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第二章 第五節 もう一人のマユリア
1 作戦会議・表
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その日、トーヤとダルはすぐに部屋に帰ってきた。
「早かったですね」
ミーヤがお茶を用意しながらそう言った。
「まあ、仕事の内容についてはあの時とそう変わることがないからな。まだ話せねえってことが多過ぎてどうしようもねえ」
トーヤがお茶を飲んでホッと一息つきながらそう言う。
「ダルさんはお部屋の方に?」
「ああ、あいつがこっち来たらリルも来そうだからなあ」
そうなのだ。ダルの世話役を拝命したリルは、役がついたことがうれしくてうれしくてたまらないらしく、ダルの姿を見ると、どれほど忙しくても用はないかと期待に目をキラキラさせながらやってくるのだ。
「あの人もあんたと一緒で忙しかろうに。ありゃダルがそのうち音を上げるぞ」
「リルはまじめなのです」
そう言ってミーヤが笑った。
トーヤはミーヤの笑顔を見ると気持ちが緩んだ。
そして聞いてみたくなる。
俺のことを嫌になってないのか?
「なんでそのまんまなんだ……」
ついボソッとつぶやいた。
「なんでしょう?」
「え、あ、いや……」
(そもそも好かれてるなんてのが勘違いだ。一生懸命に役目を努めようとしてるだけなんだよ、だから態度が変わるわけがない)
そう自分に言い聞かせようとするが、そうすると思い出す言葉がある。
『命をかけてお守りします』
トーヤが自分が生贄ではないかと言ったことに、ミーヤはそう言ってくれた。
その言葉を信じた。
「なにかありましたか?」
「いや、別に……」
もう一口お茶を飲む。
なんとなく沈黙が重くなった頃、ダルが本当に音を上げてトーヤの部屋にやってきた。
「少し大事な話になるから」
そう言ってリルと、ミーヤも一緒に部屋から出す。
「助かったよ~あの人、ずっと俺の部屋にいるんだよ~用事はないって言ってるのに、何かないかないかって、困ったよ~」
半泣きのダルを見てトーヤが大爆笑する。
「笑うことないだろー」
「すまんすまん」
そう言いつつも、涙が止まらないぐらいおかしくてたまらない。
「トーヤも最初そうだった?」
「ん、何がだ?」
まだ笑いながら返事をする。
「いや、ミーヤさんだよ」
「え?」
「ミーヤさんも、ずっと用事がないかって聞いてきたかってことだよ」
「いや、そんなことはなかった、かな……」
思い出してみると、最初にいた部屋はもっと広かったせいかも知れないが、そんなことはなかった気がする。
「なかったな……でも気を使うこともなかったし、言わなくても足りないことはないようにしてくれてたと思う」
「ミーヤさんはすげえなあ……」
ダルがしみじみと疲れ果てたように言うので、またトーヤが大笑いした。
「あ~でも俺も一回そんなことがあったわ」
「ミーヤさんがか?」
「いや、カースから帰った翌日、休みになったミーヤの代わりにリルが来たんだが、そんで、俺の言ったことが嫌だったかなんかで、侍女頭のおばはんに交代された」
「え、キリエ様がかい?」
「一日中部屋にいられてよお……」
「そりゃあ……」
ダルがゾッとするという風に自分の両肩を抱き、それを見てまたトーヤが笑った。
「まあ、そういうのはいいとして、とりあえず真面目な話もしとくか」
「作戦会議だな」
「そうだ」
今の段階で分かっていることをもう一度整理するが、大したことはできない。
カースの村長に聞いた話が気にはなるが、秘密だと口止めされている。
誰にも言わないと誓ったものの、本当にそれでいいのかどうかすら分からない。
ことによると、話さない方が重大な間違いということすらありえる、それほどのことだ。
(ダルと、それからミーヤにも話してもいいものなのか)
悩んだものの、もう少しだけ情報を仕入れてから結論を出すことにする。時間はまだある。
「ってことはだ、結局今決められることはあの洞窟を通ることと、そこから船でキノスへ行くこと、だけか」
「キノスって?」
「へ? あの船で行く町の名前だよ」
「え、そうなの?」
「おまえ、知らなかったのか?」
「そういや、町の名前は聞いたことなかったなあ。誰に聞いたんだよ?」
「おまえのじいさんに」
そう言えば、ダルは「普通の町」みたいにしか言ってなかったなと思い出す。
「ってか、なんでじいちゃんとそんな話したんだ?」
「そうか、まだダルには話してなかったな」
あの洞窟でルギと出会った時のことを話す。
「知らなかった……」
「ルギも、ダルは知らないだろうって言ってたな」
「なんか、俺が小さい時にあったみたいに聞いた気もしたけど、それがルギだったんだ……」
「それも確かめたくてな、そんでカースへ行ってきたんだ」
「そうか」
少し考えてダルが言う。
「そんじゃあれかな、ルギも仕事の手伝いしてくれるってことなのかな?」
「え?」
「だって、宮からの命令でトーヤに付いてたわけだからさ」
考えてみたこともなかった。敵だとばかり思っていた。
言われてみれば、嫌なやつではあるが敵対するようなことはしたことがなかった。
あそこで戦うことになったのもトーヤが斬りかかったからだ。
もしかしたら、何もするつもりもなく、言ってた通りに宮まで連れ帰るだけのつもりだったのか?
