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第二章 第六節 奇跡
6 二度手間
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「すげえな隊長……」
「だからその呼び方をするなと言っている」
「いやいや、さすがだなと思ってな。隊長の名はだてじゃねえ」
「これでもう用は終わったな?では消えてくれ」
そう言うとルギは後ろも振り向かず自分の部屋へ向かって歩き出してしまった。
「ちょ、ちょっと待てって」
「なんだ、もう用はないはずだが」
「いや、ありがとうな」
「おまえのためにやったわけではない。この問題が片付かぬ限り付きまとうつもりだろうが。迷惑だ。だから礼を言われる覚えはない」
「へへ……」
トーヤは少しだけ笑うと思い出したように切り出した。
「そういや、気になったんだが」
「なんだ」
「リルの親父さんが言ってたよくあることとか訳あり、あれってどういう意味だ?」
「知らん」
「へ?」
「知らんと言っている」
「でもなんか通じてたじゃねえかよ」
「適当に言ったらあちらがのってきただけだ」
「おい、はったりかよ!」
「まあ何か心当たりがあったのだろう、俺は知らん」
トーヤは呆れてものも言えなかった。
「あんた、いい詐欺師になれるぜ……」
「おまえと一緒にするな。これで本当にもう用はないな?」
「お、おう、ありがとな」
「だからおまえのためにやったのではないと言っている」
「やべえな……」
「何がだ」
「なんか、俺、あんたのこと気に入ってきたわ」
「気持ちの悪いことを言うな」
トーヤのことをちらりとも見ず、ルギは自室へと向かっていった。
「へへ、気に入ったからって敵にならねえとは限らねえけどな」
トーヤはそう言うと小さい声で少し笑った。
なんにしても、これで手形の問題は片付いた。今できることはほぼ終えた。
「後は、次代様が生まれてからのこと、か」
部屋に戻るとミーヤがリルからの「父がいつでもおいで下さいと申しておりました」との伝言を伝えてくれた。
「そうか、明日でもいいのかな?どうやって連絡すればいい?」
「そういうのこそがこれからは月虹兵の仕事になるのでしょうね。でも今は神官に言伝をお願いするかと」
「そうか。それとな、手形がなんとかなった」
「え?」
ミーヤにルギが動いてくれたことを話す。
「いやあ、さすが隊長だわ」
「本当ですね」
ミーヤも目を丸くする。
「と、今度はこれをダルに伝えて時間とか決めないとな」
「ではダルさんをお呼びしてきて私は下がりますね」
ミーヤが一緒だとまたリルが妙な気を回す可能性がある。
「その手順が面倒だなあ。二度手間だ、2人に一度に話せりゃいいんだが……でもまあ、そのリルのおかげでとんとんと話が進んだんだ、それを考えると差し引きしてもお釣りがくる、か」
「ええ、リルのおかげです」
「だな」
そうしてミーヤがダルを呼びに行ってリルと一緒に侍女の控室に戻って行った。
「へえ、すごいな。おかげで問題が一つ解決だ」
「だろ?俺も驚いた」
どうせならできるだけ早い方がいいだろうと早速明日の午後に訪問しても大丈夫かの言伝を頼み、その返事を受け取ったのはその日の午後割と早い時間であった。
「さすが商人だなあ、動きが早い。損得を見極める目はしっかりしてる」
「それで、行って何を話すつもりだ?」
「船だ」
「船?」
「あっちに行く船がいつ出るのか、近々出るのならそれに、だめなら何か直近であちらに行く船を教えてもらう」
「ああ、そうか、うまくいくといいな」
口ではそう言いながらもダルは少しうつむいてさびしそうな顔を隠す。
戻ってくると約束はしたものの、どんどんと話が現実味を帯びるとまたさびしさがぶり返してきたのだ。
「とにかくあいつをこの国から無事に出して、まあどこに連れきゃいいかとかはまだ分かんねえけどよ、どこかに落ち着かせる。そこまでやってやっとこの仕事が完了だからな。それが終わらねえことには戻ってもこられねえし」
トーヤがふっと言った最後の一言でダルが顔を上げる。
「戻るにはまず行かなくちゃな」
ニヤリと笑ってトーヤが言う。
「だな。がんばって行ってこいよ」
「おう」
ダルとの間にはこうして確かな約束ができた。その事実はトーヤの心を軽くした。
だが……
「そうですか、船が見つかるといいですね」
「ああ、そこまで決まれば後は行くだけだ」
「そうですね……」
「ああ……」
ダルは自分の部屋に戻り、トーヤはミーヤと向かい合って座って話をしていた。
ミーヤとはダルとのようにはいかない。
ダルに言ったように「一緒に行くか」とも「戻ってくる」とも言い出しにくかった。
どうすればいいのか分からない。
いっそダルと3人の時に話題にでも出てくれれば気楽な感じで話せるかも知れないと思ったりもする。
だが今はそんな機会があまりなくなった。ダルがいる時にリルが部屋を出ていくとミーヤも一緒に出ていくことが多いからだ。3人になる時間はめっきり少なくなった。その点だけはリルが少しばかりうらめしい……
それでも、やっと口を開く。
「ダルがな……」
やはり出てくるのはいてくれればと思う人間の名前であった。
「はい?」
「戻ってこいって……」
「はい?」
「ここはもう俺の戻る場所だって言ってくれてな、そんで仕事が無事終わったら戻ってこいって言ってくれたんだ」
「そう、ですか……」
「なあ」
