68 / 74
第68話 野盗と勇者
しおりを挟む
野盗集団が揃って武器を抜き、馬から降りて向かって来る。
私の前に立っていたプロイとバイアンはまるで散歩でもするように進み、先頭の野盗がまた空を舞った。
(あ~……もう3人。これだとあっと言う間に全滅しそうだね……)
私が思った通り、今この瞬間にも更に2人が吹き飛ばされる。
明らかに常識を超えている2人を前に、それでも怯まず向かって来る事自体が凄い気もして来た。
その気合いを何故真面目に生きるために使えないのかと思うと悲しくなってしまう。
(もう懲りて悪事を止めてくれると良いんだけど……)
そう思った理由は、飛ばされる野盗の中に見覚えのある顔がチラホラと居たからだ。
あれは私が北に行った時……そう、ローサと初めて会った時に見た野盗の顔だ。
とうとう最後の野盗が空を舞い、地に落ちる。
呻き声を上げて倒れる野盗が9人……ようやく終わった……
(あれ、違和感が……最初11人いた筈じゃ?)
「きゃあ!」
悲鳴に振り返った私はそこに見えた光景に思わず唇を噛む。
(私は馬鹿だ……2人が戦っていたんだから私が気付かなきゃいけなかったのに……!)
下卑た表情を浮かべた野盗が2人、各々ローサと魔人の少女を人質にしていた。
刃物を突きつけられ、魔神の少女は怯えている。ローサは気丈な様子を見せているが、微かに脚が震えている。
「お前ら、動くなよ! 動いたらこいつらがどうなるか解ってるんだろうな!」
「おい、よく見りゃこのガキも魔人だぞ……この村一体どうなってやがんだ?」
「ああん? 良いじゃねえか……魔人の小娘なんて好事家相手ならとんでも無い金額で売れるぞ!」
欲まみれの顔で少女とローサを眺めた後、私に目を向ける。
「あの娘も高値で売れそうだしよ、こりゃ良い稼ぎになるぜ」
「ああ、俺達にも運が」
「ふっざ……」
野盗が言葉を続けている中、私の背中に手が添えられる。
「おっと、危ない」
「けるなぁ!」
ガンッ!
のんびりしたバイアンの声音と共に私の身体が浮き上がる。
どうやらバイアンが私を抱えて跳んだのだと判ったのは屋根より高い場所まで飛び上がった後で……
(わ、高い。ちょっと怖っ)
下に見えるのはプロイを中心に陥没した地面だった。
その地面を避けて、少しだけ離れた所に降り立ったバイアンは私を地面に下ろしてくれた。
「ありがとう、バイアン」
「とんでもない、我が神にお怪我はさせられませんからな。しかし、プロイ坊ちゃんが……」
「あんた達が言うお金は……自分の命より価値があるの? 他人の命を踏み躙っても良いほど価値があるの?」
プロイは地面に拳を突き立てたまま、唸るように声を出す。
姉としてずっとプロイを見てきたが……あれ程に怒るプロイはほんの数度しか見た事が無い。
「な、なんだそりゃ! 虚仮威しなんざ通用しねえぞ!」
「動くなって言っただろうがよ!」
「いっ!」
手元が震えたのか、野党の刃物が当たったらしく少女が小さく悲鳴を洩らす。
「そっか、そうなんだ」
ボキ
「はえ?」
目で追えない速度で移動したプロイが少女を捕らえていた野盗から少女を取り返していた。
その野盗が膝をつき、驚いた顔をしている。
「一瞬で両肩を外しましたね。いや……砕いたかな?」
相変わらずのんびりした口調でバイアンが説明する。
「ぎゃあ!」
遅れて痛みが来たのか野盗は地面に倒れ込み叫んでいる。
「なんだそりゃ! ふざけんなよぉ!」
ローサを捕えている野盗が激昂し叫ぶ。
刃物を手にした腕を振りかざした瞬間、その肘が曲がる筈の無い方向へと折れ曲がる。
「今度は石を投げて肘を砕きましたね。いやあ、あれも痛そうだ」
またまた呑気な声でバイアンが語る。
「そんなに軽い命なら、落っことしちゃっても仕方ないよね?」
プロイが地面に倒れている野盗に向けて拳を振り下ろす。
「プロイ!」
私の叫びを聞いてから聞かずか、プロイの拳は野盗の額に触れる寸前で止まった。
「まあ、姉ちゃんは相手が悪党でも話し合えって人だし……殺したりはしないけどさ」
気を失った野盗に向けて言い放ってから、少女の元へと向かう。
「怪我、大丈夫か?」
「怖かった……プロイ、ありがと!」
頭を撫でるプロイへ魔人の少女が抱き付く。
いつの間にかとても仲良くなっていたようだ。
「プロイ坊ちゃんは誰にでも分け隔て無く優しくてお強い。そして顔立ちも秀れてますからね……これからどんどん魅力的になって行くでしょうな。……妬けますか?」
微妙な顔で聞いてくるバイアンの言葉にこそ驚いてしまう。
「妬け……?」
「いえ、何でもございません。さて、取り敢えず全員縛り上げますか!」
何故か楽しそうに縄を取り野盗達へと向かって行く。
「お姉様ぁ!」
どんっ
「あいた」
少しボーッとしていた私の背中にローサがしがみ付いてきた。
「私っ、ごめんなさい。お姉様にまたご迷惑をおかけして……」
「いや、私は特に何もしていないというか出来なかったというか……」
実際、近くに聖獣が居てくれないと私が出来る事はあまり無くて……
(魔法とか剣とか、せめて自衛できるように何か習った方が良いのかな?)