「ルギについても聞いてみる必要があるか……」
「だと思うよ」
こうして第一回目の作戦会議が終わった。
「早かったですね」
ミーヤがお茶を用意しながらそう言った。
「まあ、仕事の内容についてはあの時とそう変わることがないからな。まだ話せねえってことが多過ぎてどうしようもねえ」
トーヤがお茶を飲んでホッと一息つきながらそう言う。
「ダルさんはお部屋の方に?」
「ああ、あいつがこっち来たらリルも来そうだからなあ」
そうなのだ。ダルの世話役を拝命したリルは、役がついたことがうれしくてうれしくてたまらないらしく、ダルの姿を見ると、どれほど忙しくても用はないかと期待に目をキラキラさせながらやってくるのだ。
「あの人もあんたと一緒で忙しかろうに。ありゃダルがそのうち音を上げるぞ」
「リルはまじめなのです」
そう言ってミーヤが笑った。
トーヤはミーヤの笑顔を見ると気持ちが緩んだ。
そして聞いてみたくなる。
俺のことを嫌になってないのか?
「なんでそのまんまなんだ……」
ついボソッとつぶやいた。
「なんでしょう?」
「え、あ、いや……」
(そもそも好かれてるなんてのが勘違いだ。一生懸命に役目を努めようとしてるだけなんだよ、だから態度が変わるわけがない)
そう自分に言い聞かせようとするが、そうすると思い出す言葉がある。
『命をかけてお守りします』
トーヤが自分が生贄ではないかと言ったことに、ミーヤはそう言ってくれた。
その言葉を信じた。
「なにかありましたか?」
「いや、別に……」
もう一口お茶を飲む。
なんとなく沈黙が重くなった頃、ダルが本当に音を上げてトーヤの部屋にやってきた。
「少し大事な話になるから」
そう言ってリルと、ミーヤも一緒に部屋から出す。
「助かったよ~あの人、ずっと俺の部屋にいるんだよ~用事はないって言ってるのに、何かないかないかって、困ったよ~」
半泣きのダルを見てトーヤが大爆笑する。
「笑うことないだろー」
「すまんすまん」
そう言いつつも、涙が止まらないぐらいおかしくてたまらない。
「トーヤも最初そうだった?」
「ん、何がだ?」
まだ笑いながら返事をする。
「いや、ミーヤさんだよ」
「え?」
「ミーヤさんも、ずっと用事がないかって聞いてきたかってことだよ」
「いや、そんなことはなかった、かな……」
思い出してみると、最初にいた部屋はもっと広かったせいかも知れないが、そんなことはなかった気がする。
「なかったな……でも気を使うこともなかったし、言わなくても足りないことはないようにしてくれてたと思う」
「ミーヤさんはすげえなあ……」
ダルがしみじみと疲れ果てたように言うので、またトーヤが大笑いした。
「あ~でも俺も一回そんなことがあったわ」
「ミーヤさんがか?」
「いや、カースから帰った翌日、休みになったミーヤの代わりにリルが来たんだが、そんで、俺の言ったことが嫌だったかなんかで、侍女頭のおばはんに交代された」
「え、キリエ様がかい?」
「一日中部屋にいられてよお……」
「そりゃあ……」
ダルがゾッとするという風に自分の両肩を抱き、それを見てまたトーヤが笑った。
「まあ、そういうのはいいとして、とりあえず真面目な話もしとくか」
「作戦会議だな」
「そうだ」
今の段階で分かっていることをもう一度整理するが、大したことはできない。
カースの村長に聞いた話が気にはなるが、秘密だと口止めされている。
誰にも言わないと誓ったものの、本当にそれでいいのかどうかすら分からない。
ことによると、話さない方が重大な間違いということすらありえる、それほどのことだ。
(ダルと、それからミーヤにも話してもいいものなのか)
悩んだものの、もう少しだけ情報を仕入れてから結論を出すことにする。時間はまだある。
「ってことはだ、結局今決められることはあの洞窟を通ることと、そこから船でキノスへ行くこと、だけか」
「キノスって?」
「へ? あの船で行く町の名前だよ」
「え、そうなの?」
「おまえ、知らなかったのか?」
「そういや、町の名前は聞いたことなかったなあ。誰に聞いたんだよ?」
「おまえのじいさんに」
そう言えば、ダルは「普通の町」みたいにしか言ってなかったなと思い出す。
「ってか、なんでじいちゃんとそんな話したんだ?」
「そうか、まだダルには話してなかったな」
あの洞窟でルギと出会った時のことを話す。
「知らなかった……」
「ルギも、ダルは知らないだろうって言ってたな」
「なんか、俺が小さい時にあったみたいに聞いた気もしたけど、それがルギだったんだ……」
「それも確かめたくてな、そんでカースへ行ってきたんだ」
「そうか」
少し考えてダルが言う。
「そんじゃあれかな、ルギも仕事の手伝いしてくれるってことなのかな?」
「え?」
「だって、宮からの命令でトーヤに付いてたわけだからさ」
考えてみたこともなかった。敵だとばかり思っていた。
言われてみれば、嫌なやつではあるが敵対するようなことはしたことがなかった。
あそこで戦うことになったのもトーヤが斬りかかったからだ。
もしかしたら、何もするつもりもなく、言ってた通りに宮まで連れ帰るだけのつもりだったのか?
「ルギについても聞いてみる必要があるか……」
「だと思うよ」
こうして第一回目の作戦会議が終わった。
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