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第三章 第五部 王宮から吹く風
2 消えた貴婦人
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突然街中に響き渡った鐘の音に、八年前のあの時のことを思い出す住人もいたが、何が起こっているのか分からない者も少なくはなかった。
「王宮の鐘」はあの時と同じく、王家の尊い方の身に何かが起こった時に鳴らされることが圧倒的に多い。ここ数年、王宮の訃報やその他の喜ばしからぬ知らせはなかったため、何の鐘だったか思い出せぬ者もいた。
からーんからーんからーんからーんからーん!!
からーんからーんからーんからーんからーん!!
からーんからーんからーんからーんからーん!!
何の知らせもなく、秋の晴天の空にただ鐘だけが鳴り響く。
「一体何があったんだ」
「あれは何の鐘?」
「あれは王宮の鐘だ」
「王宮の鐘?」
「王家のどなたかに何かがあったんだ」
「まさか、先代のようにどなたかが!」
「何が起こったんだ」
ただただ鐘だけが鳴り続け、王宮からの知らせは何もない。
誰もが不安を感じても何もできず、ただただ何か知らせがないかと待つばかりであった。
「一体何が起こったんだよ」
トーヤも部屋の中でじっと待つしかできない。
「何があったか伺ってきたんですが、どなたも何もご存知ありませんでした」
ミーヤも戸惑うばかりである。
「神殿組も隊長組も誰も戻ってこねえな」
「ええ、そちらも様子をお聞きしたのですが、今はどちらもいる場所から動かないようにとのお達しがあったようです」
「宮からか?」
「ええ、奥宮からです」
「マユリアやラーラ様はどうなってんだ、キリエさんも」
「私は奥宮へ入れていただけませんでした」
「なんだって?」
ミーヤは奥宮への出入りを許されている侍女である。よほどのことがなければ通してもらえないということはないはずだ。
「奥宮の入り口に衛士が立っている場所があるでしょう? あそこから先には、今は誰も入ってはならぬと」
「こりゃ、よっぽどのなんかがあったんだろうが、まさか、あいつらの仕業か?」
「分かりません」
「キリエさんに会いには行けねえのか?」
「キリエ様は、奥宮の自室にいらっしゃるようです」
「そうか」
トーヤは少し考えていたが、持っていた仮面で顔を覆った。
「どうするんですか?」
「俺はこう見えても奥様の護衛なんでな。神殿に行ってくる」
「私も行きます」
「あんたはこっちに待機って言われてんだろ?」
「私はこの部屋付きの侍女です。お付きする方が出かけられるのなら、お供するのが務めです」
「しゃあねえなあ、来るなっても来るんだろ?」
「ええ、石頭ですからね」
「ほんっとに頑固だよな、じゃあ一緒に来てくれ侍女のお嬢さん」
そう言って、ケガ人の護衛は見た目だけはミーヤに手を貸してもらうようにして、神殿へと向かった。
神殿への渡り廊下への入り口には二名の神官が立っていた。
「エリス様と侍女のベル様がいらっしゃってるはずですが」
ミーヤが神官にそう問うが、
「私どもには何も知らされてはおりません。ただ、誰も通さぬようにとのことですので」
「こちらにいらっしゃるとのことでした。護衛のルーク様が心配のあまり、おケガを押してここまで来ているのですよ、お取次ぎを」
言われて神官二人がひそひそと言葉を交わしていたが、
「どう言われても、どなたもここを通さぬことが私どもの務めですから」
「それがあなた方のお勤めなら、主を心配して駆けつけるのは従者の務め、そしてその方にお供するのは私の、侍女の役目です!」
ミーヤがきっぱりとそう言い切る。
「ここを通してください!」
ミーヤの勢いに押されながらも、
「だめです、私たちも命を守るしかないのです」
「その通りです、お帰りください」
神官二名がなんとかミーヤにそう言って追い返そうとしている時、
「あ!」
ミーヤの向かって右の神官がいきなり蹲り、
「どうした!」
そう言って同僚を助けようとした神官も、そのまま床の上に倒れ込んだ。
「どうやっても聞いてもらえねってのなら、こうするしかねえよなあ」
トーヤが順番に気絶させていったのだ。
「さ、行くぞ」
「でも、このままでは」
「昼間だし、すぐに気がつくだろうから凍死するこたねえ。そんな強くやってねえからな」
そう言ってとっとと廊下を神殿の方へと進む。
「全く、乱暴なんですから……」
ミーヤがそう言って、倒れている神官二名に軽く頭を下げてからトーヤの後を追う。
渡り廊下を渡り切ると、そこには以前ベルが案内された小部屋があった。覗いてみたが無人だ。
いつもは渡り廊下を渡りきったこちら側、小部屋のすぐそばに神官が立っているのだが、今日は誰も寄せ付けないようにしていたのだろうか、渡り廊下の入り口にいてこちらには誰もいなかった。
「奥まで一気に行くぞ」
ミーヤが追いつくとすぐ、トーヤが小走りに神殿の中に走り込んだ。
神殿の最奥の拝殿にも誰もいない。
ただ御祭神らしいキラキラ光る石の柱のようなものが立っているだけだ。
「なんで誰もいねえんだよ」
トーヤがそう言ってあちらこちらを見て回るが、全く誰の気配もない。
「エリス様とベルさんはどこに行ったのでしょう」
ミーヤも戸惑う。
「どこかに隠し部屋か隠し通路でもあるのかな。それとも、ここからどこかに連れてかれたか」
シャンタル宮にも隠し通路があった、神殿にあってもおかしくない、そう考える。
「王宮の鐘」はあの時と同じく、王家の尊い方の身に何かが起こった時に鳴らされることが圧倒的に多い。ここ数年、王宮の訃報やその他の喜ばしからぬ知らせはなかったため、何の鐘だったか思い出せぬ者もいた。
からーんからーんからーんからーんからーん!!