「ローサが無事で良かった。ごめんね、助けてあげられなくて」
「何を仰いますの! お姉様はそこに居て下さるだけで私がどれだけ……!」
それからバイアンが全ての野盗を縛り上げて倉庫に放り込むまで……ずっとローサに褒め殺され続けたのだった。
私の前に立っていたプロイとバイアンはまるで散歩でもするように進み、先頭の野盗がまた空を舞った。
(あ~……もう3人。これだとあっと言う間に全滅しそうだね……)
私が思った通り、今この瞬間にも更に2人が吹き飛ばされる。
明らかに常識を超えている2人を前に、それでも怯まず向かって来る事自体が凄い気もして来た。
その気合いを何故真面目に生きるために使えないのかと思うと悲しくなってしまう。
(もう懲りて悪事を止めてくれると良いんだけど……)
そう思った理由は、飛ばされる野盗の中に見覚えのある顔がチラホラと居たからだ。
あれは私が北に行った時……そう、ローサと初めて会った時に見た野盗の顔だ。
とうとう最後の野盗が空を舞い、地に落ちる。
呻き声を上げて倒れる野盗が9人……ようやく終わった……
(あれ、違和感が……最初11人いた筈じゃ?)
「きゃあ!」
悲鳴に振り返った私はそこに見えた光景に思わず唇を噛む。
(私は馬鹿だ……2人が戦っていたんだから私が気付かなきゃいけなかったのに……!)
下卑た表情を浮かべた野盗が2人、各々ローサと魔人の少女を人質にしていた。
刃物を突きつけられ、魔神の少女は怯えている。ローサは気丈な様子を見せているが、微かに脚が震えている。
「お前ら、動くなよ! 動いたらこいつらがどうなるか解ってるんだろうな!」
「おい、よく見りゃこのガキも魔人だぞ……この村一体どうなってやがんだ?」
「ああん? 良いじゃねえか……魔人の小娘なんて好事家相手ならとんでも無い金額で売れるぞ!」
欲まみれの顔で少女とローサを眺めた後、私に目を向ける。
「あの娘も高値で売れそうだしよ、こりゃ良い稼ぎになるぜ」
「ああ、俺達にも運が」
「ふっざ……」
野盗が言葉を続けている中、私の背中に手が添えられる。
「おっと、危ない」
「けるなぁ!」
ガンッ!
