追憶の空

忠犬

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プロローグ

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「私ね、華月くんと付き合ったんだ」

放課後の帰り道、ニコニコと若干頬を染めながら嬉しそうに私の親友は言った。

「そう、良かったね」

私は親友の慶事に素直に喜べなかった。本当は心の底から“おめでとう”とか“お似合いなカップルの誕生だ”とか笑顔で言いたかった。でも…

『私も本当は華月のこと好きだったんだ』

と、言いたくて仕方なかった。

貼り付けの笑みを浮かべながら、思ってないことを言う。親友なのに、私たちは一生の友達だねって約束したはずなのに、本当のことが言えないなんて、涙が出そうだ。この目に浮かんでいる涙は何が原因で出たのかも分からない。好きな人を諦めてしまった自分自身か、好きな人を親友に譲ってしまった後悔か、好きな人と結ばれた親友の顔が幸せな笑顔をしていたから、好きな人を振り向かせられない自分に悔しいのか…

分からない。

分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない

分からないのだ……


このままじゃ心が壊れてしまいそうだ。自分が許せない、何も出来なかった自分が憎たらしい。好きだったのに、好きなはずだったのに……、

結論はこれだ、諦めてしまったのも自分だし、奪われたのも事実だ。これから取り戻そうとしても、あの二人は本当にお似合いなカップルだ。別れるとは信じ難い、本当に諦めるしかないのだ。何も出来ない自分に嫌気がさす、親友の慶事ぐらい笑顔で祝いの言葉を言いたかった。

「付き合ったんならさ、これからの下校は華月くんと一緒に帰ったらどう?」

「そんなの悪いよ!」

「私一人でも大丈夫だよ、親友のこと応援してるんだよ?これくらいサポートさせてよ」

「え、でも…」

「本当に大丈夫だからさ」

「…う、うん!ありがとう!明日華月くんに相談してみるよ!」

沈黙が続くのが嫌だったから、私は二人が一緒に下校することを提案した。これからの日々私は親友の惚気話を聞き続けてしまうと今にも壊れそうな心が崩壊してしまうと思う。それだけは避けたかったし、親友とも距離を置きたかった。だから、私にも親友にも利益がある提案をしたのだ。表向きには親友のこれからをサポートしているように見えるけど、裏は自分のことだけ優先している汚い私だ。お願いだから、これ以上私を汚さないでくれ。

「じゃあ私はここだから、また明日ね」

「うん!また明日!」

親友と別れ道で別れてから、私は家まで駆け走った。今まで堪えていた涙がブワッと流れ出し途中からその涙が止まることはなかった。早く家に帰って部屋で泣いて、叫んで、吐きたかった。周りにはまだ下校中の小学生、中学生、勿論高校生もいた。周りの視線なんて気にならずに私は足を動かした。

「ただいま」

家に辿り着いて、玄関のドアを開けてお決まりの台詞を言う。“おかえり”の言葉は返って来なかった、父親と母親は仕事で夜までいない、兄は大学に行っている、妹は小学生だけど友達と遊びに行っているのかもしれない。だから、家には誰もいなかった。

私は外靴を乱雑に脱いで、洗面所で手を洗った。私の部屋は二階にある、私は早く自分の部屋に行きたかった。部屋で一人の空間で泣きたくて、叫びたくて、吐きたくて……

早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く

早く……!

私は階段を駆け上がった。最後の一段で二階辿り着く、はずだった…

私は足を滑らせて階段から落ちてしまった、

『あ、死ぬ…』

そう思ってももう遅い、私は空中で浮いていた、まるで時間がゆっくりと進んでいるかのように動きが鮮明にみえた。これがスローモーションか、なんて呑気に考える。

『呆気ない人生だったね…』

最後にそう思って私は瞳を閉じて、重力に身を預けた。

ドンッ!

何が衝突した音が鳴った。この音は、私の身体が階段に衝突した音だと思う。だって、身体中が凄く痛いのだから。私は階段からガタガタとずり落ちた。一階の床に辿り着いて、私は思う。

『あれ?生きてる?』

身体中痛くて暫くは動けないと思うけど、死んではいなかった。なんなら、恐らく血も出ていない。運良く私は生き残ったのだ、当たり所が良かったのだと思う。

ズキンッ!

唐突にキーンと耳鳴りがなるそんな音が聞こえた。この音の正体は私の頭からだった。頭からそんな音が聞こえた瞬間、頭が急に強い痛みを放ち出した。身体中痛いのにも関わらず、頭の中も痛くなるなんて、本当に運が良いのか悪いのか。

『ゔっ…い゛っ!!』

頭の痛みの強さがどんどん増していく、腕はぶつけて痛かったはずなのに、いつの間にか頭の痛みが強すぎて手で頭を抑えていた。

そして唐突に頭の中の脳内で私の知らない記憶が流れ出した、その記憶の持ち主は女性で大人だった。こんな記憶、知らない……、知らないはずなのに……、

どんどん流れる知らない女の人の記憶、それはその人の人生の記憶だった。頭が強い痛みを放ちながら、女の人の記憶が映像化しながら流れる。

『これは…』

その女の人が死ぬまでの記憶が全て流れて、頭の痛みはなくなり、身体中だけが痛みを放っていた。そして、私は思い出した。

『……私の記憶』

そう、今頭の中で流れた記憶は私の記憶であった。いや、今の私ではない、前世の私の記憶だ。前世の私はアニメや漫画が大好きなOL社員であった。けれど、支部で何万回も見たトラ転をしてしまい、二度目の生を受けてしまったみたいだ。

『羽井涼梨(はねいすずり)……』

これは今の私の名前だ、中々のキラキラとした名前だね。羽井涼梨ってどこかで聞いたことあるような……、あ、


















「【丘の上には華が咲いている】のヒロインの親友じゃん!?」

──────どうやら私、少女漫画のヒロインの親友役に成り代わってしまったみたいだ。



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