BL?! ちがう、濃い友情!

はちみつ電車

文字の大きさ
16 / 39

16.優勝の先に待っていたもの

 よし、一人抜かした! あとは、あのクソ野郎だけ!
 コーナーをまわり、五組の走者の背中を捉えた。もうちょっと! もうちょっとなんだけど、距離が足りない。くっそ、あと三メートルあれば絶対抜かせたのに!

 明翔の手にバトンを託す。

「明翔、走れ!」

 リレーなんだから、言われなくても走るっての。そんなツッコミもなく、目が合うと、明翔は笑った。

「走る!」

 言った瞬間、目の前から明翔が消えた。
 うわー……。明翔の本気の走り、初めて見たのかも。めちゃくちゃ速い。明翔のスピードに、他の学年やクラスからもワーッと歓声が沸く。

 すげえな、明翔。今、学校中の人間が明翔に目を奪われている。
 間もなく、明翔が五組の野郎に接近した。

「行け! 明翔! 抜かせー!」

 驚くべきことに、明翔が更に加速する。ラストの直線では、後ろを振り返って確認する余裕すらある。
 最後は、大きくジャンプしてゴールテープを切った。

「幅跳びじゃねーんだよ!」

 思わず言うと笑いが起き、明翔がこちらに向けて親指を立てた。
 ワッとクラスメイトが明翔へと駆け寄る。もちろん、俺も。

「明翔! すげえな! めっちゃ速かった!」
「深月の声が聞こえたから、がんばれた!」
「えっ」

 なに急にかわいいこと言ってんの。思わずドキッとしてしまう。だって、明翔めちゃくちゃ笑顔なんだもん。

 得点板にリレーの加点がされる。よっしゃ! 明翔と目を合わせ、微笑み合う。

『閉会式を行います』

 水筒をリュックに入れたり帰る支度をしていた手を止め、クラスごとに整列する。

「優勝旗って、二人でもらいに行くんかな?」
「そうでしょ、二人とも実行委員なんだし」

 とりあえず、出席番号順に並ぶから、

「優勝、二年一組!」
『二年一組の実行委員は、前に出てきてください』

 と放送され、列の後方からダダダと明翔に並ぶ。

「優勝おめでとう!」

 校長から優勝旗を二人で受け取り、一礼した。
 そのまま列に戻ろうとしたら、

「優勝したクラスは一番前で優勝旗持つんだよ!」

 と工藤先生に腕をつかまれる。

 あ、そうなの?
 去年麻雀してたから、知らなかった。

 案外ズシッと重量のある優勝旗。しょぼいと思ってた春の体育大会だけど、優勝は、思ったよりも重かった。

 終わっちゃうんだ。
 高校三年間で三回しかないうちの、二回目。

「特に、最後のリレー! 感動しました。選手のがんばりはもちろん、全校生徒が一体となっての応援!」

 校長の話が長い。腕が痛くなってくる。
 やっと長い閉会式が終わり、解散である。だが、優勝した我らにはまだ、教室に優勝旗を飾るという仕事が残っている。

「うわあ、こんな重いんだねっ」

 柳が慌てて颯太が持つ優勝旗に手を添える。だが、実は大丈夫。颯太はかわいらしく重いフリをしてるだけである。

「去年も思いっきりやってたら、楽しかったのかな」
「……かもな」

 たぶん、明翔がいたから楽しかったんだ。黒岩くんと何やら話している明翔の笑顔に吸い寄せられるように、一歩一歩、近付く。

「僕、こんなに体育大会が楽しかったのなんて、初めてだった。高崎くんのおかげだよ。僕……高崎くん、好きだな」

 は?
 黒岩くんが頬を赤らめつつ、上目遣いに明翔を見上げる。キョトンとした明翔が、ニコッと笑った。

「好きって言われるのって、嬉しいもんだね。ありがとう!」

 超サラッと流されたな、黒岩くん。みんなお友達、ボーダーレスな明翔にとっては、君もその他大勢も同じなのじゃ。ファイト。

「深月!」
「あいよ」
「俺、深月が好きだ」
「……え?」

 明翔がほんのり紅潮しつつも、嬉しそうに笑っている。

「おー、好きって思うだけでも楽しかったけど、言うとまた楽しいね」
「……楽しい……てか、え? 明翔、何言ってんの?」
「俺、小一の時にいとこの運動会の応援に行って、トイレ行きたくなったんだよ」
「うん、前に聞いた」
「トイレトイレ言ってる子についてって無事にトイレに着いて、その子も手を洗ってたんだけど、ハンカチ持ってないみたいで、手をブンブン振ってたの」
「……え」
「どうぞ、ってハンカチ貸したら、その子、ありがとう! って持って行っちゃって」
「……これ……」

 無意識に、ハンカチ様をポッケから出す。

「俺のだわ。長いこと、大事にしててくれてありがとうね。深月、好きだなあって思った」
「……明翔の?!」

 俺、小一の時に明翔と会ってたの?!
 一条と出会った、小一に……。

「あ、ごめん、長いことありがとう。えーと……返す」
「いいよ。お守りなんでしょ」

 差し出した手を明翔が丸めるから、ハンカチをギュッと握ることとなる。
 明翔の手がぬくい。俺を見上げる笑顔がかわいい。笑ってるのは、照れ隠しなんだろうか。耳が真っ赤。

「……リアルBL……」

 は?!
 ハッとして周りを見ると、閉会式も終わり人はまばらながら、人はいる。

 隠れBL大好きさん・ゆりが興奮のあまりひざをガクガクさせながら、俺を指差していた。

 ――リアル……BL?!

