BL?! ちがう、濃い友情!

はちみつ電車

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33.高崎明翔の護衛

 メイド姿のツインテール明翔がカッターでシャッシャシャッシャとダンボールをカットしていく。カットされたダンボール片に俺がカラースプレーで色を付けていく。

「はあ、やっと終わった」

 中腰でなかなか大変な作業だったことだろう。明翔が腰を伸ばし、床に座り込んでコーラをプシュッと開けた。

「優くん、両面テープさっき使ってたよね」
「俺、高崎」
「あ。ごめん、間違えちゃった」

 ゆりがペコペコと頭を下げ、同じツインテールの一条を見つけて走っていく。

「まあ、同じ顔だからしょうがないよね」
「ヅラ外せばいいんじゃね?」
「さすがにヅラなしでこの格好はキツイ」
「なるほど」
「トイレ行ってこよ」

 明翔が教室を出て行って、入れ替わりのように一条がやって来た。

「ボクのレモンティー、こんなとこに置いていたのか」

 フォトスポット用に飾りつけ中の椅子に一条が座ってレモンティーを飲む。喉が渇くタイミングまで似てる。

「だいぶできてきたね」
「俺、こういうくり返し単純作業の才能あんのかも。だんだん楽しくなってきちゃってさあ」
「単純だから単純作業しかできない可能性」
「ねえわ!」
「明翔! ペンキのフタが開かなくてさあ」
「怪力でちゃちゃっと開けちゃってよ」

 西郷と淀橋がズイとペンキを差し出す。

「ボクは一条だ」
「あ。言われてみれば小さいな。ごめんごめん」

 もしや、髪型で見分けがつかなくなったから、みんなサイズ感で見分けてる? 二人が並んで立ってたら誰も間違えないのに、バラバラに作業しだした途端、混乱する者が続出している。

「まあ、同じ顔だから」
「同じじゃねえよ」
「え?」
「明翔と一条はたしかにドッペルゲンガー級に似てるけど、明翔は明翔、一条は一条だ」
「呂久村には見分けがつくとでも?」
「つくよ。別人なんだもん」
「へえ。もううんざりしてきてウィッグを取ろうかと思ったけど、そう言うなら着けておくよ」
「うんざりしてるなら取ればいいと思うよ」

 周りに気を遣うということを知らんのか。混乱を招くウィッグを着けたまま、一条は作業に戻っていった。

 かなり集中して作業してたから、俺も喉が渇いた。なのに、ペットボトルの中身はごく少量。
 買いに行くか。
 コーラとレモンティーは誰のか分からなくなってしまうから、またカフェオレを買う。

 教室に戻ると、明翔の姿がない。トイレにしては長くないか?
 一条なら、床に置いたカーテンの上に座り込んでレースを縫い付けている。

「一条、明翔まだ戻ってねえの?」

 あのカッコで男子トイレなんか行ったから、何かトラブルに巻き込まれてるんじゃ……。

「両面テープがなくなったから、百均に買いに行った」
「あのカッコで?!」

 慌てて教室を飛び出す。
 まあ、何かあったとしても明翔の身体能力ならば心配はないだろうが、この辺ガラの悪いヤツらも結構いる。

 学校から百均の方へと走っていくと、百メートルも離れてなさそうなところでウィッグを手に持った明翔が男に絡まれている。

「どこのお店ですか? 絶対に行きます!」
「あの、文化祭の準備をしてるだけで」

 ……衣装のクオリティが高すぎるんだよ。本物だと思われてるじゃん。

「週末、文化祭やるんで、良かったら来てください。二年一組っす」
「深月!」

 明翔がホッとしたように笑う。

「良かった、次々話しかけられて全然進めねえの」

 だろうね。
 今こうしてしゃべっていても、周りがジロジロと明翔を見ているのをヒシヒシと感じる。

 改めて外で明翔を見ると、そりゃ男共がほっとかねえわって感じ。

「ウィッグ外したらキツイんじゃなかったの?」
「こんだけ女に間違われるくらいなら、と思って外したけど、このカッコじゃやっぱり女に見えるみたい」

 はは……。力なく笑うと、つぶやいた。

「優と同じ顔なんだもんな」

 明翔がうつむいてしまう。

「深月、俺の代わりに両面テープと造花買ってきてくんない? 俺、学校に戻るわ」

 ……そうか。明翔が女に間違われるのを嫌がるのは、一条と同じ顔だと突きつけられるようで嫌なんだ。顔までも、一条と分け合わされてると感じるのかもしれない。

「同じ顔じゃねえよ。一条は一条、明翔は明翔だ」

 ウィッグをつかんで、明翔の頭にスッポリかぶせる。うん、一条そっくり。でも、明翔だ。

「逃げんなよ。明翔らしくねえ。俺が護衛についてやるから、ちゃんと自分で行きなさい」

 彼氏風に、明翔の肩を抱いて歩く。案の定、誰にも声をかけられずに買い出しを終えた。

「すげえ! あんだけ進めなかったのに、深月がいるだけでめっちゃスムーズ」

 そりゃ、彼氏連れをわざわざナンパするパワーファイターはまずいないのじゃ。

 明翔の肩に回した手に、明翔の手が触れる。ドキッとして明翔を見ると、明翔は笑って俺を見上げていた。

「女の子ってこんな気分なんかな。なんか、守られてるって安心する」
「ど、どうなんだろうね」

 びっくりした。
 俺も、明翔のアイデンティティを守りたい、って思ってたのがバレたのかと思った。
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