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第二章 第二節 青い運命
19 3人の時
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「だけどもう泣くな、あともうちょっとだ。いよいよかっこいいトーヤ様がクソガキを連れてシャンタリオから脱出するぞ」
「え」
ベルが顔を上げてトーヤを見る。
「フェイがいなくなってしばらくしてからな、またあることが起きたんだ。だがもうちょっとだけフェイの話を聞いてやってほしい。いいか?」
「うん」
「そうか、うん」
トーヤがベルを離すとまた頭をぐしゃぐしゃとかき混ぜた。
「おまえ、もうどんな髪型してたか分かんねえな」
「え!」
ベルが急いで頭をなでつけるのを見てトーヤが笑う。
「フェイがいっちまったのは朝早くでな、少しずつ覚悟はしたものの、やっぱりそれが本当になった時にはなんとも言えない気持ちだった」
トーヤは湖から汲んできた水でフェイの顔を拭いてやった。
ふっくらとした柔らかい頬をやさしく拭くと、頬が少し上がってフェイがまた笑ったように思った。
そうしておいてミーヤに水の入った瓶を渡し「用意ができる」まで部屋から出た。
ミーヤは今度は同じようにしてフェイの体を拭いてやった。
トーヤはフェイがいる個室の外に立ち尽していた。
朝日がさしても廊下は冷たくて暗い。
音の一つもしない。
冷たい廊下でトーヤはややうつむき、黙って立ったまま動かなかった。
しばらくするとミーヤが出てきて中に入るように声をかけてきた。
ミーヤと一緒にフェイの支度をしていた侍女数人が部屋から出ると、トーヤに頭を下げて去っていった。
入れ替わりに中に入ると、フェイは、白い服に着替えさせられ静かに眠っていた。
「よお、ちび……」
トーヤは近付いて声をかけた。
もちろん返事はない。
「明日の朝、埋葬されます……」
ミーヤが静かに言った。
「それまではどうすんだ?」
「それまではこのままこの部屋に……」
「かわいそうじゃねえか……」
トーヤはじっとフェイの顔を見ながら言った。
「俺の部屋に、連れてってやれねえか?」
「それは……どうでしょうか……」
「頼むよ、せめて明日の朝まで一緒にいてやりてえんだ……」
「分かりました」
ミーヤが部屋から出ていき、トーヤとフェイの2人になった。
「よお、ちび……返事しろよ、おい……」
返事はない。
トーヤはフェイの幸せそうな顔をじっと見つめ続けた。
しばらくするとミーヤが戻ってきた。
「構わないそうです」
「そうか、ありがとう」
トーヤはフェイを抱き上げると自分の部屋に連れて行った。
本当ならせっかく整えた装束を乱すようなことはいけないのかも知れないが、フェイを板やなんかに乗せて連れて行くのはとても我慢できなかった。ミーヤも同じ気持ちだったのか止めなかった。
トーヤの与えられている部屋に連れて行くとそっとベッドに寝かせた。
ミーヤが胸元から白いものを取り出し、そっと開いてフェイの枕元に置いた。
ハンカチの上に乗せられた青い小鳥のガラス細工。
「よお、ちび、明日の朝までここで一緒だ、色々話そうぜ」
「私も一緒ですよ」
トーヤがミーヤを見る。
「お許しをいただいてきました……」
「そうか……」
2人とも何をするでもない。
ただじっとフェイの顔を見続けていた。
「笑ってます……」
「そうだな……」
時々、そんなことをちらっと話す。
何かを思い出してそれを少し話す。
少し笑ったりもする。
3人で普通に話をしているようにしてただ過ごした。
「そういや」
「はい?」
「白なのか、青はつけちゃいけねえのか?」
「だめということはないと思いますが、後に残るものはだめだそうです」
「後に残るもの?」
「はい、その、長く残るものは……」
トーヤはなんとなくミーヤが言いたいことを察した。
「リボンはどうだ?あの青いリボンは」
「いいと思います」
「そうか、じゃあつけてやんねえとな」
「はい……」
「お友達は?」
フェイの枕元の青い小鳥を見て言う。
「ガラスはだめだと思います」
「一緒にいさせてやれねえのかよ」
「はい……」
「そうか……」
トーヤは少し考えてからミーヤに言った。
「ナイフか小刀か、なんかないか?」
「え?」
「ちょっと必要なんだよ」
「一体何に使うのですか?」
「あぶないことはしねえよ、頼む」
「分かりました……」
トーヤの部屋には刃物の類は一切置かれていなかったのだ。
ミーヤは部屋から出るとしばらくして小さなナイフを持って戻ってきた。
「ありがとう」
トーヤはナイフを受け取ると、戸棚から新しいハンカチを出してテーブルの上に広げた。
そうして、自分の髪を掴むとナイフで軽く切り落とした。
トーヤの黒い髪がハンカチの上にパサリと落ちる。
「ちょっとでもそばにいてやりてえからな……」
そうして短い髪を何回か切り取った。
「私も……」
ミーヤがナイフを受け取ると、トーヤより長い髪を一房さくりと切り落とし、トーヤの髪の上に置く。
ミーヤがナイフをトーヤに渡し、丁寧にハンカチをたたんだ。
ハンカチをフェイの胸元にそっと入れ、フェイの両手を重ねて押さえる。
