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32.呂久村深月の有限無限
久しぶりの学校である。てか、まだまだこんなに暑いんだから、夏休みを延長するべきだと思う。
教室に入ると、俺を見つけた明翔が席に戻ってくる。
「おはよ。黒岩くんがどうかした?」
「おはよう! 夏休み中、いろいろ誘ってくれたのに全部断っちゃったから、ごめんねって言っとこうと思って」
「へー、黒岩くんたらいろいろ誘ってたんだ。へー、そう」
黒岩くんと目が合うと、焦ったように黒岩くんは目をそらす。
「てか、全部断らんでも俺らが遊ぶ時に呼べば良かったんじゃね」
「呼んだんだけど、来なかったんだよね」
「へー、俺たちがいたんじゃ都合の悪いことでもあるんかしら」
「深月が怖いらしいよ」
「へー、俺デカいから背の低い黒岩くんには怖いのかなー」
「あ、そうかもね」
始業式が終わったら、すぐさま文化祭準備である。
夏休み明けからいきなり授業じゃないのはありがたい。だが、過密スケジュールだとは思う。文化祭、今週なんだもん。
「深月! 見て見て!」
言われてゆりを見ると、立派な執事服に身を包んでいる。立ち襟のドレスシャツの上にダークグレーのベスト、更にその上に黒いジャケット、黒いズボン。ジャケットは、前が短く流れるように後ろが長い。
「本格的すぎん?」
「優くんのソウルメイトが用意してくれたんだって! メイド服もめちゃかわいいよ! 優くんが着てる!」
ほんとだ。執事集団の中に、一人メイドさんがいる。
普段は長ズボンだから気にならないけど、足の細さがやっぱり女子だな。颯太は一条より小さいけど、もっと足に筋肉がついている。
「俺も着替えてくる! めっちゃマッサージしまくって、足細くなったんだよ!」
「え?」
食いまくってたから、ダイエットするとか言ってたことをすっかり忘れてた。マッサージは続けてたんだ。
明翔が一条へと走る。てか、あれを俺が着るのか……誰得。
「深月っ、おはようっ」
「はよー」
「いよいよ本格的に文化祭準備が始まったねっ」
「あれを俺らが着るんだって。まじかよ」
「信じらんねえ……」
心折れた颯太が俺の机に突っ伏した。任侠道に生きる颯太は女装なんか嫌だが、かわいい自信はあった。だが、いざメイド服を前に恥ずかしさが勝ったのであろう。
「うおおおお!」
響く低音の歓声。なんだ?
西郷と淀橋が目を見開いて教室後方を見ている。振り向くと、メイド服を着た同じような顔が同じツインテールで立っている。
「えっ……めちゃくちゃかわいい……」
颯太が言葉を失う。俺なんか声も出ない。
明翔の筋肉質な肩も一条の華奢な肩も、パフッとした服の膨らみで隠されてしまっている。黒い長そでワンピースの上から、白いフリルたっぷりのエプロンで体形の違いがほぼない。
同じような整った顔で同じ髪型で同じ服だと、もはや人形みたい。サイズの違う人形。
呆然としていたら、明翔が駆け寄ってくる。
「めっちゃ細くなったでしょ」
「うん……すげえ、がんばったんだなって感じ」
「そうだよ、メシの数だけマッサージするって決めてさ」
「なるほど、それなら痩せそうだわ」
「どう? 気に入った?」
「うん……すげえ、かわいい」
言っといて顔に熱がガーッと上がってくる。でも、これだけ変化するくらい俺のためにがんばってくれたんだから、俺もちゃんと言わなきゃ。
「俺、今日このカッコで準備しよーっと」
「え」
ちょ、待って。
カーテンの長さを合わせるため、明翔が窓際で背伸びをして腕を伸ばす。ひざ丈のワンピースの裾が上がり、太ももまであらわになる。
明翔が男だということはみんなよく分かってるはずなのに、男ってまじバカだなと思うほど、凝視してしまう。
板を切るために、片足を板に乗せてのこぎりを構えれば、スカートの中に注目してしまう。フリルで何も見えないのだが。
働き者の明翔はメイド服着てるのをすっかり忘れてしまったのか、あぐらをかいてコーラを開けた。
口元についたコーラを豪快に手で拭く。
「呂久村」
「なんだよ」
西郷と淀橋が俺の肩に手を置いた。同時にやるな。重い。
「意地張ってないで明翔と付き合っちゃえよ」
「意地張って付き合わねえんじゃねえし」
「じゃーなんで付き合わねえの」
「あのな。明翔は男だぞ」
