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第二章 第七節 残酷な条件
12 真実
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「こいつが助かるか助からないかで世界も助かるか助からないか決まるってことなんだな」
「そういうことだと思います」
マユリアが答える。
「シャンタルお一人のことではないのです、世界の命運がかかっています」
「それを試すためにこいつを湖に沈めるのか。俺がこいつを助ければ世界も助かる、だが助けない時には世界は助からねえってことか?」
「おそらく」
「助からねえってのはどうなるんだ」
「恐らく眠るのかと」
「眠る?」
「そうです、託宣にはそうあります」
「ああ、そんなこと言ってたっけか、そういや」
「さきほどの託宣をなさった当時のシャンタルはそのことを知り、それであの託宣を残されたのだと思います」
「眠るってどういうことだ」
「分かりません……」
「じゃあ寝かせてやれよ」
こともない風にトーヤが言う。
「黙って寝かせてやったらこいつを沈める必要もねえんだろ?だったらそう決めてこいつだけ逃してやっちゃどうだ?国から出せってのならそれは引き受けてやるからよ。寝るだけなんだろ?だったらなんも問題ないじゃねえかよ」
トーヤが皮肉そうに笑った。
「そうすりゃあんたらも辛いことをしなくても済むだろ?手を汚す必要がなくなるってことだ」
「もしも」
マユリアが振り切るように言う。
「シャンタルが、死ぬ運命だったとしたら?」
「なんだと?」
またトーヤの目が険しくなる。
「わたくしたちにはシャンタルの運命は分かりません。気持ちの上でいくらお助けしたいと思っても叶わぬこともあるのです。あなたはそれをよく知っているはずですよ、トーヤ」
トーヤがきつい目でマユリアを睨んだ。
「フェイのことを言ってるんだな?」
「そうです」
「俺が、どれだけフェイを助けたかったか知ってる上でそう言うんだな?」
「そうです」
トーヤが目で人が殺せるのならそうなっていただろうというほどの目つきでマユリアを睨んだ。
「そうか……」
トーヤが姿勢を崩して椅子の背にもたれかかった。そうしておいて左手を椅子の背にかけ、右足を左足の上に乗せる。いつもミーヤに叱られていた行儀の悪い座り方。それから首を左に向いてひねり、下から見上げるようにマユリアを見た。完全にならず者にしか見えない態度だ。
「そこまで根性決めてるってわけだな、マユリア」
「よく意味が分かりません」
「これだからお上品なやつらは困る」
ククッと小馬鹿にするように笑った。
「つまりな、あんたらが手を汚すことになっても構わねえ、そこに座ってるお可愛らしい大事な大事なシャンタルが冷たい水で溺れ死んでも構わねえ、そう覚悟決めてるってことなんだなって言ってるんだ」
「…………」
「もう少し言ってやろうか?あんたらがな、シャンタルを殺すんだ。そう、冷たい水の中で苦しんで苦しんでもがいてもがいて死ぬように棺桶に入れて沈めるんだ、そういうことだろって言ってんだよ」
「やめて!」
そう叫んだのはミーヤだった。
「やめて、そんな言い方をしないで」
両手で耳をふさぎ下を向く。
「あんたも聞いてた方がいい。あんたが生きてるこの宮の主たちがどんなこと考えてるのか知ってた方がいい」
「聞きたくありません!」
「聞いた方がいい!」
トーヤが右を向いてミーヤの左手首を握る。
「そういうことなんだよ、よく分かった方がいい。これが真実なんだよ」
ミーヤの手をはずさせて言葉を続ける。
「こいつらはな、俺がどれだけフェイを助けたかったか、生きていてほしかったか知った上でこう言うんだ、それが運命ならば自分らの手でシャンタルを殺す、とな。そう言ってるんだ、分かるか?」
「そんなひどいこと……」
「そうだ、ひどいことだよな?だがな、やるって言ってるんだよ」
「でも、トーヤが助けてくれれば」
「俺がか?」
トーヤがまたククッと笑う。
「つまり、シャンタルが死んだら俺が助けなかったから、か?」
「それは……」
「そう言ってるってこと、分かってるか?」
「そんな、そんなつもりでは」
「だろうな」
ふっと息を吐いてミーヤの手を放す。
「あんたは本当に善良だ、俺はよく知ってる。善良すぎてこいつらが言ってることがどういう意味か分かってなかった。でもな、今はもう分かるだろ?そういう意味だ」
ミーヤは言葉がなかった。
「そうなんだよな……」
ミーヤではなくダルが言った。
「マユリア、やめてくれませんか、そんなひどいこと。ラーラ様もキリエ様も、それからえっと、後ろの方も」
「やっぱりダルは分かってるな」
「トーヤの言う通りです、マユリアとラーラ様がやめようって決めてくれたら、そうしたらそんな悲しいことしなくて済むんじゃないですか?」
「ダル……」
マユリアが悲しそうに首を振る。
「託宣は、なされなくてはならないのです……」
「どうしてです!」
「もしも、わたくしたちがシャンタルの運命を決めてしまったら、死なぬと決めてしまったら、もしもそれが間違いだった時、世界はどうなりますか?」
「分からないです……」
