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第六章 第二節
12 ボスと科学者
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「なんだろうな、俺はあんたのこと、ものすごく気にいった。大好きだな」
「あらまあ、愛の告白をありがとうございます」
フウの答えを聞いてトーヤが大笑いする。
「俺は根性の決まってる人間が好きなんだよ。あんたの根性の決まり方はなかなかのもんだな」
「根性が決まるというのは、覚悟が決まるということですよね」
「なんだ、よく知ってんな。宮の人間には通じない言葉だと思ってたが」
「私は13歳まで世俗におりましたからね、色々と見識が高いのですよ」
その言い方にトーヤが続けて笑う。
その言葉を聞いてミーヤはドキリとした。
『トーヤはわたくしを好きだと言ってくれました』
ある方のその言葉を思い出したからだ。
『トーヤがわたくしのことを好きなところ』
『それは、根性決まってる、ところだそうです』
あの時、そう聞いて拍子抜けしてしまい、そのまま自分の心の感じた痛みのことは封印してしまっていた。それをさっきのトーヤの言葉で思い出してしまったのだ。
「それで、その見識高く、根性の決まった次期侍女頭候補様は、俺たちの味方になって何をしてくれるつもりなんだ?」
トーヤのフウへの質問で、ミーヤの思考も現実の世界に引き戻される。
「それなんですよね」
フウが困った顔になり、
「キリエ様の敵になるという以外に、何をどうすればいいのかがまだ分からないのですよ」
「ほうほう」
「ですから、そのためにも色々とお聞きしたいのですが、私は言ってみればこちらでは新参者でしょう? まだまだ色々な秘密を教えてもらうには早いですし、どうしたものかと思ってます」
「そうだな。確かにまだあんたに色々な秘密を話すのは早すぎる」
「そうですよね。私だったらキリエ様の間諜ではないかと疑いますよ」
「まあ、そういうこったな」
トーヤは「間諜」というこれも侍女の口から出るとは思えない言葉を聞いて、心底から楽しそうだ。
「だから、あんたが知ってる、じゃなくて分かってることをまず教えてほしい。その上で必要なことは伝えるし、まだ早いなと思うことは内緒だ」
「分かりました、それで構いませんよ、ボス」
フウはすっかり「ボス」という呼び方が気にいったようだ。
フウが了解している事柄は、八年前にシャンタルがフウの作った薬で眠ったこと、その後助け出されてトーヤと共に国を出たこと、そして「エリス様」として戻ってきたこと、などであった。
「なぜそのようになったかなどは分かりません。ですが、湖で眠りにつかれると聞いた後、ボスが月虹兵の役目でこの国を出たと聞き、そうなのだろうなと思いました。そしてエリス様がこの宮にいらっしゃった時に、もしかしたらご先代ではないかと。だって、胡散臭すぎますものね、入り方が」
「確かにな」
トーヤが思わずぶーっと吹き出してから真顔になり、続けた。
「つまり、フウさん以外にも、俺たちのことを胡散臭い、そう思ってるのがいても不思議じゃない、そういうことでいいかな」
「まあ、ほとんどそう思う人はないと思いますが、神官長はそう思ってるかも知れません」
「ほう。なんでそう思います」
「変わりましたから、あの方は。だからおそらく、そのことに関係してると思いますよ」
「へえ……」
トーヤが少し表情を引き締めた。
「それは、神官長が力を持つようになってから思ったんですか? それともその前から?」
「そうですねえ」
フウが空を見上げるようにして少し考える。
「今にして思えば、神官長が熱を出された後に少し違和感を感じていたように思います」
「へえ」
トーヤが驚いたような顔になった。
ミーヤから、神官長がシャンタルの葬送の翌日から熱を出して寝付いたということは聞いた。だが、その段階で、あのことと神官長の変化を関連付けて考えられる者は、ほぼいなかったんじゃないかと思うからだ。
「それって、キリエさんでもまだそうは思ってなかった次期なんじゃないか?」
「そうかも知れません。キリエ様は何があったか全てをご存知でしたからね。私は薬のこと以外は何も知らない、かといって本当に何も知らない者でもない。そういうことは、案外、そういう中途半端な場所にいる人間の方が気がついたりするものなんですよ」
「なるほど、さすがに科学者なだけあるな」
トーヤはフウの物の言い方にまた感心していた。
キリエを尊敬する者として持ち上げるのでもなく、先に気がついた自分のことを得意そうに評価するわけでもない。感情ではなく、ごく自然にそうであろうと推測できることだけを口にする。
「俺はあんたのことを信頼していい人間だと判断した。だけど、信頼してるだけに、信用はしねえ」
「また小難しい物言いをしますね」
「意味は分かってんだろ? あんたはキリエさんの意向に沿って動いてるだけだ。だから、それが変わると敵に回る可能性もある。そのあたりもキリエさんと一緒だ」
「確かにそうです。すごいですね、ボス」
フウもトーヤの発言に感心する。
「ええ、私はあなた方の味方ですが、それはキリエ様がそうして欲しいと望んでいらっしゃるから。だから、もしもそれをお望みにならなくなったら、確かにおっしゃる通りになると思います、ボス」
