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第1話 追い出される
しおりを挟む「ということは俺はパーティから抜けろと言いたいのか?」
ダディーは信じられない表情で目の前の仲間たちを見ている。
ここまで一緒に魔物や敵と戦ってきた。
なのにこの仕打ちはあんまりだとダディーは心の奥底で思っていた。
しかしこれは冗談でも何でもなかった。
薄気味悪い笑いをダディーに向けながら男が一歩前に出てくる。
「残念だがあんたはここで終わりだよ」
このパーティのリーダーハヤトがダディーに宣言する。
腕組みをしながらニヤニヤとダディーに淡々と告げる。
負けじとダディーもハヤトに睨み返す。
ただ、するとハヤトはダディーのことを蹴りつける。
「ぐぉ! 何をする!」
「何なんだ? その表情?」
「俺がいなくなったらこのパーティは崩壊する……それを分かっているのか」
ダディーはリーダーのハヤトにこう言いつける。
自分の存在は確かにこのパーティ内で目立っていない。
戦闘能力も若いときと比べて格段に落ちている。
身体能力や様々なところで若い人には適わない。
それはダディー自身が一番分かっていた。
だからこそ、自分が出来ることを全うしていた。
料理を作ったり、キャンプの用意をしたり。誰もが嫌がる雑用をこなしてきた。
崩壊するというのはそう意味で言ったのだ。
ダディーは立ち上がり仲間たちに事実を伝える。
だがハヤトはそれでもダディーを押し倒す。
そして後ろから凛とした声が響き渡る。
「それは安心して頂戴! ハヤトはそこら辺のところはしっかりと考えているから」
「エミリ……君も俺の追放に賛成なのか」
「まあ、悪いけどね」
エミリはダディーに向けて冷たい視線を向けている。
彼女はダディーの想い人だった。
お互いの好意に気付いたのは二年前ぐらい。
その時。ダディーはこんな若い子が自分に好いているなど信じられなかった。
エミリはこのパーティの癒しでもある。美しい金髪とその青い瞳。
男性なら誰もが目で追ってしまうだろう。
それなのにエミリの方から告白されたダディー。
若い頃の思い出が蘇ってきた感じがした。
それからダディーとエミリはパーティのみんなに祝福されて付き合った。
だけどダディーはこの瞬間に気付いてしまう。
「考えてみればエミリが俺なんかを好いてくれるなんてあり得ない話だよな?」
「今頃気付いたんだ、最近は加齢臭もあって嫌だなと思ったんだよね」
「という訳だ、エミリはあんたなんかより俺様の方がいいってことだ!」
するとハヤトとエミリはダディーの目の前でキスをする。
それを見てダディーは表情は変えずとも険しくなる。
(こんなもの若い時の俺だったらどうにかなってしまいそうだ)
人生経験の差でなんとかダディーは耐え切る。
しかしダディーの悪夢は終わらない。
「もうおっさんより若い人に雑用とかやってもらいたいよね」
「そうそう! おっさんなんかとろくさいしね」
「臭いし、あたしたちのことジロジロ見てるんじゃないの?」
「きっも! それってさ犯罪だよね?」
今までダディーはこのパーティに尽くしてきたのにこの始末。
浴びせられる暴言は全て本気で言っていた。
ダディーは拳を握りしめてハヤトに向かおうとした。
ただ、ハヤトは剣を取り出しダディーのことを斬りつけた。
「ぐぁぁぁぁ!」
「おせーよ、おっさん」
勇者であるハヤト。そして騎士であるダディー。
職業の力の差は歴然。さらには相手には才能もある。
ダディーは悲痛な叫びと共に地面に崩れ落ちる。
心配する声はない。あるのは笑い声だけ。
もうここにいる者はダディーのことを心配する人はいない。
消えろ、死んでくれ。そんな思いばかりだった。
「どうせ、最後だ! あんたに変わって今日から俺たちのパーティに入るやつを紹介するよ」
「な、なんだと」
「あなたより若くて強くてかっこいい……人だよ」
ハヤトが指パッチンをするとゆっくりと扉が開く。
そこに入って来たのは赤髪の青年だった。
対照的にハヤトとは落ち着きがあり、不思議なオーラを感じる。
ダディーは思う。確かに顔立ちは整っており、威圧的な雰囲気を感じる。
爽やかなや笑みを浮かべながらこの場で自己紹介をする。
「初めまして! 僕の名前はユウ……今日からこのパーティの一員として頑張ります」
丁寧にユウと名乗る青年は挨拶する。するとパーティの女共は歓声を上げる。
既にダディーなどいらないと言われているようなものだった。
(こいつが……俺の変わりか、こりゃ完敗だ)
流れ落ちる血を見つめながらダディーは諦める。
目の前の男と自分では違う。求められているのはこのユウという青年。
ここまで生きてきたから分かる。諦めも時には肝心だと言うことが。
(若い時のように勢いだけじゃ駄目か)
ダディーは目を瞑り、後は死ぬのを待っている時だった。
「あれ? あの人倒れているけど大丈夫なの?」
「ああ、あいつのことは心配するな、どうせ今日でここで終わりだからな」
「え? そうなんですか? でも、助けてあげないと……」
「そんな必要はないわよ、さあさあ! ユウはみんなと一緒に奥に行って! 食事の準備をしてあるから」
ユウはダディーのことを気に掛けるがハヤトとエミリがそれを阻止。
それでもユウはダディーのことを見つめながら奥の部屋へと連れてって行った。
「さてと、あんたはそろそろここから出て行けよ! 命だけは助けてやるからよ、感謝しろ!」
こうしてダディーはハヤトに蹴りつけられながら宿舎から追い出されてしまった。
外は雨が降っており、ダディーはボロボロになりながら立ち上がる。
(くそ……このままで終わられるかよ)
痛み体を引きずりながらダディーは向かって行った。
ただ、向かう先もない。ただ、歩くだけではあるが。
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