悪役令息(?)に転生したけど攻略対象のイケメンたちに××されるって嘘でしょ!?

望百千もち

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本編

32.教会

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あぁ···平穏だ。いや、両親の訃報があったのだから平穏というのはおかしいのかもしれないが俺の心はとても落ち着いている。


兄からの求婚があったその後も、兄貴と先輩は対立(?)することなく···まぁ多少のバチバチはあったにせよ、一度目のような凄まじい言い争いはせずに話し合いで落ち着いた。返事も俺が学園を卒業するまで待ってくれるらしい。 

一度目の兄貴はきっと焦ってたんだと思う。両親のことがあって、俺は悲しさを兄貴にぶつけるばかりで、兄貴はそんな俺を見て···もっと良い兄になろうとして、家の為と俺らの為って言って自分の気持ちが抑えられなくなって···。
俺だって兄貴の立場だったら、もっと自分がしっかりしなくちゃって焦ったと思う。
ま、それにしても着地点が強引過ぎた気もするけど。




·······あと5日か。今日入れたら6日···。
学園に登校した日であり、俺が会長に童貞を奪われた日であり、そして千秋に監禁されて·······死の宣告をされた日だ。
あれ?逆行したってことは俺ってまだ童貞?
ホッとしたようなしてないような······。うーむ、なんかスッキリしない。

それとコーネリアの言っていたステータスを見る方法だが·······どうやれば出来る?(怒)転生系小説でよく見た『ステータス魔法』や視界の端にステータスを見る項目があって···だとかそんな気配が全くない。···部屋で「ステータス!!」って叫んで見えなかった時の恥ずかしさと言ったら···っ。その日の夕食が俺の好物ばかりだったのは気のせいか?

本当はまだ一週間経ってないから、教会に足を運ぶのも気が引けるし不謹慎かもしれないけれど·······コーネリアの『プレゼント』が気になるし、異空間収納アイテムボックスって加護が本当に付与されたのかも気になる所だ。無事に転生出来たことの挨拶がてらそろそろ行ってみてもいいかも知れない。

兄と俺の関係が良い方向に進んだとはいえ、それは両親の死には関係ないと思う。·······恐らく今回も両親は一週間経っても帰ってこないだろう。




「律花···おはよう。起きてたんだね」

「あ、···兄貴······おはよ」

「ふふ、そんな顔しないで。何もしないから」



そうは言ってもな···。
兄貴は俺に結婚迫ってる訳だぞ?警戒しない訳が無い。 
そんな俺の様子など気にも止めず思わず身構えた俺の頭を撫でる兄。
ここ2、3日こんな朝を繰り返している俺たちだ。
何もしないって俺の頭撫でてるじゃないか!


「今日は父さんの仕事の引き継ぎで商会まで行くのだけど···律花もどうかな?僕の方は直ぐには終わらないけど、あの辺りは公園があったよね。気分転換に散歩でもして来たらどうかなって」

「商会?」

「うん、近くに教会がある所···分かるかな?」


近くに教会がある商会って言ったら·······あそこしかないな。
カーカッカッって笑い声が脳裏に浮かんだ。······オディロックバーンギルド、ギルドマスターのエイド・権藤田の生家、権藤田商会。
ゲームじゃ、ギルド内ショップで売買する度に『権藤田商会も宜しくなァ』ってきっちり宣伝してたのを覚えてる。品揃えも悪くなくて重宝してたし······じゃなくて!


「行く!!」

「ふふ、分かった。じゃあ準備してて」


商会と教会は目と鼻の先だし、兄貴の用事もそんな短く終わる話じゃないだろう。父さんの仕事ってことは兄貴が引き継ぐ可能性もあるんだろうし···。
散歩次いでに教会に行って······希望は薄いかもしれないが父さんと母さんの無事を祈って·······。その次いでにスイレンに今俺が出来ることを聞きに行こう。本当に無力すぎて笑えるな······。けど、それしか方法がない。

不知火さんはこの一週間実家に帰って貰っている。ずっと俺に張り付きっぱなしってのも大変だし、一応不知火さんは二部生だ。俺ばかりに付き合わせるのは申し訳ない。ま、なんか『影』ってのを付けるとかなんとか言ってたけど···多分追跡魔法の類じゃないかな、と思う。それで影に異変があれば俺に何かあったってことだから、直ぐに駆けつけてくれるってことになってる。
···魔法式覚えるの苦手なんだよ······!

···実は授業中とかは大体影ってのを付けられてたらしい。本当色々やってくれててビックリした。従者って大変なんだな······。






俺の準備が終わる頃に丁度兄貴が迎えに来た。
···何故か兄貴にエスコートされて馬車に乗り込む。気づいたら手を引かれてたし、馬車に乗り込んだ瞬間にあれ?俺、エスコートされてない?って気がついたね。やる事なす事スマート過ぎないか?

