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第二章 第三節 進むべき道を
5 始まりの場所
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「なんだって?」
「うん……」
トーヤが額を押さえて考える。
あの日、フェイの様子がおかしいと療養室に連れて行ったあの日、屋外でトーヤがミーヤと一緒にいたというとあの場所しかない。
「それ、どんなとこだった……」
「うん、それがさ……なんか、湖のような場所だったんだよな」
「なに?」
トーヤの顔色が変わる。
「そこで、俺たちは何をしてた?」
「うん、それがさ、なんか水汲んでたみたいなんだよな」
ダルにはおそらくミーヤはあの水のことまでは話をしてないはずだ。確認はしてないが、そんなことを軽々しく話すような人間ではない。だとしたら……
「もうちょっと詳しく教えてくれるか、その時のこと」
「うんいいよ。元々そのつもりで話し始めたんだしな」
ダルはあの日、本当なら漁に行って一日海にいるはずだった。
天気もよく、波も静かで大漁が予想されるような日だった。
朝早く起き、父親と兄2人と4人で漁に出る準備をしていたが、ふとあの洞窟のことが気になってきた、どうしても行きたくなってきた。
「親父、兄貴、ちょっと悪いんだけど今日休ませてもらっていいか?」
「どうした、体の具合でも悪いのか?」
「いや、そうじゃねえんだが……なんて言っていいのかな、ちょっとトーヤに頼まれたこと、思い出したんだ」
「そうか、そんじゃ仕方ねえな、やってこい」
「うん、ありがとう」
カースの村では神馬を下賜されて以来、ダルのことを少し違うように扱うようになっていた。ダルがなにかトーヤや宮のことで動くことがあると、それをシャンタルの託宣と同列のように扱うようになっていたのだ。
そうして船を降りると、弁当を持ち、馬に乗って村を出た。
しばらく馬を走らせると、トーヤに教えたあの洞窟の入り口に着いた。
元々道を通り過ぎる人間以外誰もいないような場所だ。周囲に誰もいないのを確認すると、馬を連れて伸びた雑草の間を通って偽装してある洞窟の入り口に着いた。もう一度周囲を確認してから扉を開け中に入る。
この入り口を使うことはほとんどない。なぜなら、そこからなら馬に乗って走って帰る方がずっと楽で早いからだ。カースから海に行く時にはあそこの道しかないが、ここへは特に隠れて行く意味がないので使う機会はほとんどない。
どんな時に使うかというと、雨などで天気の悪い日だ。朝から雨の時には漁に行かないか、行ってもわざわざ運んで売りに行くほどのこともないのでそもそもカースからは出ない。王都に行った帰りなどに雨が降ったり雷が鳴ったりすると、あそこから雨を避けて洞窟を通って帰ることがある。時間はかかるが冷たい雨に打たれるよりはましな時、に通ることがあるのだ。もしくは人目を避けて誰かと会いたい時、なんかもあるにはあるが、圧倒的に天気の悪い日になる。
馬に姿勢を低くさせてそこそこ急な坂道を下ることになるので、できればカースまでにある途中のもう一つの入り口から出てまた馬を走らせたい。カースから近い分、そちらの方がまだ使う回数は多いが、どっちにしても似たようなものである。
今回、ダルもそういうことでそこまでは馬を走らせた。わざわざ洞窟を行く意味はない。
洞窟を入るといつも進む左手の方向ではなく、登り坂になっている右手を見る。
王宮につながっているのではないかと言われているので行ってみようと思うものはない。もしも、本当に王宮に着いてしまったら、そして見つかってしまったら、どんなお咎めを受けるか分からない。
ダルもそういうわけで、好き好んで行きたいとは思わないが、トーヤのために行ってみようと思ったのだ。だが、なんでそれがいきなり今日なのかまでは分からない。
ただ、今のダルにはこの神馬がいる。もしも本当に王宮につながっていて誰かに会ったとしても、この馬を連れていてトーヤの頼みごとのためだと言えばなんとかなるだろうという腹があった。実際にトーヤも「何かあったら俺に頼まれたって言え」と言っていた。
「よし、行くよ」
やさしく馬の頭を押さえ、姿勢を低くさせて手綱を握って進みだした。
手持ちのランプで前を照らしながら進む。初めて行く道だ、常より気をつけて気をつけて進む。
「おまえがいてくれてよかったなあ……」
愛馬の首を軽くぽんぽんと叩くと、馬が承知したというように軽く首を振った。
こういう時に道連れがいるのは本当に心強いものだ。
どこかに出口がないか左右の壁の部分も見ながらゆっくりと進む。どこも同じ洞窟を掘ったままの壁、出入り口はなさそうに思う。そのまま、何もないままずっと進んでいく。
「どこまで続いてるのかなあ……」
少し不安になってきた頃、
「あれ、明るい」
いきなりぽっかりと洞窟の先が開けた。
「ってことは、海と同じくここが端っこなのかな?」
口に出しながらそっと出口に近付く。
そっと周囲をうかがいながら外をのぞく。
どうやら森のようである。人気のないことにほっとする。
「どこの森かなあ……」
洞窟から出て数歩歩いてみると、少し先に何かキラキラ輝くようなものがある。
