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第二章 第四節 神との契約
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「つまりあれか?俺が自分で宮から海までの逃げ道を見つけ出す事が重要だった、それが誰かの運命を決めるってことなのか?」
「そういうことです」
「誰の運命だ?」
マユリアは答えず、壇上から静かに降りてくるとトーヤの前に立った。
そのまま静かに跪くとトーヤに頭を下げ、
「助け手トーヤにお願いいたします、どうかシャンタルをお助けください」
そう言った。
部屋の中の全員が驚きのあまりに動きを止めた。
マユリアが、この国でシャンタルに次ぐ高い地位にあり、国王と同列で誰にも頭を下げることのない尊い存在が、海から流れついた素性も分からぬ者に頭を下げるとは。
「ちょ、ちょ、ちょ、待てって、何?シャンタルを助けろ?は?」
トーヤ本人ですら混乱していた。
「そうです、そのためにあなたはここにいるのですから」
「いや、そう言われても……」
どう答えていいものかも分からない。
「とりあえず頭上げてくんねえかな、いつもの偉そうなあんたに戻ってくれよ、そうでないと俺、そこの旦那……だけじゃねえな、侍女頭やミーヤやダルにすらぶっ殺されそうだしよ」
トーヤがそう言うと、
「そうですか、ではそうしましょう」
そう言って美しい女神が微笑みながら立ち上がった。
「それじゃあ元に戻ったところで聞くけどな、シャンタルを助けてくれってなんなんだよ?それがあんたが言ってた、いや、託宣であった俺の助け手って役割なのか?」
「そうとも言えます」
「またそういう言い方するだろ~」
トーヤがあぐらをかいたままごろっと床の上に仰向けに転がった。
「すっきりしねえんだよな~そういう言い方」
起き上がり小法師のようにまた座り直す。
「なあ、もうすっきり全部ぶっちゃけてくれねえか?そういう持って回った言い方やめてさ。一体俺に何をやらせたいんだ?何をどうしてほしいんだよ?シャンタルを助けるってどういうことだ?さっきからの話じゃあの洞窟を通って海からシャンタルを連れ出して、そこから国の外に逃げてほしいように聞こえるんだが、そうしてどこへ行けって言うんだ?なんでそれが俺なんだ?連れて逃げてほしいだけならあんなめんどくさいことせずに逃げてくれってあそこを教えりゃいいだけの話じゃねえのか?なあ、どうなんだ?」
トーヤが矢継ぎ早に言うのを聞いてまたマユリアが笑う。
「一度に全部返事をするのはむずかしいですね」
「そうか、じゃあ一つずつでもいいから頼むぜ」
「分かりました」
そう言ってまた微笑む。
「まず、トーヤに何をやってもらいたいのか、それはさっきも申しました通りシャンタルを助けていただきたいのです」
「うん、それは分かった、で?」
「シャンタルをこの国から連れ出していただきたいのです」
「うん、それもそうじゃねえかと思ってた。で、どこへ行けって?」
「それはトーヤにおまかせします」
「おい、無責任だな」
「わたくしには、いえ、この国のものにはどこへ行けと言えるほど外の国を知るものはありません。なのでトーヤに委ねます」
「えーそう言われてもなあ……」
うーんとトーヤが腕組みをして考える。
「まあ行き先は後で話をするか。今ここでもめても話が進まねえ。で?」
「次はなんでしたっけ?」
「えっと……そうだな、なんでそんなしちめんどくさいことしたのか、だな」
「『しちめんどくさい』があまりよく分かりませんが、要するにどうしてそのようなことをしたのか、ということですね?」
「まあそういうこった」
「分かりました」
マユリアが微笑みを消し真剣な顔になる。
「シャンタルの運命のためです」
「また運命かよ……まあいいけどよ。で、運命がなんだって?」
「シャンタルと言えども己の運命には逆らえません」
「うん、で?」
「トーヤがあの道を見つけられないとしたら、それはシャンタルはこの国から出られないということなのです」
「なんでだ?」
「あそこを通るしか道がないからです」
「他の場所から出りゃいいじゃねえかよ」
「それはできません」
「なんでだ?」
「それは……」
マユリアが言いよどんだ。
「それは、今は申せません」
「おい、ぶっちゃけていこうぜって言っただろ?ちゃんと全部話してくれよ」
「いえ、今は言えません」
「また時がなんとか言うのかよ」
「その通りです」
トーヤがチッ、と舌打ちをする。その行動に残りの4人が全員息を飲んだ。仮にもマユリアに舌打ちをするなど……
「じゃあしゃあねえな、まず話せるとこだけ全部聞くか」
「そうしてくれると助かります」
またにこやかに微笑み話を続ける。
「さきほども申しましたがシャンタルも、そしてわたくしも自分で自分の運命を変えることはできません。誰も運命を変えることのできるものはいないのです」
そういやそういうの聞いたなとトーヤは思い出していた。
「だったな……」
「ええ、そうです」
「で、あんたもシャンタルも運命を変えられない。その運命ってのはなんなんだ?」
