親の方へと歩みを進める。
「あの様子なら女の子の方はもう大丈夫かな。後はお母さんの様子を……」
「大丈夫でしょうとも」
「うわっ!?」
いきなり耳元で声がして驚いた。
いつの間にかバイアンが此方に来ていて、私と並んでいたのだ。
「ああ、驚かせてしまってすみません」
魔人は……やはり人間と比較して強い。魔力も身体能力も……
立ち止まって動悸と荒れた息を整えていると、バイアンが申し訳なさげに頭を掻きながら指を指す。
「ただ、俺は聖女様に何も無いようちゃんと護衛しろと、ヘルムスと弟様に言われてるもんで……」
弟様……プロイ? それともニュクスだろうか?
それとバイアンが指差す母親に何の関係が……
「弱ってはいますが魔人ですからな。俺かプロイ坊ちゃんが近くに居ない時は警戒して下さい」
「ん?」
何かとんでもない事をさらっと言われたような?
「まじん?」
「ええ」
当たり前のような顔でバイアンが頷く。
指した指はそのままに。
「あれは魔人です。人間に擬態してますし、敵意は無いようですが」
私の口は開いたまま塞がらなかった。
いや、そういうの気付いたなら直ぐ言って欲しかったなとか、言いたい事は色々あるんだけど!
「まじん……」
居場所も解らないし、友好的に出来るかも解らない……かぁ。
ほんの先程に自分で思っていた事を振り返る。
(普通に出会っちゃったし)
「きゃー!」
「まてまてー」
(普通に仲良さそうだし)
頭を抱える私をよそに、追いかけっこは続いていた。
「そりゃアイリス様が作って下さったからだろ」
「違え無ぇや」
笑顔で食事する『鷹の目』の皆や職人さん達を見て、私も笑みが漏れる。
家に帰ってきて早ひと月ほどになる。
以前と少しばかり……いや、結構形が変わったものの大切な日常が続いていた。
「しかし、ちょっとした街みたいになりやしたね。商店を出したいって申し入れもあるんでしょう?」
ホークさんの問いかけに頷いて返す。
そういった事への対応は私の独断で構わないとエーゲルさんは言ってくれていたけど、私なりの見解を加えて手紙に纏めた物を王都に送っている。
「王都にお店を持ってる商人さんが支店を出したい、とかだと簡単に判断も出来るんですけど。他国から旅をして来た行商人の方や、私の知らない街の商人さんだと判断に迷ってしまって……」
職人さん達もうんうんと目を閉じて頷いている。
「偽聖女やら何やら不穏な奴らも居やすしねぇ……他国の間者も居ないとも限りやせんから、身元がはっきりしてない相手は受け入れるのも考えもんでさぁ」
「そうなんですよね。でも……」
私が視線を向けた先には昼なのに屋根付きの休憩所で横たわる女性と、その横に座りパンを齧る少女が見える。
「ああ……そうですね。無理な行商して身体を壊しちまったらしいですし……休んで良くなりゃいいんですが。食事から薬まで聖女様の世話になっちまってるからって、涙流してやしたぜ。ああいうのは……見捨てられやせんか?」
「……どうかな? 私だって自分達の幸せを守るためには冷酷な判断を……」
「あ~、無理無理。ねーちゃんにそんな事が出来るわけねーし」
(むぅ……耳が良いなぁ)
その休憩所の方から、手を顔の前でヒラヒラさせながら歩いて来るのはプロイだった。
彼には親子の元まで食事を運んで貰っていたのだ。
私が直接行くと……何だか泣かれてしまうのでプロイにお願いしている。
「どう? 少しは良くなってるかな?」
「ん~……母ちゃんの方はまだ身体を起こすのも辛そうかな。娘の方は食欲一杯だから、パンとスープじゃもう足りないかも」
「そっか。それだけ食べれるようになったなら、女の子の方はお肉とか出してあげても……なんですか?」
頬に手をあてて思案していると、ニヤニヤ笑うホークさんの顔が目に入った。
彼は朝食の残りを飲み込むと笑いながら立ち上がる。
