BL?! ちがう、濃い友情!

はちみつ電車

文字の大きさ
29 / 39

29.呂久村深月のひったくり事件

 明日から、楽しい楽しい夏休みである。
 高崎明翔、佐藤颯太、柳龍二、一条優と共に、ショッピングセンターのフードコートで遅い昼食をとった。手のひらには三枚の硬貨。

「やべー、あと三円しかねえんだけど」
「やばすぎるだろ!」
「おどろきラーメンで残金三円なのに、よくステーキどんと迷ったねっ」
「ラーメンにした俺天才じゃね?」
「財布の中身も把握できていない愚人だよ」
「うるせえ、柳。今日は金曜日だからいいの! 生活費が振り込まれてるの!」
「残り三円まで綺麗に使い切ったってことか。呂久村、ある意味すごいね」
「まあね」
「ある意味とは決して良い意味じゃないよ」
「一条もうるせえ」
「ねえ、深月。金おろしといたら? ATMあるよ」

 お。おろしとくか。
 母親からと中里さんから、それぞれ振り込まれているのを確認して、全額おろす。これは生活費用に作られた口座である。躊躇はない。

「なあなあ、明日プールでも行かない?」
「まったく、呂久村くんは。金を手に入れた途端散財しようとしているね」
「来週お祭りだよっ。みんなで行きたいなっ」
「祭りいいね! 今年こそは負けねえからな、優」
「呂久村と一日デートの権利でも賭ける?」

 明日プール行く話わい!

 左手にハンディファン、右手におろした金であおぎながら頬に風を送る。
 歩道に出てほどなく、ブオンという音と共に指と指がくっついた。

「ん?」

 右手に持ってた金がない。横を走って行ったバイクの後ろに乗っている手がこちらにヒラヒラと金を見せつける。

「盗られた! ひったくりだ!」

 まじか!
 一瞬呆然としたが、その金がなければプールどころかメシも食えない。

「待て!」

 必死に走るも、バイクに追いつけるはずなどない。やがて、バイクは見えなくなった。

「……金……」

 ……嘘だろ……。一週間分の生活費が……。

 ガックリとアスファルトにひざを着く。
 やべえ。どうしよう。
 アスファルトに汗が落ちた。

「人の金を盗るなんて卑劣なマネしやがって、あいつら許さねえ!」
「颯太! 一週間颯太の家でメシ食わせて! 朝昼晩!」
「そもそも、現ナマをしまわねえ深月にも問題があるよねっ」
「それな! 絶対親に怒られる! ヤバい!」

 頭を抱えて道路に座り込んだ。
 明翔と一条もさすがに心配そうな顔をして駆けつける。明翔が俺の肩に手を置いて、覗き込んできた。

「とりあえず警察に通報しようよ、深月」
「犯人どんなだっけ?! 黒いバイクで黒い上下で黒いヘルメットで」
「そう簡単に犯人は見つかりそうにないね」
「ヤバい! なんであいつら真っ黒なんだよ!」
「呂久村くん」

 柳がスマホを差し出している。
 人の大ピンチに何を呑気に電話しとんじゃ、このクソ柳!

「呂久村くんの連絡先と住所を伝えて」
「誰に」
「警察」
「警察?!」

 連絡先と住所を伝えて、電話を切る。

「バイクのナンバーを伝えたから、すぐに捕まると思うよ」
「覚えてたの?!」
「僕、両目とも視力二・〇以上あるからね。じっくり覚えさせてもらった」
「すげえ! やるじゃん!」

 スマホが鳴る。見ると、着信の番号の末尾が0110。

「うわ、知らねえ番号だ。俺、犯罪組織に狙われてる?!」
「それは警察の番号だよ」

 慌てて出ると、なんともう犯人二人を確保したと言う。

「すげえ! 日本の警察めちゃくちゃ優秀じゃん!」
「ははは、ありがとう」
「は? 柳を褒めてんじゃねえよ」
「僕の父が警察官でね。父の仕事が認められたようで嬉しいんだ」
「そっか! 警察署の場所分かる? なんか、署まで行かねえとダメらしくてさ」
「この僕が案内してあげてもいいよ」
「頼むわ。じゃー、俺ら警察署行ってくる!」
「うん! 気を付けてね~」

