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第二章 第七節 残酷な条件
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マユリアは何があってもシャンタルの棺を聖なる湖に沈めるつもりだ。そうしておいて、シャンタルが助かるかどうか、それをトーヤの手に委ねようとしている。今はミーヤにも分かってしまった……
「ダルさんの……おっしゃる通りだと私も思います……」
ぽつりと言った。
「トーヤにすべての責任を押し付ける、今は私にもそうだとよく分かりました……」
「ミーヤ……」
トーヤが右に座るミーヤを見た。目元がふっと和らいでいる。
「私からもお願いいたします、おやめください。どうぞ、どうぞおやめください!」
ミーヤはそう言うと椅子から降りて床に跪き、深く頭を下げた。
「宮の侍女としての態度ではないですよ」
苦しそうにキリエが言った。
「あんたはシャンタルを沈めるって知ってたのか?」
「いいえ……」
トーヤの問いにキリエが素直に答えた。
「私が存じあげていたのは、助け手が助けられない時にはシャンタルが命を落とされるということ、そしてそのための棺が用意されたということです」
「そうか」
「ですが、私にもマユリアを止められません……」
「なんでだよ」
「私はこの宮のために、シャンタルとマユリアのために生きてまいりました。それはいわば託宣に従うために生きてきたということ、託宣を行わないということがこの世界の運命を狂わせるかも知れない、そうマユリアがおっしゃるのなら、従います……」
血を吐くようにしてキリエが言う。
「さすがだな侍女頭」
トーヤが感心するように言う。
「己の良心よりマユリアとシャンタル。この場合はシャンタルを殺すっつーてんだからマユリアと託宣のため、か」
「そうです……」
キリエが痛みを堪えるようにしてトーヤに言う。
「私はこの身も心も宮に、シャンタルとマユリアに捧げております。いっそ、自分が沈めと言われた方がどれほど心安らかだったことか……」
「……分かった」
トーヤにも分かる、キリエの痛みが。それが受け入れられる痛みではなかったとしても。
「ってことは、ラーラ様の後ろのお二人、あんたらもキリエさんと一緒だってことでいいのかな?」
二人が黙って頷いた。
「ひとっこともしゃべらねえのはシャンタルの真似か?」
嫌味っぽくトーヤが言うが、2人共顔色一つ変えず反応もしない。
「よくできた主従だな」
ふっと力を抜くように言い、それからラーラ様に、
「聞くまでもねえよな?」
「わたくしは……」
ギュッとシャンタルの左手を右手で握りしめ、顔を見る。
「そのために……それを見届けるために侍女として残りました……シャンタルと、マユリアを見守るために……」
「そうして最後は殺すため、か?」
「それは!」
ラーラ様が顔をトーヤに向けてじっと見つめる。
「それは……そういうこともあるのだ、と覚悟してこの十年を過ごしてまいりました……ですが、ですができるならば、助けていただきたい。トーヤ、シャンタルを助けてください、お願いいたします……」
深く頭を下げる。
「さっきも言ったぜ?俺にそれを押し付けるのか?ってな」
「それは重々承知の上でお願いしています、自分がどれほど身勝手な人間かを分かった上で……」
「それでこそ母、だよな」
トーヤがニヤリと笑った。
「さて、と……宮のみなさんの考えはよく分かった。確認だが、みなさんシャンタルを殺す、でいいんだな?」
わざと挑発するように言う、そして、
「その上で俺が今一番知りたいのはあんたの考えだ。隊長、あんたはどうしたらいいと思う?まあマユリア命のあんたのことだ、聞くまでもねえと思うけどな」
いつもならトーヤを無視するか皮肉な笑みを返すルギが、苦悩を顔に浮かべていた。
「ほう、見たことねえ面してるな……さて、どうだ?」
トーヤが口調は面白そうにそう言うが、目は獲物を狙う獣のようにルギをじっと見つめる。
「俺は……俺はマユリアのためだけに存在している、あの時からずっと」
「だよな~」
「だが、その上で申し上げる……マユリア、どうぞやめていただきたい」
意外な返事であった。
「ルギ……」
マユリアが辛そうな目でルギを見る。
「そのような行為はあなたのお心を壊します、私はそれに耐えられません、どうぞお考え直しを……」
椅子から降りて膝を付き、深く深く頭を下げた。
「さっすがマユリアの犬だ、そうきたか!」
トーヤがわざと感心したようにそう言う。
ルギは聞こえないかのように頭を下げたまま動かない。
「さあて、どうするマユリア?あんたの犬がこうして頼んでるんだぜ?」
「ルギ……」
マユリアがじっとルギを見て言う。
その声に答えるようにルギが顔を上げた。
「トーヤ、わたくしはルギを犬などと思ったことはありません」
「ほう、でも忠実だぜ、今だってあんたに必死で尻尾振ってる。御主人様、どうぞやめてくださいってな」
