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第四章 第三部
8 神様の特技
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「そういえば」
いきなりシャンタルが口を開き、ベルがギクリとする。
シャンタルは空気を読むということがほとんどない。できないのか、それともしないのかまでは分からないが、トーヤがよく言うように「能天気」としか思えないぐらい、どんな場面でも自分が思いついたこと、言いたいことだけを発言する。
今までにトーヤがいない場所で、トーヤとミーヤのことについては何度か話をしてきている。その時にさっきベルが思い出したようなことをシャンタルが言っていたのだ。もしもその時のことを持ち出されたら、知らないうちに仲間にそんな話をされていたということで、トーヤが傷つくかも知れない。
これ以上トーヤを傷つけたくない。いざとなったら自分が止めるとベルが身構える中、シャンタルが続ける。
「なんだかお腹が空いてきたんだけど、そろそろお昼ご飯かな」
ベルがガクッと脱力し、
「おい、なんだ、どうした」
と、それまで固まっていたトーヤがベルにいち早く反応する。
そうだ、これこそがいつものトーヤの反応だ。脱力すると同時に、いつものトーヤにベルはホッともした。
「いや、おまえは本当に口開くと飯のことだな。あんまり口開かなくてポッと何か言うとご飯まだかなあ、だ」
「え、そうかな」
「そういやそうだな」
トーヤが面白そうに笑いながらそう言ったので、ベルは心底からホッとした。
「ちびどもが来てたからちょっと遅くなってるね、待っといで」
ナスタが立ち上がり台所へ様子を見に行った。
「あ、おれも手伝う」
ベルが急いでナスタの後を追った。
「べルは本当によく働くねえ」
「って、おまえも早く食いたいなら手伝ってこいよ、その方が早く食えるだろうが」
「え~、だって私は神様だよ?」
「勝手な時だけ神様やってんじゃねえよ」
「え~」
「いいからとっとと行ってこい」
「もう、しょうがないなあ」
そうしてシャンタルを追い立てながら、トーヤもホッとしていた。
分かっての上かどうかは分からない。だがいつも、こんな場面になるとシャンタルはあんな風な発言をする。
「ああいうのも特技と言うのかねえ」
「え?」
ディナが台所へ向かうシャンタルの後ろ姿を見つめながらそう言った。
「自然な方だね」
「ってか、能天気だろ」
トーヤが何もなかったかのように笑いながらそう言うのに、ディナが柔らかい口調でこう返す。
「あんたらがどうやってあっちで生きてきたのかが分かったような気がしたよ。人と人が一緒にいりゃ、とがった石の角同士がぶつかり合うようなこともあるもんだ。けど、そんなことをを繰り返してるうちに、互いに尖ったところが削れて丸くなって、しっくりくるようになってくんだよ、一番合う形になってく」
トーヤはディナが何を言いたいのかとその顔を伺うように見た。
「ナスタの言ったことは気にしなくていいからね。あれはあれであんたのことを思って言ってるのを分かってくれてりゃそれでいい。どんな形が一番いいかなんてのは、その人によって違うもんだ。無理やり道をくっつけたがためにだめになる関係ってのもある。あるがまま、この先あんたらがどうなろうと、一番いいって道を選べばそれでいい」
ナスタはナスタで、ディナはディナで、胸に何かを打ち込むような言い方をするとトーヤは思った。
「やっぱおっかさんたちには叶わねえな」
「そりゃそうだよ」
ディナが温かい形にシワを刻みながら、
「だから、ダリオだって無理に嫁さん連れてきて、無理にあたしにひ孫の顔を見せてやろう、なんてする必要はないよ。一生一人で好きに遊んでいたいってんなら、それはそれを貫きゃいいんだからね」
「え!」
攻撃対象をいきなり変更したように、唯一独身の2番目の孫にそう言った。
「なんで驚くかね、おまえはいっつも言ってるじゃない、まだまだ遊びたいって」
「いや、そりゃ言ってるけどさ、俺だって嫁さんほしくないってわけじゃないし」
「だったら探したらどうだい」
「いや、それがなかなかこれっていいのがいなくて」
「なんだいそれ、これっていいのってなんだい」
「いや、嫁にもらってもいいなってのが」
「おやおや、しょってるね、自分が選ぶ立場のつもりだよ」
ディナが心底呆れたように目を丸くする。
「いいかい、よく聞きな。遊びたいけど嫁さんもほしい、ほしいけど遊びたい、そんな中途半端にふらふらしてるのに来てやろうって娘さんなんていやしないって言ってるんだよ」
「ばあちゃん、ひでえ!」
「どこがひどいもんか本当の話だよ。嫁さんほしいなら婿さんに選んでもらえるように努力しな、ずっと遊んでたいんなら、遊び続けられるようにいい男におなり。どっちもできないんなら、嫁さんにも来てもらえない、遊んでくれる女の子もいなくなる、それ覚悟でふらふらしてるんだね」
「ばあちゃーん」
ダリオはディナにけちょんけちょんにされて半泣きだ。
「まあまあばあちゃん、そのぐらいで。ダリオ兄貴にだっていいとこの一つや二つあるんだから」
「トーヤもひっでえ!」