·······ブラコンが無ければ完璧なのに。







「じゃあ、終わったら僕も公園に向うね。何かあれば連絡して」

「分かった。兄貴も何かあったら連絡してくれよ」

「···うん。ありがとう」


はにかむ様に笑う兄貴。
何だろう······嬉しそうって言えばいいのか、見てるこっちが恥ずかしくなってくるって言うか·······。うーん、普通にしてれば本当に良い兄貴なのにな。

執拗くないし、自分の意見を押し付けてこないし···と言うか優しいし、穏やかだし、俺は今の兄貴の方が好きだな。まぁ甘えるのも悪くは無かったけど、心で支え合うって感じ?の今みたいな方がやっぱいい。


兄貴と商会の馬車置き場で別れて、俺は教会と公園へ繋がる遊歩道を歩いていく。自然が多いからか空気も澄んでて、整備された道は結構広い。

少し奥に行ったところが教会で、さらにその奥が公園。
昔は両親と兄貴と俺の四人でよく散歩に来てた。広い芝生があって、野生のスライムが沢山いて···人馴れしてたし攻撃力はないから可愛くてペットにするって駄々捏ねたこともあったなぁ···。





「···そう言えば一人で教会来るのは初めてだな」


白を基調とした大きな建物の前でそう呟く。
聖蓮教会······ディアルタリカの国教である聖蓮教の教会だ。

他には細々とした宗教が色々あるけど、聖蓮教はこの世に正しい神は存在しないと言うことを説く。その意味はどの宗教の神も神で、その人にとっての信心する神であるからどの神も等しく正しく、同時に唯一正しい神は存在しない···差別なく皆が信じる神を信仰しようと言う教えだと聞いたことがある。所謂多神教と似た宗教だ。

俺自身、宗教とかよく分からないけど国教だからとりあえず属してるって感じで特に宗教の縛りもないので地球上にあったどの宗教よりもかなり緩いと思う。
まぁ、魔法がある世界だから神よりも自分の実力を信じる人の方が多いのかもしれない。それでも困った時や苦しい時の神頼みと言うか、それとは別で心の底から拠り所にしている人もいない訳じゃない。



中央の噴水······多分、霧ヶ谷さんの言ってた酔い止めのレシピにあった材料の一つ、レイシアの霊泉水はきっとあれだろう。


色様々な花の咲き乱れる庭もキラキラと光っていて凄く綺麗だ。



「おやぁ~。これはこれは美園律花様ではございませぬか」


·······げ。


「いやぁ、お久しゅう御座います。この度は御当主であらせられる焔殿と奥方様の件···大変心苦しく······丁度私共もお二人のご無事をお祈り申し上げようとこちらに──」

「律花くん、お久しぶりだね。また一段と可愛くなってるね~」


会いたくもない奴らにあってしまった。
顔、豆大福。体、大福。中身はきっと砂糖ざらざらの粒あんだ。


「この小豆あずき 大福だいふく、律花様のお嘆き致す所直ぐに駆け付けましたものを···報せを受けるのが遅くなり、痛恨の極みに──」


名前も豆大福と似たようなもんなのに·····っ。
コイツらは爵位で言うと男爵家の小豆家当主···さっき自分で名乗ってたしいっか。それとその息子の小豆あずき 団吾だんご·······俺の元・ストーカーだ。以前、色々あって兄貴と楼透が俺の為に駆け回ってくれて同じ伯爵位だったコイツらは男爵にまで降格した。
······と言うのに、まだ懲りてないのか···。


「以前の律花様への非礼をお詫びしたく、本日律花様と偶然このような場所でお会い出来るとは思ってもおりませんでした···きっと焔殿···いや焔様と奥方様が我々を導いて下さったんでしょうなぁ···なぁ?団吾」

「そうとしか思えないね、父さん。律花くんと僕はやっぱり結ばれる運命なんだね」


·······気色悪っ。
げへげへ笑うその姿にはもう嫌悪しか抱かない。
よくもまぁ、人の両親を既に亡くなったものとして扱えるのか、非礼?今やってる事は一体なんだって言うんだ?もう同等の爵位でないというのにここまで軽々しく俺に声をかけられたのか···ここで兄貴がいたら──。

駄目だ。兄貴にばっか頼ってられない。


「律花くん······久しぶりに会えたんだし、ここじゃなんだし···良かったらお茶しようよぉ。ケーキもあるよぉ···げへへ」

「ヒッ······」


グッと腕を引かれた。
うう·······振りほどけない。非力にも程がある、気持ち悪いのに逃げ出したいのに足が震えて怖ばって動かなくなる。
耳元で生臭い息が吐かれる。げへげへという下品な笑い声とだらりと伸びた鼻の下が同じ男として有り得ない。と言うか生理的に無理!!

ウチの兄貴だって変態だけどもっと品があるわ!!
···うぅ、どうしよ、兄貴ぃ···。





「そこで何をしている」


「っ!?······あぁ、なんだ。依代様ではないか···私たちは旧知の仲でしてこれからお茶にとお誘い申し上げていたんですよ」

「···ほう。お前らの常識では誘う相手の腕を掴んで、無理矢理連れて行こうとする誘い方が正しいんだな···なら俺がお前らを茶に誘ってやろうか?」


「ひ、ひぃいぃっ」
「り、律花くんまた今度!!」



あれ?もう行った·······?
恐る恐る目を開けるともうそこにはさっきの二人はいない。

ほっ·······。

良かった·······。俺はその場にへなへなとへたりこんだ。





「···おい、仕事の邪魔だ」

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