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第三章 第五節 神として
13 招集
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ミーヤは応接のソファに座ったまま朝を迎えた。
あれからとうとうシャンタルは寝室から出てこなかった。
「あの、朝食の時間ですが」
今朝はモナがワゴンを押してきた。
「ありがとうございます。そこに置いておいてください、後は私がやりますので」
ソファから立ち上がり、丁寧に頭を下げる。
モナは何か様子がおかしいとは感じながら、こちらも丁寧に頭を下げて部屋から下がっていく。
シャンタルが部屋に籠もったのは昨日、14日目の夕刻近くであった。昨日はその直前に遅い昼食をとっていたので食事係は来ず、その他にも誰も来なかったのでミーヤはただ1人座って待ち続けた。シャンタルが出てくるのを。何か声がかかるのを。何か音がするのを。何かが起きるのを、何か、何か……
「何かが……」
何かが起きることも、そう考えると胸の中に冷たい塊ができたようだった。
今、あの静かに暗い寝室の中で1人でシャンタルが苦しんでいる。そう思うと飛び込んで行って抱きしめて泣かせてあげたい、そんな思いに突き動かされる。
だがだめだ、堪えなければ。
シャンタルを信じるのだ。あの方は普通の子どもではない、大きな力を持たれる方だ、神なのだ。
シャンタルが片言のように言葉を話すようになってからずっとお付きしていたので忘れていたが、本来なら自分などそばに寄ることも許されぬほど尊い方、神なのだ。
「そう、唯一の方……」
だから間違えた道など選ばれるはずがない。
シャンタルに自分たちを信じてほしい、そう言った。ならば自分も信じるのだ、シャンタルを。
そう繰り返しながら朝を迎えた。長い長い夜が過ぎ、15日目の朝が明けた。
「ミーヤ……」
朝食のワゴンの上で食事が冷めてしまった頃、そっとキリエが室内を伺うようにして入ってきた。
「キリエ様……」
「シャンタルは?」
「寝室です。1人にしてほしいとおっしゃって……」
キリエはこの部屋を出た時の明るい気持ち、やっとシャンタルがトーヤに心を開いてくれた、これでやっとと思った気持ちにまた重いフタをされたように感じた。
「何があったのです」
「はい……」
ミーヤがキリエに説明をする。キリエは黙って聞いていた。
「そうですか……」
「キリエ様、本当にまだ何かあるのでしょうか?シャンタルをここまで苦しめなければならぬ何かが」
「ミーヤ……」
キリエが顔を歪めながら言う。
「沈黙を……」
そう、話せぬことがある時は沈黙を守るしかない。つまり「何か」があるということだ。
「おまえがシャンタルに申し上げてくれたように信じなさい。シャンタルはきっと正しい道をお選びくださいます」
「キリエ様……そう、そうなのですね、今私たちにできるのはそれだけなのですね……」
「ミーヤ……」
「はい、信じます。シャンタルはきっと正しい道をお選びくださいます。ですが、ですがもし、もしも、そうではなかった時には……」
「ええ……」
キリエが目を伏せて言う。
「その時には、どんなことでも受け入れます。それがたとえ滅びの道であったとしても。シャンタルを失うことになったとしても。それがシャンタルのお選びになった道だとしたら……」
侍女と侍女頭はそうして待った。
待つことしかできなかった。
「何か」が動くのを。
昼を過ぎてしばらくした頃、夕刻にはまだ早いが冬の日は傾く方向に動いた頃、寝室の扉が開く音がした。
キリエとミーヤは黙って扉の方を見た。
小さな子どもが開いた扉の向こうからこちらをじっと見つめる。
声をかけることも憚られる。
2人の侍女はじっと小さな主を見つめる。
シャンタルはしばらく2人を見つめていたが、やがて決心したように口を開いた。
「キリエ」
「はい」
「マユリアもラーラ様ももうお戻りなのでしょう?」
「はい」
「では部屋にお呼びしてください、シャンタルが呼んでいる、そう伝えてください」
「はい」
「他に今回のことに関わる者もすべて」
「はい、承知いたしました」
キリエがその場で跪いて頭を下げると、それを見届けるようにしてシャンタルはまた寝室に戻っていった。
「キリエ様……」
「ご決断なされたようですね」
「はい、ですが……」
どの道なのか、シャンタルが選んだのは。
「お迎えに参ります。おまえはここで待ってください」
「はい……」
キリエはシャンタルの寝室から出るとまずマユリアの元へ行った。
リルがダルの隣の客室をいつでもマユリアをお迎えできるように支度を整えていてくれて、今はリルが付いてそこにいらっしゃる。
それからラーラ様の元へ。
ラーラ様はさきほどダルに連れられてカースから戻られ、今はマユリアの客室に控えていた。
ルギとタリア、ネイもルギの家から今朝早くに戻っていた。それぞれの控室にいる。
ダルはラーラ様をマユリアの客室に送って行った後、トーヤの部屋に戻っていた。
キリエは全ての部屋を順番に回ると、
「シャンタルの応接へ」
そう言って皆を呼び集めた。
また日が傾き、やや薄暗くなってきた頃、シャンタルの応接にすべての者が集まった。
