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第三章 第三部 ベルと神殿
2 ベルの神観
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「あ、いんにゃ、大したことじゃねえから」
「だろうな」
ごまかすために言ったことだが、すぐにそういう言い方をされてムカッとする。
(おまえのせいで悩んでんだよ!)
そう言ってやりたいと思ったが、グッと我慢をする。
「お、珍しいな、そこで黙るってのは」
いつもなら「うるせえ」と言い返してトーヤとなんだかんだやり合って、最後にははたかれるコースのはずが、そこでベルが黙り込んだことに、かえってトーヤが心配する。
「るっえせなあ、おっさん!」
一応いつものように返事をして、いつものように張り倒されて見せた。
トーヤはそれで少し安心したようだ。
(今はどうしようもないしな、またゆっくり考えるしかないか)
ベルもそう考えて、一度トーヤとミーヤのことは頭から放すことにした。
「で、だな、お出迎えってのがあったってことは、近々王都封鎖があるってこった」
「だな」
話を戻したトーヤにアランが答える。
「ってことは、それまでになんとかしたい。もちろん、封鎖されたからって、俺らには関係ねえから、どうにでもできそうなもんだが、やっぱり動きにくくはなるからな」
「そうだな」
ベルとシャンタルはトーヤとアランの話を黙って聞いている。つまり、否やはないということだ。
「やっぱり神官長をもうちょいつつくか。ベル」
「ん?」
「おまえ、また神殿にお参りに行ってこい」
「別にいいけど、寄進の金とかどうすんだよ。あれでもうほとんどすっからかんだろ?」
ベルが何かを思い出したように、下から突き上げるようにトーヤを見る。
「こええな、おい」
トーヤがどうどう、というように、両手のひらをベルに向けるようにして遮るようにする。
「まあな、これ以上は金出さなくても大丈夫じゃねえかな」
「ほんとかよ……」
「あんだけ出してんだぜ? その後でこっそり侍女が不安な気持ちを聞いていただきたい、って相談に行って金払え、なんぞ言わんだろうが」
「どうだか……」
ベルが不審に満ちた目をトーヤに突きつける。
「だからやめろってその目、こええんだよ」
「うー……」
「だから~ベルちゃんってば、こええからやめてー!」
トーヤに言われてもやめずに睨み続けるベルに、アランも声をかける。
「おまえにしか頼めねえからなあ」
「兄貴」
「俺だってな、かわいい妹にそんなことつらいんだぜ? でも頼むわ」
「兄貴……」
さすがに兄にそう言われて、ベルはうんと頷くしかなかった。
「しゃあねえなあ」
ついに根負けするようにベルは神殿詣でを承知した。
翌日の早朝、ベルは前の宮のエリス様の部屋から抜け出すようにして神殿へと向かった。
神殿の朝は早い。
朝の1つ目の鐘が鳴る前にはすでに動き出している。
まだ真っ暗な宮の廊下を神殿へと急ぐ。
(ううー、ねみぃしさみぃし、トーヤのやつ、おぼえてろよ!)
心の中でトーヤに悪態をつきながら神殿の入り口へと到着した。
神殿は奥宮の東、親御様が入られた離宮と王宮に挟まれた場所にある。
聖なる山を背景にして、見ようによっては神聖な秘所として隠されているようにも見えるし、華やかな宮に隠れて日陰の場所と見えないこともない。
ここはシャンタル神殿の総本山であるから、その分社が国中、国外のその町、その村の神殿として存在する。
多くの神官がここで修行をし、国の神殿などに戻ってその地の神官として赴任していくのだ。
そのように格の高い場所でありながら、生き神様の御座す宮殿の敷地にあるために、どうしても影が薄くなりがちである。
(そりゃ神官長だっていつかひっくり返してやりたいって思っても、分からんでもないよなあ)
冷たい廊下を急ぎながら、ベルはそうも考えていた。
町や村の神殿は、その地元の人間が親しく足を向ける場所であるらしい。ミーヤがそう言っていた。
『ですから、相談事などがあると神殿に伺って、皆が神官様にお話をしていました。話を聞いていただくだけで気が済むこともありますし、そうではない深刻な問題なども、神官様がお世話をしてくださって解決することもあります。村のみんなが頼りにし、親しみやすく考えている場所、それが神殿でした』
だそうだ。
ベルはそんな人に、そんな場所に相談しようと思ったこともないもので、ミーヤからそう聞いても「へえ~」と思っただけで終わった。
ベルにとって問題を解決してくれる人とは、身近な者ではトーヤとアランだ。この二人が自分たちだけで難しいと判断すれば、その場所の権力者だとか、所属している軍の上層部とか、実際に動いて解決してくれそうな者に働きかけて解決するか、完全解決は無理でもそれなりになんとかしてくれる。ずっとそうであった。
なので、神様に頼んで解決するなんぞ、鼻が出そうなほどちゃんちゃらおかしい、そういう感じである。
仲間であるシャンタルが神様だと知っても、だからどうなのだ、と思うだけだ。
そもそもシャンタルにはそんな能力が乏しいとも思っている。
(あいつは神様だって言うけど、ピンとこねえ。なんつーてもダチだもんなあ)
シャンタルにはシャンタルの優れたところがあり、何より自分と気が合うので認めてはいるが、問題を解決してくれるなんぞ、思ったこともない。
「だろうな」
ごまかすために言ったことだが、すぐにそういう言い方をされてムカッとする。
(おまえのせいで悩んでんだよ!)
