77 / 86
本編
74.大罪なる遊戯
しおりを挟む
♢ ♢ ♢
『スイ兄様ぁ!!ついに完成しましたぁあ!!』
『リアちゃん待ってっ、落ち着いてっ』
そう叫びながら···そう、大きな声でと言うよりも叫びながらと言う方が表現として適切だろう様子でこちらへ駆けてくるのは私の妹······と、その後ろからは妹の幼馴染が暴走する妹を止めるべく慌てて駆けてきた。二人の様子に思わず笑みが漏れる。
『もう!スイ兄様は何を笑うのですか!』
『ごめんね。つい···っ』
『あ、スイ様こんにちわ···あの···』
『ソーヤ、いつも妹の事を有難う。兄なら今は祈りの聖湖で瞑想中です。そろそろ終わるとは思うのですが···』
『あっ···えっと···大丈夫です!エモギ様にはまたの機会に──』
我儘で我の強い所もありますが私を兄と慕ってくれる可愛らしい妹です。勿論それ故に何度叱ったことかも覚えていませんが······。そんな妹にも見切りをつけず友人として傍にいてくれているソーヤには本当に頭が上がりません。この時は本当に平和な日々でした······──そうあの時がくるまでは。
『なぁ、スイ』
『どうしました?』
『リアがまた天才的な発明をしたんだ!』
『······また天に穴を開けて個室を造るなんて他神の領界を侵すと言うような発明ではないでしょうね?』
『······あー、領界は侵してない···な?』
『領界は···つまり?』
『んー······ギリギリ領域内』
『巫山戯てますか?』
領界はその神が統べる領土のようなもの。前回の発明では簡単に言ってしまえば他人の部屋の壁に穴を開けて開いた穴に自分の部屋を造った。ただその領界は妹の幼馴染の領界であり、その幼馴染も興味本位に穴を開けることに了解したということもあり事なきを得たが······領域はその神の能力···その神が担う特技のようなもの。神に誰一人として同じ能力を持つものはいないが確かに似た能力を持つ神もいる。例えるなら火と炎。似たようで大きさの意味合い違う···だから火は火、炎は炎と位置付けているにも関わらず、火が炎を司るようになれば炎の神はお払い箱になってしまう。だから互いに他神の領域を侵してはならないという暗黙の了解があると言うのにあの子は······!!
私は今だ事の重大さを分かっていない兄を睨みつけると背を向けて飛び出す。あの妹が私達の他に見せびらかす前に阻止しなくては······!!
『あっ!スイ兄様ぁ!』
私の姿を目に止めると無邪気な笑顔が花開いた、が直ぐに笑顔は消えた。妹が逃げ出すよりも先にその首根っこを捕まえた私。逃げ出そうとした所を見るとコーネリア自身何が原因で私が怒っているのかも理解しているのでしょう。
『······で?』
『ごめんなさぁぁあああいぃぃっ!!』
その場で正座した妹。今回の発明について問いただした私の顔色は恐らく青を通り越して無色になっていのではないかと思うほど血の気が感じられない。何故なら今回については私でさえ庇いきれないものであったから······。
『リア···分かっているのですか?それは主神様の領域でしょう』
兄エモギはギリギリ領域内だと言っていましたがコーネリアの腕に抱かれたそれはギリギリも何もガッツリ領域内です。しかもよりによって私たち神の中で一番高い地位に座し、主神の領域領界を侵すことは絶対なタブーであり禁忌·······何故兄や妹が笑っていられるのか私には理解出来ない。
『でもねでもね、私も創ってみたかったの!出来ないはずなのになんでか出来ちゃったの!具現化は出来なかったけど、箱とか本とかを媒体にしたら出来ちゃった······てへ』
てへでは済まされない事をしたと言うのに全く焦る様子も見せずに妹は腕の中の書物を大切そうに抱き締め鼻歌を歌っている。
『この事を知っているのは?』
『まだ兄様たちにしか言ってません』
その返答に安堵していいものか。既に起こしてしまった事はもうどうしようもない···。天才肌で興味を持ったものには一直線な妹には昔から手を焼いていましたが禁忌にさえも恐れず手を出してしまうとは···。
『そうでした!スイ兄様!』
『······今度はなんですか?』
『これからソーヤとこの箱庭で遊ぶ約束をしていたのでした!行ってきま──』
『待ちなさい』