トーヤは笑いながらディナが持っている神様と同じ特技に感謝をしていた。
いきなりシャンタルが口を開き、ベルがギクリとする。
シャンタルは空気を読むということがほとんどない。できないのか、それともしないのかまでは分からないが、トーヤがよく言うように「能天気」としか思えないぐらい、どんな場面でも自分が思いついたこと、言いたいことだけを発言する。
今までにトーヤがいない場所で、トーヤとミーヤのことについては何度か話をしてきている。その時にさっきベルが思い出したようなことをシャンタルが言っていたのだ。もしもその時のことを持ち出されたら、知らないうちに仲間にそんな話をされていたということで、トーヤが傷つくかも知れない。
これ以上トーヤを傷つけたくない。いざとなったら自分が止めるとベルが身構える中、シャンタルが続ける。
「なんだかお腹が空いてきたんだけど、そろそろお昼ご飯かな」
ベルがガクッと脱力し、
「おい、なんだ、どうした」
と、それまで固まっていたトーヤがベルにいち早く反応する。
そうだ、これこそがいつものトーヤの反応だ。脱力すると同時に、いつものトーヤにベルはホッともした。
「いや、おまえは本当に口開くと飯のことだな。あんまり口開かなくてポッと何か言うとご飯まだかなあ、だ」
「え、そうかな」
「そういやそうだな」
トーヤが面白そうに笑いながらそう言ったので、ベルは心底からホッとした。
「ちびどもが来てたからちょっと遅くなってるね、待っといで」
ナスタが立ち上がり台所へ様子を見に行った。
「あ、おれも手伝う」
ベルが急いでナスタの後を追った。
「べルは本当によく働くねえ」
「って、おまえも早く食いたいなら手伝ってこいよ、その方が早く食えるだろうが」
「え~、だって私は神様だよ?」
「勝手な時だけ神様やってんじゃねえよ」
「え~」
「いいからとっとと行ってこい」
「もう、しょうがないなあ」
そうしてシャンタルを追い立てながら、トーヤもホッとしていた。
分かっての上かどうかは分からない。だがいつも、こんな場面になるとシャンタルはあんな風な発言をする。
「ああいうのも特技と言うのかねえ」
「え?」
ディナが台所へ向かうシャンタルの後ろ姿を見つめながらそう言った。
「自然な方だね」
「ってか、能天気だろ」
トーヤが何もなかったかのように笑いながらそう言うのに、ディナが柔らかい口調でこう返す。
「あんたらがどうやってあっちで生きてきたのかが分かったような気がしたよ。人と人が一緒にいりゃ、とがった石の角同士がぶつかり合うようなこともあるもんだ。けど、そんなことをを繰り返してるうちに、互いに尖ったところが削れて丸くなって、しっくりくるようになってくんだよ、一番合う形になってく」
トーヤはディナが何を言いたいのかとその顔を伺うように見た。
「ナスタの言ったことは気にしなくていいからね。あれはあれであんたのことを思って言ってるのを分かってくれてりゃそれでいい。どんな形が一番いいかなんてのは、その人によって違うもんだ。無理やり道をくっつけたがためにだめになる関係ってのもある。あるがまま、この先あんたらがどうなろうと、一番いいって道を選べばそれでいい」
ナスタはナスタで、ディナはディナで、胸に何かを打ち込むような言い方をするとトーヤは思った。
「やっぱおっかさんたちには叶わねえな」
「そりゃそうだよ」
ディナが温かい形にシワを刻みながら、
「だから、ダリオだって無理に嫁さん連れてきて、無理にあたしにひ孫の顔を見せてやろう、なんてする必要はないよ。一生一人で好きに遊んでいたいってんなら、それはそれを貫きゃいいんだからね」
「え!」
攻撃対象をいきなり変更したように、唯一独身の2番目の孫にそう言った。
「なんで驚くかね、おまえはいっつも言ってるじゃない、まだまだ遊びたいって」
「いや、そりゃ言ってるけどさ、俺だって嫁さんほしくないってわけじゃないし」
「だったら探したらどうだい」
「いや、それがなかなかこれっていいのがいなくて」
「なんだいそれ、これっていいのってなんだい」
「いや、嫁にもらってもいいなってのが」
「おやおや、しょってるね、自分が選ぶ立場のつもりだよ」
ディナが心底呆れたように目を丸くする。
「いいかい、よく聞きな。遊びたいけど嫁さんもほしい、ほしいけど遊びたい、そんな中途半端にふらふらしてるのに来てやろうって娘さんなんていやしないって言ってるんだよ」
「ばあちゃん、ひでえ!」
「どこがひどいもんか本当の話だよ。嫁さんほしいなら婿さんに選んでもらえるように努力しな、ずっと遊んでたいんなら、遊び続けられるようにいい男におなり。どっちもできないんなら、嫁さんにも来てもらえない、遊んでくれる女の子もいなくなる、それ覚悟でふらふらしてるんだね」
「ばあちゃーん」
ダリオはディナにけちょんけちょんにされて半泣きだ。
「まあまあばあちゃん、そのぐらいで。ダリオ兄貴にだっていいとこの一つや二つあるんだから」
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トーヤは笑いながらディナが持っている神様と同じ特技に感謝をしていた。
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