ダルが正直に言う。
「でもシャンタルにも、そしてトーヤにもひどいことをしようとしている、それだけは俺にだって分かります」
「そういうことだと思います」
マユリアが答える。
「シャンタルお一人のことではないのです、世界の命運がかかっています」
「それを試すためにこいつを湖に沈めるのか。俺がこいつを助ければ世界も助かる、だが助けない時には世界は助からねえってことか?」
「おそらく」
「助からねえってのはどうなるんだ」
「恐らく眠るのかと」
「眠る?」
「そうです、託宣にはそうあります」
「ああ、そんなこと言ってたっけか、そういや」
「さきほどの託宣をなさった当時のシャンタルはそのことを知り、それであの託宣を残されたのだと思います」
「眠るってどういうことだ」
「分かりません……」
「じゃあ寝かせてやれよ」
こともない風にトーヤが言う。
「黙って寝かせてやったらこいつを沈める必要もねえんだろ?だったらそう決めてこいつだけ逃してやっちゃどうだ?国から出せってのならそれは引き受けてやるからよ。寝るだけなんだろ?だったらなんも問題ないじゃねえかよ」
トーヤが皮肉そうに笑った。
「そうすりゃあんたらも辛いことをしなくても済むだろ?手を汚す必要がなくなるってことだ」
「もしも」
マユリアが振り切るように言う。
「シャンタルが、死ぬ運命だったとしたら?」
「なんだと?」
またトーヤの目が険しくなる。
「わたくしたちにはシャンタルの運命は分かりません。気持ちの上でいくらお助けしたいと思っても叶わぬこともあるのです。あなたはそれをよく知っているはずですよ、トーヤ」
トーヤがきつい目でマユリアを睨んだ。
「フェイのことを言ってるんだな?」
「そうです」
「俺が、どれだけフェイを助けたかったか知ってる上でそう言うんだな?」
「そうです」
トーヤが目で人が殺せるのならそうなっていただろうというほどの目つきでマユリアを睨んだ。
「そうか……」
トーヤが姿勢を崩して椅子の背にもたれかかった。そうしておいて左手を椅子の背にかけ、右足を左足の上に乗せる。いつもミーヤに叱られていた行儀の悪い座り方。それから首を左に向いてひねり、下から見上げるようにマユリアを見た。完全にならず者にしか見えない態度だ。
「そこまで根性決めてるってわけだな、マユリア」
「よく意味が分かりません」
「これだからお上品なやつらは困る」
ククッと小馬鹿にするように笑った。
「つまりな、あんたらが手を汚すことになっても構わねえ、そこに座ってるお可愛らしい大事な大事なシャンタルが冷たい水で溺れ死んでも構わねえ、そう覚悟決めてるってことなんだなって言ってるんだ」
「…………」
「もう少し言ってやろうか?あんたらがな、シャンタルを殺すんだ。そう、冷たい水の中で苦しんで苦しんでもがいてもがいて死ぬように棺桶に入れて沈めるんだ、そういうことだろって言ってんだよ」
「やめて!」
そう叫んだのはミーヤだった。
「やめて、そんな言い方をしないで」
両手で耳をふさぎ下を向く。
「あんたも聞いてた方がいい。あんたが生きてるこの宮の主たちがどんなこと考えてるのか知ってた方がいい」
「聞きたくありません!」
「聞いた方がいい!」
トーヤが右を向いてミーヤの左手首を握る。
「そういうことなんだよ、よく分かった方がいい。これが真実なんだよ」
ミーヤの手をはずさせて言葉を続ける。
「こいつらはな、俺がどれだけフェイを助けたかったか、生きていてほしかったか知った上でこう言うんだ、それが運命ならば自分らの手でシャンタルを殺す、とな。そう言ってるんだ、分かるか?」
「そんなひどいこと……」
「そうだ、ひどいことだよな?だがな、やるって言ってるんだよ」
「でも、トーヤが助けてくれれば」
「俺がか?」
トーヤがまたククッと笑う。
「つまり、シャンタルが死んだら俺が助けなかったから、か?」
「それは……」
「そう言ってるってこと、分かってるか?」
「そんな、そんなつもりでは」
「だろうな」
ふっと息を吐いてミーヤの手を放す。
「あんたは本当に善良だ、俺はよく知ってる。善良すぎてこいつらが言ってることがどういう意味か分かってなかった。でもな、今はもう分かるだろ?そういう意味だ」
ミーヤは言葉がなかった。
「そうなんだよな……」
ミーヤではなくダルが言った。
「マユリア、やめてくれませんか、そんなひどいこと。ラーラ様もキリエ様も、それからえっと、後ろの方も」
「やっぱりダルは分かってるな」
「トーヤの言う通りです、マユリアとラーラ様がやめようって決めてくれたら、そうしたらそんな悲しいことしなくて済むんじゃないですか?」
「ダル……」
マユリアが悲しそうに首を振る。
「託宣は、なされなくてはならないのです……」
「どうしてです!」
「もしも、わたくしたちがシャンタルの運命を決めてしまったら、死なぬと決めてしまったら、もしもそれが間違いだった時、世界はどうなりますか?」
「分からないです……」
ダルが正直に言う。
「でもシャンタルにも、そしてトーヤにもひどいことをしようとしている、それだけは俺にだって分かります」
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