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第二章 第六節 奇跡
2 リルの父親
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「おまえ、リルにうまいこと言って出してもらってくれよ」
「簡単に言うなよ、無理だって!」
「そんなに簡単ではないと私も思いますよ」
「なあミーヤさん、だよね?」
「ですが、ダルさんからリルにお願いして手形をいただけたらいいのになあ、とは思います」
「なあミーヤ、だろ?」
「いや、無理だって」
今のところあるのは「リルがダルにぞっこんだ」ということだけで、ダルはリルと特別の関係でもないし、宮から月虹兵に任命されたと言ってもまだ誰も知らぬ役職である。リルが言うことを聞いてくれたとしてもリルの父親がなんとかしてくれそうにはとても思えない。
「だからあ、もしも、もしも、だよ?俺が頼んでリルさんがうんと言ってくれたとしても、リルさんのお父さんがいいって言うはずないだろ?」
「そんじゃおまえ、もうリル家に婿に入っちまえ」
「無茶言うなよ~」
「おまえもこの先の人生の心配しなくて済むようになるし、それでシャンタルも助かる。つまりこの国が助かるってこった。ってことはだな、おまえ、救国の英雄だぞ!英雄ダル様だ!」
「無茶苦茶だよ~」
ミーヤが笑い出した。
「ミーヤさん~なんで笑うんだよ~」
「悪いですよ、ダルさんをからかって」
「ばれたか」
リルの父親に、と思ったところまでは本当だが、その後はしっかりダルをいじっていた。ミーヤもそれに気付いていたらしい。
「まったく。リルさんにも悪いだろうが~」
「わりいわりい」
そう言ってトーヤが笑う。
「でもな、リルの父親にってのは悪くないと思った」
「どうやって頼むんだよ」
「そこなんだよなあ……」
どこの誰かも分からないトーヤの手形をと言っても自分の商売の信用に、下手をすればその存続自体にも関わるものを簡単に出すわけがない。トーヤが宮が言う「助け手」だと知ったら出してくれるかも知れないが、その場合でもシャンタルの手形は頼めない。
「神様の手形も頼むぜって言うわけにもいかねえしなあ……」
「だよなあ……」
3人で考えを巡らせていると扉が叩かれた。
「あの、リルです……」
どうやらダルがなかなか帰ってこないので様子を見に来たらしい。部屋の中にミーヤもいて3人というところから、どうも少しばかり疎外感も感じているようだ。
「ああ、リルさん、ちょうどよかった」
「はい、なんでしょう?」
ダルに声をかけられ、急いで扉を閉めると中まで入ってきた。
「今、リルさんのご実家の話になってたんだよ」
「私のですか?」
「リルさんのご実家って大きな商家らしいって話になってたんだ」
「まあ、どうしてそんな」
「いや、トーヤがリルさんによくしてもらってるか聞くから、とてもよくしてくれてるよ、きっとリルさんはいいご家庭で育ったんだろうな、ってことからね」
「まあ……」
リルはきょとんとしながらも、自分が話題であったことがうれしそうであった。
トーヤはダルがリルの扱いにうまくなってるのをちょっとおかしくもあり、またびっくりもしていたが、うまく話を進めてくれそうなのに安心する。
ダルがさあさあ座って、とばかりに自分の隣の椅子をすすめる。
リルがうれしそうにそこに座った。
「ご実家は一体どんなご商売してるの?」
「色々みたいです。工芸品とか家具とか、そういうものを外の国に送って、外の国からはそこの名産品とかを持って帰ってきてこちらで売る、みたいには言ってましたが」
「おいおい、それって俺が乗ってきた船と同じじゃねえかよ」
「……そうだな」
ダルが一瞬ちょっと置いてから返事をし、目でミーヤをちらっと見た。
「そうですね、お聞きしていたトーヤ様が乗ってらっしゃった船と一緒ですね」
ミーヤも話を合わせる
「でもなあ、多分大きさは全然違うんだろうなあ。俺もリルさんちの船ぐらい大きいのに乗ってたら嵐で海に投げ出されたりせずに済んだかも知れねえなあ」
「まあ、そうだったのですか?確かに父の船はかなり大きいものらしいですが、私は乗ったことがありませんし、どうなんでしょうねえ」
そう言いながらも得意そうでうれしそうだ。
「今度、あっち行く時にはリルさんちの船で行きたいもんだな」
「その時には父に頼んでおきますね」
すっかりご機嫌になり、いつもは少し警戒しながらのトーヤにも親しそうに返事をしてくる。
「もしかして、リルさんちの船ってアルディナまで行くの?」
「はい、時々行っているようです」
「え、そうなのか?」
「はい、数年に一度船を出すみたいに聞いたことがあります」
「俺もそこを通ってきたから分かるんだが『東の大海』超えるのは結構大変だったぞ。何しろ一月もずっと海の上だからなあ」
「そうらしいですね。父は、若い頃に一度行ったことがあると申してました。大変だったと」
「本当かよ!」
「ええ」
トーヤが椅子から乗り出さんばかりにする。
「なんか、一度リルさんの親父さんと話がしてみてえなあ……」
「父ももしかしたらトーヤ様のお話を伺いたいと申すかも知れません。何しろ若い頃の冒険譚として今でも手紙に書いて寄越したり、面会の時にも話題に出すぐらいですから」