女ですら、数だけは付き合ってきたけど、交際期間は最長でも夏休みを挟んだ三ヶ月。親友と違って、付き合うとは、期限があるのじゃ。
教室に入ると、俺を見つけた明翔が席に戻ってくる。
「おはよ。黒岩くんがどうかした?」
「おはよう! 夏休み中、いろいろ誘ってくれたのに全部断っちゃったから、ごめんねって言っとこうと思って」
「へー、黒岩くんたらいろいろ誘ってたんだ。へー、そう」
黒岩くんと目が合うと、焦ったように黒岩くんは目をそらす。
「てか、全部断らんでも俺らが遊ぶ時に呼べば良かったんじゃね」
「呼んだんだけど、来なかったんだよね」
「へー、俺たちがいたんじゃ都合の悪いことでもあるんかしら」
「深月が怖いらしいよ」
「へー、俺デカいから背の低い黒岩くんには怖いのかなー」
「あ、そうかもね」
始業式が終わったら、すぐさま文化祭準備である。
夏休み明けからいきなり授業じゃないのはありがたい。だが、過密スケジュールだとは思う。文化祭、今週なんだもん。
「深月! 見て見て!」
言われてゆりを見ると、立派な執事服に身を包んでいる。立ち襟のドレスシャツの上にダークグレーのベスト、更にその上に黒いジャケット、黒いズボン。ジャケットは、前が短く流れるように後ろが長い。
「本格的すぎん?」
「優くんのソウルメイトが用意してくれたんだって! メイド服もめちゃかわいいよ! 優くんが着てる!」
ほんとだ。執事集団の中に、一人メイドさんがいる。
普段は長ズボンだから気にならないけど、足の細さがやっぱり女子だな。颯太は一条より小さいけど、もっと足に筋肉がついている。
「俺も着替えてくる! めっちゃマッサージしまくって、足細くなったんだよ!」
「え?」
食いまくってたから、ダイエットするとか言ってたことをすっかり忘れてた。マッサージは続けてたんだ。
明翔が一条へと走る。てか、あれを俺が着るのか……誰得。
「深月っ、おはようっ」
「はよー」
「いよいよ本格的に文化祭準備が始まったねっ」
「あれを俺らが着るんだって。まじかよ」
「信じらんねえ……」
心折れた颯太が俺の机に突っ伏した。任侠道に生きる颯太は女装なんか嫌だが、かわいい自信はあった。だが、いざメイド服を前に恥ずかしさが勝ったのであろう。
「うおおおお!」
響く低音の歓声。なんだ?
西郷と淀橋が目を見開いて教室後方を見ている。振り向くと、メイド服を着た同じような顔が同じツインテールで立っている。
「えっ……めちゃくちゃかわいい……」
颯太が言葉を失う。俺なんか声も出ない。
明翔の筋肉質な肩も一条の華奢な肩も、パフッとした服の膨らみで隠されてしまっている。黒い長そでワンピースの上から、白いフリルたっぷりのエプロンで体形の違いがほぼない。
同じような整った顔で同じ髪型で同じ服だと、もはや人形みたい。サイズの違う人形。
呆然としていたら、明翔が駆け寄ってくる。
「めっちゃ細くなったでしょ」
「うん……すげえ、がんばったんだなって感じ」
「そうだよ、メシの数だけマッサージするって決めてさ」
「なるほど、それなら痩せそうだわ」
「どう? 気に入った?」
「うん……すげえ、かわいい」
言っといて顔に熱がガーッと上がってくる。でも、これだけ変化するくらい俺のためにがんばってくれたんだから、俺もちゃんと言わなきゃ。
「俺、今日このカッコで準備しよーっと」
「え」
ちょ、待って。
カーテンの長さを合わせるため、明翔が窓際で背伸びをして腕を伸ばす。ひざ丈のワンピースの裾が上がり、太ももまであらわになる。
明翔が男だということはみんなよく分かってるはずなのに、男ってまじバカだなと思うほど、凝視してしまう。
板を切るために、片足を板に乗せてのこぎりを構えれば、スカートの中に注目してしまう。フリルで何も見えないのだが。
働き者の明翔はメイド服着てるのをすっかり忘れてしまったのか、あぐらをかいてコーラを開けた。
口元についたコーラを豪快に手で拭く。
「呂久村」
「なんだよ」
西郷と淀橋が俺の肩に手を置いた。同時にやるな。重い。
「意地張ってないで明翔と付き合っちゃえよ」
「意地張って付き合わねえんじゃねえし」
「じゃーなんで付き合わねえの」
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