フウはそう言うと、満足そうに笑った。
「あらまあ、愛の告白をありがとうございます」
フウの答えを聞いてトーヤが大笑いする。
「俺は根性の決まってる人間が好きなんだよ。あんたの根性の決まり方はなかなかのもんだな」
「根性が決まるというのは、覚悟が決まるということですよね」
「なんだ、よく知ってんな。宮の人間には通じない言葉だと思ってたが」
「私は13歳まで世俗におりましたからね、色々と見識が高いのですよ」
その言い方にトーヤが続けて笑う。
その言葉を聞いてミーヤはドキリとした。
『トーヤはわたくしを好きだと言ってくれました』
ある方のその言葉を思い出したからだ。
『トーヤがわたくしのことを好きなところ』
『それは、根性決まってる、ところだそうです』
あの時、そう聞いて拍子抜けしてしまい、そのまま自分の心の感じた痛みのことは封印してしまっていた。それをさっきのトーヤの言葉で思い出してしまったのだ。
「それで、その見識高く、根性の決まった次期侍女頭候補様は、俺たちの味方になって何をしてくれるつもりなんだ?」
トーヤのフウへの質問で、ミーヤの思考も現実の世界に引き戻される。
「それなんですよね」
フウが困った顔になり、
「キリエ様の敵になるという以外に、何をどうすればいいのかがまだ分からないのですよ」
「ほうほう」
「ですから、そのためにも色々とお聞きしたいのですが、私は言ってみればこちらでは新参者でしょう? まだまだ色々な秘密を教えてもらうには早いですし、どうしたものかと思ってます」
「そうだな。確かにまだあんたに色々な秘密を話すのは早すぎる」
「そうですよね。私だったらキリエ様の間諜ではないかと疑いますよ」
「まあ、そういうこったな」
トーヤは「間諜」というこれも侍女の口から出るとは思えない言葉を聞いて、心底から楽しそうだ。
「だから、あんたが知ってる、じゃなくて分かってることをまず教えてほしい。その上で必要なことは伝えるし、まだ早いなと思うことは内緒だ」
「分かりました、それで構いませんよ、ボス」
フウはすっかり「ボス」という呼び方が気にいったようだ。
フウが了解している事柄は、八年前にシャンタルがフウの作った薬で眠ったこと、その後助け出されてトーヤと共に国を出たこと、そして「エリス様」として戻ってきたこと、などであった。
「なぜそのようになったかなどは分かりません。ですが、湖で眠りにつかれると聞いた後、ボスが月虹兵の役目でこの国を出たと聞き、そうなのだろうなと思いました。そしてエリス様がこの宮にいらっしゃった時に、もしかしたらご先代ではないかと。だって、胡散臭すぎますものね、入り方が」
「確かにな」
トーヤが思わずぶーっと吹き出してから真顔になり、続けた。
「つまり、フウさん以外にも、俺たちのことを胡散臭い、そう思ってるのがいても不思議じゃない、そういうことでいいかな」
「まあ、ほとんどそう思う人はないと思いますが、神官長はそう思ってるかも知れません」
「ほう。なんでそう思います」
「変わりましたから、あの方は。だからおそらく、そのことに関係してると思いますよ」
「へえ……」
トーヤが少し表情を引き締めた。
「それは、神官長が力を持つようになってから思ったんですか? それともその前から?」
「そうですねえ」
フウが空を見上げるようにして少し考える。
「今にして思えば、神官長が熱を出された後に少し違和感を感じていたように思います」
「へえ」
トーヤが驚いたような顔になった。
ミーヤから、神官長がシャンタルの葬送の翌日から熱を出して寝付いたということは聞いた。だが、その段階で、あのことと神官長の変化を関連付けて考えられる者は、ほぼいなかったんじゃないかと思うからだ。
「それって、キリエさんでもまだそうは思ってなかった次期なんじゃないか?」
「そうかも知れません。キリエ様は何があったか全てをご存知でしたからね。私は薬のこと以外は何も知らない、かといって本当に何も知らない者でもない。そういうことは、案外、そういう中途半端な場所にいる人間の方が気がついたりするものなんですよ」
「なるほど、さすがに科学者なだけあるな」
トーヤはフウの物の言い方にまた感心していた。
キリエを尊敬する者として持ち上げるのでもなく、先に気がついた自分のことを得意そうに評価するわけでもない。感情ではなく、ごく自然にそうであろうと推測できることだけを口にする。
「俺はあんたのことを信頼していい人間だと判断した。だけど、信頼してるだけに、信用はしねえ」
「また小難しい物言いをしますね」
「意味は分かってんだろ? あんたはキリエさんの意向に沿って動いてるだけだ。だから、それが変わると敵に回る可能性もある。そのあたりもキリエさんと一緒だ」
「確かにそうです。すごいですね、ボス」
フウもトーヤの発言に感心する。
「ええ、私はあなた方の味方ですが、それはキリエ様がそうして欲しいと望んでいらっしゃるから。だから、もしもそれをお望みにならなくなったら、確かにおっしゃる通りになると思います、ボス」
フウはそう言うと、満足そうに笑った。
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