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5.親友
「ごめんね、佐藤くん。僕のせいで」
傲慢なほどに堂々としたイメージの柳龍二が、しおらしくうつむく。
「親からそんな目立つ金髪はやめろ、とずっと言われていたんだ。でも、モテたかったから……」
「金髪だからって別にモテねぇよ」
「残念な呂久村くんにも分かりやすく説明させてもらおう。ポイントはギャップだよ。僕は真面目で頭脳明晰だろう? 真面目なのに金髪、金髪なのにメガネ」
「そんな分かりやすいギャップでモテると思ってるお前の頭が残念だわ!」
俺にはキリッと傲慢な顔を上げていたくせに、柳がシュンと颯太を見つめる。
「僕は学級委員長だというのに、こんなに小さい佐藤くんを危険な目に遭わせてしまうなんて……。ただでさえ高身長で眉目秀麗な僕は目立ってしまう宿命だ。親の言う通り、大人しく、なるべく目立たないように生きていかなければならなかったんだ」
「そんなことはない。お前はお前らしく生きろ。それが危険だと言うなら、俺がお前を守ってやる」
「……佐藤くん……」
カッコいい! さすが颯太だ!
任侠スイッチオンの颯太は表情まで漢。
「わあいっ。ゲーセンに着いたよっ! きゅるりんっ」
さすがは聡明な颯太。失った「かわいい」を謎の擬音で補うことも忘れない。
なかなか大きなゲーセンである。クレーンゲームもたくさんある。
「大きいのを取った方が勝ちでいいっ?」
「それでいーよ」
「佐藤くん、僕大きい景品を探してくるよ!」
颯太、明翔、柳が走り出す。あらあらみなさん、血気盛んですこと。
俺はひとり、悠々とスロットを回す。くっそ、設定渋すぎだろ。今週の生活費使い切っちゃったじゃん。俺、大人になってもガチのギャンブルは絶対しない方がいいな。金なくなるまでやっちゃう。
仕方なしに店内をプラプラしていたら、明翔が両替機から早足に歩いていく。明翔、何狙ってるんだろ?
「あーすか」
「あー、バレちゃったかあ。サプライズで驚かせようと思ったのになー」
「サプライズ?」
「見て見て」
明翔がクレーンゲーム機に貼られているポスターを指差す。なにやら、ジャンルもバラバラな景品が余りものみたいに詰め込まれているらしい。
「うわ、まじか! ウィウィ!」
大好きなファンタジーアニメのヒロイン、赤い精霊のウィウィのフィギュア!
「深月、フェアワンでウィウィが一番好きって言ってたからさあ」
「どこにあんの?!」
「この下にあんの。だから、まずはこれを落とさないといけなくて」
クレーンのアームが赤い箱の上から黄色い箱を落とした。
「ウィウィ!」
「よっしゃ!」
二回ほど両替に行き、少しずつ少しずつ、ウィウィが獲得口に近付いてくる。
「あともうちょっと!」
最後は、アームを箱の端っこに引っかけるように傾けて、ついにウィウィが落ちた!
「やったあ! 明翔すげえ! やったー!」
「あはは!」
「え。なんでそんな笑ってんの」
「めちゃくちゃウィウィが好きなんだなーと思って。こんなテンション高い深月初めて見た」
「だって、すげえじゃん! 箱の下敷きになってたやつ獲るとかさあ!」
フフッ、と明翔が不意に俺を見上げる。
「ねえ。俺のこと、お前の女かって言われた時、なんで男だって言わずに、友達だって言ったの?」
「あ」
言われてみればそうだ。明翔を女だと勘違いしてるだけなんだから、親切に「男だよ」と教えてあげれば済む話だった。
「深月、俺のことまだ女だと思ってる? 脱ごうか?」
明翔がスラックスのベルトに手を掛けるから、慌てて俺の手を重ねて止める。
「分かってる! 明翔は男だ!」
「嬉しかったよ、守ってくれて」
至近距離で見る明翔の笑顔に、心臓がガーッと速度を増す。だから、なんで共学校に通いながら男にときめかにゃならんのだ。
百七十五センチと小さくはない体をコンパクトに折りたたんで、明翔が景品を取り出した。
「さっきのお礼にあげる。ありがとう」
「すげえ声聞こえたけど、デカいの取れたのっ?」
颯太がテテッと駆けてくる。その後ろを、柳がついて来ている。
「見て! これこれ!」
「なーんだ、小っちぇーじゃん。俺の勝ちだ!」
柳がデカいまん丸いぬいぐるみを抱っこしている。あれ、颯太が持ったらかわいさマシマシだろうに、柳が持ちたがったのかな。いや、そんなことより。
「ごめん! 大きさ勝負なの忘れてた!」
慌てる俺に、明翔はアハハ! と笑った。
「いいよ。勝負に勝つより、親友が喜んでくれた方が嬉しいもん」
――親友……。
うわ、すげえ嬉しい。男も女も関係ない、ボーダーレスに誰とでも仲良くなっちゃう明翔の中で、特別枠に入れた気分。
「おうよ! 親友!」
俺たちは、ガシッと腕と腕をぶつけ合い、親友となった。
傲慢なほどに堂々としたイメージの柳龍二が、しおらしくうつむく。
「親からそんな目立つ金髪はやめろ、とずっと言われていたんだ。でも、モテたかったから……」
「金髪だからって別にモテねぇよ」
「残念な呂久村くんにも分かりやすく説明させてもらおう。ポイントはギャップだよ。僕は真面目で頭脳明晰だろう? 真面目なのに金髪、金髪なのにメガネ」
「そんな分かりやすいギャップでモテると思ってるお前の頭が残念だわ!」
俺にはキリッと傲慢な顔を上げていたくせに、柳がシュンと颯太を見つめる。
「僕は学級委員長だというのに、こんなに小さい佐藤くんを危険な目に遭わせてしまうなんて……。ただでさえ高身長で眉目秀麗な僕は目立ってしまう宿命だ。親の言う通り、大人しく、なるべく目立たないように生きていかなければならなかったんだ」
「そんなことはない。お前はお前らしく生きろ。それが危険だと言うなら、俺がお前を守ってやる」
「……佐藤くん……」
カッコいい! さすが颯太だ!
任侠スイッチオンの颯太は表情まで漢。
「わあいっ。ゲーセンに着いたよっ! きゅるりんっ」
さすがは聡明な颯太。失った「かわいい」を謎の擬音で補うことも忘れない。
なかなか大きなゲーセンである。クレーンゲームもたくさんある。
「大きいのを取った方が勝ちでいいっ?」
「それでいーよ」
「佐藤くん、僕大きい景品を探してくるよ!」
颯太、明翔、柳が走り出す。あらあらみなさん、血気盛んですこと。
俺はひとり、悠々とスロットを回す。くっそ、設定渋すぎだろ。今週の生活費使い切っちゃったじゃん。俺、大人になってもガチのギャンブルは絶対しない方がいいな。金なくなるまでやっちゃう。
仕方なしに店内をプラプラしていたら、明翔が両替機から早足に歩いていく。明翔、何狙ってるんだろ?
「あーすか」
「あー、バレちゃったかあ。サプライズで驚かせようと思ったのになー」
「サプライズ?」
「見て見て」
明翔がクレーンゲーム機に貼られているポスターを指差す。なにやら、ジャンルもバラバラな景品が余りものみたいに詰め込まれているらしい。
「うわ、まじか! ウィウィ!」
大好きなファンタジーアニメのヒロイン、赤い精霊のウィウィのフィギュア!
「深月、フェアワンでウィウィが一番好きって言ってたからさあ」
「どこにあんの?!」
「この下にあんの。だから、まずはこれを落とさないといけなくて」
クレーンのアームが赤い箱の上から黄色い箱を落とした。
「ウィウィ!」
「よっしゃ!」
二回ほど両替に行き、少しずつ少しずつ、ウィウィが獲得口に近付いてくる。
「あともうちょっと!」
最後は、アームを箱の端っこに引っかけるように傾けて、ついにウィウィが落ちた!
「やったあ! 明翔すげえ! やったー!」
「あはは!」
「え。なんでそんな笑ってんの」
「めちゃくちゃウィウィが好きなんだなーと思って。こんなテンション高い深月初めて見た」
「だって、すげえじゃん! 箱の下敷きになってたやつ獲るとかさあ!」
フフッ、と明翔が不意に俺を見上げる。
「ねえ。俺のこと、お前の女かって言われた時、なんで男だって言わずに、友達だって言ったの?」
「あ」
言われてみればそうだ。明翔を女だと勘違いしてるだけなんだから、親切に「男だよ」と教えてあげれば済む話だった。
「深月、俺のことまだ女だと思ってる? 脱ごうか?」
明翔がスラックスのベルトに手を掛けるから、慌てて俺の手を重ねて止める。
「分かってる! 明翔は男だ!」
「嬉しかったよ、守ってくれて」
至近距離で見る明翔の笑顔に、心臓がガーッと速度を増す。だから、なんで共学校に通いながら男にときめかにゃならんのだ。
百七十五センチと小さくはない体をコンパクトに折りたたんで、明翔が景品を取り出した。
「さっきのお礼にあげる。ありがとう」
「すげえ声聞こえたけど、デカいの取れたのっ?」
颯太がテテッと駆けてくる。その後ろを、柳がついて来ている。
「見て! これこれ!」
「なーんだ、小っちぇーじゃん。俺の勝ちだ!」
柳がデカいまん丸いぬいぐるみを抱っこしている。あれ、颯太が持ったらかわいさマシマシだろうに、柳が持ちたがったのかな。いや、そんなことより。
「ごめん! 大きさ勝負なの忘れてた!」
慌てる俺に、明翔はアハハ! と笑った。
「いいよ。勝負に勝つより、親友が喜んでくれた方が嬉しいもん」
――親友……。
うわ、すげえ嬉しい。男も女も関係ない、ボーダーレスに誰とでも仲良くなっちゃう明翔の中で、特別枠に入れた気分。
「おうよ! 親友!」
俺たちは、ガシッと腕と腕をぶつけ合い、親友となった。
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