「このままではシャンタルは命を落とされることになります」
トーヤを含めた全員がその言葉を受け止め兼ねていた。
「そういうことです」
「誰の運命だ?」
マユリアは答えず、壇上から静かに降りてくるとトーヤの前に立った。
そのまま静かに跪くとトーヤに頭を下げ、
「助け手トーヤにお願いいたします、どうかシャンタルをお助けください」
そう言った。
部屋の中の全員が驚きのあまりに動きを止めた。
マユリアが、この国でシャンタルに次ぐ高い地位にあり、国王と同列で誰にも頭を下げることのない尊い存在が、海から流れついた素性も分からぬ者に頭を下げるとは。
「ちょ、ちょ、ちょ、待てって、何?シャンタルを助けろ?は?」
トーヤ本人ですら混乱していた。
「そうです、そのためにあなたはここにいるのですから」
「いや、そう言われても……」
どう答えていいものかも分からない。
「とりあえず頭上げてくんねえかな、いつもの偉そうなあんたに戻ってくれよ、そうでないと俺、そこの旦那……だけじゃねえな、侍女頭やミーヤやダルにすらぶっ殺されそうだしよ」
トーヤがそう言うと、
「そうですか、ではそうしましょう」
そう言って美しい女神が微笑みながら立ち上がった。
「それじゃあ元に戻ったところで聞くけどな、シャンタルを助けてくれってなんなんだよ?それがあんたが言ってた、いや、託宣であった俺の助け手って役割なのか?」
「そうとも言えます」
「またそういう言い方するだろ~」
トーヤがあぐらをかいたままごろっと床の上に仰向けに転がった。
「すっきりしねえんだよな~そういう言い方」
起き上がり小法師のようにまた座り直す。
「なあ、もうすっきり全部ぶっちゃけてくれねえか?そういう持って回った言い方やめてさ。一体俺に何をやらせたいんだ?何をどうしてほしいんだよ?シャンタルを助けるってどういうことだ?さっきからの話じゃあの洞窟を通って海からシャンタルを連れ出して、そこから国の外に逃げてほしいように聞こえるんだが、そうしてどこへ行けって言うんだ?なんでそれが俺なんだ?連れて逃げてほしいだけならあんなめんどくさいことせずに逃げてくれってあそこを教えりゃいいだけの話じゃねえのか?なあ、どうなんだ?」
トーヤが矢継ぎ早に言うのを聞いてまたマユリアが笑う。
「一度に全部返事をするのはむずかしいですね」
「そうか、じゃあ一つずつでもいいから頼むぜ」
「分かりました」
そう言ってまた微笑む。
「まず、トーヤに何をやってもらいたいのか、それはさっきも申しました通りシャンタルを助けていただきたいのです」
「うん、それは分かった、で?」
「シャンタルをこの国から連れ出していただきたいのです」
「うん、それもそうじゃねえかと思ってた。で、どこへ行けって?」
「それはトーヤにおまかせします」
「おい、無責任だな」
「わたくしには、いえ、この国のものにはどこへ行けと言えるほど外の国を知るものはありません。なのでトーヤに委ねます」
「えーそう言われてもなあ……」
うーんとトーヤが腕組みをして考える。
「まあ行き先は後で話をするか。今ここでもめても話が進まねえ。で?」
「次はなんでしたっけ?」
「えっと……そうだな、なんでそんなしちめんどくさいことしたのか、だな」
「『しちめんどくさい』があまりよく分かりませんが、要するにどうしてそのようなことをしたのか、ということですね?」
「まあそういうこった」
「分かりました」
マユリアが微笑みを消し真剣な顔になる。
「シャンタルの運命のためです」
「また運命かよ……まあいいけどよ。で、運命がなんだって?」
「シャンタルと言えども己の運命には逆らえません」
「うん、で?」
「トーヤがあの道を見つけられないとしたら、それはシャンタルはこの国から出られないということなのです」
「なんでだ?」
「あそこを通るしか道がないからです」
「他の場所から出りゃいいじゃねえかよ」
「それはできません」
「なんでだ?」
「それは……」
マユリアが言いよどんだ。
「それは、今は申せません」
「おい、ぶっちゃけていこうぜって言っただろ?ちゃんと全部話してくれよ」
「いえ、今は言えません」
「また時がなんとか言うのかよ」
「その通りです」
トーヤがチッ、と舌打ちをする。その行動に残りの4人が全員息を飲んだ。仮にもマユリアに舌打ちをするなど……
「じゃあしゃあねえな、まず話せるとこだけ全部聞くか」
「そうしてくれると助かります」
またにこやかに微笑み話を続ける。
「さきほども申しましたがシャンタルも、そしてわたくしも自分で自分の運命を変えることはできません。誰も運命を変えることのできるものはいないのです」
そういやそういうの聞いたなとトーヤは思い出していた。
「だったな……」
「ええ、そうです」
「で、あんたもシャンタルも運命を変えられない。その運命ってのはなんなんだ?」
「このままではシャンタルは命を落とされることになります」
トーヤを含めた全員がその言葉を受け止め兼ねていた。
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