のんびりしたバイアンの声音と共に私の身体が浮き上がる。
どうやらバイアンが私を抱えて跳んだのだと判ったのは屋根より高い場所まで飛び上がった後で……
(わ、高い。ちょっと怖っ)
下に見えるのはプロイを中心に陥没した地面だった。
その地面を避けて、少しだけ離れた所に降り立ったバイアンは私を地面に下ろしてくれた。
「ありがとう、バイアン」
「とんでもない、我が神にお怪我はさせられませんからな。しかし、プロイ坊ちゃんが……」
「あんた達が言うお金は……自分の命より価値があるの? 他人の命を踏み躙っても良いほど価値があるの?」
プロイは地面に拳を突き立てたまま、唸るように声を出す。
姉としてずっとプロイを見てきたが……あれ程に怒るプロイはほんの数度しか見た事が無い。
「な、なんだそりゃ! 虚仮威しなんざ通用しねえぞ!」
「動くなって言っただろうがよ!」
「いっ!」
手元が震えたのか、野党の刃物が当たったらしく少女が小さく悲鳴を洩らす。
「そっか、そうなんだ」
ボキ
「はえ?」
目で追えない速度で移動したプロイが少女を捕らえていた野盗から少女を取り返していた。
その野盗が膝をつき、驚いた顔をしている。
「一瞬で両肩を外しましたね。いや……砕いたかな?」
相変わらずのんびりした口調でバイアンが説明する。
「ぎゃあ!」
遅れて痛みが来たのか野盗は地面に倒れ込み叫んでいる。
「なんだそりゃ! ふざけんなよぉ!」
ローサを捕えている野盗が激昂し叫ぶ。
刃物を手にした腕を振りかざした瞬間、その肘が曲がる筈の無い方向へと折れ曲がる。
「今度は石を投げて肘を砕きましたね。いやあ、あれも痛そうだ」
またまた呑気な声でバイアンが語る。
「そんなに軽い命なら、落っことしちゃっても仕方ないよね?」
プロイが地面に倒れている野盗に向けて拳を振り下ろす。
「プロイ!」
私の叫びを聞いてから聞かずか、プロイの拳は野盗の額に触れる寸前で止まった。
「まあ、姉ちゃんは相手が悪党でも話し合えって人だし……殺したりはしないけどさ」
気を失った野盗に向けて言い放ってから、少女の元へと向かう。
「怪我、大丈夫か?」
「怖かった……プロイ、ありがと!」
頭を撫でるプロイへ魔人の少女が抱き付く。
いつの間にかとても仲良くなっていたようだ。
「プロイ坊ちゃんは誰にでも分け隔て無く優しくてお強い。そして顔立ちも秀れてますからね……これからどんどん魅力的になって行くでしょうな。……妬けますか?」
微妙な顔で聞いてくるバイアンの言葉にこそ驚いてしまう。
「妬け……?」
「いえ、何でもございません。さて、取り敢えず全員縛り上げますか!」
何故か楽しそうに縄を取り野盗達へと向かって行く。
「お姉様ぁ!」
どんっ
「あいた」
少しボーッとしていた私の背中にローサがしがみ付いてきた。
「私っ、ごめんなさい。お姉様にまたご迷惑をおかけして……」
「いや、私は特に何もしていないというか出来なかったというか……」
実際、近くに聖獣が居てくれないと私が出来る事はあまり無くて……
(魔法とか剣とか、せめて自衛できるように何か習った方が良いのかな?)
「ローサが無事で良かった。ごめんね、助けてあげられなくて」
「何を仰いますの! お姉様はそこに居て下さるだけで私がどれだけ……!」
それからバイアンが全ての野盗を縛り上げて倉庫に放り込むまで……ずっとローサに褒め殺され続けたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身
にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。
姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下
akechi
ファンタジー
ルル8歳
赤子の時にはもう孤児院にいた。
孤児院の院長はじめ皆がいい人ばかりなので寂しくなかった。それにいつも孤児院にやってくる男性がいる。何故か私を溺愛していて少々うざい。
それに貴方…国王陛下ですよね?
*コメディ寄りです。
不定期更新です!
政治家の娘が悪役令嬢転生 ~前パパの教えで異世界政治をぶっ壊させていただきますわ~
巫叶月良成
ファンタジー
政治家の娘として生まれ、父から様々なことを学んだ少女が異世界の悪徳政治をぶった切る!?
////////////////////////////////////////////////////
悪役令嬢に転生させられた琴音は政治家の娘。
しかしテンプレも何もわからないまま放り出された悪役令嬢の世界で、しかもすでに婚約破棄から令嬢が暗殺された後のお話。
琴音は前世の父親の教えをもとに、口先と策謀で相手を騙し、男を篭絡しながら自分を陥れた相手に復讐し、歪んだ王国の政治ゲームを支配しようという一大謀略劇!
※魔法とかゲーム的要素はありません。恋愛要素、バトル要素も薄め……?
※注意:作者が悪役令嬢知識ほぼゼロで書いてます。こんなの悪役令嬢ものじゃねぇという内容かもしれませんが、ご留意ください。
※あくまでこの物語はフィクションです。政治家が全部そういう思考回路とかいうわけではないのでこちらもご留意を。
隔日くらいに更新出来たらいいな、の更新です。のんびりお楽しみください。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる