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第二章 第三部 水際
5 境界の人
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「わ、わかってらあ!」
ベルがアランの手を振り切ってクイッと顔を上げた。
「ただちょっとびびっただけじゃねえかよ、なめんなよな!」
ふんっとアランに鼻で笑ってみせる。
「ならいい。いまさらあっち戻りたいとか、逃げたいなんて言い出したらどうしてやろうかと思ってたぜ」
「思うわけねえだろ!」
ベルがあごを突き出し、いーっ!と思いっきり舌を出した。
「そうこなくちゃな、さすがベルだ」
トーヤが笑いながらそう言ってベルのおでこをペシッと叩いた。
「まあな。けどなトーヤ、本当、どうするつもりなんだ?」
「さあてな、どうしようかねえ」
「たよんねえこと言ってんなよなあ」
ベルが立ち上がって上からトーヤをギロリと見下ろした。
「しっかりしてくれよな、おれらの運命がかかってんだぜ? 分かってんのかよ」
「運命ねえ」
そう言ってトーヤが苦々しく笑う。
「八年前、どんだけその言葉を聞かされてイラッとしたっけかなあ」
「前にそんだけイライラしたんならもう慣れただろ? ほら、とっととどうするか決めてくれよ」
「無茶苦茶言うよな」
トーヤはそう言いながらも楽しそうに笑う。
「まあおまえも力貸してくれよ、俺も色々考えるから」
「そりゃまあ、構わねえけどよ」
そう言いながらベルが頭を捻る。
「頼りにしてるぞ」
「おう!」
トーヤがからかうように言うが、ベルはなお一層必死に首を捻って考える。
その姿を見てトーヤ、アラン、ディレンが顔を見合わせてこっそりと笑った。
この状況において、ベルのこの姿は3人の心を少しばかりほぐしてくれたからだ。
「あ!」
ベルが右手で左の掌をぽん! と音を立ててそう言う。
「味方だよ味方!」
「味方?」
「そうだよ、トーヤも言ってたじゃねえか、味方を探せってさ」
「見極めろっつーたんだがな」
そう言って笑うと、
「どっちでもいいだろうが。とにかく探しゃいいじゃねえの?」
「ほう、どうやって?」
「そうだなあ」
ベルが腕組みをし、難しい顔をして続ける。
「とにかくな、葉っぱだの白だの言われておれも分かったことがあんだよ」
「ほうほう、なんだ?」
「マユリアやラーラ様、それから小さいシャンタルもその中にいるってこったよな?」
ほう、とディレンが感心した声を出した。
「だから、その中にいる人は味方としても力を借りにくい。だろ?」
「そうだな」
「なんでかってとな、中にいると葉っぱが増えても色が濁っても気がつきにくいからだ」
「うむ、そうだな」
「かといって、外にいる人に助けてくれってもそりゃ無理な話だ。だろ?」
「そうだな」
「だから、境目の人を探すんだよ」
「境目?」
「そう」
ベルが立ち上がり、腰に手を当てて3人を見下ろして続ける。
「宮と関係あるけど完全に中にはいない人だ。心当たりあるだろ?」
「ああ、ないことないな」
「だろ?」
「じゃあ一応聞くが、それは誰だ?」
「よし、教えてやろう」
さらに得意そうに続ける。
「ダルとか、リルとか、ミーヤさんだよ」
「ほう」
「月虹兵ってのは半分宮で半分街なんだろ? まさに境目じゃん」
「なるほどな」
「んで、リルは外の侍女か? 女月虹兵だったらやっぱり境目だ」
「そうかもな」
「そんでミーヤさんだけどな、きっと味方だ」
きっぱりと言い切る。
「その根拠は?」
トーヤは何も言わずアランが聞く。
「おれの勘」
一番得意そうにそう言って、ふふんと鼻を鳴らす。
「あだ!」
その途端、アランにはたかれた。
「当てになるかよ、そんなもん」
「ええ~」
こんな状況にも関わらず、ディレンが声を上げて笑った。
「嬢ちゃんは本当に不思議な子だよなあ」
ディレンは船の中でベルとシャンタルと3人で話していた時のことを思い出した。
「そうだよな、あの時もなんか特別な人間って気がしたんだよなあ」
「なんの話だ?」
トーヤが聞く。
「いや、この嬢ちゃんと話してるとな、なんでか分からんが不思議な気持ちんなるんだよなあ」
「あんまりバカだからでしょ」
無慈悲にアランがそう言う。
「かもな」
トーヤも笑ってそう言い、ベルがむくれる。
「けど、あの方も、シャンタルもおっしゃってたぞ」
「あいつはベルのファンだからな」
トーヤがそう言ってまた笑った。
「だがまあ、あの方とは違う意味で不思議な力を持ってるような気はするな」
ディレンはベルの勘の鋭さを知るような機会はなかった。だが、やはりなんとなくそのような印象があるらしい。
「だからな、まずミーヤさんだよ」
いきなりベルが言い、
「え、なんでだ!」
トーヤがかなり真剣にびっくりした顔になった。
「なんでって、だからおれの勘だよ。あの人は味方だ」
「おまえなあ」
アランが呆れたように言う。
「色々と昔の話を聞いたから、そんでそんな気がしてるだけだろうが」
「違う、あの人は味方だ」
きっぱりと言い切る。
「おまえなあ、見たこともねえのに」
実は見ている、とはベルには言えなかった。
一度見ていない振りをした今は、それを通すしかない。
「見たことなくったってな、トーヤの話聞いてたら、なんとなくどんな人か分かるんだよ」
「まあ、そういうのもないことはないな」
アランも助け舟を出す。
