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14.二年一組、本気の玉入れ
黒岩くんが緊張の面持ちでスタートラインに立つ。
パン! とピストルが鳴った瞬間、二年一組の応援席に一直線に走ってきた。
いや、明翔が協力するとは言ってたけど、少しは自力でがんばってみろよ。
「タンクトップの先生! 工藤先生は?!」
工藤か。
見回すと、みんながラインギリギリまで集まってるからガラガラの長椅子を使って工藤先生が腕立て伏せをしている。
「工藤! 筋トレしてないで応援しろ!」
「工藤先生!」
「お? 俺か! 任せとけ!」
工藤先生が黒岩くんをお姫様抱っこして一番にゴールテープを切る。借り物が主体になってんだけど。いいのか、あれ。
「黒岩くん! やったね! 今ので総合一位だ!」
「うん!」
おーおー、目立ちたくなくて綱引き希望してたくせに、目立っちゃっても嬉しそうじゃねえの。
クラスメイトに取り囲まれて、黒岩くんが照れくさそうに笑う。
「深月もあっち行くかと思ってたわ」
ガラガラの長椅子に足を広げて座る俺の隣に同じように颯太が座り、明翔たちを目で示す。
「俺ゃあんなはしゃげねえわ」
明翔は大玉を転がす西郷と淀橋に大きな声援を送っている。
「すげえよな、小学生でも人の競技にあそこまで熱くならねえよ」
「俺ら去年、出番終わったら麻雀してたもんな」
「そうそう。帰ってきたらもう全部終わってたんよな」
青空の下、春の体育大会が盛り上がりを見せている。明翔の大声につられてか、他クラスもどんどん応援の熱が増していく。
「佐藤くん、呂久村くん」
「わあっ。びっくりしちゃったなっ」
「驚かせてすまないね。二百メートルを華麗に一位で走ったものだから、少し疲れていて僕の存在感が薄れていたようだ」
一位を取った柳が褒めてほしそうに颯太を見つめる。悪いな、俺ら見てなかったわ。
「それはそうと、作戦会議だそうだ。みんな集まっているから、二人を呼びに来たんだ」
「作戦会議? 何の?」
「玉入れ」
「玉入れ?」
明翔は言う。
「団体競技は配点が高い。午前の部の肝は、玉入れだ」
玉入れが始まった。赤い玉と白い玉、より多くを五分という短い時間の中でカゴに入れた方の勝ち。
我らにあてがわれたのは、赤い玉とカゴ。
まず、腹回りが大きい男子たち、すなわちデブが四人並んで四つん這いになる。その上に体を半分ずつズラして、三人が同じように乗る。さらに二人が重なり、一番上に颯太が立つ。
そう、まず我々はピラミッドを作った。確実に玉を入れるためのシステムを構築すれば効率がいいのではないか、と柳の案である。
俺ら背の高い者、明翔のようにコントロールに自信がある者はその間に玉を集め、ピラミッドが完成するとすぐさま颯太に渡す。颯太の手はカゴに届き、百発百中で玉はカゴに収まっていく。お次は、黒岩くんや女子たち小さき者が拾ってきた玉を颯太へと橋渡し役になる。
「すげえ! コンプリート狙えるよ、颯太! 落とさないように、慎重に乗せろ! いける! いける!」
ついに、最後の玉がカゴに入れられたと同時に、終了を知らせるピストルが鳴った。
「すっげえ! 玉入れってコンプ可能だったんだ!」
「作戦成功!」
パァン、と明翔とハイタッチを交わす。
「ズルじゃん! 一組!」
「反則だ!」
ズラッと並んだ五組の面々がこちらを睨んでいる。学級委員長・柳龍二がズイッと前へ出た。
「どこのルールブックに玉入れでピラミッドを作るのが反則だなんて書いているんだい? 負け犬の遠吠えはみっともないよ」
柳っていっつもひと言多いんだよなあ。五組のみなさんが顔を真っ赤にしている。
「来年からルールブックに書かれるな」
「パイオニアだけが得られる特権なのだよ」
はーっはっはっは。
勝者の高笑いが響く。
だが、その後、圧倒的一位だった一組をものすごい勢いで五組が追い上げてきた。
「てか、他のクラスが五組に勝ち譲ってねえ?!」
「ヤバい! やりすぎたか!」
「五組に連合軍を組まれてしまった!」
お昼休憩には、すっかり頭を抱える一組の仲間たち。
「僕の計算によると、午後からの競技で他のクラスが五組を勝たせたとしても、最後のクラス対抗リレーで五組に勝てば、逆転されることはない」
「おお! 柳の頭脳が解を導き出したぞ!」
「リレーの八人、頼んだ!」
「特にアンカー、明翔!」
みんなが明翔に注目する。明翔は、悲し気に空になった大盛たらこパスタの器を見つめて腹をさする。
「足りない……」
「みんな! メシだ! 明翔に弁当を分けてくれ!」
「高崎くん、がんばってね!」
「これも食って! 高崎!」
「いいの?! ありがとう!」
うんうん、明翔は食えば食うほど力を発揮できる男だ。
みんなが献上物のように、弁当のおかずをパスタのフタに置いていく。
「こんだけ食って、走れませんでしたとは言えねえ! やったるぜ!」
「やったれ、明翔!」
絶対、五組にだけは負けねえ!