マユリア、ラーラ様、キリエ、タリア、ネイ、ルギ、トーヤ、ミーヤ、ダル、そしてリルも含めて10名が応接で顔を合わせた。
あれからとうとうシャンタルは寝室から出てこなかった。
「あの、朝食の時間ですが」
今朝はモナがワゴンを押してきた。
「ありがとうございます。そこに置いておいてください、後は私がやりますので」
ソファから立ち上がり、丁寧に頭を下げる。
モナは何か様子がおかしいとは感じながら、こちらも丁寧に頭を下げて部屋から下がっていく。
シャンタルが部屋に籠もったのは昨日、14日目の夕刻近くであった。昨日はその直前に遅い昼食をとっていたので食事係は来ず、その他にも誰も来なかったのでミーヤはただ1人座って待ち続けた。シャンタルが出てくるのを。何か声がかかるのを。何か音がするのを。何かが起きるのを、何か、何か……
「何かが……」
何かが起きることも、そう考えると胸の中に冷たい塊ができたようだった。
今、あの静かに暗い寝室の中で1人でシャンタルが苦しんでいる。そう思うと飛び込んで行って抱きしめて泣かせてあげたい、そんな思いに突き動かされる。
だがだめだ、堪えなければ。
シャンタルを信じるのだ。あの方は普通の子どもではない、大きな力を持たれる方だ、神なのだ。
シャンタルが片言のように言葉を話すようになってからずっとお付きしていたので忘れていたが、本来なら自分などそばに寄ることも許されぬほど尊い方、神なのだ。
「そう、唯一の方……」
だから間違えた道など選ばれるはずがない。
シャンタルに自分たちを信じてほしい、そう言った。ならば自分も信じるのだ、シャンタルを。
そう繰り返しながら朝を迎えた。長い長い夜が過ぎ、15日目の朝が明けた。
「ミーヤ……」
朝食のワゴンの上で食事が冷めてしまった頃、そっとキリエが室内を伺うようにして入ってきた。
「キリエ様……」
「シャンタルは?」
「寝室です。1人にしてほしいとおっしゃって……」
キリエはこの部屋を出た時の明るい気持ち、やっとシャンタルがトーヤに心を開いてくれた、これでやっとと思った気持ちにまた重いフタをされたように感じた。
「何があったのです」
「はい……」
ミーヤがキリエに説明をする。キリエは黙って聞いていた。
「そうですか……」
「キリエ様、本当にまだ何かあるのでしょうか?シャンタルをここまで苦しめなければならぬ何かが」
「ミーヤ……」
キリエが顔を歪めながら言う。
「沈黙を……」
そう、話せぬことがある時は沈黙を守るしかない。つまり「何か」があるということだ。
「おまえがシャンタルに申し上げてくれたように信じなさい。シャンタルはきっと正しい道をお選びくださいます」
「キリエ様……そう、そうなのですね、今私たちにできるのはそれだけなのですね……」
「ミーヤ……」
「はい、信じます。シャンタルはきっと正しい道をお選びくださいます。ですが、ですがもし、もしも、そうではなかった時には……」
「ええ……」
キリエが目を伏せて言う。
「その時には、どんなことでも受け入れます。それがたとえ滅びの道であったとしても。シャンタルを失うことになったとしても。それがシャンタルのお選びになった道だとしたら……」
侍女と侍女頭はそうして待った。
待つことしかできなかった。
「何か」が動くのを。
昼を過ぎてしばらくした頃、夕刻にはまだ早いが冬の日は傾く方向に動いた頃、寝室の扉が開く音がした。
キリエとミーヤは黙って扉の方を見た。
小さな子どもが開いた扉の向こうからこちらをじっと見つめる。
声をかけることも憚られる。
2人の侍女はじっと小さな主を見つめる。
シャンタルはしばらく2人を見つめていたが、やがて決心したように口を開いた。
「キリエ」
「はい」
「マユリアもラーラ様ももうお戻りなのでしょう?」
「はい」
「では部屋にお呼びしてください、シャンタルが呼んでいる、そう伝えてください」
「はい」
「他に今回のことに関わる者もすべて」
「はい、承知いたしました」
キリエがその場で跪いて頭を下げると、それを見届けるようにしてシャンタルはまた寝室に戻っていった。
「キリエ様……」
「ご決断なされたようですね」
「はい、ですが……」
どの道なのか、シャンタルが選んだのは。
「お迎えに参ります。おまえはここで待ってください」
「はい……」
キリエはシャンタルの寝室から出るとまずマユリアの元へ行った。
リルがダルの隣の客室をいつでもマユリアをお迎えできるように支度を整えていてくれて、今はリルが付いてそこにいらっしゃる。
それからラーラ様の元へ。
ラーラ様はさきほどダルに連れられてカースから戻られ、今はマユリアの客室に控えていた。
ルギとタリア、ネイもルギの家から今朝早くに戻っていた。それぞれの控室にいる。
ダルはラーラ様をマユリアの客室に送って行った後、トーヤの部屋に戻っていた。
キリエは全ての部屋を順番に回ると、
「シャンタルの応接へ」
そう言って皆を呼び集めた。
また日が傾き、やや薄暗くなってきた頃、シャンタルの応接にすべての者が集まった。
マユリア、ラーラ様、キリエ、タリア、ネイ、ルギ、トーヤ、ミーヤ、ダル、そしてリルも含めて10名が応接で顔を合わせた。
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