BL?! ちがう、濃い友情!

はちみつ電車

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27.別れの理由

 四時間目の国語の授業は、ちーちゃん先生だ。
 分かりやすい解説、聞き取りやすい滑舌の良い声。先生に向いてそう。あのちーちゃんが……俺も感慨深い。

 チャイムが鳴った。
 ホッと息を吐いて、ちーちゃんは教科書を閉じた。

「先生! 一緒にお昼ごはんを食べましょう!」
「天気がいいから、中庭とかどうですか?!」

 柳と一条が立ち上がって手を挙げる。

「わー、教育実習って感じ! 行きましょ、行きましょ」

 ちーちゃんが笑ってついて来てくれる。
 見た目は真面目な先生になってるけど、ノリの軽さは変わってない。

 中庭にレジャーシートを敷いて、ピクニック気分。
 ちーちゃんはピンクの丸っこいお弁当箱を置いた。

「手作りですか? いいですね、家庭的で」
「どうせ冷凍食品をチンしただけでしょう。そうですよね」

 柳がズイッとちーちゃんに迫る。エヘッとちーちゃんは笑った。

「私お料理できないから、全部冷凍食品なんだけどー」

 言いながら開けた弁当は、手作りだとか冷凍食品だとか判別できないほどにぐっちゃぐちゃである。

「やべ。バイクかっ飛ばしすぎたか」

 中学生の時からバイクに憧れていたちーちゃんだが、今でも乗ってるんだな。懐かし。

「ちーちゃん……」

 颯太も同じように懐かしくなったんだろうか。声が漏れる。
 ちーちゃんが驚いたようにジッと颯太を見る。

「あ……もしかして、颯ちゃん?」
「ピンポンピンポーン!」
「授業中もかわいい子がいるなとは思ってたの。まさか颯ちゃんだなんて……その、だいぶ印象が違うから」

 颯太がちーちゃんと最後に会った時はまだ小学生で、芳樹くんちーちゃんと同じくバリバリのヤンキーだった。
 ちーちゃんが俺を指差す。

「じゃあ、ろっくん?! 変わってないね。昔っから老けてたもんね」
「大人びていると言ってほしい」
「わあ、懐かしいー。久しぶり、元気だった?」

 昔のままの笑顔のちーちゃんに、更に懐かしさが増す。ろっくんなんて呼び方するの、ちーちゃんだけだわ。

「時に先生。佐藤くんのお兄さんをフッた理由を聞かせていただきたい」
「え?」

 柳、単刀直入。
 ちーちゃんは困ったように目を伏せる。

「……言いたくないわ」
「なんでですか!」
「颯ちゃん、よっくんはなんて言ってるの?」
「何も」
「……そう」

 チッ、とちーちゃんの舌打ちが聞こえた。教師になろうという人が生徒の前で舌打ちはやめておこうか。

「教師になるなら、生徒の疑問には真摯に答えていただきたい。なぜ、佐藤くんのお兄さんをフッたんですか。家の事情ですよね? 佐藤くんとも付き合えないですよね?」
「違うけど」
「もうハッキリ言ってください、先生!」
「佐藤くんは先生のことが好きなんですよ! 生徒の心を踏みにじるつもりですか! それでもあなたは教育実習生ですか!」
「そうですよ! 颯太は生涯に愛する女性は一人と決めているような男なんだ! その一人にあなたを選ぼうとしてるのに!」

 柳と明翔がちーちゃんに詰め寄る。

「そうなの? 颯ちゃん」

 颯太、腹をくくって言うべきだ。漢を見せてくれ、颯太!
 小さな手をグッと握り込み、颯太が顔を上げ、ちーちゃんの目を見つめる。

「俺、ちーちゃんのことが」
「やめて! 言わないで、颯ちゃん」
「え……」
「ごめんなさい、私、颯ちゃんとどうこうは考えられないの」

 颯太が傷ついた様子で言葉を失う。
 思わず、キッとちーちゃんを睨んでしまう。

「なんでだよ! 颯太の気持ちを聞くくらい、聞いてくれてもいいだろ!」
「颯太の兄ちゃんとは別れてるんだし、一回、颯太を男として見てやれよ!」
「佐藤くんが納得してスッパリあきらめがつくように説明してください!」
「ボクたちのかわいいマスコットを泣かせる女なんか、BLにいらない!」

 俺たちに取り囲まれたちーちゃんは、そっと視線を颯太に合わせた。

「分かった、言うわ……。私がよっくんと別れた理由は……」

 ゴクッとつばを飲む音すら明翔に聞こえてしまいそうな静寂。

「よっくん、バカスカ浮気してたの。私が信じ切ってるのをいいことに、私の友達とも何人も。よっくんの弟なんて、どうせ同じように惚れっぽくて同時に何人もの女を好きになるんだわと思えちゃって、無理」

 ……それは、無理だなあ……。

「嫌なこと思い出させて、ごめんなさい。俺が言ったことは忘れてください。男として見たらなおさら無理だわ」
「とても正当な理由で逆に驚いています。完全に佐藤くんのお兄さんが悪い」
「同時に何人も浮気とか、最低」

 別に颯太が浮気をしたわけではないのだが、みんな冷ややかな目で颯太を見ている。

「……まさか、自分の兄貴がそんな浮気野郎だったなんて……」
「言っちゃあ悪いが、颯太、お前にもその傾向はある。颯太はこれまで通り、生涯で愛するのは一人だけだと胸に刻め」
「うん、そうする」

 颯太がガブッと大きなメロンパンに食らいつく。さあ、ごはんを食べようか。
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