「フェイ、そばにいますよ……」
「ずっとそばにいるからな……」
そうしてただ同じように少し話し、少し笑い、ただただ普通の時を過ごして朝を迎えた。
「え」
ベルが顔を上げてトーヤを見る。
「フェイがいなくなってしばらくしてからな、またあることが起きたんだ。だがもうちょっとだけフェイの話を聞いてやってほしい。いいか?」
「うん」
「そうか、うん」
トーヤがベルを離すとまた頭をぐしゃぐしゃとかき混ぜた。
「おまえ、もうどんな髪型してたか分かんねえな」
「え!」
ベルが急いで頭をなでつけるのを見てトーヤが笑う。
「フェイがいっちまったのは朝早くでな、少しずつ覚悟はしたものの、やっぱりそれが本当になった時にはなんとも言えない気持ちだった」
トーヤは湖から汲んできた水でフェイの顔を拭いてやった。
ふっくらとした柔らかい頬をやさしく拭くと、頬が少し上がってフェイがまた笑ったように思った。
そうしておいてミーヤに水の入った瓶を渡し「用意ができる」まで部屋から出た。
ミーヤは今度は同じようにしてフェイの体を拭いてやった。
トーヤはフェイがいる個室の外に立ち尽していた。
朝日がさしても廊下は冷たくて暗い。
音の一つもしない。
冷たい廊下でトーヤはややうつむき、黙って立ったまま動かなかった。
しばらくするとミーヤが出てきて中に入るように声をかけてきた。
ミーヤと一緒にフェイの支度をしていた侍女数人が部屋から出ると、トーヤに頭を下げて去っていった。
入れ替わりに中に入ると、フェイは、白い服に着替えさせられ静かに眠っていた。
「よお、ちび……」
トーヤは近付いて声をかけた。
もちろん返事はない。
「明日の朝、埋葬されます……」
ミーヤが静かに言った。
「それまではどうすんだ?」
「それまではこのままこの部屋に……」
「かわいそうじゃねえか……」
トーヤはじっとフェイの顔を見ながら言った。
「俺の部屋に、連れてってやれねえか?」
「それは……どうでしょうか……」
「頼むよ、せめて明日の朝まで一緒にいてやりてえんだ……」
「分かりました」
ミーヤが部屋から出ていき、トーヤとフェイの2人になった。
「よお、ちび……返事しろよ、おい……」
返事はない。
トーヤはフェイの幸せそうな顔をじっと見つめ続けた。
しばらくするとミーヤが戻ってきた。
「構わないそうです」
「そうか、ありがとう」
トーヤはフェイを抱き上げると自分の部屋に連れて行った。
本当ならせっかく整えた装束を乱すようなことはいけないのかも知れないが、フェイを板やなんかに乗せて連れて行くのはとても我慢できなかった。ミーヤも同じ気持ちだったのか止めなかった。
トーヤの与えられている部屋に連れて行くとそっとベッドに寝かせた。
ミーヤが胸元から白いものを取り出し、そっと開いてフェイの枕元に置いた。
ハンカチの上に乗せられた青い小鳥のガラス細工。
「よお、ちび、明日の朝までここで一緒だ、色々話そうぜ」
「私も一緒ですよ」
トーヤがミーヤを見る。
「お許しをいただいてきました……」
「そうか……」
2人とも何をするでもない。
ただじっとフェイの顔を見続けていた。
「笑ってます……」
「そうだな……」
時々、そんなことをちらっと話す。
何かを思い出してそれを少し話す。
少し笑ったりもする。
3人で普通に話をしているようにしてただ過ごした。
「そういや」
「はい?」
「白なのか、青はつけちゃいけねえのか?」
「だめということはないと思いますが、後に残るものはだめだそうです」
「後に残るもの?」
「はい、その、長く残るものは……」
トーヤはなんとなくミーヤが言いたいことを察した。
「リボンはどうだ?あの青いリボンは」
「いいと思います」
「そうか、じゃあつけてやんねえとな」
「はい……」
「お友達は?」
フェイの枕元の青い小鳥を見て言う。
「ガラスはだめだと思います」
「一緒にいさせてやれねえのかよ」
「はい……」
「そうか……」
トーヤは少し考えてからミーヤに言った。
「ナイフか小刀か、なんかないか?」
「え?」
「ちょっと必要なんだよ」
「一体何に使うのですか?」
「あぶないことはしねえよ、頼む」
「分かりました……」
トーヤの部屋には刃物の類は一切置かれていなかったのだ。
ミーヤは部屋から出るとしばらくして小さなナイフを持って戻ってきた。
「ありがとう」
トーヤはナイフを受け取ると、戸棚から新しいハンカチを出してテーブルの上に広げた。
そうして、自分の髪を掴むとナイフで軽く切り落とした。
トーヤの黒い髪がハンカチの上にパサリと落ちる。
「ちょっとでもそばにいてやりてえからな……」
そうして短い髪を何回か切り取った。
「私も……」
ミーヤがナイフを受け取ると、トーヤより長い髪を一房さくりと切り落とし、トーヤの髪の上に置く。
ミーヤがナイフをトーヤに渡し、丁寧にハンカチをたたんだ。
ハンカチをフェイの胸元にそっと入れ、フェイの両手を重ねて押さえる。
「フェイ、そばにいますよ……」
「ずっとそばにいるからな……」
そうしてただ同じように少し話し、少し笑い、ただただ普通の時を過ごして朝を迎えた。
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