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12.黒岩くんと体育
ソワソワと落ち着かない。時計と教室のドアを交互に見る。明翔にしては遅くないか? たいがい俺の方が遅いから知らんけど。
ついに、クラスメイトの女子と一緒に輝く笑顔で明翔が教室に入ってきた!
「明翔!」
「おはよー、深月」
めっちゃ普通やん。
なんだよ。ゆうべ、ぜんっぜん寝付けなかったのに。真夜中に何台も消防車の音するし。朝調べてみても家の近所で火事なんか見つかんないし。
「どうしたの? 深月、疲れてない?」
「お前のせいだよ!」
思いっきり明翔の顔を両手で挟んで力を入れる。口がくちばしになってもかわいい顔しとんなあ。
めっちゃ拍子抜けだけど、良かった。明翔がいつも通りで。
「バァスケ――! 俺、バスケ大好き!」
体育の時間には、いつも以上に元気かもしれない。
「バスケかー。俺は苦手だなっ」
「背が低いと不利だもんね、チビッ子。俺が勝っちゃうなー」
「でも小回り利くから。カワイ子ちゃんには負けないよっ」
勝つも負けるも何も、バスケ初日の今日はパスとシュートの個別練習のみである。
「二人一組で、パス練習!」
二人一組、となれば当然。
「深月! 一緒にやろうぜ!」
「おう!」
しかし、こういう時、教師って人数が偶数か奇数か気にしてない。うちのクラスの男子は奇数だったようだ。色白で小柄で細っこいメガネっ子が一人、ポツーンと突っ立っている。
「ねえ深月、パス練なら三人でもできるよね。いい?」
「いいよ」
あのもやしっ子を入れるつもりかな?
案の定、明翔はもやしっ子に駆け寄ると、手を引いて戻ってきた。
「君、名前は?」
「あ……く、黒岩です」
「黒岩くん、バスケ得意?」
には見えねえだろ。明翔ってたまに空気読まねえな。
「あの、僕、体育全般苦手で」
「そうなんだ? 大丈夫大丈夫! 俺めっちゃ得意だよ!」
何が大丈夫なのかは知らんが、三人でトライアングルを形成する。俺がボールを持っていたので、まず明翔へと投げた。明翔がバシッと大きな音を立てて手で勢いを止め、ボールを取る。
「おー、いい球!」
「さすが、これくらい軽く取っちゃうか」
それを見ていた黒岩くん、真っ青である。
「明翔ー、加減しろよー」
「加減?」
「黒岩くん見てみー」
明翔は得意だよ! と豪語しただけあり、手さえ出せば取れるスピードと強さで投げた。調節できるってのがすごい。
黒岩くんは、見たことない横投げのフォーム。えらく鋭角にボールが跳ね返る。
「うお!」
投げられないだろうと予想して距離を詰めていたものの、ダッシュしてジャンプしてなんとかボールを手に収める。
「むずい球投げてんじゃねーよ!」
「ごめんなさい! わざとじゃなくて」
「それは分かってる」
あははは! と爆笑してる明翔にボールを投げる番である。笑ってんじゃねえ。お前も走らせてやる!
「読み通り!」
「くっそ! 読まれていたか!」
またフンワリとボールが黒岩くんに戻った。
「行け! 黒岩くん! ぶつけるつもりで!」
「はい!」
はい! じゃねーんだよ。だから、なんなんだよ! その横投げは!
「すげえ! めっちゃ跳ぶじゃん!」
「なんでパス練でこんな跳んでんだよ!」
「あはは!」
俺が跳ばされている原因因子、黒岩くんが楽しそうに笑う。
おや、さっきまでオドオドとビビってたのに。
「行くぞ! 明翔!」
「来い! 深月!」
俺も、全力で体育すんのなんか、小学生ぶりかも。やっぱ、全力でやるとなんでも楽しい!
おかげで疲れて、教室では机に突っ伏してしばしの休息。
白いタンクトップの担任教師、工藤先生が入ってくる。
「今日のロングホームルームでは、春の体育祭の実行委員を決める! 二名! やる人ー!」
誰がそんなめんどくさそうなものに立候補すんだよ。当然、教室はシーンである。
バンバン、と工藤先生が教卓を叩く。
「みんな、もっと燃えてこうぜ! 春の体育大会は、高校三年間でたった三回しかないんだ! はい、やる人ー!」
春の体育大会しょぼいんだよ。秋の体育祭の方が盛り上がるじゃねーか。
「それもそうか。はーい! 俺やるー!」
前の席から元気な声が聞こえた。
夕方のツンデレみたいに体育で一番走り回ってたくせに、明翔は元気があり余っとるな。よっしゃ、負けてらんねえ!