改めて問い詰めると私たち兄弟の他に、幼馴染であるソーヤにも話をしていたらしい。私たち兄弟になら兎も角、ソーヤは私たちの幼馴染と言うだけでなくあまり関わりがないと言えど主神様の末弟でもある。私は今すぐ消えたくなった。
『その······つい僕も見てみたいって言ってしまったんです』
『ソーヤもちょこっとだけ手伝ってくれたんだよね!ほとんどリアが創ったけど!ソーヤもちょこっとだけ!えへへー』
『主神様への了解は?』
『ない!』
『···ない、です』
『貴方達は禁忌を犯した自覚が無いのですか?』
『まぁまぁまぁ』
『···ごめんなさい』
怒る私を宥める兄と当の本人より申し訳なさそうに謝る妹の幼馴染、これから受ける罰への恐れよりも初めて遊ぶゲームへの期待値の方が高い妹。これが禁忌でなくとも私たちの関係はいつもこうでした。
『スイレン』
兄エモギはニヤリと笑うと続けて言った。
『創ってしまったものは無かったことには出来ないだろう?どうせ罰を受けることになるなら、少し遊んでからでも構わないだろうさ』
今思えばその時皆を止めていれば、正しく罰を受けていれば、犠牲を出すこともあの悲劇が起こることもなかったでしょう。私は妹が犯した禁忌をその場は見なかったことにした······そしてその罪が暴かれるまで隠すことにしてしまった······。
手を加えることなく勝手に綴られていく不思議なその箱庭の物語にいつしか私たちは魅了されていたのでしょう。そこには私たちとは別の世界がありました。
まだ出来たばかりのその世界は不安定で私達が入りこむことは出来なかったが、見るだけでも充分だった。そのうち、一定の条件であれば手を加えることが出来ることを知り···この箱庭の世界に入ることが出来るのではないかと期待した。
そして事は起きた。
『スイ兄様!!』
『そんなに慌ててどうし──』
『エモギ兄様が······っ!!』
兄がその箱庭に入ったきり戻ってこないと言う。
私も直ぐにその場へ向かった。
開かれた本のページへ叫び続けるソーヤ、コーネリアも一緒に覗き込んで時折声をかける。だが、兄エモギからの返事は一向になかった。······本当にこの箱庭に入ったのか?入った振りをして何処かに隠れているのでは···と、そう思いたかった。けれど二人で一つの神として生まれた私にはその箱庭の中にエモギがいることを本能的に感じていた。
それから何度もエモギを神界へ戻そうと手を尽くした。箱庭に入ることが出来たのはエモギが入った時ただ一度のみで、それ以降私達の誰も入ることは出来なかった···。
主神様に知られてしまえば私達は相応の罰を受け、罰の内容によっては神としての権能を剥奪されてしまう可能性もある。しかし下手にその箱庭の世界へ干渉してしまえば中にいるエモギだけでなく、この神界にも影響してしまうかもしれない···。限られた時間の中で私はいっそ不安定なこの箱庭の世界を封印してしまうという選択も考えていた。
『······エモギ様』
その時私は彼の異変に気づいていなかった。
そして主神様に知られてしまった。
主神様の領域を侵した罰として、私にはコーネリアの創ったその世界の神として降ることになった。正確には神としてその世界に君臨することになった訳ではなく、主神様によって神界と箱庭を繋ぐ中継空間に最低限の安全を確保された空間で箱庭の物語を監視し続けることだ。コーネリアには地球の神の一人として“縁”を司ること······所謂左遷と言えば言葉はいいかもしれないが事実上神界から降ることになったのは相違ない。ソーヤは主神様の末弟ということもあり期限付きで軟禁となった。その期限がいつまでになるのかは主神様の気まぐれでいつになるかは定かではない。勿論私達も主神様や他の神々に所用で神界へ呼ばれた時以外は戻ってきてはならない。主神様の許しが出るその時まで······。そしてエモギには私達を含め全ての神がエモギを神界へと戻す手助けをしてはいけないという罰が下った。
そしてあの日は私とコーネリアが発つ前日だった。私もコーネリアも神界から離れてしまうこと、ソーヤも外へ出られない状況から私達は兄エモギの在る箱庭を封印することに決めた。いや、封印というよりは主神様以外の他の神の手の届かない場所へ···悪戯に触れられない場所で管理されることになった。