「いやいや、我等が聖女様は冷酷とは程遠いなあ、とね。御馳走さんでした。う~し、野郎共、今日も働くぞぉ!」
……流石に小さい子供を連れて身体を壊してしまった人を追い出したりは出来ないと思う。
別に私じゃなくても、だ。
「おっちゃんも姉ちゃんの事が解ってきたなぁ。いてっ」
生意気な顔をしているプロイの額を指で弾いていると、どうしてももう一人の弟であるニュクスの事が心配になる。
「ちゃんとご飯食べたかな。というか、そもそもちゃんと寝坊せず起きれてるのかな」
「ん? ニュクスの事かぁ。大丈夫じゃない? 一緒に居るヘルムスがしっかりしてるし」
「そう、ね。2人とも陛下に失礼な事してないと良いんだけど」
プロイと双子で私の弟であるニュクス。
そして前世から私を待ち続けていた魔人ヘルムス。
今この2人は家を離れて王都に居る。というのも……
『デュシスは君達魔人とも共存出来ることを他国に示したい。もし他国に隠れて生き辛い思いをしている魔人がいるのなら我が国で保護しても良い』
そう言ったレオ陛下に請われて、他国との話し合いや魔人探しの計画を立てるために王都へ向かったのだ。
とはいえ……
「簡単に世界が認めてくれたり隠れている魔人が出てきたりもしないよね……」
北の共和国は恐らく大丈夫。
一旦の現状報告と、移住……では無いがここに暫く住むための荷物を取りにローサが北へと帰国している。
彼女も彼女の父である共和国代表も頭の柔らかい考え方をする人達だし、他者に対して友好的だと思う。議会も恐らく話し合えば納得してくれるだろうと聞いている。
南は不明瞭だけど……東は絶対に難航すると考えられる。
200年前に一番魔族との争いが激化していた地であり、現在でも魔王や魔人に対しての軍備を怠らないような国だから。
(隠れてる魔人達が居たとして……数も解らないし居場所も解らない。そして、ヘルムス達のように友好的に出来るかも判らないから簡単じゃ無いよね)
「きゃー!」
高い悲鳴が聞こえて思考に沈んでいた意識が浮上する。
視線を上げると例の女の子とプロイ、更に魔人バイアンが追いかけっこをして遊んでいる所だった。
「なんだ、びっくりした……まったくもう。プロイ、バイアン! まだ本調子じゃ無さそうだから無理はしないでよ~」
今の内に少し様子を見ようと、寝込んだままの母親の方へと歩みを進める。
「あの様子なら女の子の方はもう大丈夫かな。後はお母さんの様子を……」
「大丈夫でしょうとも」
「うわっ!?」
いきなり耳元で声がして驚いた。
いつの間にかバイアンが此方に来ていて、私と並んでいたのだ。
「ああ、驚かせてしまってすみません」
魔人は……やはり人間と比較して強い。魔力も身体能力も……
立ち止まって動悸と荒れた息を整えていると、バイアンが申し訳なさげに頭を掻きながら指を指す。
「ただ、俺は聖女様に何も無いようちゃんと護衛しろと、ヘルムスと弟様に言われてるもんで……」
弟様……プロイ? それともニュクスだろうか?
それとバイアンが指差す母親に何の関係が……
「弱ってはいますが魔人ですからな。俺かプロイ坊ちゃんが近くに居ない時は警戒して下さい」
「ん?」
何かとんでもない事をさらっと言われたような?
「まじん?」
「ええ」
当たり前のような顔でバイアンが頷く。
指した指はそのままに。
「あれは魔人です。人間に擬態してますし、敵意は無いようですが」
私の口は開いたまま塞がらなかった。
いや、そういうの気付いたなら直ぐ言って欲しかったなとか、言いたい事は色々あるんだけど!
「まじん……」
居場所も解らないし、友好的に出来るかも解らない……かぁ。
ほんの先程に自分で思っていた事を振り返る。
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