306 / 488
第四章 第四部
10 人となるために
しおりを挟む
「つまり、あんたと女神のマユリアではなんか条件が違う、それには『次代の神』ってのと、そうじゃない普通の神か? そういう違いがあるってことなんだよな?」
『そういうことなのかも知れませんね』
「なんだよ、たよんねえなあ」
トーヤがふうっと軽く笑い、
「まあ、そうしょっちゅうあることじゃねえんだから、そういう感じなんじゃね?」
ベルが女神をかばうようにそう言った。
「かも知れねえな」
トーヤもそう返事をする。
こうして会話をしていると、マユリアの顔をした慈悲の女神に、これまで慣れ親しんだ当代マユリアと話しているかのような錯覚も覚える。
「そんじゃ、ここまではこうだ。あんたの体を使って今のマユリアが生まれた。そうだよな?」
『その通りです』
「だけど、そうじゃない部分もある。そんで合ってるか?」
『その通りです』
「ほんっと、まどろっこしいよな……とっとこ一気に話せねえもんかね」
『そうして話しをしてしまうと、きっと理解しては貰えなかったでしょう』
「そうなのか?」
トーヤが軽く眉間にシワを寄せた。
「でも今、そうして話そうとしてるってことは、もう十分に下準備が出来た、そういうこったな」
『そうであってくれれば、と思っています』
「ほれ、またそうして」
トーヤがふうっと息を吐く。
「まあ、文句言ってもその分手間取るだけだ。続きを頼む」
『いいでしょう』
マユリアの顔をしたシャンタルがゆっくりとそう答えた。
『わたくしとマユリアの違い、それはさきほどベルが申してくれた通りです』
「じだいのかみ、ってのと、えっと、普通の神様、でいいのか?」
『そうですね、そういたしましょう』
慈悲の女神が優しい口調で童子にそう答えた。
「やっぱりマユリアにしか思えねえ……」
童子の言葉にもう一度笑う。
『次代の神と普通の神、その違いはやはり生み出した者と生み出された者ということになるのでしょうか』
「またわけわからん……」
ベルがうーんと頭を抱える。
『簡単に言えば、マユリアはわたくしから生まれた者と思っていただいていいかと思います。人の世で言う親と子のような関係です』
「なるほど、なんとなく分かった」
『マユリアはわたくしの子、そしてわたくしは光の子という関係と言えば分かっていただきやすいでしょうか』
「ああ、なるほどな」
今度はアランだ。
「それでいくと光と闇が世界の子ってことですか?」
『そうですね、そういう関係と見ていただければ理解していただきやすいでしょう』
「わかりました」
「兄貴すげえな、普通の人なのに、いでっ!」
アランの代理でトーヤが動きながら、
「つまり上下関係があるってこったな?」
と尋ねた。
『そう簡単なことでもないのですが、そう思っていただくといいかも知れません』
「ってことは、一番上が世界、それが光と闇という子を生んで、あんたは光の子、光の仲間ってことになるのか」
『そうですね』
「そんで、マユリア、女神のマユリアはあんたの子、神様の種ってのが慈悲の神様の子として生まれた。そんでいいか?」
『概ねそのようなことでいいかと思います』
「概ねってのは大体そんでいいってことだな」
一応トーヤが確認する。
『ええ、それでよろしいかと』
「つまり上になるほど強いってことか?」
「強いって、おまえ」
「いや、そうじゃねえの?」
「なるほどな、そういうことか」
『そう思っていただいていいかと思います』
「つまり、女神マユリアはそのまま人として生まれるのに、自分を生むことができる人間を探し出すだけで人になれた。だが、それより力が強いあんたが同じようにするのには、ラデル夫婦を探しただけでは足りなかった、そういうことだな?」
『その通りです』
「それでなんかの手を打った、その手のことを次は聞かせてくれるってこったな?」
『その通りです』
「一体どんな手を打った?」
『わたくしの身をそのまま人の身とすることは出来ませんでした』
「マユリアの時みたいに条件に合う人間がいなかったってことか?」
『いいえ』
女神が美しい顔を曇らせ、ゆっくりと首を左右に振った。
その様子はトーヤがよく知る当代マユリアと全く同じ。
「そりゃそうだよな」
そう思ったトーヤの口から思わずそんな言葉がこぼれる。
『え?』
「いや、なんでもねえ」
トーヤが薄く笑い、
「続けてくれ」
と、言葉を止めさせたことを詫びた。
『条件は、どういう条件も合うということがありません。それは、トーヤはこのような言い方は気に入らぬと思うのでしょうが、格が違うからです』
女神が少し気を遣うようにそう言った。
「色々説明してもらったからなんとなくは分かった。あんた、そのために色々手間かけてくれてんだもんな」
『ありがとう』
「前にも言ったが生まれがどうこうってのは、あんたにもどうすることもできねえ。次代の神ってのと普通の神はそんだけの違いがあるってこった」
『そう思ってもらうと助かります』
「うん、それでそのどうしようもないことを、あんたはどうやってか解決した。そういうこったな?」
『その通りです』
女神は少し俯き、シャンタルの方に顔を向け、