妹の言っていた「あの人がミーヤさんだ」が本当かどうかは分からないが、ここはそうしておく方がいいと思った。
ベルがアランの手を振り切ってクイッと顔を上げた。
「ただちょっとびびっただけじゃねえかよ、なめんなよな!」
ふんっとアランに鼻で笑ってみせる。
「ならいい。いまさらあっち戻りたいとか、逃げたいなんて言い出したらどうしてやろうかと思ってたぜ」
「思うわけねえだろ!」
ベルがあごを突き出し、いーっ!と思いっきり舌を出した。
「そうこなくちゃな、さすがベルだ」
トーヤが笑いながらそう言ってベルのおでこをペシッと叩いた。
「まあな。けどなトーヤ、本当、どうするつもりなんだ?」
「さあてな、どうしようかねえ」
「たよんねえこと言ってんなよなあ」
ベルが立ち上がって上からトーヤをギロリと見下ろした。
「しっかりしてくれよな、おれらの運命がかかってんだぜ? 分かってんのかよ」
「運命ねえ」
そう言ってトーヤが苦々しく笑う。
「八年前、どんだけその言葉を聞かされてイラッとしたっけかなあ」
「前にそんだけイライラしたんならもう慣れただろ? ほら、とっととどうするか決めてくれよ」
「無茶苦茶言うよな」
トーヤはそう言いながらも楽しそうに笑う。
「まあおまえも力貸してくれよ、俺も色々考えるから」
「そりゃまあ、構わねえけどよ」
そう言いながらベルが頭を捻る。
「頼りにしてるぞ」
「おう!」
トーヤがからかうように言うが、ベルはなお一層必死に首を捻って考える。
その姿を見てトーヤ、アラン、ディレンが顔を見合わせてこっそりと笑った。
この状況において、ベルのこの姿は3人の心を少しばかりほぐしてくれたからだ。
「あ!」
ベルが右手で左の掌をぽん! と音を立ててそう言う。
「味方だよ味方!」
「味方?」
「そうだよ、トーヤも言ってたじゃねえか、味方を探せってさ」
「見極めろっつーたんだがな」
そう言って笑うと、
「どっちでもいいだろうが。とにかく探しゃいいじゃねえの?」
「ほう、どうやって?」
「そうだなあ」
ベルが腕組みをし、難しい顔をして続ける。
「とにかくな、葉っぱだの白だの言われておれも分かったことがあんだよ」
「ほうほう、なんだ?」
「マユリアやラーラ様、それから小さいシャンタルもその中にいるってこったよな?」
ほう、とディレンが感心した声を出した。
「だから、その中にいる人は味方としても力を借りにくい。だろ?」
「そうだな」
「なんでかってとな、中にいると葉っぱが増えても色が濁っても気がつきにくいからだ」
「うむ、そうだな」
「かといって、外にいる人に助けてくれってもそりゃ無理な話だ。だろ?」
「そうだな」
「だから、境目の人を探すんだよ」
「境目?」
「そう」
ベルが立ち上がり、腰に手を当てて3人を見下ろして続ける。
「宮と関係あるけど完全に中にはいない人だ。心当たりあるだろ?」
「ああ、ないことないな」
「だろ?」
「じゃあ一応聞くが、それは誰だ?」
「よし、教えてやろう」
さらに得意そうに続ける。
「ダルとか、リルとか、ミーヤさんだよ」
「ほう」
「月虹兵ってのは半分宮で半分街なんだろ? まさに境目じゃん」
「なるほどな」
「んで、リルは外の侍女か? 女月虹兵だったらやっぱり境目だ」
「そうかもな」
「そんでミーヤさんだけどな、きっと味方だ」
きっぱりと言い切る。
「その根拠は?」
トーヤは何も言わずアランが聞く。
「おれの勘」
一番得意そうにそう言って、ふふんと鼻を鳴らす。
「あだ!」
その途端、アランにはたかれた。
「当てになるかよ、そんなもん」
「ええ~」
こんな状況にも関わらず、ディレンが声を上げて笑った。
「嬢ちゃんは本当に不思議な子だよなあ」
ディレンは船の中でベルとシャンタルと3人で話していた時のことを思い出した。
「そうだよな、あの時もなんか特別な人間って気がしたんだよなあ」
「なんの話だ?」
トーヤが聞く。
「いや、この嬢ちゃんと話してるとな、なんでか分からんが不思議な気持ちんなるんだよなあ」
「あんまりバカだからでしょ」
無慈悲にアランがそう言う。
「かもな」
トーヤも笑ってそう言い、ベルがむくれる。
「けど、あの方も、シャンタルもおっしゃってたぞ」
「あいつはベルのファンだからな」
トーヤがそう言ってまた笑った。
「だがまあ、あの方とは違う意味で不思議な力を持ってるような気はするな」
ディレンはベルの勘の鋭さを知るような機会はなかった。だが、やはりなんとなくそのような印象があるらしい。
「だからな、まずミーヤさんだよ」
いきなりベルが言い、
「え、なんでだ!」
トーヤがかなり真剣にびっくりした顔になった。
「なんでって、だからおれの勘だよ。あの人は味方だ」
「おまえなあ」
アランが呆れたように言う。
「色々と昔の話を聞いたから、そんでそんな気がしてるだけだろうが」
「違う、あの人は味方だ」
きっぱりと言い切る。
「おまえなあ、見たこともねえのに」
実は見ている、とはベルには言えなかった。
一度見ていない振りをした今は、それを通すしかない。
「見たことなくったってな、トーヤの話聞いてたら、なんとなくどんな人か分かるんだよ」
「まあ、そういうのもないことはないな」
アランも助け舟を出す。
妹の言っていた「あの人がミーヤさんだ」が本当かどうかは分からないが、ここはそうしておく方がいいと思った。
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