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第二章 第二節 青い運命
18 唯一無二
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トーヤがベルをキッと睨みつける。
「何回でも言ってやるよ、おまえはフェイの代わりになんかならねえ!」
「トーヤ、それはあんまりひどいんじゃねえか……」
「アランもだ!よーく覚えとけ!」
アランがビクッと身を引いた。
アランとベルがトーヤとシャンタルに出会ってもうすぐ3年になるが、ここまで怒りを露わにしたトーヤを見たことがない。
いつもは冷静にトーヤに対応するアランだが、初めての出来事に何も言葉を発することもできず、固まるしかできなかった。
「ベル、お前はな、フェイと全く違う、一緒のところなんざ髪の毛1本すらねえ!顔も性格も根性もなんもかんもな!そんなおまえをどうやってフェイの代わりにしろってんだ、え!なるはずねえだろうが!」
ベルはあまりの言葉にひっくひっくとしゃくりあげながら泣き出した。
「逆にな、フェイもお前の代わりにはならねえんだ!なんでそんなことが分かんねえんだ、え?誰が誰の代わりになるだと?なるはずねえだろ!みんな違う人間、みんな1人しかいねえ人間だ、そんなことも分かんねえでぐずぐずぐずぐず言いやがって、俺はな、そういうひがんだ物言いが一番嫌いだ、大嫌いだ!よーく覚えとけ、おまえはおまえ、フェイはフェイだ!分かったか!おまえをフェイの代わりにすることなんざねえんだよバカ!!」
トーヤの言葉を聞くと、うわーんと大泣きしながらベルはトーヤの横に回り、床に落ちるように膝をついてしがみついた。
「……この、きったねえな、鼻垂らしながらしがみつくな、このバカ!」
「だって、だってトーヤが、トーヤがああああああ!」
わんわん泣きながらしがみついて離れない。
「きったねえな、人の服で鼻吹くな!さっき渡したハンカチ使え、バカ!」
「またバカって言ったああああああ!」
何を言ってもただ泣き続けるベルにしがみつかれたまま、トーヤは天を仰いで言った。
「おい、アラン……」
「……なんだ」
「こいつ、バカなのか?」
「ああ、バカだな……」
そう言ってアランが笑った。
「トーヤだって知ってただろうが、とんでもないバカだってな」
「ああ、そうだったな、忘れてたがとんでもないバカだったなこいつ」
そう言いながら、ベルの頭をガシガシと撫で、
「そんで、そんなバカなところがかわいくて仕方がねえんだよな、俺もバカだ」
ふっと笑った。
「またバカって言ったー!」
「しょうがねえだろうが、本当のことなんだからよ、ほんっと、どうしようもねえバカだよな、おまえは」
そう言ってベルの頭をぎゅっと抱きしめた。
「いいか、よく聞けよ?この世でおまえはおまえ1人だ、誰も代わりになんかならねえ」
「……うん……」
「俺はフェイがかわいかった、大事だった。そして俺はおまえがかわいい、大事だ」
「うん……」
「おまえもフェイも誰にも代えられない唯一のやつだ」
「うん……」
「それが分かったらもういい、もうあんな言い方するな」
「うん……」
「今度言ったらただじゃおかねえからな?」
「うん……」
「なんだよ、兄貴の次はうん、しか言えねえのかよ?」
「うん……」
トーヤがベルを抱えたまま大笑いする。
「ほんっとにほんとにバカだよなーおまえ」
「バカじゃねえ!」
そう言ってまたうわーんと大泣きした。
トーヤはベルを抱きしめたまま、また頭をグシャグシャとかき回す。
「あ、言っとくけどな、いくらかわいくても野郎にはやらねえからな」
アランとシャンタルを見てそう言った。
「俺もいらねえよ」
アランがふっと鼻で笑った。
「私もいらないけど、本当にベルはやさしいね、トーヤはそのこと分かってる?」
「なんだよ、このバカがどうかしたか?」
「またバカって言う!」
ベルがやっと顔を上げてトーヤを睨みつける。
「ぶっさいくな顔してこっち見んな」
そう言ってトーヤがまたベルの頭をぎゅっと抱えた。
「なんだよ、こいつがどうしたって?」
「ベルはね、フェイにヤキモチ焼いてたんだよ」
「そうなんだろうな」
「だけどね、それだけじゃないよ?ベルは、フェイに申し訳なく思ったんだよ、ね?」
「申し訳ない?」
「うん、そう」
シャンタルがベルを見て言う。
「ベルは、自分がフェイの幸せを取ってしまったように思ったんだよね?」
「…………」
ベルは黙ったまま返事をしない。
「もしもフェイが生きてたら、自分はトーヤにこんなにかわいがってもらえてないんじゃないかって、だからあんな風に言ったんだよ」
「そうなのか?」
トーヤがベルに聞くと、やっとベルがぼそっと言った。
「……フェイ、かわいそうだよ……」
「おまえ……」
「フェイだって、ずっとこうしてトーヤといたかったんだよ……」
「おまえ、そんなこと思ってたのか」
「わかんねえよ!」
ベルは自分でも分かってなかった心の奥底をシャンタルに指摘され、また軽く混乱していた。
「そうか……」
「ほんっとにバカだな、おまえよ……」
アランが、トーヤに抱きしめられたままのベルの頭をくしゃっと掴んだ。
「ほんとだな、ほんっとうにこいつ大バカだよ……だけどな、唯一無二のかわいいバカだ……ありがとうな、フェイのことを思ってやってくれて。フェイは、本当に幸せだよ、おまえに大事に思われて……ありがとうな……」