『わたくしは世界がその身をそうしたように、自分の身を裂き、マユリアと黒のシャンタルに分けたのです』
そう言った。
『そういうことなのかも知れませんね』
「なんだよ、たよんねえなあ」
トーヤがふうっと軽く笑い、
「まあ、そうしょっちゅうあることじゃねえんだから、そういう感じなんじゃね?」
ベルが女神をかばうようにそう言った。
「かも知れねえな」
トーヤもそう返事をする。
こうして会話をしていると、マユリアの顔をした慈悲の女神に、これまで慣れ親しんだ当代マユリアと話しているかのような錯覚も覚える。
「そんじゃ、ここまではこうだ。あんたの体を使って今のマユリアが生まれた。そうだよな?」
『その通りです』
「だけど、そうじゃない部分もある。そんで合ってるか?」
『その通りです』
「ほんっと、まどろっこしいよな……とっとこ一気に話せねえもんかね」
『そうして話しをしてしまうと、きっと理解しては貰えなかったでしょう』
「そうなのか?」
トーヤが軽く眉間にシワを寄せた。
「でも今、そうして話そうとしてるってことは、もう十分に下準備が出来た、そういうこったな」
『そうであってくれれば、と思っています』
「ほれ、またそうして」
トーヤがふうっと息を吐く。
「まあ、文句言ってもその分手間取るだけだ。続きを頼む」
『いいでしょう』
マユリアの顔をしたシャンタルがゆっくりとそう答えた。
『わたくしとマユリアの違い、それはさきほどベルが申してくれた通りです』
「じだいのかみ、ってのと、えっと、普通の神様、でいいのか?」
『そうですね、そういたしましょう』
慈悲の女神が優しい口調で童子にそう答えた。
「やっぱりマユリアにしか思えねえ……」
童子の言葉にもう一度笑う。
『次代の神と普通の神、その違いはやはり生み出した者と生み出された者ということになるのでしょうか』
「またわけわからん……」
ベルがうーんと頭を抱える。
『簡単に言えば、マユリアはわたくしから生まれた者と思っていただいていいかと思います。人の世で言う親と子のような関係です』
「なるほど、なんとなく分かった」
『マユリアはわたくしの子、そしてわたくしは光の子という関係と言えば分かっていただきやすいでしょうか』
「ああ、なるほどな」
今度はアランだ。
「それでいくと光と闇が世界の子ってことですか?」
『そうですね、そういう関係と見ていただければ理解していただきやすいでしょう』
「わかりました」
「兄貴すげえな、普通の人なのに、いでっ!」
アランの代理でトーヤが動きながら、
「つまり上下関係があるってこったな?」
と尋ねた。
『そう簡単なことでもないのですが、そう思っていただくといいかも知れません』
「ってことは、一番上が世界、それが光と闇という子を生んで、あんたは光の子、光の仲間ってことになるのか」
『そうですね』
「そんで、マユリア、女神のマユリアはあんたの子、神様の種ってのが慈悲の神様の子として生まれた。そんでいいか?」
『概ねそのようなことでいいかと思います』
「概ねってのは大体そんでいいってことだな」
一応トーヤが確認する。
『ええ、それでよろしいかと』
「つまり上になるほど強いってことか?」
「強いって、おまえ」
「いや、そうじゃねえの?」
「なるほどな、そういうことか」
『そう思っていただいていいかと思います』
「つまり、女神マユリアはそのまま人として生まれるのに、自分を生むことができる人間を探し出すだけで人になれた。だが、それより力が強いあんたが同じようにするのには、ラデル夫婦を探しただけでは足りなかった、そういうことだな?」
『その通りです』
「それでなんかの手を打った、その手のことを次は聞かせてくれるってこったな?」
『その通りです』
「一体どんな手を打った?」
『わたくしの身をそのまま人の身とすることは出来ませんでした』
「マユリアの時みたいに条件に合う人間がいなかったってことか?」
『いいえ』
女神が美しい顔を曇らせ、ゆっくりと首を左右に振った。
その様子はトーヤがよく知る当代マユリアと全く同じ。
「そりゃそうだよな」
そう思ったトーヤの口から思わずそんな言葉がこぼれる。
『え?』
「いや、なんでもねえ」
トーヤが薄く笑い、
「続けてくれ」
と、言葉を止めさせたことを詫びた。
『条件は、どういう条件も合うということがありません。それは、トーヤはこのような言い方は気に入らぬと思うのでしょうが、格が違うからです』
女神が少し気を遣うようにそう言った。
「色々説明してもらったからなんとなくは分かった。あんた、そのために色々手間かけてくれてんだもんな」
『ありがとう』
「前にも言ったが生まれがどうこうってのは、あんたにもどうすることもできねえ。次代の神ってのと普通の神はそんだけの違いがあるってこった」
『そう思ってもらうと助かります』
「うん、それでそのどうしようもないことを、あんたはどうやってか解決した。そういうこったな?」
『その通りです』
女神は少し俯き、シャンタルの方に顔を向け、
『わたくしは世界がその身をそうしたように、自分の身を裂き、マユリアと黒のシャンタルに分けたのです』
そう言った。