「ルギがわたくしの意思に反するなど今までなかったこと……そうまでしてわたくしを止めようとしてくれていること、感謝します……」
「マユリア!」
マユリアがルギに頭を下げ、ルギが驚いて声を上げる。
「ですがごめんなさい、これだけは、誰に何を言われようとやめることはできないのです……」
「ダルさんの……おっしゃる通りだと私も思います……」
ぽつりと言った。
「トーヤにすべての責任を押し付ける、今は私にもそうだとよく分かりました……」
「ミーヤ……」
トーヤが右に座るミーヤを見た。目元がふっと和らいでいる。
「私からもお願いいたします、おやめください。どうぞ、どうぞおやめください!」
ミーヤはそう言うと椅子から降りて床に跪き、深く頭を下げた。
「宮の侍女としての態度ではないですよ」
苦しそうにキリエが言った。
「あんたはシャンタルを沈めるって知ってたのか?」
「いいえ……」
トーヤの問いにキリエが素直に答えた。
「私が存じあげていたのは、助け手が助けられない時にはシャンタルが命を落とされるということ、そしてそのための棺が用意されたということです」
「そうか」
「ですが、私にもマユリアを止められません……」
「なんでだよ」
「私はこの宮のために、シャンタルとマユリアのために生きてまいりました。それはいわば託宣に従うために生きてきたということ、託宣を行わないということがこの世界の運命を狂わせるかも知れない、そうマユリアがおっしゃるのなら、従います……」
血を吐くようにしてキリエが言う。
「さすがだな侍女頭」
トーヤが感心するように言う。
「己の良心よりマユリアとシャンタル。この場合はシャンタルを殺すっつーてんだからマユリアと託宣のため、か」
「そうです……」
キリエが痛みを堪えるようにしてトーヤに言う。
「私はこの身も心も宮に、シャンタルとマユリアに捧げております。いっそ、自分が沈めと言われた方がどれほど心安らかだったことか……」
「……分かった」
トーヤにも分かる、キリエの痛みが。それが受け入れられる痛みではなかったとしても。
「ってことは、ラーラ様の後ろのお二人、あんたらもキリエさんと一緒だってことでいいのかな?」
二人が黙って頷いた。
「ひとっこともしゃべらねえのはシャンタルの真似か?」
嫌味っぽくトーヤが言うが、2人共顔色一つ変えず反応もしない。
「よくできた主従だな」
ふっと力を抜くように言い、それからラーラ様に、
「聞くまでもねえよな?」
「わたくしは……」
ギュッとシャンタルの左手を右手で握りしめ、顔を見る。
「そのために……それを見届けるために侍女として残りました……シャンタルと、マユリアを見守るために……」
「そうして最後は殺すため、か?」
「それは!」
ラーラ様が顔をトーヤに向けてじっと見つめる。
「それは……そういうこともあるのだ、と覚悟してこの十年を過ごしてまいりました……ですが、ですができるならば、助けていただきたい。トーヤ、シャンタルを助けてください、お願いいたします……」
深く頭を下げる。
「さっきも言ったぜ?俺にそれを押し付けるのか?ってな」
「それは重々承知の上でお願いしています、自分がどれほど身勝手な人間かを分かった上で……」
「それでこそ母、だよな」
トーヤがニヤリと笑った。
「さて、と……宮のみなさんの考えはよく分かった。確認だが、みなさんシャンタルを殺す、でいいんだな?」
わざと挑発するように言う、そして、
「その上で俺が今一番知りたいのはあんたの考えだ。隊長、あんたはどうしたらいいと思う?まあマユリア命のあんたのことだ、聞くまでもねえと思うけどな」
いつもならトーヤを無視するか皮肉な笑みを返すルギが、苦悩を顔に浮かべていた。
「ほう、見たことねえ面してるな……さて、どうだ?」
トーヤが口調は面白そうにそう言うが、目は獲物を狙う獣のようにルギをじっと見つめる。
「俺は……俺はマユリアのためだけに存在している、あの時からずっと」
「だよな~」
「だが、その上で申し上げる……マユリア、どうぞやめていただきたい」
意外な返事であった。
「ルギ……」
マユリアが辛そうな目でルギを見る。
「そのような行為はあなたのお心を壊します、私はそれに耐えられません、どうぞお考え直しを……」
椅子から降りて膝を付き、深く深く頭を下げた。
「さっすがマユリアの犬だ、そうきたか!」
トーヤがわざと感心したようにそう言う。
ルギは聞こえないかのように頭を下げたまま動かない。
「さあて、どうするマユリア?あんたの犬がこうして頼んでるんだぜ?」
「ルギ……」
マユリアがじっとルギを見て言う。
その声に答えるようにルギが顔を上げた。
「トーヤ、わたくしはルギを犬などと思ったことはありません」
「ほう、でも忠実だぜ、今だってあんたに必死で尻尾振ってる。御主人様、どうぞやめてくださいってな」
「ルギがわたくしの意思に反するなど今までなかったこと……そうまでしてわたくしを止めようとしてくれていること、感謝します……」
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