からーんからーんからーんからーんからーん!!
からーんからーんからーんからーんからーん!!
何の知らせもなく、秋の晴天の空にただ鐘だけが鳴り響く。
「一体何があったんだ」
「あれは何の鐘?」
「あれは王宮の鐘だ」
「王宮の鐘?」
「王家のどなたかに何かがあったんだ」
「まさか、先代のようにどなたかが!」
「何が起こったんだ」
ただただ鐘だけが鳴り続け、王宮からの知らせは何もない。
誰もが不安を感じても何もできず、ただただ何か知らせがないかと待つばかりであった。
「一体何が起こったんだよ」
トーヤも部屋の中でじっと待つしかできない。
「何があったか伺ってきたんですが、どなたも何もご存知ありませんでした」
ミーヤも戸惑うばかりである。
「神殿組も隊長組も誰も戻ってこねえな」
「ええ、そちらも様子をお聞きしたのですが、今はどちらもいる場所から動かないようにとのお達しがあったようです」
「宮からか?」
「ええ、奥宮からです」
「マユリアやラーラ様はどうなってんだ、キリエさんも」
「私は奥宮へ入れていただけませんでした」
「なんだって?」
ミーヤは奥宮への出入りを許されている侍女である。よほどのことがなければ通してもらえないということはないはずだ。
「奥宮の入り口に衛士が立っている場所があるでしょう? あそこから先には、今は誰も入ってはならぬと」
「こりゃ、よっぽどのなんかがあったんだろうが、まさか、あいつらの仕業か?」
「分かりません」
「キリエさんに会いには行けねえのか?」
「キリエ様は、奥宮の自室にいらっしゃるようです」
「そうか」
トーヤは少し考えていたが、持っていた仮面で顔を覆った。
「どうするんですか?」
「俺はこう見えても奥様の護衛なんでな。神殿に行ってくる」
「私も行きます」
「あんたはこっちに待機って言われてんだろ?」
「私はこの部屋付きの侍女です。お付きする方が出かけられるのなら、お供するのが務めです」
「しゃあねえなあ、来るなっても来るんだろ?」
「ええ、石頭ですからね」
「ほんっとに頑固だよな、じゃあ一緒に来てくれ侍女のお嬢さん」
そう言って、ケガ人の護衛は見た目だけはミーヤに手を貸してもらうようにして、神殿へと向かった。
神殿への渡り廊下への入り口には二名の神官が立っていた。
「エリス様と侍女のベル様がいらっしゃってるはずですが」
ミーヤが神官にそう問うが、
「私どもには何も知らされてはおりません。ただ、誰も通さぬようにとのことですので」
「こちらにいらっしゃるとのことでした。護衛のルーク様が心配のあまり、おケガを押してここまで来ているのですよ、お取次ぎを」
言われて神官二人がひそひそと言葉を交わしていたが、
「どう言われても、どなたもここを通さぬことが私どもの務めですから」
「それがあなた方のお勤めなら、主を心配して駆けつけるのは従者の務め、そしてその方にお供するのは私の、侍女の役目です!」
ミーヤがきっぱりとそう言い切る。
「ここを通してください!」
ミーヤの勢いに押されながらも、
「だめです、私たちも命を守るしかないのです」
「その通りです、お帰りください」
神官二名がなんとかミーヤにそう言って追い返そうとしている時、
「あ!」
ミーヤの向かって右の神官がいきなり蹲り、
「どうした!」
そう言って同僚を助けようとした神官も、そのまま床の上に倒れ込んだ。
「どうやっても聞いてもらえねってのなら、こうするしかねえよなあ」
トーヤが順番に気絶させていったのだ。
「さ、行くぞ」
「でも、このままでは」
「昼間だし、すぐに気がつくだろうから凍死するこたねえ。そんな強くやってねえからな」
そう言ってとっとと廊下を神殿の方へと進む。
「全く、乱暴なんですから……」
ミーヤがそう言って、倒れている神官二名に軽く頭を下げてからトーヤの後を追う。
渡り廊下を渡り切ると、そこには以前ベルが案内された小部屋があった。覗いてみたが無人だ。
いつもは渡り廊下を渡りきったこちら側、小部屋のすぐそばに神官が立っているのだが、今日は誰も寄せ付けないようにしていたのだろうか、渡り廊下の入り口にいてこちらには誰もいなかった。
「奥まで一気に行くぞ」
ミーヤが追いつくとすぐ、トーヤが小走りに神殿の中に走り込んだ。
神殿の最奥の拝殿にも誰もいない。
ただ御祭神らしいキラキラ光る石の柱のようなものが立っているだけだ。
「なんで誰もいねえんだよ」
トーヤがそう言ってあちらこちらを見て回るが、全く誰の気配もない。
「エリス様とベルさんはどこに行ったのでしょう」
ミーヤも戸惑う。
「どこかに隠し部屋か隠し通路でもあるのかな。それとも、ここからどこかに連れてかれたか」
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