0
あなたにおすすめの小説
【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜
KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。
~あらすじ~
世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。
そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。
しかし、その恩恵は平等ではなかった。
富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。
そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。
彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。
あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。
妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。
希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。
英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。
これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。
彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。
テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。
SF味が増してくるのは結構先の予定です。
スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。
良かったら読んでください!
愚者による愚行と愚策の結果……《完結》
アーエル
ファンタジー
その愚者は無知だった。
それが転落の始まり……ではなかった。
本当の愚者は誰だったのか。
誰を相手にしていたのか。
後悔は……してもし足りない。
全13話
☆他社でも公開します
家の庭にダンジョンができたので、会社辞めました。
希羽
ファンタジー
都内のブラックIT企業で働く社畜・佐藤健太(27歳)。
手取り18万、残業100時間。唯一の資産は、亡き祖母から相続した郊外のボロ戸建てだけ。
「このまま死ぬのかな……」
そう絶望していたある夜、庭の物置の裏に謎の穴が出現する。
そこは、なぜか最弱モンスターしか出ないのに、ドロップアイテムだけは最高ランクという、奇跡のボーナスダンジョンだった。
試しにスライムを叩いたら、出てきた宝石の査定額はなんと――【1,000,000円】。
「……え、これ一個で、俺の年収の3分の1?」
スマホアプリで即換金、ドローン配送で手間いらず。
たった10分の庭仕事で5000万円を稼ぎ出した健太は、翌朝、上司に辞表を叩きつけることを決意する。
幸せな政略結婚のススメ【本編完結】
ましろ
恋愛
「爵位と外見に群がってくる女になぞ興味は無い」
「え?だって初対面です。爵位と外見以外に貴方様を判断できるものなどございませんよ?」
家柄と顔が良過ぎて群がる女性に辟易していたユリシーズはとうとう父には勝てず、政略結婚させられることになった。
お相手は6歳年下のご令嬢。初対面でいっそのこと嫌われようと牽制したが?
スペック高めの拗らせ男とマイペースな令嬢の政略結婚までの道程はいかに?
✻基本ゆるふわ設定です。
気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。
・11/21ヒーローのタグを変更しました。
俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~
みやま たつむ
ファンタジー
【本編完結しました(812話)/後日譚を書くために連載中にしています。ご承知おきください】
事故死したところを別の世界に連れてかれた陽キャグループと、巻き込まれて事故死した事なかれ主義の静人。
神様から強力な加護をもらって魔物をちぎっては投げ~、ちぎっては投げ~―――なんて事をせずに、勢いで作ってしまったホムンクルスにお店を開かせて面倒な事を押し付けて自由に生きる事にした。
作った魔道具はどんな使われ方をしているのか知らないまま「のんびり気ままに好きなように生きるんだ」と魔物なんてほっといて好き勝手生きていきたい静人の物語。
「まあ、そんな平穏な生活は転移した時点で無理じゃけどな」と最高神は思うのだが―――。
※「小説家になろう」と「カクヨム」で同時掲載しております。
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる