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第二章 第三節 進むべき道を
9 再会の日
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ダルが来て3日の後、トーヤとミーヤがフェイと再会できる日がやってきた。
神官に伴われて墓所へ行く。
広い空間に木の札がたくさん並んで立てられており、一番前に石でできた墓標がある。その墓標にフェイの名前が新しく刻まれていた。
「フェイの場所はこちらです」
教えられた場所はたくさん並んだ木札のちょうど真ん中あたりであった。
このような共同墓所では一番古い場所から順番に新しいものが入ることになっている。
フェイの入った墓所は全員侍女で、一番古い数十年前に亡くなったそれなりに年を重ねた侍女の後にフェイが入ったらしい。
「ど真ん中か、えらく晴れがましい場所だな。フェイのやつ、まわりの古参に気を使ってねえかな……」
「大丈夫ですよ、フェイはきっとみなさんにかわいがられてます」
「そうだな、かわいいやつだからな」
「お祈りを捧げますので……」
神官に言われ、後ろについて同じように頭を下げながら祈りの言葉を聞く。
秋の少し冷たい風が髪を揺らす。
トーヤはフェイの柔らかい髪を思い出していた。
頭をぐしゃぐしゃと撫でたらミーヤに怒られてたな、そんなことも。
(フェイ、おまえ、そこにいるのか?)
フェイの体は確かにこの墓所にいる。
だがトーヤには、魂というものがあるのなら、本当にずっとトーヤとミーヤのそばにいるようなそんな気がした。
「終わりました、どうぞ」
神官に言われ、持ってきた花をフェイの場所に置く。
赤やピンク、黄色の中心にひときわ鮮やかに青い色の花が入っている。
少し横にずらして置いてある花はきっとダルが持ってきたものだろう。
もう少ししおれてかけてはいるが、そこにも青い花が入っていた。
「おまえが好きな青い色の花だぞ、きれいだろ」
「フェイ、お友達です」
ミーヤが手の上に乗せたハンカチを開き、中のガラス細工を見せる。
「これからも一緒に会いにきますからね」
あの日、トーヤの部屋で、眠るフェイのそばでフェイのお友達、青いガラスの小鳥をどうするかをトーヤとミーヤで話し合った。
フェイが残したほとんど唯一のもの、それがお友達の青い小鳥だ。本当なら親に送るのだろうが、フェイの親はそういうものは受け取らないだろうという話だった。
「ですから、やはりトーヤが持っていてあげた方がいいと思います。フェイは、本当にトーヤのことが好きでしたし、青い色はトーヤの色だと言ってましたから」
「だけどな、ガラスだからな。俺が持ってたら壊しちまう気がする」
「じゃあ壊さずに持っていてあげてください」
「無茶言うよなあ、ちび」
そう言いながら眠ったままのフェイの髪を撫でる。
「あんただったら大事に持っててくれるだろ? その方がいい。それに俺も形見ばっかり増えるのはつらいんだよ」
「形見ばかり?」
「これだ」
トーヤは首にかけていた革ひもを引っ張り出して見せた。
輪になったひもの先には2つの指輪が吊り下げられている。
あの嵐の後、目を覚ました時に無事かどうか聞いたトーヤの大事なもの、今ではトーヤの唯一の持ち物だ。
「ミーヤの形見だ」
「そうだったのですか……」
ミーヤは、自分と同じ名前を持つというトーヤの大事な人のことを思うと胸のどこかがチクリと痛んだ。
「これな、俺が買ってやったんだよ」
「そうなのですか」
またチクリと痛む。
「あいつには世話になったからな、俺がちびの頃からずっと親代わりだった。そんで、戦場稼ぎしてた俺が、初めて傭兵として戦場に行った時、まとまった金が手に入ったんで買って帰ってやったんだよ」
「そうですか」
「仲間がな、土産に何がいいかって聞いたらそりゃ女には指輪だっつーもんで、適当にこんなもんかと思って買ったらでかくてな、指からするりと抜けちまうんだよ。そしたらあいつ、もうちょっと小さい指輪を買って俺が買ってやった指輪の上にはめてな、抜けないようにして着けてくれてた。だから2つあるんだ」
トーヤが笑うがミーヤはなぜか笑えなかった。
「安物だからそうまでして着けるなって言ったら、初めて息子が買ってくれたんだから着けて客に自慢するんだってな」
「息子……」
「ああ、俺はあいつの息子だった。俺はほとんど本当の母親のことを覚えちゃいないんだが、多分ああいうのが、あいつが母親で間違いないな」
「母親……」
そう聞いてほっとしている自分がなぜか苦しい。
「服とかなんか、他の身に着けるものとかは、ほとんどミーヤの姉妹分たちに分けたんだが、これだけはやっぱり手元に置いときたくてな。でも小さくて俺の指にははまらないからこうして首から下げてるんだ」
そう言ってまた服の中にしまい込んだ。
「幸いにしてあの嵐の中でもどっかに行かずに済んでくれてほっとしてる。だけどお友達はガラスだからな、何かあったら壊れちまう。それは嫌なんだ、そいつにはフェイの代わりにずっと長生きしてほしい。だからあんたが持っててくれねえか?」
そう言われてミーヤが持つことになった。
「ですが、私もフェイと同じです。私に何かあった時には、この子はまた行き場をなくしますよ」
「じゃああんたは長生きしてくれりゃいい。あんたのところにいるなら、俺もまた会いに来られるしな」
トーヤがそう言って笑った。
「また会いに来られる」
ミーヤはトーヤのその一言を思い出した。
(そう、そうなのですね、フェイ……)
フェイにお友達を見せながら、そのお友達がまだトーヤと自分をつないでいてくれるのだ、そう思ってミーヤはフェイにありがとうと言った。
神官に伴われて墓所へ行く。
広い空間に木の札がたくさん並んで立てられており、一番前に石でできた墓標がある。その墓標にフェイの名前が新しく刻まれていた。
「フェイの場所はこちらです」
教えられた場所はたくさん並んだ木札のちょうど真ん中あたりであった。
このような共同墓所では一番古い場所から順番に新しいものが入ることになっている。
フェイの入った墓所は全員侍女で、一番古い数十年前に亡くなったそれなりに年を重ねた侍女の後にフェイが入ったらしい。
「ど真ん中か、えらく晴れがましい場所だな。フェイのやつ、まわりの古参に気を使ってねえかな……」
「大丈夫ですよ、フェイはきっとみなさんにかわいがられてます」
「そうだな、かわいいやつだからな」
「お祈りを捧げますので……」
神官に言われ、後ろについて同じように頭を下げながら祈りの言葉を聞く。
秋の少し冷たい風が髪を揺らす。
トーヤはフェイの柔らかい髪を思い出していた。
頭をぐしゃぐしゃと撫でたらミーヤに怒られてたな、そんなことも。
(フェイ、おまえ、そこにいるのか?)