主神様の創った世界と違い、コーネリアの創ったものは外殻がある分不安定で外側から刺激を受ければ中にいるエモギは勿論、中継空間にいる私さえも危うくなってしまう。既に主神様の了解は得て、今後の外殻の維持と補強は主神様が担って下さることになっている。
『ははっこれを機にキミ達は反省したまえ?他の神サマたちの面子もあるから減罰出来なかったけど意外とボクはキミ達兄妹に期待してるんだからネぇ?』
そう言って私達の肩を軽く叩くと、私が差し出したコーネリアの箱庭を主神様が受け取ろうとした時だった。閃光が私達の間を割いた。手の中から箱庭の媒体である書物が消え主神様の手は空を掴んだ。
『···そんなことさせない』
その閃光の主はソーヤだった。暫く見ぬうちに頬が痩せこけ、目の下には隈が唇からは血が滲んでいる。そして以前のソーヤとは明らかに違う暗い闇を帯びた瞳がこちらを見据えた。
『ソーヤぁ···お前魔神と契約したか?』
『魔神!?』
神であって神ならざるもの。そして神が聖なる存在であるなら、魔神は暗く邪悪なる存在。両者の力の対比は等しくその存在が生まれてから今まで互いが互いに不干渉を貫いていた。
と、言うのに。
『誰もくれなかったモノをあの人が先に···あの人が僕にくれたのに······』
『僕からエモギ様を奪ったのはリアちゃん···君だ。···君のせいだ』
そう言い残すとソーヤの体は闇に包まれた。
その日、神界では魔神の力に堕ちたソーヤによって七つの領界が破壊された。私の領界の一つであった漆天族の浮遊島も破壊された領界もその一つ。
そして終結は主神様がソーヤを討った事で終わった筈でしたが······。
♢ ♢ ♢
『そして私は貴方と出会った···』
『ソーヤの暴走後、媒介となる箱庭をソーヤから取り返した主神様はディアルタリカを世界として安定させました。しかし神の力を持つ私達では媒介も無しに自由に地上へ足をつけることは出来なかった為···私は天族でありながらも神の権能を持たない幼かった貴方を私の使者として送り込み利用したのです』
『私は憎まれど、貴方に慕われるような者ではないのですよ。私がもっと早く二人の関係に気づいていれば······貴方も貴方と同様にこの世界に降り立った者も巻き込まずに済んだというのに』
✻✻✻✻✻
『スイ兄様ぁ!!ついに完成しましたぁあ!!』
『リアちゃん待ってっ、落ち着いてっ』
そう叫びながら···そう、大きな声でと言うよりも叫びながらと言う方が表現として適切だろう様子でこちらへ駆けてくるのは私の妹······と、その後ろからは妹の幼馴染が暴走する妹を止めるべく慌てて駆けてきた。二人の様子に思わず笑みが漏れる。
『もう!スイ兄様は何を笑うのですか!』
『ごめんね。つい···っ』
『あ、スイ様こんにちわ···あの···』
『ソーヤ、いつも妹の事を有難う。兄なら今は祈りの聖湖で瞑想中です。そろそろ終わるとは思うのですが···』
『あっ···えっと···大丈夫です!エモギ様にはまたの機会に──』
我儘で我の強い所もありますが私を兄と慕ってくれる可愛らしい妹です。勿論それ故に何度叱ったことかも覚えていませんが······。そんな妹にも見切りをつけず友人として傍にいてくれているソーヤには本当に頭が上がりません。この時は本当に平和な日々でした······──そうあの時がくるまでは。
『なぁ、スイ』
『どうしました?』
『リアがまた天才的な発明をしたんだ!』
『······また天に穴を開けて個室を造るなんて他神の領界を侵すと言うような発明ではないでしょうね?』
『······あー、領界は侵してない···な?』
『領界は···つまり?』
『んー······ギリギリ領域内』
『巫山戯てますか?』
領界はその神が統べる領土のようなもの。前回の発明では簡単に言ってしまえば他人の部屋の壁に穴を開けて開いた穴に自分の部屋を造った。ただその領界は妹の幼馴染の領界であり、その幼馴染も興味本位に穴を開けることに了解したということもあり事なきを得たが······領域はその神の能力···その神が担う特技のようなもの。神に誰一人として同じ能力を持つものはいないが確かに似た能力を持つ神もいる。例えるなら火と炎。似たようで大きさの意味合い違う···だから火は火、炎は炎と位置付けているにも関わらず、火が炎を司るようになれば炎の神はお払い箱になってしまう。だから互いに他神の領域を侵してはならないという暗黙の了解があると言うのにあの子は······!!
