捨てられ令嬢は笑う〜婚約破棄のその先で、本物の幸せを手に入れました〜

ノッポ

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婚約破棄

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 晴れやかな朝の王宮で、私は冷たい宣告を受けた。

「リリアーヌ・フォン・エルディア嬢、君との婚約を破棄する」

 王太子ジークフリート・フォン・ルーヴェルト殿下――私の婚約者だったその人は、冷然とした声でそう告げた。

 私は侯爵家の令嬢。父は王国でも五本の指に入る有力貴族で、王家とは代々深い縁を持っている。

 けれどそんな地位も、努力も、愛情も、彼の前では意味を持たなかったのだろう。

「……理由を、お聞かせいただけますか?」

 私は静かに問いかける。感情を抑え、ただ事実だけを知りたかった。

「君との結婚に将来性を感じなくなった。それに……」

 ジークはちらりと後ろを振り返った。そこには一人の少女が立っていた。淡い金髪を揺らし、緊張した面持ちでこちらを見ている。

「私は、セレナ・ヴィスコンティ嬢と新たに婚約することを決めた」

「……子爵家のご令嬢、ですね」

 微笑みあう二人を見た瞬間、心に氷の針が刺さったような痛みが走る。

「セレナ嬢は、私の理想の花嫁だ。身分よりも、心の通う相手と結ばれたい。だから――これでいいんだ」

 正当化するように語るジークに、私は何も言わなかった。

 かつての婚約は、政略の一環ではあった。だが、私は彼の隣にふさわしい女性になるために、学問も礼儀も武芸も、すべてを磨いてきた。誰よりも王太子妃としての責任を自覚し、努めてきた。

 それが、心の通う相手が別に見つかったから破棄、とは。

「……わかりました。では、正式な手続きを通して、婚約破棄の書状を届けてくださいませ」

「それだけでいいのか? 泣きもしないのか?」

 ジークの言葉に、私は微笑んだ。

「泣くほど、愚かではございません」

 私は一礼し、踵を返す。

 あの日、私の世界は終わった。

 けれど、同時に――

 新しい物語が、幕を開けたのだ。

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