そう言ってやりたいと思ったが、グッと我慢をする。
「お、珍しいな、そこで黙るってのは」
いつもなら「うるせえ」と言い返してトーヤとなんだかんだやり合って、最後にははたかれるコースのはずが、そこでベルが黙り込んだことに、かえってトーヤが心配する。
「るっえせなあ、おっさん!」
一応いつものように返事をして、いつものように張り倒されて見せた。
トーヤはそれで少し安心したようだ。
(今はどうしようもないしな、またゆっくり考えるしかないか)
ベルもそう考えて、一度トーヤとミーヤのことは頭から放すことにした。
「で、だな、お出迎えってのがあったってことは、近々王都封鎖があるってこった」
「だな」
話を戻したトーヤにアランが答える。
「ってことは、それまでになんとかしたい。もちろん、封鎖されたからって、俺らには関係ねえから、どうにでもできそうなもんだが、やっぱり動きにくくはなるからな」
「そうだな」
ベルとシャンタルはトーヤとアランの話を黙って聞いている。つまり、否やはないということだ。
「やっぱり神官長をもうちょいつつくか。ベル」
「ん?」
「おまえ、また神殿にお参りに行ってこい」
「別にいいけど、寄進の金とかどうすんだよ。あれでもうほとんどすっからかんだろ?」
ベルが何かを思い出したように、下から突き上げるようにトーヤを見る。
「こええな、おい」
トーヤがどうどう、というように、両手のひらをベルに向けるようにして遮るようにする。
「まあな、これ以上は金出さなくても大丈夫じゃねえかな」
「ほんとかよ……」
「あんだけ出してんだぜ? その後でこっそり侍女が不安な気持ちを聞いていただきたい、って相談に行って金払え、なんぞ言わんだろうが」
「どうだか……」
ベルが不審に満ちた目をトーヤに突きつける。
「だからやめろってその目、こええんだよ」
「うー……」
「だから~ベルちゃんってば、こええからやめてー!」
トーヤに言われてもやめずに睨み続けるベルに、アランも声をかける。
「おまえにしか頼めねえからなあ」
「兄貴」
「俺だってな、かわいい妹にそんなことつらいんだぜ? でも頼むわ」
「兄貴……」
さすがに兄にそう言われて、ベルはうんと頷くしかなかった。
「しゃあねえなあ」
ついに根負けするようにベルは神殿詣でを承知した。
翌日の早朝、ベルは前の宮のエリス様の部屋から抜け出すようにして神殿へと向かった。
神殿の朝は早い。
朝の1つ目の鐘が鳴る前にはすでに動き出している。
まだ真っ暗な宮の廊下を神殿へと急ぐ。
(ううー、ねみぃしさみぃし、トーヤのやつ、おぼえてろよ!)
心の中でトーヤに悪態をつきながら神殿の入り口へと到着した。
神殿は奥宮の東、親御様が入られた離宮と王宮に挟まれた場所にある。
聖なる山を背景にして、見ようによっては神聖な秘所として隠されているようにも見えるし、華やかな宮に隠れて日陰の場所と見えないこともない。
ここはシャンタル神殿の総本山であるから、その分社が国中、国外のその町、その村の神殿として存在する。
多くの神官がここで修行をし、国の神殿などに戻ってその地の神官として赴任していくのだ。
そのように格の高い場所でありながら、生き神様の御座す宮殿の敷地にあるために、どうしても影が薄くなりがちである。
(そりゃ神官長だっていつかひっくり返してやりたいって思っても、分からんでもないよなあ)
冷たい廊下を急ぎながら、ベルはそうも考えていた。
町や村の神殿は、その地元の人間が親しく足を向ける場所であるらしい。ミーヤがそう言っていた。
『ですから、相談事などがあると神殿に伺って、皆が神官様にお話をしていました。話を聞いていただくだけで気が済むこともありますし、そうではない深刻な問題なども、神官様がお世話をしてくださって解決することもあります。村のみんなが頼りにし、親しみやすく考えている場所、それが神殿でした』
だそうだ。
ベルはそんな人に、そんな場所に相談しようと思ったこともないもので、ミーヤからそう聞いても「へえ~」と思っただけで終わった。
ベルにとって問題を解決してくれる人とは、身近な者ではトーヤとアランだ。この二人が自分たちだけで難しいと判断すれば、その場所の権力者だとか、所属している軍の上層部とか、実際に動いて解決してくれそうな者に働きかけて解決するか、完全解決は無理でもそれなりになんとかしてくれる。ずっとそうであった。
なので、神様に頼んで解決するなんぞ、鼻が出そうなほどちゃんちゃらおかしい、そういう感じである。
仲間であるシャンタルが神様だと知っても、だからどうなのだ、と思うだけだ。
そもそもシャンタルにはそんな能力が乏しいとも思っている。
(あいつは神様だって言うけど、ピンとこねえ。なんつーてもダチだもんなあ)
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