トーヤがそう言って愛しそうにそっとベルを抱き直した。
「何回でも言ってやるよ、おまえはフェイの代わりになんかならねえ!」
「トーヤ、それはあんまりひどいんじゃねえか……」
「アランもだ!よーく覚えとけ!」
アランがビクッと身を引いた。
アランとベルがトーヤとシャンタルに出会ってもうすぐ3年になるが、ここまで怒りを露わにしたトーヤを見たことがない。
いつもは冷静にトーヤに対応するアランだが、初めての出来事に何も言葉を発することもできず、固まるしかできなかった。
「ベル、お前はな、フェイと全く違う、一緒のところなんざ髪の毛1本すらねえ!顔も性格も根性もなんもかんもな!そんなおまえをどうやってフェイの代わりにしろってんだ、え!なるはずねえだろうが!」
ベルはあまりの言葉にひっくひっくとしゃくりあげながら泣き出した。
「逆にな、フェイもお前の代わりにはならねえんだ!なんでそんなことが分かんねえんだ、え?誰が誰の代わりになるだと?なるはずねえだろ!みんな違う人間、みんな1人しかいねえ人間だ、そんなことも分かんねえでぐずぐずぐずぐず言いやがって、俺はな、そういうひがんだ物言いが一番嫌いだ、大嫌いだ!よーく覚えとけ、おまえはおまえ、フェイはフェイだ!分かったか!おまえをフェイの代わりにすることなんざねえんだよバカ!!」
トーヤの言葉を聞くと、うわーんと大泣きしながらベルはトーヤの横に回り、床に落ちるように膝をついてしがみついた。
「……この、きったねえな、鼻垂らしながらしがみつくな、このバカ!」
「だって、だってトーヤが、トーヤがああああああ!」
わんわん泣きながらしがみついて離れない。
「きったねえな、人の服で鼻吹くな!さっき渡したハンカチ使え、バカ!」
「またバカって言ったああああああ!」
何を言ってもただ泣き続けるベルにしがみつかれたまま、トーヤは天を仰いで言った。
「おい、アラン……」
「……なんだ」
「こいつ、バカなのか?」
「ああ、バカだな……」
そう言ってアランが笑った。
「トーヤだって知ってただろうが、とんでもないバカだってな」
「ああ、そうだったな、忘れてたがとんでもないバカだったなこいつ」
そう言いながら、ベルの頭をガシガシと撫で、
「そんで、そんなバカなところがかわいくて仕方がねえんだよな、俺もバカだ」
ふっと笑った。
「またバカって言ったー!」
「しょうがねえだろうが、本当のことなんだからよ、ほんっと、どうしようもねえバカだよな、おまえは」
そう言ってベルの頭をぎゅっと抱きしめた。
「いいか、よく聞けよ?この世でおまえはおまえ1人だ、誰も代わりになんかならねえ」
「……うん……」
「俺はフェイがかわいかった、大事だった。そして俺はおまえがかわいい、大事だ」
「うん……」
「おまえもフェイも誰にも代えられない唯一のやつだ」
「うん……」
「それが分かったらもういい、もうあんな言い方するな」
「うん……」
「今度言ったらただじゃおかねえからな?」
「うん……」
「なんだよ、兄貴の次はうん、しか言えねえのかよ?」
「うん……」
トーヤがベルを抱えたまま大笑いする。
「ほんっとにほんとにバカだよなーおまえ」
「バカじゃねえ!」
そう言ってまたうわーんと大泣きした。
トーヤはベルを抱きしめたまま、また頭をグシャグシャとかき回す。
「あ、言っとくけどな、いくらかわいくても野郎にはやらねえからな」
アランとシャンタルを見てそう言った。
「俺もいらねえよ」
アランがふっと鼻で笑った。
「私もいらないけど、本当にベルはやさしいね、トーヤはそのこと分かってる?」
「なんだよ、このバカがどうかしたか?」
「またバカって言う!」
ベルがやっと顔を上げてトーヤを睨みつける。
「ぶっさいくな顔してこっち見んな」
そう言ってトーヤがまたベルの頭をぎゅっと抱えた。
「なんだよ、こいつがどうしたって?」
「ベルはね、フェイにヤキモチ焼いてたんだよ」
「そうなんだろうな」
「だけどね、それだけじゃないよ?ベルは、フェイに申し訳なく思ったんだよ、ね?」
「申し訳ない?」
「うん、そう」
シャンタルがベルを見て言う。
「ベルは、自分がフェイの幸せを取ってしまったように思ったんだよね?」
「…………」
ベルは黙ったまま返事をしない。
「もしもフェイが生きてたら、自分はトーヤにこんなにかわいがってもらえてないんじゃないかって、だからあんな風に言ったんだよ」
「そうなのか?」
トーヤがベルに聞くと、やっとベルがぼそっと言った。
「……フェイ、かわいそうだよ……」
「おまえ……」
「フェイだって、ずっとこうしてトーヤといたかったんだよ……」
「おまえ、そんなこと思ってたのか」
「わかんねえよ!」
ベルは自分でも分かってなかった心の奥底をシャンタルに指摘され、また軽く混乱していた。
「そうか……」
「ほんっとにバカだな、おまえよ……」
アランが、トーヤに抱きしめられたままのベルの頭をくしゃっと掴んだ。
「ほんとだな、ほんっとうにこいつ大バカだよ……だけどな、唯一無二のかわいいバカだ……ありがとうな、フェイのことを思ってやってくれて。フェイは、本当に幸せだよ、おまえに大事に思われて……ありがとうな……」
トーヤがそう言って愛しそうにそっとベルを抱き直した。
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