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第二章 第六節 奇跡
10 詐欺師
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「いや、どこかの国とか、他の、その商会とか、そのあたりが動いている、という情報でも掴んでらっしゃるのですか?」
「いや、そんなことは一切聞いてません。ですが、俺が考えつくようなこと、もっと商機にさとい商人ならとっくに考えついていてもおかしくはない、というか、もしかしてアロさんも口にはしてはいなくとも心のどこかに思い付いていたのではないですか?あれだけアルディナの事情に通じてらっしゃる方ですし」
「いや、まあ、その……ちょろっと、本当にちょろっとですが、まあ考えなかったと言えば嘘になりますかな」
「でしょうなあ、さすがだ!」
いやあ、すばらしい!とトーヤは一層声を上げて褒めそやす。
「いや、いや、そのちろっとですぞ?そういうことでもできればなあ、とは少しぐらい」
「ですよね?いや、そう思います。これほどの商会の会長さん、そんなこと俺が言うまでもありませんよね?いや、きっと他にも同じように言われる方もあるでしょうに、俺のような門外漢が言うまでもない」
「いや、それは、実際にそのように言われたことは私としても初めてですし……」
「そうですか?それはもしかしたら俺みたいに厚かましい人間でないとこんな失礼なこと口にもできんでのでしょうかな?みなさん弁えていらっしゃいますし」
「そ、そんなことは」
「いえ、そうですよ。そういうことをやってくれないかなあ、と思ったとしても、すでに頭のどこかに置いてらっしゃるのでは?と思ったら、こんな出過ぎたこと、とてもできないでしょう。外の国から来て考えなしの俺みたいな若造だからこそ、つい言ってしまったことで、本当に申し訳ない……」
トーヤはそう言うと座ったままで深く頭を下げた。
「いやいやいや、どうぞ頭を上げてください」
「はい、では遠慮なく」
そう言って頭を上げると、これで止めとばかりにトーヤは付け加えた。
「あの時、月虹兵の名称をみんなで考えていた時、リルさんの発想には俺たちだけではなくマユリアもいたく感心されていました。さすが、このお父様にしてあの娘さんあり、です」
アロは完全に落ちた。
その後はアルディナとの定期便を開くには、ともっぱらその話が進み、
「では、次のアルディナ行きの船はいつ頃お考えです?よければ俺も海賊避け、用心棒として一緒に乗せていただけたら光栄です。元々乗ってきた船もそういう役割で乗っていたわけですし」
「おお、そうでしたか。それは心強いお申し出です」
「俺なんかで何かオーサ商会の、いえ、シャンタルの神域とアルディナの神域のお役に立てるのなら、いくらでも使っていただきたい」
「ありがとうございます」
アロはトーヤの手をしっかりと握って言っていた。
「その折にはぜひとも。ですが、うちの船は来年か、もう少し先あたりと思っておりまして、すぐにというわけにはいきません」
「そうですか、それは残念です。何か、アロさんのお知り合いの船で下見のように乗れる船でもあればなあ。それに乗って次の航海前に色々と調べてくるものを……」
「それでしたら知り合いの船がこの春前にも一度船を出すとのことでした。よければそちらに乗っていただくようなことには」
「なんと、そんな船が」
トーヤが目を輝かせる。
「ちょうどいい。昨日、ルギ隊長が話していたあの例の、あの方の……」
「あ、ああ、あの……」
そう言って話してもいいのかどうかというようにダルをちらっと見る。
「心配なさらなくてもこのダルもその話は承知しております。元々は2人でお送りするということだったのですが、何しろダルには月虹兵としてのお役目ができましたもので、それではと俺が1人でお送りするということになりました」
「なるほど、そうでしたか」
合点したという風にアロが息をつく。
「では、その船に乗っていただけるように知人に話をつけておきます。トーヤ殿もそれで一つお役目を全うできることになるでしょうし、お互いによい話だと思いますが」
「それは非常に助かります。ありがとうございます。その船はいつ頃出発のご予定ですか?何しろ王都は今は封鎖されておりますし、次代様が御誕生になって王都が開放されましたら予定を決めていかないと」
「確か2月ほど先だったかと。もうすぐ新年、春の日の前あたりには出たいものだと申しておりました」
願ったり叶ったりの日付だ。
もしかするとこれも託宣の敷いた道の上にあることなのかも知れない。だが結局はそっちに進むしかないのだ。
「分かりました。では手形のこと、それから船のこと、何か話が進みましたらご連絡ください」
「あ、手形ならすでにルギ隊長にお渡ししてまいりました」
「これはさすが!」
「いえ、商人は見る目と速さが勝負ですからなあ。宮にお戻りになったらもう準備はできていると思いますよ。隊長がさらに裏書きをなさるとのことでしたし」
そうして、手形と船、両方の話をつけてリルの実家から失礼することになった。
