悪役令息(?)に転生したけど攻略対象のイケメンたちに××されるって嘘でしょ!?

望百千もち

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本編

74.大罪なる遊戯

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          ♢     ♢     ♢

『スイ兄様ぁ!!ついに完成しましたぁあ!!』

『リアちゃん待ってっ、落ち着いてっ』


 そう叫びながら···そう、大きな声でと言うよりも叫びながらと言う方が表現として適切だろう様子でこちらへ駆けてくるのは私の妹······と、その後ろからは妹の幼馴染が暴走する妹を止めるべく慌てて駆けてきた。二人の様子に思わず笑みが漏れる。


『もう!スイ兄様は何を笑うのですか!』

『ごめんね。つい···っ』

『あ、スイ様こんにちわ···あの···』

『ソーヤ、いつも妹の事を有難う。兄なら今は祈りの聖湖で瞑想中です。そろそろ終わるとは思うのですが···』

『あっ···えっと···大丈夫です!エモギ様にはまたの機会に──』



 我儘で我の強い所もありますが私を兄と慕ってくれる可愛らしい妹です。勿論それ故に何度叱ったことかも覚えていませんが······。そんな妹にも見切りをつけず友人として傍にいてくれているソーヤには本当に頭が上がりません。この時は本当に平和な日々でした······──そうあの時がくるまでは。



『なぁ、スイ』
『どうしました?』
『リアがまた天才的な発明をしたんだ!』
『······またソラに穴を開けて個室を造るなんて他神の領界を侵すと言うようなではないでしょうね?』
『······あー、領界は侵してない···な?』
は···つまり?』
『んー······ギリギリ領域内』
『巫山戯てますか?』


 領界はその神が統べる領土のようなもの。前回の発明では簡単に言ってしまえば他人の部屋の壁に穴を開けて開いた穴に自分の部屋を造った。ただその領界は妹の幼馴染の領界であり、その幼馴染も興味本位に穴を開けることに了解したということもあり事なきを得たが······領域はその神の能力···その神が担う特技のようなもの。神に誰一人として同じ能力を持つものはいないが確かに似た能力を持つ神もいる。例えるなら火と炎。似たようで大きさの意味合い違う···だから火は火、炎は炎と位置付けているにも関わらず、火が炎を司るようになれば炎の神はお払い箱になってしまう。だから互いに他神の領域を侵してはならないという暗黙の了解があると言うのにあの子は······!!

 私は今だ事の重大さを分かっていないを睨みつけると背を向けて飛び出す。あの妹が私達の他に見せびらかす前に阻止しなくては······!!


『あっ!スイ兄様ぁ!』


 私の姿を目に止めると無邪気な笑顔が花開いた、が直ぐに笑顔は消えた。妹が逃げ出すよりも先にその首根っこを捕まえた私。逃げ出そうとした所を見るとコーネリア自身何が原因で私が怒っているのかも理解しているのでしょう。


『······で?』
『ごめんなさぁぁあああいぃぃっ!!』







 その場で正座した妹。今回の発明について問いただした私の顔色は恐らく青を通り越して無色になっていのではないかと思うほど血の気が感じられない。何故なら今回については私でさえ庇いきれないものであったから······。

『リア···分かっているのですか?それは主神様の領域でしょう』

 兄エモギはギリギリ領域内だと言っていましたがコーネリアの腕に抱かれたそれはギリギリも何もガッツリ領域内です。しかもよりによって私たち神の中で一番高い地位に座し、主神の領域領界を侵すことは絶対なタブーであり禁忌·······何故兄や妹が笑っていられるのか私には理解出来ない。

『でもねでもね、私も創ってみたかったの!出来ないはずなのになんでか出来ちゃったの!具現化は出来なかったけど、箱とか本とかを媒体にしたら出来ちゃった······てへ』

 てへでは済まされない事をしたと言うのに全く焦る様子も見せずに妹は腕の中の書物を大切そうに抱き締め鼻歌を歌っている。

『この事を知っているのは?』
『まだ兄様たちにしか言ってません』

 その返答に安堵していいものか。既に起こしてしまった事はもうどうしようもない···。天才肌で興味を持ったものには一直線な妹には昔から手を焼いていましたが禁忌にさえも恐れず手を出してしまうとは···。

『そうでした!スイ兄様!』
『······今度はなんですか?』
『これからソーヤとこの箱庭で遊ぶ約束をしていたのでした!行ってきま──』
『待ちなさい』




 改めて問い詰めると私たち兄弟の他に、幼馴染であるソーヤにも話をしていたらしい。私たち兄弟になら兎も角、ソーヤは私たちの幼馴染と言うだけでなくあまり関わりがないと言えど主神様の末弟でもある。私は今すぐ消えたくなった。



『その······つい僕も見てみたいって言ってしまったんです』

『ソーヤもちょこっとだけ手伝ってくれたんだよね!ほとんどリアが創ったけど!ソーヤもちょこっとだけ!えへへー』

『主神様への了解は?』

『ない!』

『···ない、です』

『貴方達は禁忌を犯した自覚が無いのですか?』

『まぁまぁまぁ』

『···ごめんなさい』


 怒る私を宥める兄と当の本人より申し訳なさそうに謝る妹の幼馴染、これから受ける罰への恐れよりも初めて遊ぶゲームへの期待値の方が高い妹。これが禁忌でなくとも私たちの関係はいつもこうでした。