「俺もやる!」
「実行委員は高崎と呂久村に決定! みんな、拍手!」
じゃんけんなどの運要素なくスムーズに決まって、クラスメイトたちの安堵の息が聞こえる。
しまった、明翔につられて、めんどうなものを引き受けてしまったかも。
明翔が教卓に立ち、俺はチョークを握って100メートル走、200メートル走、などなど種目を黒板に書いていく。
「出場者をそれぞれ決めていきまーす」
立候補がいない種目は飛ばして、一周目のラスト。
「次、綱引き出たい人ー」
さすが、綱引きは希望者が多い。団体競技の中でも、個人の力量を測られにくい種目である。
「あれ? 黒岩くん、意外と力持ちなの?」
突然始まった個人面談に、黒岩くんが困惑顔。
「ううん、力も弱いよ」
「じゃあ、なんで綱引き?」
「綱引きなら、目立たないかと思って……」
「はあ?」
明翔の顔が険しくなる。
いや、ほとんどが黒岩くんと同じ理由で手を挙げたと思うんだが。
「綱引きは力の強いヤツが輝く競技なの! 運動音痴の隠れみのじゃねーんだよ! 綱引き希望した人、集まって!」
ええ……。教室がざわつく。お前ら、めんどくさいヤツを実行委員にしてしまったな。
急遽、白熱の腕相撲トーナメントが開催される。
「やったあ! 勝った!」
勝者たちが抱き合って喜びを分かち合っている。黒岩くんは、予想通り一回戦敗退である。
「足は遅い、力は弱い、玉の扱いも下手な黒岩くんが輝くのは、これかな」
「借り物競争……。僕、人見知りなんだけど、借りられるかなあ……」
「大丈夫大丈夫! 俺らが全力プッシュするから!」
俺ら?
それって、俺も入ってねえよな?
「クラス対抗リレーは、スポーツテストで速かった順ね。男子は、俺、深月、柳、颯太」
いつメンじゃねーか。柳って颯太より速かったんだ。あいつ、まじ変態でさえなきゃなあ。
「二年一組! 優勝あるのみ! おー!」
「おー!」
クラスメイトみんな、一丸となって拳を上げる。すげえな、明翔。みんな明翔の熱量に巻き込まれてるじゃん。
ついに、クラスメイトの女子と一緒に輝く笑顔で明翔が教室に入ってきた!
「明翔!」
「おはよー、深月」
めっちゃ普通やん。
なんだよ。ゆうべ、ぜんっぜん寝付けなかったのに。真夜中に何台も消防車の音するし。朝調べてみても家の近所で火事なんか見つかんないし。
「どうしたの? 深月、疲れてない?」
「お前のせいだよ!」
思いっきり明翔の顔を両手で挟んで力を入れる。口がくちばしになってもかわいい顔しとんなあ。
めっちゃ拍子抜けだけど、良かった。明翔がいつも通りで。
「バァスケ――! 俺、バスケ大好き!」
体育の時間には、いつも以上に元気かもしれない。
「バスケかー。俺は苦手だなっ」
「背が低いと不利だもんね、チビッ子。俺が勝っちゃうなー」
「でも小回り利くから。カワイ子ちゃんには負けないよっ」
勝つも負けるも何も、バスケ初日の今日はパスとシュートの個別練習のみである。
「二人一組で、パス練習!」
二人一組、となれば当然。
「深月! 一緒にやろうぜ!」
「おう!」
しかし、こういう時、教師って人数が偶数か奇数か気にしてない。うちのクラスの男子は奇数だったようだ。色白で小柄で細っこいメガネっ子が一人、ポツーンと突っ立っている。
「ねえ深月、パス練なら三人でもできるよね。いい?」
「いいよ」
あのもやしっ子を入れるつもりかな?
案の定、明翔はもやしっ子に駆け寄ると、手を引いて戻ってきた。
「君、名前は?」
「あ……く、黒岩です」
「黒岩くん、バスケ得意?」
には見えねえだろ。明翔ってたまに空気読まねえな。
「あの、僕、体育全般苦手で」
「そうなんだ? 大丈夫大丈夫! 俺めっちゃ得意だよ!」
何が大丈夫なのかは知らんが、三人でトライアングルを形成する。俺がボールを持っていたので、まず明翔へと投げた。明翔がバシッと大きな音を立てて手で勢いを止め、ボールを取る。
「おー、いい球!」
「さすが、これくらい軽く取っちゃうか」
それを見ていた黒岩くん、真っ青である。
「明翔ー、加減しろよー」
「加減?」
「黒岩くん見てみー」
明翔は得意だよ! と豪語しただけあり、手さえ出せば取れるスピードと強さで投げた。調節できるってのがすごい。
黒岩くんは、見たことない横投げのフォーム。えらく鋭角にボールが跳ね返る。
「うお!」
投げられないだろうと予想して距離を詰めていたものの、ダッシュしてジャンプしてなんとかボールを手に収める。
「むずい球投げてんじゃねーよ!」
「ごめんなさい! わざとじゃなくて」
「それは分かってる」
あははは! と爆笑してる明翔にボールを投げる番である。笑ってんじゃねえ。お前も走らせてやる!
「読み通り!」
「くっそ! 読まれていたか!」
またフンワリとボールが黒岩くんに戻った。
「行け! 黒岩くん! ぶつけるつもりで!」
「はい!」
はい! じゃねーんだよ。だから、なんなんだよ! その横投げは!
「すげえ! めっちゃ跳ぶじゃん!」
「なんでパス練でこんな跳んでんだよ!」
「あはは!」
俺が跳ばされている原因因子、黒岩くんが楽しそうに笑う。
おや、さっきまでオドオドとビビってたのに。
「行くぞ! 明翔!」
「来い! 深月!」
俺も、全力で体育すんのなんか、小学生ぶりかも。やっぱ、全力でやるとなんでも楽しい!
おかげで疲れて、教室では机に突っ伏してしばしの休息。
白いタンクトップの担任教師、工藤先生が入ってくる。
「今日のロングホームルームでは、春の体育祭の実行委員を決める! 二名! やる人ー!」
誰がそんなめんどくさそうなものに立候補すんだよ。当然、教室はシーンである。
バンバン、と工藤先生が教卓を叩く。
「みんな、もっと燃えてこうぜ! 春の体育大会は、高校三年間でたった三回しかないんだ! はい、やる人ー!」
春の体育大会しょぼいんだよ。秋の体育祭の方が盛り上がるじゃねーか。
「それもそうか。はーい! 俺やるー!」
前の席から元気な声が聞こえた。
夕方のツンデレみたいに体育で一番走り回ってたくせに、明翔は元気があり余っとるな。よっしゃ、負けてらんねえ!
「俺もやる!」
「実行委員は高崎と呂久村に決定! みんな、拍手!」
じゃんけんなどの運要素なくスムーズに決まって、クラスメイトたちの安堵の息が聞こえる。
しまった、明翔につられて、めんどうなものを引き受けてしまったかも。
明翔が教卓に立ち、俺はチョークを握って100メートル走、200メートル走、などなど種目を黒板に書いていく。
「出場者をそれぞれ決めていきまーす」
立候補がいない種目は飛ばして、一周目のラスト。
「次、綱引き出たい人ー」
さすが、綱引きは希望者が多い。団体競技の中でも、個人の力量を測られにくい種目である。
「あれ? 黒岩くん、意外と力持ちなの?」
突然始まった個人面談に、黒岩くんが困惑顔。
「ううん、力も弱いよ」
「じゃあ、なんで綱引き?」
「綱引きなら、目立たないかと思って……」
「はあ?」
明翔の顔が険しくなる。
いや、ほとんどが黒岩くんと同じ理由で手を挙げたと思うんだが。
「綱引きは力の強いヤツが輝く競技なの! 運動音痴の隠れみのじゃねーんだよ! 綱引き希望した人、集まって!」
ええ……。教室がざわつく。お前ら、めんどくさいヤツを実行委員にしてしまったな。
急遽、白熱の腕相撲トーナメントが開催される。
「やったあ! 勝った!」
勝者たちが抱き合って喜びを分かち合っている。黒岩くんは、予想通り一回戦敗退である。
「足は遅い、力は弱い、玉の扱いも下手な黒岩くんが輝くのは、これかな」
「借り物競争……。僕、人見知りなんだけど、借りられるかなあ……」
「大丈夫大丈夫! 俺らが全力プッシュするから!」
俺ら?
それって、俺も入ってねえよな?
「クラス対抗リレーは、スポーツテストで速かった順ね。男子は、俺、深月、柳、颯太」
いつメンじゃねーか。柳って颯太より速かったんだ。あいつ、まじ変態でさえなきゃなあ。
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