BL?! ちがう、濃い友情!

はちみつ電車

文字の大きさ
12 / 39

12.黒岩くんと体育

 ソワソワと落ち着かない。時計と教室のドアを交互に見る。明翔にしては遅くないか? たいがい俺の方が遅いから知らんけど。
 ついに、クラスメイトの女子と一緒に輝く笑顔で明翔が教室に入ってきた!

「明翔!」
「おはよー、深月」

 めっちゃ普通やん。
 なんだよ。ゆうべ、ぜんっぜん寝付けなかったのに。真夜中に何台も消防車の音するし。朝調べてみても家の近所で火事なんか見つかんないし。

「どうしたの? 深月、疲れてない?」
「お前のせいだよ!」

 思いっきり明翔の顔を両手で挟んで力を入れる。口がくちばしになってもかわいい顔しとんなあ。
 めっちゃ拍子抜けだけど、良かった。明翔がいつも通りで。


「バァスケ――! 俺、バスケ大好き!」

 体育の時間には、いつも以上に元気かもしれない。

「バスケかー。俺は苦手だなっ」
「背が低いと不利だもんね、チビッ子。俺が勝っちゃうなー」
「でも小回り利くから。カワイ子ちゃんには負けないよっ」

 勝つも負けるも何も、バスケ初日の今日はパスとシュートの個別練習のみである。

「二人一組で、パス練習!」

 二人一組、となれば当然。

「深月! 一緒にやろうぜ!」
「おう!」

 しかし、こういう時、教師って人数が偶数か奇数か気にしてない。うちのクラスの男子は奇数だったようだ。色白で小柄で細っこいメガネっ子が一人、ポツーンと突っ立っている。

「ねえ深月、パス練なら三人でもできるよね。いい?」
「いいよ」

 あのもやしっ子を入れるつもりかな?
 案の定、明翔はもやしっ子に駆け寄ると、手を引いて戻ってきた。

「君、名前は?」
「あ……く、黒岩くろいわです」
「黒岩くん、バスケ得意?」

 には見えねえだろ。明翔ってたまに空気読まねえな。

「あの、僕、体育全般苦手で」
「そうなんだ? 大丈夫大丈夫! 俺めっちゃ得意だよ!」

 何が大丈夫なのかは知らんが、三人でトライアングルを形成する。俺がボールを持っていたので、まず明翔へと投げた。明翔がバシッと大きな音を立てて手で勢いを止め、ボールを取る。

「おー、いい球!」
「さすが、これくらい軽く取っちゃうか」

 それを見ていた黒岩くん、真っ青である。

「明翔ー、加減しろよー」
「加減?」
「黒岩くん見てみー」

 明翔は得意だよ! と豪語しただけあり、手さえ出せば取れるスピードと強さで投げた。調節できるってのがすごい。

 黒岩くんは、見たことない横投げのフォーム。えらく鋭角にボールが跳ね返る。

「うお!」

 投げられないだろうと予想して距離を詰めていたものの、ダッシュしてジャンプしてなんとかボールを手に収める。

「むずい球投げてんじゃねーよ!」
「ごめんなさい! わざとじゃなくて」
「それは分かってる」

 あははは! と爆笑してる明翔にボールを投げる番である。笑ってんじゃねえ。お前も走らせてやる!

「読み通り!」
「くっそ! 読まれていたか!」

 またフンワリとボールが黒岩くんに戻った。

「行け! 黒岩くん! ぶつけるつもりで!」
「はい!」

 はい! じゃねーんだよ。だから、なんなんだよ! その横投げは!

「すげえ! めっちゃ跳ぶじゃん!」
「なんでパス練でこんな跳んでんだよ!」
「あはは!」

 俺が跳ばされている原因因子、黒岩くんが楽しそうに笑う。
 おや、さっきまでオドオドとビビってたのに。

「行くぞ! 明翔!」
「来い! 深月!」

 俺も、全力で体育すんのなんか、小学生ぶりかも。やっぱ、全力でやるとなんでも楽しい!

 おかげで疲れて、教室では机に突っ伏してしばしの休息。
 白いタンクトップの担任教師、工藤先生が入ってくる。

「今日のロングホームルームでは、春の体育祭の実行委員を決める! 二名! やる人ー!」

 誰がそんなめんどくさそうなものに立候補すんだよ。当然、教室はシーンである。
 バンバン、と工藤先生が教卓を叩く。

「みんな、もっと燃えてこうぜ! 春の体育大会は、高校三年間でたった三回しかないんだ! はい、やる人ー!」

 春の体育大会しょぼいんだよ。秋の体育祭の方が盛り上がるじゃねーか。

「それもそうか。はーい! 俺やるー!」

 前の席から元気な声が聞こえた。
 夕方のツンデレみたいに体育で一番走り回ってたくせに、明翔は元気があり余っとるな。よっしゃ、負けてらんねえ!

「俺もやる!」
「実行委員は高崎と呂久村に決定! みんな、拍手!」

 じゃんけんなどの運要素なくスムーズに決まって、クラスメイトたちの安堵の息が聞こえる。
 しまった、明翔につられて、めんどうなものを引き受けてしまったかも。

 明翔が教卓に立ち、俺はチョークを握って100メートル走、200メートル走、などなど種目を黒板に書いていく。

「出場者をそれぞれ決めていきまーす」

 立候補がいない種目は飛ばして、一周目のラスト。

「次、綱引き出たい人ー」

 さすが、綱引きは希望者が多い。団体競技の中でも、個人の力量を測られにくい種目である。

「あれ? 黒岩くん、意外と力持ちなの?」

 突然始まった個人面談に、黒岩くんが困惑顔。

「ううん、力も弱いよ」
「じゃあ、なんで綱引き?」
「綱引きなら、目立たないかと思って……」
「はあ?」

 明翔の顔が険しくなる。
 いや、ほとんどが黒岩くんと同じ理由で手を挙げたと思うんだが。

「綱引きは力の強いヤツが輝く競技なの! 運動音痴の隠れみのじゃねーんだよ! 綱引き希望した人、集まって!」

 ええ……。教室がざわつく。お前ら、めんどくさいヤツを実行委員にしてしまったな。

 急遽、白熱の腕相撲トーナメントが開催される。

「やったあ! 勝った!」

 勝者たちが抱き合って喜びを分かち合っている。黒岩くんは、予想通り一回戦敗退である。

「足は遅い、力は弱い、玉の扱いも下手な黒岩くんが輝くのは、これかな」
「借り物競争……。僕、人見知りなんだけど、借りられるかなあ……」
「大丈夫大丈夫! 俺らが全力プッシュするから!」

 俺ら?
 それって、俺も入ってねえよな?

「クラス対抗リレーは、スポーツテストで速かった順ね。男子は、俺、深月、柳、颯太」

 いつメンじゃねーか。柳って颯太より速かったんだ。あいつ、まじ変態でさえなきゃなあ。

「二年一組! 優勝あるのみ! おー!」
「おー!」

 クラスメイトみんな、一丸となって拳を上げる。すげえな、明翔。みんな明翔の熱量に巻き込まれてるじゃん。
感想 0

あなたにおすすめの小説

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

人気アイドルグループのリーダーは、気苦労が絶えない

タタミ
BL
大人気5人組アイドルグループ・JETのリーダーである矢代頼は、気苦労が絶えない。 対メンバー、対事務所、対仕事の全てにおいて潤滑剤役を果たす日々を送る最中、矢代は人気2トップの御厨と立花が『仲が良い』では片付けられない距離感になっていることが気にかかり──

【完結】Ωになりたくない僕には運命なんて必要ない!

なつか
BL
≪登場人物≫ 七海 千歳(ななみ ちとせ):高校三年生。二次性、未確定。新聞部所属。 佐久間 累(さくま るい):高校一年生。二次性、α。バスケットボール部所属。 田辺 湊(たなべ みなと):千歳の同級生。二次性、α。新聞部所属。 ≪あらすじ≫ α、β、Ωという二次性が存在する世界。通常10歳で確定する二次性が、千歳は高校三年生になった今でも未確定のまま。 そのことを隠してβとして高校生活を送っていた千歳の前に現れたαの累。彼は千歳の運命の番だった。 運命の番である累がそばにいると、千歳はΩになってしまうかもしれない。だから、近づかないようにしようと思ってるのに、そんな千歳にかまうことなく累はぐいぐいと迫ってくる。しかも、βだと思っていた友人の湊も実はαだったことが判明。 二人にのαに挟まれ、果たして千歳はβとして生きていくことができるのか。

冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される

マンスーン
BL
​王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。 泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。

【完結】恋した君は別の誰かが好きだから

海月 ぴけ
BL
本編は完結しました。後日、おまけ&アフターストーリー随筆予定。 青春BLカップ31位。 BETありがとうございました。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 俺が好きになった人は、別の誰かが好きだからーー。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 二つの視点から見た、片思い恋愛模様。 じれきゅん ギャップ攻め

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

魔王を倒した勇者の凱旋に、親友の俺だけが行かなかった理由

スノウマン(ユッキー)
BL
スラム育ちの少年二人は、15歳になり神の祝福でスキルを得た事で道をたがえる。彼らはやがて青年となり、片方は魔王討伐に旅立つ勇者として華々しい活躍をし、もう片方はただ彼の帰還を待つ相変わらずスラム暮らしの存在となる。 これは何も持たない青年がただ勇者の帰りを待つ日常を描いた作品です。 無自覚両片想いの勇者×親友。 読了後、もう一度だけ読み直して頂けると何か見える世界が変わるかもしれません。

追放されたおまけの聖女♂は冷徹王太子の腕の中から離してもらえない〜今さら戻れと言われても、もうこの人の魔力しか受け付けません!〜

たら昆布
BL
聖女のおまけで召喚されたと思われて追放された不憫受けが拾われて愛される話