私は今だ事の重大さを分かっていない兄を睨みつけると背を向けて飛び出す。あの妹が私達の他に見せびらかす前に阻止しなくては······!!
『あっ!スイ兄様ぁ!』
私の姿を目に止めると無邪気な笑顔が花開いた、が直ぐに笑顔は消えた。妹が逃げ出すよりも先にその首根っこを捕まえた私。逃げ出そうとした所を見るとコーネリア自身何が原因で私が怒っているのかも理解しているのでしょう。
『······で?』
『ごめんなさぁぁあああいぃぃっ!!』
その場で正座した妹。今回の発明について問いただした私の顔色は恐らく青を通り越して無色になっていのではないかと思うほど血の気が感じられない。何故なら今回については私でさえ庇いきれないものであったから······。
『リア···分かっているのですか?それは主神様の領域でしょう』
兄エモギはギリギリ領域内だと言っていましたがコーネリアの腕に抱かれたそれはギリギリも何もガッツリ領域内です。しかもよりによって私たち神の中で一番高い地位に座し、主神の領域領界を侵すことは絶対なタブーであり禁忌·······何故兄や妹が笑っていられるのか私には理解出来ない。
『でもねでもね、私も創ってみたかったの!出来ないはずなのになんでか出来ちゃったの!具現化は出来なかったけど、箱とか本とかを媒体にしたら出来ちゃった······てへ』
てへでは済まされない事をしたと言うのに全く焦る様子も見せずに妹は腕の中の書物を大切そうに抱き締め鼻歌を歌っている。
『この事を知っているのは?』
『まだ兄様たちにしか言ってません』
その返答に安堵していいものか。既に起こしてしまった事はもうどうしようもない···。天才肌で興味を持ったものには一直線な妹には昔から手を焼いていましたが禁忌にさえも恐れず手を出してしまうとは···。
『そうでした!スイ兄様!』
『······今度はなんですか?』
『これからソーヤとこの箱庭で遊ぶ約束をしていたのでした!行ってきま──』
『待ちなさい』
改めて問い詰めると私たち兄弟の他に、幼馴染であるソーヤにも話をしていたらしい。私たち兄弟になら兎も角、ソーヤは私たちの幼馴染と言うだけでなくあまり関わりがないと言えど主神様の末弟でもある。私は今すぐ消えたくなった。
『その······つい僕も見てみたいって言ってしまったんです』
『ソーヤもちょこっとだけ手伝ってくれたんだよね!ほとんどリアが創ったけど!ソーヤもちょこっとだけ!えへへー』
『主神様への了解は?』
『ない!』
『···ない、です』
『貴方達は禁忌を犯した自覚が無いのですか?』
『まぁまぁまぁ』
『···ごめんなさい』
怒る私を宥める兄と当の本人より申し訳なさそうに謝る妹の幼馴染、これから受ける罰への恐れよりも初めて遊ぶゲームへの期待値の方が高い妹。これが禁忌でなくとも私たちの関係はいつもこうでした。
『スイレン』
兄エモギはニヤリと笑うと続けて言った。
『創ってしまったものは無かったことには出来ないだろう?どうせ罰を受けることになるなら、少し遊んでからでも構わないだろうさ』
今思えばその時皆を止めていれば、正しく罰を受けていれば、犠牲を出すこともあの悲劇が起こることもなかったでしょう。私は妹が犯した禁忌をその場は見なかったことにした······そしてその罪が暴かれるまで隠すことにしてしまった······。
手を加えることなく勝手に綴られていく不思議なその箱庭の物語にいつしか私たちは魅了されていたのでしょう。そこには私たちとは別の世界がありました。
まだ出来たばかりのその世界は不安定で私達が入りこむことは出来なかったが、見るだけでも充分だった。そのうち、一定の条件であれば手を加えることが出来ることを知り···この箱庭の世界に入ることが出来るのではないかと期待した。
そして事は起きた。
『スイ兄様!!』
『そんなに慌ててどうし──』
『エモギ兄様が······っ!!』
兄がその箱庭に入ったきり戻ってこないと言う。
私も直ぐにその場へ向かった。
開かれた本のページへ叫び続けるソーヤ、コーネリアも一緒に覗き込んで時折声をかける。だが、兄エモギからの返事は一向になかった。······本当にこの箱庭に入ったのか?入った振りをして何処かに隠れているのでは···と、そう思いたかった。けれど二人で一つの神として生まれた私にはその箱庭の中にエモギがいることを本能的に感じていた。
それから何度もエモギを神界へ戻そうと手を尽くした。箱庭に入ることが出来たのはエモギが入った時ただ一度のみで、それ以降私達の誰も入ることは出来なかった···。
主神様に知られてしまえば私達は相応の罰を受け、罰の内容によっては神としての権能を剥奪されてしまう可能性もある。しかし下手にその箱庭の世界へ干渉してしまえば中にいるエモギだけでなく、この神界にも影響してしまうかもしれない···。限られた時間の中で私はいっそ不安定なこの箱庭の世界を封印してしまうという選択も考えていた。
『······エモギ様』
その時私は彼の異変に気づいていなかった。
そして主神様に知られてしまった。
主神様の領域を侵した罰として、私にはコーネリアの創ったその世界の神として降ることになった。正確には神としてその世界に君臨することになった訳ではなく、主神様によって神界と箱庭を繋ぐ中継空間に最低限の安全を確保された空間で箱庭の物語を監視し続けることだ。コーネリアには地球の神の一人として“縁”を司ること······所謂左遷と言えば言葉はいいかもしれないが事実上神界から降ることになったのは相違ない。ソーヤは主神様の末弟ということもあり期限付きで軟禁となった。その期限がいつまでになるのかは主神様の気まぐれでいつになるかは定かではない。勿論私達も主神様や他の神々に所用で神界へ呼ばれた時以外は戻ってきてはならない。主神様の許しが出るその時まで······。そしてエモギには私達を含め全ての神がエモギを神界へと戻す手助けをしてはいけないという罰が下った。
そしてあの日は私とコーネリアが発つ前日だった。私もコーネリアも神界から離れてしまうこと、ソーヤも外へ出られない状況から私達は兄エモギの在る箱庭を封印することに決めた。いや、封印というよりは主神様以外の他の神の手の届かない場所へ···悪戯に触れられない場所で管理されることになった。
