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第三章 第六部 露見
9 変わった侍女
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ミーヤは予想通りにキリエの部屋に二人がいたこと、そしてフウという侍女がついていること、などをトーヤたちに話した。
今日はアーダがエリス様の部屋の係として、ベルと共に侍女部屋に控えている。
もう宮の中もいつも通りに動き出してはいるが、なんとなくふわふわと定まらないような雰囲気が残る中、アーダも一人で与えられた控室にいるよりも、ベルたちと共にいる方が落ち着くらしい。
リルは体調を理由に引き続きエリス様の侍従部屋に滞在することになり、男どもはそのままダルの部屋で過ごすこととなった。そしてミーヤがその係となってダルの部屋へ来ているのだが、話をするためにリルもこっそりとダルの部屋へとやってきていた。
「え、フウ様って、あのフウ様?」
「ええ、あのフウ様」
「うわあ、私はお会いしたことがないけれど、変わった方なのでしょう?」
「ええ、変わった方ではいらっしゃいましたが、なんでしょう、お会いしてみたら安心できる方のようでした」
「ええっ、そうなの?」
「おいおい、なんだよ、その変わった侍女ってのは」
「ええ、実は」
と、ミーヤとリルが二人でフウの説明をした。
「とにかくね、色々と変わっていらっしゃる方だと聞いているわ」
「ええ、私も」
「あまり他の方とも仲良くなさっていらっしゃらなくて、時間があれば植物園に入り浸って、そして何かアヤシイ研究をしているのだとか、偉そうで他の人を人とも見ていないとか、他になんだったかしらね、まあ、色々と言われている方なの。関わらないのが幸いのように」
「私が聞いた一番変わっているという話は、応募の侍女で、しかもすでに誓いを立てて役職にもなっていらっしゃるのに、今でも緑の衣装を着ていらっしゃるということかしら」
「緑って、行儀見習いの侍女の色じゃねえのか?」
「そこなのよ」
リルがうんうんと頷きながら言う。
「普通はね、応募の侍女の方は行儀見習いと一緒にされるのを嫌がって緑は選ばないものなの。それがフウ様は植物がお好きで、植物の色は緑だからと、ずっとその色を貫いていらっしゃるとかお聞きしたわ」
「へえ」
トーヤが面白そうにそう答えた。
「そんで、その人のことをキリエさんが『フウなら間違いがない』って言ったんだな?」
「ええ」
「ってことは、その人が次の侍女頭候補かな」
「え!」
「え!」
ミーヤとリルが同時に驚いた。
「なんだよ」
「いえ、だって、ねえ」
「え、ええ」
「なんだ、二人ともなんか引っかかるみてえだな」
「ええ、だって、考えてもみなかったもの」
「私もです」
侍女二人が戸惑った顔を見合わせる。
「多分、それを知らせたいってのもあってあんたに会わせたのかもな」
「ええっ!」
「まだ『黒のシャンタル』のことは話してねえかも知れねえが、もしかしたら話すつもりかも知れない。まあ、その人なら聞いてもどうってことなさそうだが」
愉快そうにそう言うトーヤにミーヤもリルも言葉をなくす。
「さて、居場所は分かった。キリエさんは当代の託宣のことを知ってるからな、だから部屋に入れてもらえさえすりゃ、そんでなんとかできるだろう」
「そうと決まれば早い方がいいな」
「だな。けど、キリエさんに会いにいく口実がなあ」
「なんか、チクりに行くみたいになってもややこしそうだよな」
「そうだよなあ」
先日来、神殿に決まってお参りに行っていた奥様と侍女が昨日、神殿から王宮へと拉致された。その翌日に次女頭のところへ行くのは、下手をするとそのことを話に行くと受け取られる可能性もある気がした。
「かと言って、そのお嬢さんたちにこっちに来いってのも無理そうだしな」
「なんか口実ないかな」
「口実なあ、口実口実……」
トーヤとアランが頭を捻って考えている。
「うーん、月虹兵がエリス様に侍女頭に会いに行ってって言うのも変だよな」
「衛士はどうかしら?」
「衛士に呼び出されたってなったら、それこそセルマ様たちが神経逆立てそうじゃないか?」
「そうなるかしらねえ」
ダルとリルも色々と考えるが、なかなかいい案が浮かばない。
「俺は全く外部の人間だしなあ。全員に船に来てくれってわけにもいかんし」
ディレンもそう言う。
「あの、キリエ様から呼び出していただくのはどうでしょう?」
ミーヤがそんなことを口にする。
「もちろんセルマ様が気にかけられる可能性はありますが、エリス様がご自分から行かれるのと、話を聞きたいと呼ばれるのでは印象が違ってきませんか?」
「まあ、それはそうだろうが」
「もう一度キリエ様のところへ言ってお話してきます。さきほどはお二人とフウ様もいらっしゃって、そんな細かい話をできませんでしたし」
「そうしてもらうのがよさそうかなあ」
「はい、行ってきます」
と言っていると、ダルの部屋の扉が叩かれた。
「どなたですか?」
ダルが警戒しながら声をかけると、思わぬ人から返事があった。