「なんだろう……」
馬を手近の木につなぎ行ってみることにした。
「うん……」
トーヤが額を押さえて考える。
あの日、フェイの様子がおかしいと療養室に連れて行ったあの日、屋外でトーヤがミーヤと一緒にいたというとあの場所しかない。
「それ、どんなとこだった……」
「うん、それがさ……なんか、湖のような場所だったんだよな」
「なに?」
トーヤの顔色が変わる。
「そこで、俺たちは何をしてた?」
「うん、それがさ、なんか水汲んでたみたいなんだよな」
ダルにはおそらくミーヤはあの水のことまでは話をしてないはずだ。確認はしてないが、そんなことを軽々しく話すような人間ではない。だとしたら……
「もうちょっと詳しく教えてくれるか、その時のこと」
「うんいいよ。元々そのつもりで話し始めたんだしな」
ダルはあの日、本当なら漁に行って一日海にいるはずだった。
天気もよく、波も静かで大漁が予想されるような日だった。
朝早く起き、父親と兄2人と4人で漁に出る準備をしていたが、ふとあの洞窟のことが気になってきた、どうしても行きたくなってきた。
「親父、兄貴、ちょっと悪いんだけど今日休ませてもらっていいか?」
「どうした、体の具合でも悪いのか?」
「いや、そうじゃねえんだが……なんて言っていいのかな、ちょっとトーヤに頼まれたこと、思い出したんだ」
「そうか、そんじゃ仕方ねえな、やってこい」
「うん、ありがとう」
カースの村では神馬を下賜されて以来、ダルのことを少し違うように扱うようになっていた。ダルがなにかトーヤや宮のことで動くことがあると、それをシャンタルの託宣と同列のように扱うようになっていたのだ。
そうして船を降りると、弁当を持ち、馬に乗って村を出た。
しばらく馬を走らせると、トーヤに教えたあの洞窟の入り口に着いた。
元々道を通り過ぎる人間以外誰もいないような場所だ。周囲に誰もいないのを確認すると、馬を連れて伸びた雑草の間を通って偽装してある洞窟の入り口に着いた。もう一度周囲を確認してから扉を開け中に入る。
この入り口を使うことはほとんどない。なぜなら、そこからなら馬に乗って走って帰る方がずっと楽で早いからだ。カースから海に行く時にはあそこの道しかないが、ここへは特に隠れて行く意味がないので使う機会はほとんどない。
どんな時に使うかというと、雨などで天気の悪い日だ。朝から雨の時には漁に行かないか、行ってもわざわざ運んで売りに行くほどのこともないのでそもそもカースからは出ない。王都に行った帰りなどに雨が降ったり雷が鳴ったりすると、あそこから雨を避けて洞窟を通って帰ることがある。時間はかかるが冷たい雨に打たれるよりはましな時、に通ることがあるのだ。もしくは人目を避けて誰かと会いたい時、なんかもあるにはあるが、圧倒的に天気の悪い日になる。
馬に姿勢を低くさせてそこそこ急な坂道を下ることになるので、できればカースまでにある途中のもう一つの入り口から出てまた馬を走らせたい。カースから近い分、そちらの方がまだ使う回数は多いが、どっちにしても似たようなものである。
今回、ダルもそういうことでそこまでは馬を走らせた。わざわざ洞窟を行く意味はない。
洞窟を入るといつも進む左手の方向ではなく、登り坂になっている右手を見る。
王宮につながっているのではないかと言われているので行ってみようと思うものはない。もしも、本当に王宮に着いてしまったら、そして見つかってしまったら、どんなお咎めを受けるか分からない。
ダルもそういうわけで、好き好んで行きたいとは思わないが、トーヤのために行ってみようと思ったのだ。だが、なんでそれがいきなり今日なのかまでは分からない。
ただ、今のダルにはこの神馬がいる。もしも本当に王宮につながっていて誰かに会ったとしても、この馬を連れていてトーヤの頼みごとのためだと言えばなんとかなるだろうという腹があった。実際にトーヤも「何かあったら俺に頼まれたって言え」と言っていた。
「よし、行くよ」
やさしく馬の頭を押さえ、姿勢を低くさせて手綱を握って進みだした。
手持ちのランプで前を照らしながら進む。初めて行く道だ、常より気をつけて気をつけて進む。
「おまえがいてくれてよかったなあ……」
愛馬の首を軽くぽんぽんと叩くと、馬が承知したというように軽く首を振った。
こういう時に道連れがいるのは本当に心強いものだ。
どこかに出口がないか左右の壁の部分も見ながらゆっくりと進む。どこも同じ洞窟を掘ったままの壁、出入り口はなさそうに思う。そのまま、何もないままずっと進んでいく。
「どこまで続いてるのかなあ……」
少し不安になってきた頃、
「あれ、明るい」
いきなりぽっかりと洞窟の先が開けた。
「ってことは、海と同じくここが端っこなのかな?」
口に出しながらそっと出口に近付く。
そっと周囲をうかがいながら外をのぞく。
どうやら森のようである。人気のないことにほっとする。
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「なんだろう……」
馬を手近の木につなぎ行ってみることにした。
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