 柳は上から目線でムカつくが、柳父は優秀で部下に慕われているらしい。警官みんなから丁寧な扱いを受け、警察署を出てきた時にはすっかりテンションが上がっていた。

「柳がナンバー覚えてくれてたおかげだわ! まじヤバかったー」
「では、文化祭の衣装代を払ってくれないか。僕が立て替えたままだろう」
「忘れてた! はい、感謝の分三円おまけしてやるよ」
「顔と同じで言うことが貧乏くさいね」
「誰の顔が貧乏くさいってんだ。モテようとして伊達メガネしてるヤツに言われたくねえわ」

 警察署脇に立つ街灯のライトがパッとついた。手続きに時間がかかり、夏とはいえ、すっかり薄暗い。
 街灯の下には、自転車やバイクが並んでいる。黒いバイクに腰かける黒い革パンの男がタバコを吸っていたことに、俺はまるで気付かなかった。
感想 0

あなたにおすすめの小説

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

人気アイドルグループのリーダーは、気苦労が絶えない

タタミ
BL
大人気5人組アイドルグループ・JETのリーダーである矢代頼は、気苦労が絶えない。 対メンバー、対事務所、対仕事の全てにおいて潤滑剤役を果たす日々を送る最中、矢代は人気2トップの御厨と立花が『仲が良い』では片付けられない距離感になっていることが気にかかり──

【完結】Ωになりたくない僕には運命なんて必要ない!

なつか
BL
≪登場人物≫ 七海 千歳(ななみ ちとせ):高校三年生。二次性、未確定。新聞部所属。 佐久間 累(さくま るい):高校一年生。二次性、α。バスケットボール部所属。 田辺 湊(たなべ みなと):千歳の同級生。二次性、α。新聞部所属。 ≪あらすじ≫ α、β、Ωという二次性が存在する世界。通常10歳で確定する二次性が、千歳は高校三年生になった今でも未確定のまま。 そのことを隠してβとして高校生活を送っていた千歳の前に現れたαの累。彼は千歳の運命の番だった。 運命の番である累がそばにいると、千歳はΩになってしまうかもしれない。だから、近づかないようにしようと思ってるのに、そんな千歳にかまうことなく累はぐいぐいと迫ってくる。しかも、βだと思っていた友人の湊も実はαだったことが判明。 二人にのαに挟まれ、果たして千歳はβとして生きていくことができるのか。

冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される

マンスーン
BL
​王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。 泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。

【完結】恋した君は別の誰かが好きだから

海月 ぴけ
BL
本編は完結しました。後日、おまけ&アフターストーリー随筆予定。 青春BLカップ31位。 BETありがとうございました。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 俺が好きになった人は、別の誰かが好きだからーー。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 二つの視点から見た、片思い恋愛模様。 じれきゅん ギャップ攻め

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

魔王を倒した勇者の凱旋に、親友の俺だけが行かなかった理由

スノウマン(ユッキー)
BL
スラム育ちの少年二人は、15歳になり神の祝福でスキルを得た事で道をたがえる。彼らはやがて青年となり、片方は魔王討伐に旅立つ勇者として華々しい活躍をし、もう片方はただ彼の帰還を待つ相変わらずスラム暮らしの存在となる。 これは何も持たない青年がただ勇者の帰りを待つ日常を描いた作品です。 無自覚両片想いの勇者×親友。 読了後、もう一度だけ読み直して頂けると何か見える世界が変わるかもしれません。

追放されたおまけの聖女♂は冷徹王太子の腕の中から離してもらえない〜今さら戻れと言われても、もうこの人の魔力しか受け付けません!〜

たら昆布
BL
聖女のおまけで召喚されたと思われて追放された不憫受けが拾われて愛される話