「キリエ様付きのフウと申します」
さきほど話題に出た例の人がなぜ。
部屋の中の人間が全員緊張する。
「キリエ様からの伝言をお預かりしておりまして、それで伺いました。お邪魔してもよろしいでしょうか?」
今日はアーダがエリス様の部屋の係として、ベルと共に侍女部屋に控えている。
もう宮の中もいつも通りに動き出してはいるが、なんとなくふわふわと定まらないような雰囲気が残る中、アーダも一人で与えられた控室にいるよりも、ベルたちと共にいる方が落ち着くらしい。
リルは体調を理由に引き続きエリス様の侍従部屋に滞在することになり、男どもはそのままダルの部屋で過ごすこととなった。そしてミーヤがその係となってダルの部屋へ来ているのだが、話をするためにリルもこっそりとダルの部屋へとやってきていた。
「え、フウ様って、あのフウ様?」
「ええ、あのフウ様」
「うわあ、私はお会いしたことがないけれど、変わった方なのでしょう?」
「ええ、変わった方ではいらっしゃいましたが、なんでしょう、お会いしてみたら安心できる方のようでした」
「ええっ、そうなの?」
「おいおい、なんだよ、その変わった侍女ってのは」
「ええ、実は」
と、ミーヤとリルが二人でフウの説明をした。
「とにかくね、色々と変わっていらっしゃる方だと聞いているわ」
「ええ、私も」
「あまり他の方とも仲良くなさっていらっしゃらなくて、時間があれば植物園に入り浸って、そして何かアヤシイ研究をしているのだとか、偉そうで他の人を人とも見ていないとか、他になんだったかしらね、まあ、色々と言われている方なの。関わらないのが幸いのように」
「私が聞いた一番変わっているという話は、応募の侍女で、しかもすでに誓いを立てて役職にもなっていらっしゃるのに、今でも緑の衣装を着ていらっしゃるということかしら」
「緑って、行儀見習いの侍女の色じゃねえのか?」
「そこなのよ」
リルがうんうんと頷きながら言う。
「普通はね、応募の侍女の方は行儀見習いと一緒にされるのを嫌がって緑は選ばないものなの。それがフウ様は植物がお好きで、植物の色は緑だからと、ずっとその色を貫いていらっしゃるとかお聞きしたわ」
「へえ」
トーヤが面白そうにそう答えた。
「そんで、その人のことをキリエさんが『フウなら間違いがない』って言ったんだな?」
「ええ」
「ってことは、その人が次の侍女頭候補かな」
「え!」
「え!」
ミーヤとリルが同時に驚いた。
「なんだよ」
「いえ、だって、ねえ」
「え、ええ」
「なんだ、二人ともなんか引っかかるみてえだな」
「ええ、だって、考えてもみなかったもの」
「私もです」
侍女二人が戸惑った顔を見合わせる。
「多分、それを知らせたいってのもあってあんたに会わせたのかもな」
「ええっ!」
「まだ『黒のシャンタル』のことは話してねえかも知れねえが、もしかしたら話すつもりかも知れない。まあ、その人なら聞いてもどうってことなさそうだが」
愉快そうにそう言うトーヤにミーヤもリルも言葉をなくす。
「さて、居場所は分かった。キリエさんは当代の託宣のことを知ってるからな、だから部屋に入れてもらえさえすりゃ、そんでなんとかできるだろう」
「そうと決まれば早い方がいいな」
「だな。けど、キリエさんに会いにいく口実がなあ」
「なんか、チクりに行くみたいになってもややこしそうだよな」
「そうだよなあ」
先日来、神殿に決まってお参りに行っていた奥様と侍女が昨日、神殿から王宮へと拉致された。その翌日に次女頭のところへ行くのは、下手をするとそのことを話に行くと受け取られる可能性もある気がした。
「かと言って、そのお嬢さんたちにこっちに来いってのも無理そうだしな」
「なんか口実ないかな」
「口実なあ、口実口実……」
トーヤとアランが頭を捻って考えている。
「うーん、月虹兵がエリス様に侍女頭に会いに行ってって言うのも変だよな」
「衛士はどうかしら?」
「衛士に呼び出されたってなったら、それこそセルマ様たちが神経逆立てそうじゃないか?」
「そうなるかしらねえ」
ダルとリルも色々と考えるが、なかなかいい案が浮かばない。
「俺は全く外部の人間だしなあ。全員に船に来てくれってわけにもいかんし」
ディレンもそう言う。
「あの、キリエ様から呼び出していただくのはどうでしょう?」
ミーヤがそんなことを口にする。
「もちろんセルマ様が気にかけられる可能性はありますが、エリス様がご自分から行かれるのと、話を聞きたいと呼ばれるのでは印象が違ってきませんか?」
「まあ、それはそうだろうが」
「もう一度キリエ様のところへ言ってお話してきます。さきほどはお二人とフウ様もいらっしゃって、そんな細かい話をできませんでしたし」
「そうしてもらうのがよさそうかなあ」
「はい、行ってきます」
と言っていると、ダルの部屋の扉が叩かれた。
「どなたですか?」
ダルが警戒しながら声をかけると、思わぬ人から返事があった。
「キリエ様付きのフウと申します」
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