パン! とピストルが鳴った瞬間、二年一組の応援席に一直線に走ってきた。
いや、明翔が協力するとは言ってたけど、少しは自力でがんばってみろよ。
「タンクトップの先生! 工藤先生は?!」
工藤か。
見回すと、みんながラインギリギリまで集まってるからガラガラの長椅子を使って工藤先生が腕立て伏せをしている。
「工藤! 筋トレしてないで応援しろ!」
「工藤先生!」
「お? 俺か! 任せとけ!」
工藤先生が黒岩くんをお姫様抱っこして一番にゴールテープを切る。借り物が主体になってんだけど。いいのか、あれ。
「黒岩くん! やったね! 今ので総合一位だ!」
「うん!」
おーおー、目立ちたくなくて綱引き希望してたくせに、目立っちゃっても嬉しそうじゃねえの。
クラスメイトに取り囲まれて、黒岩くんが照れくさそうに笑う。
「深月もあっち行くかと思ってたわ」
ガラガラの長椅子に足を広げて座る俺の隣に同じように颯太が座り、明翔たちを目で示す。
「俺ゃあんなはしゃげねえわ」
明翔は大玉を転がす西郷と淀橋に大きな声援を送っている。
「すげえよな、小学生でも人の競技にあそこまで熱くならねえよ」
「俺ら去年、出番終わったら麻雀してたもんな」
「そうそう。帰ってきたらもう全部終わってたんよな」
青空の下、春の体育大会が盛り上がりを見せている。明翔の大声につられてか、他クラスもどんどん応援の熱が増していく。
「佐藤くん、呂久村くん」
「わあっ。びっくりしちゃったなっ」
「驚かせてすまないね。二百メートルを華麗に一位で走ったものだから、少し疲れていて僕の存在感が薄れていたようだ」
一位を取った柳が褒めてほしそうに颯太を見つめる。悪いな、俺ら見てなかったわ。
「それはそうと、作戦会議だそうだ。みんな集まっているから、二人を呼びに来たんだ」
「作戦会議? 何の?」
「玉入れ」
「玉入れ?」
明翔は言う。
「団体競技は配点が高い。午前の部の肝は、玉入れだ」
玉入れが始まった。赤い玉と白い玉、より多くを五分という短い時間の中でカゴに入れた方の勝ち。
我らにあてがわれたのは、赤い玉とカゴ。
まず、腹回りが大きい男子たち、すなわちデブが四人並んで四つん這いになる。その上に体を半分ずつズラして、三人が同じように乗る。さらに二人が重なり、一番上に颯太が立つ。
そう、まず我々はピラミッドを作った。確実に玉を入れるためのシステムを構築すれば効率がいいのではないか、と柳の案である。
俺ら背の高い者、明翔のようにコントロールに自信がある者はその間に玉を集め、ピラミッドが完成するとすぐさま颯太に渡す。颯太の手はカゴに届き、百発百中で玉はカゴに収まっていく。お次は、黒岩くんや女子たち小さき者が拾ってきた玉を颯太へと橋渡し役になる。
「すげえ! コンプリート狙えるよ、颯太! 落とさないように、慎重に乗せろ! いける! いける!」
ついに、最後の玉がカゴに入れられたと同時に、終了を知らせるピストルが鳴った。
「すっげえ! 玉入れってコンプ可能だったんだ!」
「作戦成功!」
パァン、と明翔とハイタッチを交わす。
「ズルじゃん! 一組!」
「反則だ!」
ズラッと並んだ五組の面々がこちらを睨んでいる。学級委員長・柳龍二がズイッと前へ出た。
「どこのルールブックに玉入れでピラミッドを作るのが反則だなんて書いているんだい? 負け犬の遠吠えはみっともないよ」
柳っていっつもひと言多いんだよなあ。五組のみなさんが顔を真っ赤にしている。
「来年からルールブックに書かれるな」
「パイオニアだけが得られる特権なのだよ」
はーっはっはっは。
勝者の高笑いが響く。
だが、その後、圧倒的一位だった一組をものすごい勢いで五組が追い上げてきた。
「てか、他のクラスが五組に勝ち譲ってねえ?!」
「ヤバい! やりすぎたか!」
「五組に連合軍を組まれてしまった!」
お昼休憩には、すっかり頭を抱える一組の仲間たち。
「僕の計算によると、午後からの競技で他のクラスが五組を勝たせたとしても、最後のクラス対抗リレーで五組に勝てば、逆転されることはない」
「おお! 柳の頭脳が解を導き出したぞ!」
「リレーの八人、頼んだ!」
「特にアンカー、明翔!」
みんなが明翔に注目する。明翔は、悲し気に空になった大盛たらこパスタの器を見つめて腹をさする。
「足りない……」
「みんな! メシだ! 明翔に弁当を分けてくれ!」
「高崎くん、がんばってね!」
「これも食って! 高崎!」
「いいの?! ありがとう!」
うんうん、明翔は食えば食うほど力を発揮できる男だ。
みんなが献上物のように、弁当のおかずをパスタのフタに置いていく。
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