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東の国

第28話 体、竦みます

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 僕達は薬草を入れた籠を背負い、街へ到着した。
 謎の動物との遭遇があったので予定より早く戻って来てしまったが、摘んだ薬草は予定していた量を超えて持ち帰ることができた。

「さて、半分ずつ届けるんだよね?」

 手で籠を半分に割るようにして見せるとコウゾウが肯く。
 2人で並んで籠を持ち、街の商店で半分と診療所で半分の薬草を渡し、仕事を達成できた。

 日が沈むまで別の仕事を手伝おうと思い診療所を出ようとした時、治療師の女性に呼び止められた。

「ーーーー。 ーーーー?」
「ーー!? ーーーーー!」

 何を話しているかは解らないが、コウゾウが嬉しそうな事だけは伝わってくる。
 この街の人達は感情を人に見せないようにしているのを感じるが、彼はとても判り易い。

「どうしたの?」

「ーー! ーーーーー!」

 急いで歩く彼に手を引かれて家まで連れて行かれると、コウゾウをそのまま渋くしたようなおじさんが居た。

「ーーーー!」

 駆け寄ったコウゾウの頭に手を置き、優しげな視線を向けているこの人は……

「君が話に聞いた旅人だね? 私はコウゾウの父でムリョウという者だ」

「あ、やっぱりコウゾウのお父さんなんですね。初めまして、旅人のロイといいます」

 よく似ているからすぐ判った。何だかとても強そうな人だな。ガッシリしているし、こうして向かい合って目を合わせても全身を見られているような……あれ?

「えっ? あれ、言葉が……」

 通じている。

「うむ。私は君達の使う言葉も話せる。他国との交渉などを仕事にしているものでね。北の国まで赴いていたが先程帰った所なのだよ」

 コウゾウのお父さんは柔らかい表情のまま腰の剣に手を置く。
 その瞬間、全身から汗が噴き出しそうな空気を感じる。

「ラミレア王国から手配されている少年が……まさかこの街に来ていたとは」

 久しぶりに言語で会話が出来た人は
 その迫力で僕をその場に縫い止めた。
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