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婚約破棄
しおりを挟む晴れやかな朝の王宮で、私は冷たい宣告を受けた。
「リリアーヌ・フォン・エルディア嬢、君との婚約を破棄する」
王太子ジークフリート・フォン・ルーヴェルト殿下――私の婚約者だったその人は、冷然とした声でそう告げた。
私は侯爵家の令嬢。父は王国でも五本の指に入る有力貴族で、王家とは代々深い縁を持っている。
けれどそんな地位も、努力も、愛情も、彼の前では意味を持たなかったのだろう。
「……理由を、お聞かせいただけますか?」
私は静かに問いかける。感情を抑え、ただ事実だけを知りたかった。
「君との結婚に将来性を感じなくなった。それに……」
ジークはちらりと後ろを振り返った。そこには一人の少女が立っていた。淡い金髪を揺らし、緊張した面持ちでこちらを見ている。
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「……子爵家のご令嬢、ですね」
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それが、心の通う相手が別に見つかったから破棄、とは。
「……わかりました。では、正式な手続きを通して、婚約破棄の書状を届けてくださいませ」
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ジークの言葉に、私は微笑んだ。
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あの日、私の世界は終わった。
けれど、同時に――
新しい物語が、幕を開けたのだ。
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