トーヤは思い切って口に出す。
「戻ってきていいか?」
「だからその呼び方をするなと言っている」
「いやいや、さすがだなと思ってな。隊長の名はだてじゃねえ」
「これでもう用は終わったな?では消えてくれ」
そう言うとルギは後ろも振り向かず自分の部屋へ向かって歩き出してしまった。
「ちょ、ちょっと待てって」
「なんだ、もう用はないはずだが」
「いや、ありがとうな」
「おまえのためにやったわけではない。この問題が片付かぬ限り付きまとうつもりだろうが。迷惑だ。だから礼を言われる覚えはない」
「へへ……」
トーヤは少しだけ笑うと思い出したように切り出した。
「そういや、気になったんだが」
「なんだ」
「リルの親父さんが言ってたよくあることとか訳あり、あれってどういう意味だ?」
「知らん」
「へ?」
「知らんと言っている」
「でもなんか通じてたじゃねえかよ」
「適当に言ったらあちらがのってきただけだ」
「おい、はったりかよ!」
「まあ何か心当たりがあったのだろう、俺は知らん」
トーヤは呆れてものも言えなかった。
「あんた、いい詐欺師になれるぜ……」
「おまえと一緒にするな。これで本当にもう用はないな?」
「お、おう、ありがとな」
「だからおまえのためにやったのではないと言っている」
「やべえな……」
「何がだ」
「なんか、俺、あんたのこと気に入ってきたわ」
「気持ちの悪いことを言うな」
トーヤのことをちらりとも見ず、ルギは自室へと向かっていった。
「へへ、気に入ったからって敵にならねえとは限らねえけどな」
トーヤはそう言うと小さい声で少し笑った。
なんにしても、これで手形の問題は片付いた。今できることはほぼ終えた。
「後は、次代様が生まれてからのこと、か」
部屋に戻るとミーヤがリルからの「父がいつでもおいで下さいと申しておりました」との伝言を伝えてくれた。
「そうか、明日でもいいのかな?どうやって連絡すればいい?」
「そういうのこそがこれからは月虹兵の仕事になるのでしょうね。でも今は神官に言伝をお願いするかと」
「そうか。それとな、手形がなんとかなった」
「え?」
ミーヤにルギが動いてくれたことを話す。
「いやあ、さすが隊長だわ」
「本当ですね」
ミーヤも目を丸くする。
「と、今度はこれをダルに伝えて時間とか決めないとな」
「ではダルさんをお呼びしてきて私は下がりますね」
ミーヤが一緒だとまたリルが妙な気を回す可能性がある。
「その手順が面倒だなあ。二度手間だ、2人に一度に話せりゃいいんだが……でもまあ、そのリルのおかげでとんとんと話が進んだんだ、それを考えると差し引きしてもお釣りがくる、か」
「ええ、リルのおかげです」
「だな」
そうしてミーヤがダルを呼びに行ってリルと一緒に侍女の控室に戻って行った。
「へえ、すごいな。おかげで問題が一つ解決だ」
「だろ?俺も驚いた」
どうせならできるだけ早い方がいいだろうと早速明日の午後に訪問しても大丈夫かの言伝を頼み、その返事を受け取ったのはその日の午後割と早い時間であった。
「さすが商人だなあ、動きが早い。損得を見極める目はしっかりしてる」
「それで、行って何を話すつもりだ?」
「船だ」
「船?」
「あっちに行く船がいつ出るのか、近々出るのならそれに、だめなら何か直近であちらに行く船を教えてもらう」
「ああ、そうか、うまくいくといいな」
口ではそう言いながらもダルは少しうつむいてさびしそうな顔を隠す。
戻ってくると約束はしたものの、どんどんと話が現実味を帯びるとまたさびしさがぶり返してきたのだ。
「とにかくあいつをこの国から無事に出して、まあどこに連れきゃいいかとかはまだ分かんねえけどよ、どこかに落ち着かせる。そこまでやってやっとこの仕事が完了だからな。それが終わらねえことには戻ってもこられねえし」
トーヤがふっと言った最後の一言でダルが顔を上げる。
「戻るにはまず行かなくちゃな」
ニヤリと笑ってトーヤが言う。
「だな。がんばって行ってこいよ」
「おう」
ダルとの間にはこうして確かな約束ができた。その事実はトーヤの心を軽くした。
だが……
「そうですか、船が見つかるといいですね」
「ああ、そこまで決まれば後は行くだけだ」
「そうですね……」
「ああ……」
ダルは自分の部屋に戻り、トーヤはミーヤと向かい合って座って話をしていた。
ミーヤとはダルとのようにはいかない。
ダルに言ったように「一緒に行くか」とも「戻ってくる」とも言い出しにくかった。
どうすればいいのか分からない。
いっそダルと3人の時に話題にでも出てくれれば気楽な感じで話せるかも知れないと思ったりもする。
だが今はそんな機会があまりなくなった。ダルがいる時にリルが部屋を出ていくとミーヤも一緒に出ていくことが多いからだ。3人になる時間はめっきり少なくなった。その点だけはリルが少しばかりうらめしい……
それでも、やっと口を開く。
「ダルがな……」
やはり出てくるのはいてくれればと思う人間の名前であった。
「はい?」
「戻ってこいって……」
「はい?」
「ここはもう俺の戻る場所だって言ってくれてな、そんで仕事が無事終わったら戻ってこいって言ってくれたんだ」
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「なあ」
トーヤは思い切って口に出す。
「戻ってきていいか?」
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