『スイレン』


 兄エモギはニヤリと笑うと続けて言った。


『創ってしまったものは無かったことには出来ないだろう?どうせ罰を受けることになるなら、少し遊んでからでも構わないだろうさ』





 今思えばその時皆を止めていれば、正しく罰を受けていれば、犠牲を出すこともあの悲劇が起こることもなかったでしょう。私は妹が犯した禁忌をその場は見なかったことにした······そしてその罪が暴かれるまで隠すことにしてしまった······。

 手を加えることなく勝手に綴られていく不思議なその箱庭の物語にいつしか私たちは魅了されていたのでしょう。そこには私たちとは別の世界がありました。

 まだ出来たばかりのその世界は不安定で私達が入りこむことは出来なかったが、見るだけでも充分だった。そのうち、一定の条件であれば手を加えることが出来ることを知り···この箱庭の世界に入ることが出来るのではないかと期待した。



 そして事は起きた。






『スイ兄様!!』 


『そんなに慌ててどうし──』


『エモギ兄様が······っ!!』




 兄がその箱庭に戻ってこないと言う。

 私も直ぐにその場へ向かった。

 開かれた本のページへ叫び続けるソーヤ、コーネリアも一緒に覗き込んで時折声をかける。だが、兄エモギからの返事は一向になかった。······本当にこの箱庭に入ったのか?入った振りをして何処かに隠れているのでは···と、そう思いたかった。けれど二人で一つの神として生まれた私にはその箱庭の中にエモギがいることを本能的に感じていた。



 それから何度もエモギを神界へ戻そうと手を尽くした。箱庭に入ることが出来たのはエモギが入った時ただ一度のみで、それ以降私達の誰も入ることは出来なかった···。

 主神様に知られてしまえば私達は相応の罰を受け、罰の内容によっては神としての権能を剥奪されてしまう可能性もある。しかし下手にその箱庭の世界へ干渉してしまえば中にいるエモギだけでなく、この神界にも影響してしまうかもしれない···。限られた時間の中で私はいっそ不安定なこの箱庭の世界を封印してしまうという選択も考えていた。






『······エモギ様』



 その時私は彼の異変に気づいていなかった。










 そして主神様に知られてしまった。


 主神様の領域を侵した罰として、私にはコーネリアの創ったその世界の神として降ることになった。正確には神としてその世界に君臨することになった訳ではなく、主神様によって神界と箱庭を繋ぐ中継空間に最低限の安全を確保された空間で箱庭の物語を監視し続けることだ。コーネリアには地球の神の一人として“縁”を司ること······所謂左遷と言えば言葉はいいかもしれないが事実上神界から降ることになったのは相違ない。ソーヤは主神様の末弟ということもあり期限付きで軟禁となった。その期限がいつまでになるのかは主神様の気まぐれでいつになるかは定かではない。勿論私達も主神様や他の神々に所用で神界へ呼ばれた時以外は戻ってきてはならない。主神様の許しが出るその時まで······。そしてエモギには私達を含め全ての神がエモギを神界へと戻す手助けをしてはいけないという罰が下った。






 そしてあの日は私とコーネリアが発つ前日だった。私もコーネリアも神界から離れてしまうこと、ソーヤも外へ出られない状況から私達は兄エモギの在る箱庭を封印することに決めた。いや、封印というよりは主神様以外の他の神の手の届かない場所へ···悪戯に触れられない場所で管理されることになった。

 主神様の創った世界と違い、コーネリアの創ったものは外殻がある分不安定で外側から刺激を受ければ中にいるエモギは勿論、中継空間にいる私さえも危うくなってしまう。既に主神様の了解は得て、今後の外殻の維持と補強は主神様が担って下さることになっている。


『ははっこれを機にキミ達は反省したまえ?他の神サマたちの面子メンツもあるから減罰出来なかったけど意外とボクはキミ達兄妹に期待してるんだからネぇ?』


 そう言って私達の肩を軽く叩くと、私が差し出したコーネリアの箱庭を主神様が受け取ろうとした時だった。閃光が私達の間を割いた。手の中から箱庭の媒体である書物が消え主神様の手は空を掴んだ。




『···そんなことさせない』



 その閃光の主はソーヤだった。暫く見ぬうちに頬が痩せこけ、目の下には隈が唇からは血が滲んでいる。そして以前のソーヤとは明らかに違う暗い闇を帯びた瞳がこちらを見据えた。


『ソーヤぁ···お前魔神と契約したか?』
『魔神!?』


 神であって神ならざるもの。そして神が聖なる存在であるなら、魔神は暗く邪悪なる存在。両者の力の対比は等しくその存在が生まれてから今まで互いが互いに不干渉を貫いていた。
 と、言うのに。



『誰もくれなかったモノをあの人が先に···あの人が僕にくれたのに······』

『僕からエモギ様を奪ったのはリアちゃん···君だ。···君のせいだ』



 そう言い残すとソーヤの体は闇に包まれた。





 その日、神界では魔神の力に堕ちたソーヤによって七つの領界が破壊された。私の領界の一つであった漆天族の浮遊島も破壊された領界もその一つ。

 そして終結は主神様がソーヤを討った事で終わった筈でしたが······。


           ♢     ♢    ♢


『そして私は貴方と出会った···』

『ソーヤの暴走後、媒介となる箱庭をソーヤから取り返した主神様はディアルタリカを世界として安定させました。しかし神の力を持つでは媒介も無しに自由に地上へ足をつけることは出来なかった為···私は天族でありながらも神の権能を持たない幼かった貴方を使者として送り込み利用したのです』

『私は憎まれど、貴方に慕われるような者ではないのですよ。私がもっと早く二人の関係に気づいていれば······貴方もも巻き込まずに済んだというのに』


          ✻✻✻✻✻
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