押したり引いたりしながら相手を染めていくトーヤ、それに段々と乗っていくアロ、2人を見ていてダルはなんとなく以前自分もこんな目にあったよな~と思い出し、ふとこんなことが浮かんだ。
(詐欺師ってこんな感じなのかもなあ)
「いや、そんなことは一切聞いてません。ですが、俺が考えつくようなこと、もっと商機にさとい商人ならとっくに考えついていてもおかしくはない、というか、もしかしてアロさんも口にはしてはいなくとも心のどこかに思い付いていたのではないですか?あれだけアルディナの事情に通じてらっしゃる方ですし」
「いや、まあ、その……ちょろっと、本当にちょろっとですが、まあ考えなかったと言えば嘘になりますかな」
「でしょうなあ、さすがだ!」
いやあ、すばらしい!とトーヤは一層声を上げて褒めそやす。
「いや、いや、そのちろっとですぞ?そういうことでもできればなあ、とは少しぐらい」
「ですよね?いや、そう思います。これほどの商会の会長さん、そんなこと俺が言うまでもありませんよね?いや、きっと他にも同じように言われる方もあるでしょうに、俺のような門外漢が言うまでもない」
「いや、それは、実際にそのように言われたことは私としても初めてですし……」
「そうですか?それはもしかしたら俺みたいに厚かましい人間でないとこんな失礼なこと口にもできんでのでしょうかな?みなさん弁えていらっしゃいますし」
「そ、そんなことは」
「いえ、そうですよ。そういうことをやってくれないかなあ、と思ったとしても、すでに頭のどこかに置いてらっしゃるのでは?と思ったら、こんな出過ぎたこと、とてもできないでしょう。外の国から来て考えなしの俺みたいな若造だからこそ、つい言ってしまったことで、本当に申し訳ない……」
トーヤはそう言うと座ったままで深く頭を下げた。
「いやいやいや、どうぞ頭を上げてください」
「はい、では遠慮なく」
そう言って頭を上げると、これで止めとばかりにトーヤは付け加えた。
「あの時、月虹兵の名称をみんなで考えていた時、リルさんの発想には俺たちだけではなくマユリアもいたく感心されていました。さすが、このお父様にしてあの娘さんあり、です」
アロは完全に落ちた。
その後はアルディナとの定期便を開くには、ともっぱらその話が進み、
「では、次のアルディナ行きの船はいつ頃お考えです?よければ俺も海賊避け、用心棒として一緒に乗せていただけたら光栄です。元々乗ってきた船もそういう役割で乗っていたわけですし」
「おお、そうでしたか。それは心強いお申し出です」
「俺なんかで何かオーサ商会の、いえ、シャンタルの神域とアルディナの神域のお役に立てるのなら、いくらでも使っていただきたい」
「ありがとうございます」
アロはトーヤの手をしっかりと握って言っていた。
「その折にはぜひとも。ですが、うちの船は来年か、もう少し先あたりと思っておりまして、すぐにというわけにはいきません」
「そうですか、それは残念です。何か、アロさんのお知り合いの船で下見のように乗れる船でもあればなあ。それに乗って次の航海前に色々と調べてくるものを……」
「それでしたら知り合いの船がこの春前にも一度船を出すとのことでした。よければそちらに乗っていただくようなことには」
「なんと、そんな船が」
トーヤが目を輝かせる。
「ちょうどいい。昨日、ルギ隊長が話していたあの例の、あの方の……」
「あ、ああ、あの……」
そう言って話してもいいのかどうかというようにダルをちらっと見る。
「心配なさらなくてもこのダルもその話は承知しております。元々は2人でお送りするということだったのですが、何しろダルには月虹兵としてのお役目ができましたもので、それではと俺が1人でお送りするということになりました」
「なるほど、そうでしたか」
合点したという風にアロが息をつく。
「では、その船に乗っていただけるように知人に話をつけておきます。トーヤ殿もそれで一つお役目を全うできることになるでしょうし、お互いによい話だと思いますが」
「それは非常に助かります。ありがとうございます。その船はいつ頃出発のご予定ですか?何しろ王都は今は封鎖されておりますし、次代様が御誕生になって王都が開放されましたら予定を決めていかないと」
「確か2月ほど先だったかと。もうすぐ新年、春の日の前あたりには出たいものだと申しておりました」
願ったり叶ったりの日付だ。
もしかするとこれも託宣の敷いた道の上にあることなのかも知れない。だが結局はそっちに進むしかないのだ。
「分かりました。では手形のこと、それから船のこと、何か話が進みましたらご連絡ください」
「あ、手形ならすでにルギ隊長にお渡ししてまいりました」
「これはさすが!」
「いえ、商人は見る目と速さが勝負ですからなあ。宮にお戻りになったらもう準備はできていると思いますよ。隊長がさらに裏書きをなさるとのことでしたし」
そうして、手形と船、両方の話をつけてリルの実家から失礼することになった。
押したり引いたりしながら相手を染めていくトーヤ、それに段々と乗っていくアロ、2人を見ていてダルはなんとなく以前自分もこんな目にあったよな~と思い出し、ふとこんなことが浮かんだ。
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