「ちがう!」
「高崎くん、僕、高崎くんが好きだ!」
「ありがとう! 俺も深月が好きだよ」
「三角関係?! BLの三角関係?!」

 んー、と明翔があごに指をつけて考えている様子。

「黒岩くんも俺も勝手に好きなだけだから、三角ではないんじゃない? あ、でも、深月が俺を好きなら、俺に向かう矢印二つの三角になるか」

 頭の中に、すんなりと人物相関図が浮かんで、慌てて消し去る。

「明翔、何言ってんの?! 俺たち、親友じゃん?!」

 詰め寄る俺に、明翔は爽やかな笑顔を返す。

「びっくりだよね。何がきっかけで親友を好きになるか分かんないもんだわ。こんな、すっかり忘れてたハンカチ一枚で」

 俺の手の中にある、何回も俺に力を与えしハンカチ様。

「なっ……バカなこと言ってねえで、優勝旗を教室に飾りに行くぞ!」
「待って! リアルBL!」
「ちがう!」

 明翔の背中を押すも、あ、と明翔が振り返った。

「黒岩くん、俺は深月が好きだから、俺のことはあきらめてね」
「いいから!」

 何を堂々と言うとるんじゃ。急かすように明翔の背中をバシバシ叩く。
 そんな俺の背中にも、黒岩くんの声が届いた。

「僕は、あきらめないからー!」
感想 0

あなたにおすすめの小説

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

人気アイドルグループのリーダーは、気苦労が絶えない

タタミ
BL
大人気5人組アイドルグループ・JETのリーダーである矢代頼は、気苦労が絶えない。 対メンバー、対事務所、対仕事の全てにおいて潤滑剤役を果たす日々を送る最中、矢代は人気2トップの御厨と立花が『仲が良い』では片付けられない距離感になっていることが気にかかり──

【完結】Ωになりたくない僕には運命なんて必要ない!

なつか
BL
≪登場人物≫ 七海 千歳(ななみ ちとせ):高校三年生。二次性、未確定。新聞部所属。 佐久間 累(さくま るい):高校一年生。二次性、α。バスケットボール部所属。 田辺 湊(たなべ みなと):千歳の同級生。二次性、α。新聞部所属。 ≪あらすじ≫ α、β、Ωという二次性が存在する世界。通常10歳で確定する二次性が、千歳は高校三年生になった今でも未確定のまま。 そのことを隠してβとして高校生活を送っていた千歳の前に現れたαの累。彼は千歳の運命の番だった。 運命の番である累がそばにいると、千歳はΩになってしまうかもしれない。だから、近づかないようにしようと思ってるのに、そんな千歳にかまうことなく累はぐいぐいと迫ってくる。しかも、βだと思っていた友人の湊も実はαだったことが判明。 二人にのαに挟まれ、果たして千歳はβとして生きていくことができるのか。

冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される

マンスーン
BL
​王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。 泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。

【完結】恋した君は別の誰かが好きだから

海月 ぴけ
BL
本編は完結しました。後日、おまけ&アフターストーリー随筆予定。 青春BLカップ31位。 BETありがとうございました。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 俺が好きになった人は、別の誰かが好きだからーー。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 二つの視点から見た、片思い恋愛模様。 じれきゅん ギャップ攻め

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

魔王を倒した勇者の凱旋に、親友の俺だけが行かなかった理由

スノウマン(ユッキー)
BL
スラム育ちの少年二人は、15歳になり神の祝福でスキルを得た事で道をたがえる。彼らはやがて青年となり、片方は魔王討伐に旅立つ勇者として華々しい活躍をし、もう片方はただ彼の帰還を待つ相変わらずスラム暮らしの存在となる。 これは何も持たない青年がただ勇者の帰りを待つ日常を描いた作品です。 無自覚両片想いの勇者×親友。 読了後、もう一度だけ読み直して頂けると何か見える世界が変わるかもしれません。

追放されたおまけの聖女♂は冷徹王太子の腕の中から離してもらえない〜今さら戻れと言われても、もうこの人の魔力しか受け付けません!〜

たら昆布
BL
聖女のおまけで召喚されたと思われて追放された不憫受けが拾われて愛される話