フェイの体は確かにこの墓所にいる。
だがトーヤには、魂というものがあるのなら、本当にずっとトーヤとミーヤのそばにいるようなそんな気がした。
「終わりました、どうぞ」
神官に言われ、持ってきた花をフェイの場所に置く。
赤やピンク、黄色の中心にひときわ鮮やかに青い色の花が入っている。
少し横にずらして置いてある花はきっとダルが持ってきたものだろう。
もう少ししおれてかけてはいるが、そこにも青い花が入っていた。
「おまえが好きな青い色の花だぞ、きれいだろ」
「フェイ、お友達です」
ミーヤが手の上に乗せたハンカチを開き、中のガラス細工を見せる。
「これからも一緒に会いにきますからね」
あの日、トーヤの部屋で、眠るフェイのそばでフェイのお友達、青いガラスの小鳥をどうするかをトーヤとミーヤで話し合った。
フェイが残したほとんど唯一のもの、それがお友達の青い小鳥だ。本当なら親に送るのだろうが、フェイの親はそういうものは受け取らないだろうという話だった。
「ですから、やはりトーヤが持っていてあげた方がいいと思います。フェイは、本当にトーヤのことが好きでしたし、青い色はトーヤの色だと言ってましたから」
「だけどな、ガラスだからな。俺が持ってたら壊しちまう気がする」
「じゃあ壊さずに持っていてあげてください」
「無茶言うよなあ、ちび」
そう言いながら眠ったままのフェイの髪を撫でる。
「あんただったら大事に持っててくれるだろ? その方がいい。それに俺も形見ばっかり増えるのはつらいんだよ」
「形見ばかり?」
「これだ」
トーヤは首にかけていた革ひもを引っ張り出して見せた。
輪になったひもの先には2つの指輪が吊り下げられている。
あの嵐の後、目を覚ました時に無事かどうか聞いたトーヤの大事なもの、今ではトーヤの唯一の持ち物だ。
「ミーヤの形見だ」
「そうだったのですか……」
ミーヤは、自分と同じ名前を持つというトーヤの大事な人のことを思うと胸のどこかがチクリと痛んだ。
「これな、俺が買ってやったんだよ」
「そうなのですか」
またチクリと痛む。
「あいつには世話になったからな、俺がちびの頃からずっと親代わりだった。そんで、戦場稼ぎしてた俺が、初めて傭兵として戦場に行った時、まとまった金が手に入ったんで買って帰ってやったんだよ」
「そうですか」
「仲間がな、土産に何がいいかって聞いたらそりゃ女には指輪だっつーもんで、適当にこんなもんかと思って買ったらでかくてな、指からするりと抜けちまうんだよ。そしたらあいつ、もうちょっと小さい指輪を買って俺が買ってやった指輪の上にはめてな、抜けないようにして着けてくれてた。だから2つあるんだ」
トーヤが笑うがミーヤはなぜか笑えなかった。
「安物だからそうまでして着けるなって言ったら、初めて息子が買ってくれたんだから着けて客に自慢するんだってな」
「息子……」
「ああ、俺はあいつの息子だった。俺はほとんど本当の母親のことを覚えちゃいないんだが、多分ああいうのが、あいつが母親で間違いないな」
「母親……」
そう聞いてほっとしている自分がなぜか苦しい。
「服とかなんか、他の身に着けるものとかは、ほとんどミーヤの姉妹分たちに分けたんだが、これだけはやっぱり手元に置いときたくてな。でも小さくて俺の指にははまらないからこうして首から下げてるんだ」
そう言ってまた服の中にしまい込んだ。
「幸いにしてあの嵐の中でもどっかに行かずに済んでくれてほっとしてる。だけどお友達はガラスだからな、何かあったら壊れちまう。それは嫌なんだ、そいつにはフェイの代わりにずっと長生きしてほしい。だからあんたが持っててくれねえか?」
そう言われてミーヤが持つことになった。
「ですが、私もフェイと同じです。私に何かあった時には、この子はまた行き場をなくしますよ」
「じゃああんたは長生きしてくれりゃいい。あんたのところにいるなら、俺もまた会いに来られるしな」
トーヤがそう言って笑った。
「また会いに来られる」
ミーヤはトーヤのその一言を思い出した。
(そう、そうなのですね、フェイ……)
フェイにお友達を見せながら、そのお友達がまだトーヤと自分をつないでいてくれるのだ、そう思ってミーヤはフェイにありがとうと言った。
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