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第三章 第七節 神の死
2 検証
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「シャンタルの死」はすぐに神殿と王宮へと伝えられた。
「信じられない……」
トーヤの部屋を訪れたこともあるやせた「ヤギみたいなひげ」の神官長がシャンタルの寝台の足元に崩れ落ちる。
ラーラ様がいつも座っている寝台横の大きな椅子に座ってシャンタルに取りすがって泣き、マユリアも表情がないままその横に立ち尽くしている。
少し遅れて王宮からの使者も寝室へ通され絶句する。
「一体、何が……」
誰にも理由は分からない。分かるのはシャンタルが自室の寝台の上で眠るように亡くなっている、その事実だけだ。
「だ、誰が発見を」
「私です」
侍女頭のキリエが一歩進み出る。
「その時の状況を」
使者がキリエに話を促す。
「はい」
キリエがいつもの鋼鉄の仮面が剥がれたかのように、弱々しげに首をうなだれて話し始めた。
「お出ましがすべて終わりお部屋に戻りになられた後、シャンタルが疲れたので食事会まで少し休みたいと申されました。それで少し静かにしてさしあげようと、部屋着にお着替えいただき横になっていただきました。お休みになられるのを見届けて部屋を出、食事会のためにお起こししようとこちらに参りましたら」
キリエがグッと言葉を詰まらせる。
「もう、もう息が……」
口を押さえて言葉が出ない。
「それで、その間に部屋に入った者は?」
「いなかったと思います」
マユリアがキリエに代わって答える。
王宮の使者がそれを知って急いで膝をつく。
「このような場合です、立ちなさい」
「はい」
そう言って立たせると続ける。
「わたくしはキリエが部屋から出て少しの間、応接でキリエをねぎらっておりました。そうしてしばらくしてキリエが部屋を辞し、わたくしも次代様のお部屋へと向かいました。その間、おそらくこの部屋に入った者はおらぬかと。次代様のお部屋にはラーラ、タリア、ネイのシャンタル付きの侍女3名と乳母の1人が付いておりました。残りの乳母は控室にいたかと」
「さようですか……衛士!」
「はっ」
ルギが一歩進み出る。
「警護の状態はどうなっていた?」
「はい、こちらの入り口には衛士が2名立っておりました。その間誰かここを通ったか?」
ルギが控えていた衛士に声をかける。ルギと共にこちらに駆けつけた3名のうちの2名だ。もう1名はルギと共にいた。
「いえ、キリエ様が出られた以外はどなたも出入りはありませんでした」
「間違いありません」
だとすると誰も不審な人間はいなかったことになる。となると、シャンタルの死は自然死か……
そこまで考え、王宮の使者がふと顔を上げる。
「これまでこの部屋に出入りしたことのある者は?」
「それは、私室付きの侍女たちはみな出入りがございます」
キリエが答える。
「今までに出入りしたことがない者で最近出入りした者はあるのか?」
「それは……」
少しキリエが言いよどむ。
「あるのか?」
「はい、ございます」
キリエが正直に答える。
この部屋に出入りする者はすべて衛士が記録してある、嘘をつくのは無駄である。
「まず、そこにおりますルギです。衛士として応接まで入ったことがございます」
「本当か?」
「はい、役目ですので」
「そうか。他には?」
「このたび初めて入ったのは前の宮の者であるミーヤとリルという侍女が」
「その者たちはなぜ?」
「それはわたくしが答えましょう」
マユリアが答える。
「わたくしが必要と判断して入れました」
「ほう」
王宮の使者が驚いて言う。
「そちらもご存知のように、わたくしはしばらくの間お籠りに入っておりました」
「あ、ああ」
使者は王様にせっつかれて何度も宮にそのことを尋ねに来ていたのでバツが悪そうな顔になった。
「その折に必要であったのでルギ、ネイ、タリア、ラーラの4名をこの宮から出しました。その代わりにキリエとミーヤ、リルの3名をシャンタル付きとしました」
「必要であったと?」
「ええ、そうです。シャンタルのお為でした」
「シャンタルの」
宮の重大事項である。聞いていいことなのかどうか使者は悩むようにしたが、必要なことと思い切ったように言う。
「お聞きしても構わぬものでしょうか、その重大事項というのは?」
「本来なら口にするのは叶わぬことですが、このようなことになっては仕方がありませんね……」
マユリアが重く口を開く。
「古い古い託宣がございました。マユリアの間にのみ伝わる千年前の託宣です」
「千年前!!」
聞いて使者が飛び上がる。
「ええ、そうです。シャンタルのお命にも関わる古い託宣です……その為に、シャンタルのお命を助けるためにみなを宮の外に出し、わたくしもお籠もりに入っていたのですが……」
そう言葉を途切らせる。
使者は一層のバツの悪さを感じた。
そんな大事なお籠りの時に、王のマユリアの不貞を疑うような、そんな不純な心からお籠りの邪魔をするように何度も足を運んだ。
(千年前の託宣など、そんな大事なことがあったなど知らなかったのだ!)
使者の心の中に自分がシャンタルの死の一因であったとしたらどうすればいいのか、そんな恐怖が湧き上がり、体中から冷や汗が流れるのを感じた。
「信じられない……」
トーヤの部屋を訪れたこともあるやせた「ヤギみたいなひげ」の神官長がシャンタルの寝台の足元に崩れ落ちる。
ラーラ様がいつも座っている寝台横の大きな椅子に座ってシャンタルに取りすがって泣き、マユリアも表情がないままその横に立ち尽くしている。
少し遅れて王宮からの使者も寝室へ通され絶句する。
「一体、何が……」
誰にも理由は分からない。分かるのはシャンタルが自室の寝台の上で眠るように亡くなっている、その事実だけだ。
「だ、誰が発見を」
「私です」
侍女頭のキリエが一歩進み出る。
「その時の状況を」
使者がキリエに話を促す。
「はい」
キリエがいつもの鋼鉄の仮面が剥がれたかのように、弱々しげに首をうなだれて話し始めた。
「お出ましがすべて終わりお部屋に戻りになられた後、シャンタルが疲れたので食事会まで少し休みたいと申されました。それで少し静かにしてさしあげようと、部屋着にお着替えいただき横になっていただきました。お休みになられるのを見届けて部屋を出、食事会のためにお起こししようとこちらに参りましたら」
キリエがグッと言葉を詰まらせる。
「もう、もう息が……」
口を押さえて言葉が出ない。
「それで、その間に部屋に入った者は?」
「いなかったと思います」
マユリアがキリエに代わって答える。
王宮の使者がそれを知って急いで膝をつく。
「このような場合です、立ちなさい」
「はい」
そう言って立たせると続ける。
「わたくしはキリエが部屋から出て少しの間、応接でキリエをねぎらっておりました。そうしてしばらくしてキリエが部屋を辞し、わたくしも次代様のお部屋へと向かいました。その間、おそらくこの部屋に入った者はおらぬかと。次代様のお部屋にはラーラ、タリア、ネイのシャンタル付きの侍女3名と乳母の1人が付いておりました。残りの乳母は控室にいたかと」
「さようですか……衛士!」
「はっ」
ルギが一歩進み出る。
「警護の状態はどうなっていた?」
「はい、こちらの入り口には衛士が2名立っておりました。その間誰かここを通ったか?」
ルギが控えていた衛士に声をかける。ルギと共にこちらに駆けつけた3名のうちの2名だ。もう1名はルギと共にいた。
「いえ、キリエ様が出られた以外はどなたも出入りはありませんでした」
「間違いありません」
だとすると誰も不審な人間はいなかったことになる。となると、シャンタルの死は自然死か……
そこまで考え、王宮の使者がふと顔を上げる。
「これまでこの部屋に出入りしたことのある者は?」
「それは、私室付きの侍女たちはみな出入りがございます」
キリエが答える。
「今までに出入りしたことがない者で最近出入りした者はあるのか?」
「それは……」
少しキリエが言いよどむ。
「あるのか?」
「はい、ございます」
キリエが正直に答える。
この部屋に出入りする者はすべて衛士が記録してある、嘘をつくのは無駄である。
「まず、そこにおりますルギです。衛士として応接まで入ったことがございます」
「本当か?」
「はい、役目ですので」
「そうか。他には?」
「このたび初めて入ったのは前の宮の者であるミーヤとリルという侍女が」
「その者たちはなぜ?」
「それはわたくしが答えましょう」
マユリアが答える。
「わたくしが必要と判断して入れました」
「ほう」
王宮の使者が驚いて言う。
「そちらもご存知のように、わたくしはしばらくの間お籠りに入っておりました」
「あ、ああ」
使者は王様にせっつかれて何度も宮にそのことを尋ねに来ていたのでバツが悪そうな顔になった。
「その折に必要であったのでルギ、ネイ、タリア、ラーラの4名をこの宮から出しました。その代わりにキリエとミーヤ、リルの3名をシャンタル付きとしました」
「必要であったと?」
「ええ、そうです。シャンタルのお為でした」
「シャンタルの」
宮の重大事項である。聞いていいことなのかどうか使者は悩むようにしたが、必要なことと思い切ったように言う。
「お聞きしても構わぬものでしょうか、その重大事項というのは?」
「本来なら口にするのは叶わぬことですが、このようなことになっては仕方がありませんね……」
マユリアが重く口を開く。
「古い古い託宣がございました。マユリアの間にのみ伝わる千年前の託宣です」
「千年前!!」
聞いて使者が飛び上がる。
「ええ、そうです。シャンタルのお命にも関わる古い託宣です……その為に、シャンタルのお命を助けるためにみなを宮の外に出し、わたくしもお籠もりに入っていたのですが……」
そう言葉を途切らせる。
使者は一層のバツの悪さを感じた。
そんな大事なお籠りの時に、王のマユリアの不貞を疑うような、そんな不純な心からお籠りの邪魔をするように何度も足を運んだ。
(千年前の託宣など、そんな大事なことがあったなど知らなかったのだ!)
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