主神様の創った世界と違い、コーネリアの創ったものは外殻がある分不安定で外側から刺激を受ければ中にいるエモギは勿論、中継空間にいる私さえも危うくなってしまう。既に主神様の了解は得て、今後の外殻の維持と補強は主神様が担って下さることになっている。
『ははっこれを機にキミ達は反省したまえ?他の神サマたちの面子もあるから減罰出来なかったけど意外とボクはキミ達兄妹に期待してるんだからネぇ?』
そう言って私達の肩を軽く叩くと、私が差し出したコーネリアの箱庭を主神様が受け取ろうとした時だった。閃光が私達の間を割いた。手の中から箱庭の媒体である書物が消え主神様の手は空を掴んだ。
『···そんなことさせない』
その閃光の主はソーヤだった。暫く見ぬうちに頬が痩せこけ、目の下には隈が唇からは血が滲んでいる。そして以前のソーヤとは明らかに違う暗い闇を帯びた瞳がこちらを見据えた。
『ソーヤぁ···お前魔神と契約したか?』
『魔神!?』
神であって神ならざるもの。そして神が聖なる存在であるなら、魔神は暗く邪悪なる存在。両者の力の対比は等しくその存在が生まれてから今まで互いが互いに不干渉を貫いていた。
と、言うのに。
『誰もくれなかったモノをあの人が先に···あの人が僕にくれたのに······』
『僕からエモギ様を奪ったのはリアちゃん···君だ。···君のせいだ』
そう言い残すとソーヤの体は闇に包まれた。
その日、神界では魔神の力に堕ちたソーヤによって七つの領界が破壊された。私の領界の一つであった漆天族の浮遊島も破壊された領界もその一つ。
そして終結は主神様がソーヤを討った事で終わった筈でしたが······。
♢ ♢ ♢
『そして私は貴方と出会った···』
『ソーヤの暴走後、媒介となる箱庭をソーヤから取り返した主神様はディアルタリカを世界として安定させました。しかし神の力を持つ私達では媒介も無しに自由に地上へ足をつけることは出来なかった為···私は天族でありながらも神の権能を持たない幼かった貴方を私の使者として送り込み利用したのです』
『私は憎まれど、貴方に慕われるような者ではないのですよ。私がもっと早く二人の関係に気づいていれば······貴方も貴方と同様にこの世界に降り立った者も巻き込まずに済んだというのに』
✻✻✻✻✻
30
あなたにおすすめの小説
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新!
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新!
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている
迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。
読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)
魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。
ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。
それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。
それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。
勘弁してほしい。
僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。
有能すぎる親友の隣が辛いので、平凡男爵令息の僕は消えたいと思います
緑虫
BL
第三王子の十歳の生誕パーティーで、王子に気に入られないようお城の花園に避難した、貧乏男爵令息のルカ・グリューベル。
知り合った宮廷庭師から、『ネムリバナ』という水に浮かべるとよく寝られる香りを放つ花びらをもらう。
花園からの帰り道、噴水で泣いている少年に遭遇。目の下に酷いクマのある少年を慰めたルカは、もらったばかりの花びらを男の子に渡して立ち去った。
十二歳になり、ルカは寄宿学校に入学する。
寮の同室になった子は、まさかのその時の男の子、アルフレート(アリ)・ユーネル侯爵令息だった。
見目麗しく文武両道のアリ。だが二年前と変わらず睡眠障害を抱えていて、目の下のクマは健在。
宮廷庭師と親交を続けていたルカには、『ネムリバナ』を第三王子の為に学校の温室で育てる役割を与えられていた。アリは花びらを王子の元まで運ぶ役目を負っている。育てる見返りに少量の花びらを入手できるようになったルカは、早速アリに使ってみることに。
やがて問題なく眠れるようになったアリはめきめきと頭角を表し、しがない男爵令息にすぎない平凡なルカには手の届かない存在になっていく。
次第にアリに対する恋心に気づくルカ。だが、男の自分はアリとは不釣り合いだと、卒業を機に離れることを決意する。
アリを見ない為に地方に移ったルカ。実はここは、アリの叔父が経営する領地。そこでたった半年の間に朗らかで輝いていたアリの変わり果てた姿を見てしまい――。
ハイスペ不眠攻めxお人好し平凡受けのファンタジーBLです。ハピエン。
俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード
中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。
目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。
しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。
転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。
だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。
そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。
弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。
そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。
颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。
「お前といると、楽だ」
次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。
「お前、俺から逃げるな」
颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。
転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。
これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。
続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』
かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、
転生した高校時代を経て、無事に大学生になった――
恋人である藤崎颯斗と共に。
だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。
「付き合ってるけど、誰にも言っていない」
その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。
モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、
そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。
甘えたくても甘えられない――
そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。
過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの
じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。
今度こそ、言葉にする。
「好きだよ」って、ちゃんと。
穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜
春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、
癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!?
トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。
彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!?
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて――
運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない!
恋愛感情もまだわからない!
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。
個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!?
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする
愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ!
月、水、金、日曜日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新)
基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!
王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は未定
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い
・本格的に嫌われ始めるのは2章から
異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!
めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈
社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。
もらった能力は“全言語理解”と“回復力”!
……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈
キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん!
出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。
最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈
攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉
--------------------
※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる