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しーちゃん

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母しーちゃんは、キレイな人だった。
私が生まれた頃には病気が悪化し、薬の副作用により容姿にも影響してしまったが、
私の記憶以前、新婚時代や姉を抱く母の写真は本当にキレイだ。
しーちゃんが発病したのは新婚当初らしく、いわゆる膠原病で不治の病だった。
姉が生まれた後も病の進行は進んでいて、私を産むことに反対する親戚もいたようだ。
このことを成長した私が知った時から、産まれてきたことに対する罪悪感を抱くことになる。

しーちゃんは会社勤めの祖父と主婦の祖母のもと昭和15年に生まれた。
兄1人弟妹の4人兄弟の長女だった。
性格は従順で優しい人だった。
母としてはとても厳しく、わがままは一切許してくれないような人だった。
私が成長し、少し社会というものを理解し始めた頃からだろうか、しーちゃんが
人に流されやすく、反発や反抗などを持ち合わせていないということが分かった。
しーちゃんとは過ごす時間も多く、色々な話をした。母と娘ならではだろう。

女学生時代は、あまり勉強も好きではなく、今でいう女子トークを楽しむような
女の子で、その時流行りの服装やメイクなどにも興味があったらしが、
祖母は厳しく、かなり自分を抑えて過ごしていたと話していたことがあった。
反抗もせず従順なしーちゃんは、両親に言われるがまま服飾専門学校に行き、
20歳には、親戚などの紹介もあり、よっちゃんとお見合い結婚をした。
なので、しーちゃんは社会人経験のないまま主婦そして母となった。
そんなしーちゃんが知っている母親像は祖母しかいなかったのだろう。
母として厳しく、愛情の注ぎ方をきっと知らなかったのだと思う。
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