BL?! ちがう、濃い友情!

はちみつ電車

文字の大きさ
39 / 39

(39)呂久村深月は適当男子

「秋の体育祭の実行委員を」
「やります!」

 俺と後ろの席の深月が同時に立ち上がって手を挙げる。
 放課後には、早速体育祭実行委員会がある。

「いいの? 深月、英語の課題できてないのに」
「まー、なんとかなるっしょ」

 テストで点取れなかったから、課題落としたらヤバいって言ってたのに。
 深月は笑ってスニーカーの靴ひもがほどけたまま、大股でガシガシ歩く。

 ほんと、深月は適当で大雑把だな。

 そんな深月の様子が途中からソワソワとおかしかった。
 最後にグラウンドに出て、入退場門の位置を確認して、今回の実行委員会は終了。

「トイレトイレトイレトイレ」
「いってら~」

 深月がグラウンド奥のトイレに走る。
 俺ものんびり行こうとして、ふんわりと甘い香りがした。

 なんだろ……。
 見回して、小さなオレンジ色の花がたくさんついてる木に気付いた。

 鼻を近付けてみて、これだ、と確信する。
 へえ、小さいのに、めっちゃいい匂いする。好きだな、この匂い。

「いた! 明翔! どうした? そんな、中空を見つめて」

 俺がトイレ前にいなかったから、探してたらしい。
 体の大きな深月が俺の隣に立つ。

「中空を見てたんじゃなくて、この花を見てたの」
「花? ああ、金木犀きんもくせいか。この匂い嗅ぐと秋だなーって実感する」
「金木犀っていうんだ、この花」

 適当で大雑把なのに、こんな小さいかわいい花の名前知ってるって、なんか意外。お母さんが花好きだったりするのかな。

「明翔、考えすぎるのは良くないぞ。何かあるなら、俺に全部ぶちまけろ」

 ……ん?
 すっかり秋風が強くて涼しいのに、深月の額には汗がある。

 俺、深月のこと以外何も考えてなかったけど。
 考えすぎるのは深月の方なんだよなあ。たぶん、今もいろいろ考えて言葉たくさん浮かんでて、「俺にぶちまけろ」って、選んだんだろうな。

「あはは!」
「どーしたどーした」
「まじでどうもしないよ。いい匂いだなって思ってただけ」
「あ、そうなの? 元気なら良かった。急に花見てたとか言い出すから、センチメンタル入ってんのかと思ったわ」

 心底安心したように、深月が笑って、オレンジ色の花に鼻を近付ける。

 俺が元気なだけで、好きな人が笑ってくれる。
 何それ、俺めっちゃ幸せじゃん。

「深月」

 キュッと深月に抱きついたら、ドサッと音がした。カバンを落としたらしい。

「……ど……どうした?」
「好きだよ」

 俺も好きだよ、って言ってほしいけど、深月はそうそう言ってくれない。分かってる。
 両腕でグッと抱きしめてくれるだけで、十分。

「明翔」

 顔を上げると、深月が見たことないくらい優しい笑顔でキスをした。

「まったく、お前は学校で何させんだよ」
「俺はさせてないよ。深月がしたかったんじゃないの?」
「ばっ……いや、明翔がさせた。しろって顔してた」

 だって、俺は本当にハグだけで満足してたのに。

「帰るぞ! ツンとデレが腹すかせて待ってる」
「深月、カバン落としっぱなし!」

 カバンを拾う腕が赤い。
 顔も耳も首も、燃えてるかのように真っ赤。

 深月って、言葉にはしてくれないけど、全身からダダ漏れてるんだよなあ。

 ほどけた靴ひもを踏んで、深月が転びかける。
 慌てて駆け寄ると、気まずそうにカバンからコーラを差し出した。

 俺の好きなやつ。
 ぬるいし、さっきカバン落としてたから開けないけど。

 適当で大雑把な深月が、俺の好きなものを持ち歩いてる。
 やっぱり俺、今、人生最大級に幸せだ。
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

人気アイドルグループのリーダーは、気苦労が絶えない

タタミ
BL
大人気5人組アイドルグループ・JETのリーダーである矢代頼は、気苦労が絶えない。 対メンバー、対事務所、対仕事の全てにおいて潤滑剤役を果たす日々を送る最中、矢代は人気2トップの御厨と立花が『仲が良い』では片付けられない距離感になっていることが気にかかり──

【完結】Ωになりたくない僕には運命なんて必要ない!

なつか
BL
≪登場人物≫ 七海 千歳(ななみ ちとせ):高校三年生。二次性、未確定。新聞部所属。 佐久間 累(さくま るい):高校一年生。二次性、α。バスケットボール部所属。 田辺 湊(たなべ みなと):千歳の同級生。二次性、α。新聞部所属。 ≪あらすじ≫ α、β、Ωという二次性が存在する世界。通常10歳で確定する二次性が、千歳は高校三年生になった今でも未確定のまま。 そのことを隠してβとして高校生活を送っていた千歳の前に現れたαの累。彼は千歳の運命の番だった。 運命の番である累がそばにいると、千歳はΩになってしまうかもしれない。だから、近づかないようにしようと思ってるのに、そんな千歳にかまうことなく累はぐいぐいと迫ってくる。しかも、βだと思っていた友人の湊も実はαだったことが判明。 二人にのαに挟まれ、果たして千歳はβとして生きていくことができるのか。

冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される

マンスーン
BL
​王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。 泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。

【完結】恋した君は別の誰かが好きだから

海月 ぴけ
BL
本編は完結しました。後日、おまけ&アフターストーリー随筆予定。 青春BLカップ31位。 BETありがとうございました。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 俺が好きになった人は、別の誰かが好きだからーー。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 二つの視点から見た、片思い恋愛模様。 じれきゅん ギャップ攻め

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

魔王を倒した勇者の凱旋に、親友の俺だけが行かなかった理由

スノウマン(ユッキー)
BL
スラム育ちの少年二人は、15歳になり神の祝福でスキルを得た事で道をたがえる。彼らはやがて青年となり、片方は魔王討伐に旅立つ勇者として華々しい活躍をし、もう片方はただ彼の帰還を待つ相変わらずスラム暮らしの存在となる。 これは何も持たない青年がただ勇者の帰りを待つ日常を描いた作品です。 無自覚両片想いの勇者×親友。 読了後、もう一度だけ読み直して頂けると何か見える世界が変わるかもしれません。

追放されたおまけの聖女♂は冷徹王太子の腕の中から離してもらえない〜今さら戻れと言われても、もうこの人の魔力しか受け付けません!〜

たら昆布
BL
聖女のおまけで召喚されたと思われて追放された不憫受けが拾われて愛される話