BL?! ちがう、濃い友情!

はちみつ電車

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24.約束

 ツンが明翔の胸に頬をこすりつけた。
 初めて一人で留守番する子供みたいな顔して、明翔がツンの頭をなでる。

 気高くて人を寄せ付けず、美しいツン。ツンは明翔に自分と似たものを感じたのかもしれない。発露の仕方は真逆だけど。
 心を許した明翔にだけ懐くツン。明翔は逆に、誰とでもすぐに仲良くなる。明翔が誰とでもお友達になってしまうのは、きっと、根っこが寂しいからなんだ。

「無理しないで、泣きたい時には泣けばいいんだぞ?」
「ううん、俺は泣かない。じいちゃんと父ちゃんが、明翔は泣くなってしょっちゅう言ってたから」
「男たるもの泣くな、みたいな?」
「たぶん、俺の顔のせいだと思う。二人とも野球やってたし、こういう女顔はいじめられたりしてたみたい。ばあちゃんと母親もそっくりだから、俺たちの遺伝子が弱くてごめんな、って冗談よく言ってた」
「ばあちゃんの遺伝子すげえな?!」

「少しでも男らしくなるようにって、プロテインとか背が伸びるドリンクをお茶代わりに飲まされてさ」
「それで、やたら筋肉ついてたんじゃね?」
「そうかも! 飲まなくなったから最近落ちてんのか」
「体質じゃなくて環境に要因があったんだな」
「おかげで男らしい体形になったから、感謝してる。深月みたいに、俺のこと女だと勘違いする方が珍しいよ」

 たしかに、身長百七十五もあったら普通は女だと思わないのかもしれないが、俺には明翔の顔は女だとインプットされてしまっている。

 一条を見つめ続けてたから……。

「と、とにかく! 俺はじいちゃんや父ちゃんみたいに明翔の力にはなれねえけど、誰よりも明翔が大事だ。だから遠慮なく、俺に甘えろ」

 明翔の目の透明感が増す。涙の幕が張ったように。でも、明翔はこらえて笑った。

「深月はもう、俺の力になってるよ」
「いや、俺まじでなんっもしてねえ」

 ペロッと、ツンが明翔の手を舐める。……ん?

「優が不登校になって、中退するしかないだろうって聞いた時、うちの学校に来ればいいのにって思った。でも、言えなかった。せっかく今学校が楽しいのに、優が来たらぐちゃぐちゃにされるんじゃないか、って」

 明翔と一条の間にあった長い時間は、俺が思うより重いものなのかもしれない。俺なんかじゃ、とても明翔を救えない……。

「前にここに来た時にさ、俺がバカなマネしたら後を追うとまで言ってくれて、すげえ、めっちゃくちゃ嬉しかった。深月さえいれば、他はぐちゃぐちゃにされてもいいや、って思えたから、家に帰って優を転校させてくれって言えた」
「すごいじゃん。偉いな」
「深月のおかげだよ」

 明翔の笑顔が胸に沁みる。俺なんか何もできないけど、それでも、明翔の苦しみを少しでも減らせたなら、嬉しい。

「なあ、明翔。ひとつだけ、約束してほしい」
「約束?」
「もしも、万が一、どう――しても自分で自分の人生を終わらせたくなったら、先に俺を終わらせに来い」
「え? 深月死んじゃうよ?」

 うん、そう。
 俺も体力には自信あるけど、明翔の身体能力は俺を上回る。勝てないだろう。

「まずは俺を殺してから、本当に人生を終えていいのか、もう一回よく考えろ」
「俺の気まぐれで殺されていいの? 俺、結構気まぐれさんだよ」
「知ってる。そういうとこも猫っぽい。でも、俺が死んで、やっぱやべーな、って明翔が生きてくれたら、それでいい」
「何それ。どこまで悟り開いちゃったの」
「俺が一番納得できる結論がこれだったの。だから、約束して」

 ドラマの予告が流れる。この後すぐ始まるらしい。約束しないなら、最終回楽しみにしてたのにテレビ消すからな。

 テレビに向いていた明翔の顔が、こちらに戻ってくる。

「分かった! 先に深月を殺ってから、自分を殺る!」
「できれば俺のことも殺らんでほしい」

 良かった、ひとまず、絶対に取り付けたかった約束は取り付けた。
 ホッとした俺に、明翔は無邪気に笑いかける。

「ねえ、なんでそんなこと言ってくれんの? 俺のこと好きなの?」
「そっ、そりゃ好きだよ。親友なんだから」
「じゃあさ、親友と別ゲージで俺のことどれくらい好き?」
「あ! 明翔、缶えぼ始まったぞ! 楽しみにしてた最終回!」
「はじめはこれまでのお話だからいいよ。ねえ、どれくらい好き?」
「もー、明翔」
「言わなきゃ、テレビ消すよ」

 明翔がパッとテレビ台のリモコンを手に取った。

 もー、この子は。
 俺んちのテレビだっての!
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