リルはくすっと笑いながらそう言うが、3人にはまさに天の配剤としか思えない思いもかけない話であった。
「簡単に言うなよ、無理だって!」
「そんなに簡単ではないと私も思いますよ」
「なあミーヤさん、だよね?」
「ですが、ダルさんからリルにお願いして手形をいただけたらいいのになあ、とは思います」
「なあミーヤ、だろ?」
「いや、無理だって」
今のところあるのは「リルがダルにぞっこんだ」ということだけで、ダルはリルと特別の関係でもないし、宮から月虹兵に任命されたと言ってもまだ誰も知らぬ役職である。リルが言うことを聞いてくれたとしてもリルの父親がなんとかしてくれそうにはとても思えない。
「だからあ、もしも、もしも、だよ?俺が頼んでリルさんがうんと言ってくれたとしても、リルさんのお父さんがいいって言うはずないだろ?」
「そんじゃおまえ、もうリル家に婿に入っちまえ」
「無茶言うなよ~」
「おまえもこの先の人生の心配しなくて済むようになるし、それでシャンタルも助かる。つまりこの国が助かるってこった。ってことはだな、おまえ、救国の英雄だぞ!英雄ダル様だ!」
「無茶苦茶だよ~」
ミーヤが笑い出した。
「ミーヤさん~なんで笑うんだよ~」
「悪いですよ、ダルさんをからかって」
「ばれたか」
リルの父親に、と思ったところまでは本当だが、その後はしっかりダルをいじっていた。ミーヤもそれに気付いていたらしい。
「まったく。リルさんにも悪いだろうが~」
「わりいわりい」
そう言ってトーヤが笑う。
「でもな、リルの父親にってのは悪くないと思った」
「どうやって頼むんだよ」
「そこなんだよなあ……」
どこの誰かも分からないトーヤの手形をと言っても自分の商売の信用に、下手をすればその存続自体にも関わるものを簡単に出すわけがない。トーヤが宮が言う「助け手」だと知ったら出してくれるかも知れないが、その場合でもシャンタルの手形は頼めない。
「神様の手形も頼むぜって言うわけにもいかねえしなあ……」
「だよなあ……」
3人で考えを巡らせていると扉が叩かれた。
「あの、リルです……」
どうやらダルがなかなか帰ってこないので様子を見に来たらしい。部屋の中にミーヤもいて3人というところから、どうも少しばかり疎外感も感じているようだ。
「ああ、リルさん、ちょうどよかった」
「はい、なんでしょう?」
ダルに声をかけられ、急いで扉を閉めると中まで入ってきた。
「今、リルさんのご実家の話になってたんだよ」
「私のですか?」
「リルさんのご実家って大きな商家らしいって話になってたんだ」
「まあ、どうしてそんな」
「いや、トーヤがリルさんによくしてもらってるか聞くから、とてもよくしてくれてるよ、きっとリルさんはいいご家庭で育ったんだろうな、ってことからね」
「まあ……」
リルはきょとんとしながらも、自分が話題であったことがうれしそうであった。
トーヤはダルがリルの扱いにうまくなってるのをちょっとおかしくもあり、またびっくりもしていたが、うまく話を進めてくれそうなのに安心する。
ダルがさあさあ座って、とばかりに自分の隣の椅子をすすめる。
リルがうれしそうにそこに座った。
「ご実家は一体どんなご商売してるの?」
「色々みたいです。工芸品とか家具とか、そういうものを外の国に送って、外の国からはそこの名産品とかを持って帰ってきてこちらで売る、みたいには言ってましたが」
「おいおい、それって俺が乗ってきた船と同じじゃねえかよ」
「……そうだな」
ダルが一瞬ちょっと置いてから返事をし、目でミーヤをちらっと見た。
「そうですね、お聞きしていたトーヤ様が乗ってらっしゃった船と一緒ですね」
ミーヤも話を合わせる
「でもなあ、多分大きさは全然違うんだろうなあ。俺もリルさんちの船ぐらい大きいのに乗ってたら嵐で海に投げ出されたりせずに済んだかも知れねえなあ」
「まあ、そうだったのですか?確かに父の船はかなり大きいものらしいですが、私は乗ったことがありませんし、どうなんでしょうねえ」
そう言いながらも得意そうでうれしそうだ。
「今度、あっち行く時にはリルさんちの船で行きたいもんだな」
「その時には父に頼んでおきますね」
すっかりご機嫌になり、いつもは少し警戒しながらのトーヤにも親しそうに返事をしてくる。
「もしかして、リルさんちの船ってアルディナまで行くの?」
「はい、時々行っているようです」
「え、そうなのか?」
「はい、数年に一度船を出すみたいに聞いたことがあります」
「俺もそこを通ってきたから分かるんだが『東の大海』超えるのは結構大変だったぞ。何しろ一月もずっと海の上だからなあ」
「そうらしいですね。父は、若い頃に一度行ったことがあると申してました。大変だったと」
「本当かよ!」
「ええ」
トーヤが椅子から乗り出さんばかりにする。
「なんか、一度リルさんの親父さんと話がしてみてえなあ……」
「父ももしかしたらトーヤ様のお話を伺いたいと申すかも知れません。何しろ若い頃の冒険譚として今でも手紙に書いて寄越したり、面会の時にも話題に出すぐらいですから」
リルはくすっと笑いながらそう言うが、3人にはまさに天の配剤としか思えない思いもかけない話であった。
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