1 / 11
プロローグ
しおりを挟む「私ね、華月くんと付き合ったんだ」
放課後の帰り道、ニコニコと若干頬を染めながら嬉しそうに私の親友は言った。
「そう、良かったね」
私は親友の慶事に素直に喜べなかった。本当は心の底から“おめでとう”とか“お似合いなカップルの誕生だ”とか笑顔で言いたかった。でも…
『私も本当は華月のこと好きだったんだ』
と、言いたくて仕方なかった。
貼り付けの笑みを浮かべながら、思ってないことを言う。親友なのに、私たちは一生の友達だねって約束したはずなのに、本当のことが言えないなんて、涙が出そうだ。この目に浮かんでいる涙は何が原因で出たのかも分からない。好きな人を諦めてしまった自分自身か、好きな人を親友に譲ってしまった後悔か、好きな人と結ばれた親友の顔が幸せな笑顔をしていたから、好きな人を振り向かせられない自分に悔しいのか…
分からない。
分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない
分からないのだ……
このままじゃ心が壊れてしまいそうだ。自分が許せない、何も出来なかった自分が憎たらしい。好きだったのに、好きなはずだったのに……、
結論はこれだ、諦めてしまったのも自分だし、奪われたのも事実だ。これから取り戻そうとしても、あの二人は本当にお似合いなカップルだ。別れるとは信じ難い、本当に諦めるしかないのだ。何も出来ない自分に嫌気がさす、親友の慶事ぐらい笑顔で祝いの言葉を言いたかった。
「付き合ったんならさ、これからの下校は華月くんと一緒に帰ったらどう?」
「そんなの悪いよ!」
「私一人でも大丈夫だよ、親友のこと応援してるんだよ?これくらいサポートさせてよ」
「え、でも…」
「本当に大丈夫だからさ」
「…う、うん!ありがとう!明日華月くんに相談してみるよ!」
沈黙が続くのが嫌だったから、私は二人が一緒に下校することを提案した。これからの日々私は親友の惚気話を聞き続けてしまうと今にも壊れそうな心が崩壊してしまうと思う。それだけは避けたかったし、親友とも距離を置きたかった。だから、私にも親友にも利益がある提案をしたのだ。表向きには親友のこれからをサポートしているように見えるけど、裏は自分のことだけ優先している汚い私だ。お願いだから、これ以上私を汚さないでくれ。
「じゃあ私はここだから、また明日ね」
「うん!また明日!」
親友と別れ道で別れてから、私は家まで駆け走った。今まで堪えていた涙がブワッと流れ出し途中からその涙が止まることはなかった。早く家に帰って部屋で泣いて、叫んで、吐きたかった。周りにはまだ下校中の小学生、中学生、勿論高校生もいた。周りの視線なんて気にならずに私は足を動かした。
「ただいま」
家に辿り着いて、玄関のドアを開けてお決まりの台詞を言う。“おかえり”の言葉は返って来なかった、父親と母親は仕事で夜までいない、兄は大学に行っている、妹は小学生だけど友達と遊びに行っているのかもしれない。だから、家には誰もいなかった。
私は外靴を乱雑に脱いで、洗面所で手を洗った。私の部屋は二階にある、私は早く自分の部屋に行きたかった。部屋で一人の空間で泣きたくて、叫びたくて、吐きたくて……
早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く
早く……!
私は階段を駆け上がった。最後の一段で二階辿り着く、はずだった…
私は足を滑らせて階段から落ちてしまった、
『あ、死ぬ…』
そう思ってももう遅い、私は空中で浮いていた、まるで時間がゆっくりと進んでいるかのように動きが鮮明にみえた。これがスローモーションか、なんて呑気に考える。
『呆気ない人生だったね…』
最後にそう思って私は瞳を閉じて、重力に身を預けた。
ドンッ!
何が衝突した音が鳴った。この音は、私の身体が階段に衝突した音だと思う。だって、身体中が凄く痛いのだから。私は階段からガタガタとずり落ちた。一階の床に辿り着いて、私は思う。
『あれ?生きてる?』
身体中痛くて暫くは動けないと思うけど、死んではいなかった。なんなら、恐らく血も出ていない。運良く私は生き残ったのだ、当たり所が良かったのだと思う。
ズキンッ!
唐突にキーンと耳鳴りがなるそんな音が聞こえた。この音の正体は私の頭からだった。頭からそんな音が聞こえた瞬間、頭が急に強い痛みを放ち出した。身体中痛いのにも関わらず、頭の中も痛くなるなんて、本当に運が良いのか悪いのか。
『ゔっ…い゛っ!!』
頭の痛みの強さがどんどん増していく、腕はぶつけて痛かったはずなのに、いつの間にか頭の痛みが強すぎて手で頭を抑えていた。
そして唐突に頭の中の脳内で私の知らない記憶が流れ出した、その記憶の持ち主は女性で大人だった。こんな記憶、知らない……、知らないはずなのに……、
どんどん流れる知らない女の人の記憶、それはその人の人生の記憶だった。頭が強い痛みを放ちながら、女の人の記憶が映像化しながら流れる。
『これは…』
その女の人が死ぬまでの記憶が全て流れて、頭の痛みはなくなり、身体中だけが痛みを放っていた。そして、私は思い出した。
『……私の記憶』
そう、今頭の中で流れた記憶は私の記憶であった。いや、今の私ではない、前世の私の記憶だ。前世の私はアニメや漫画が大好きなOL社員であった。けれど、支部で何万回も見たトラ転をしてしまい、二度目の生を受けてしまったみたいだ。
『羽井涼梨(はねいすずり)……』
これは今の私の名前だ、中々のキラキラとした名前だね。羽井涼梨ってどこかで聞いたことあるような……、あ、
「【丘の上には華が咲いている】のヒロインの親友じゃん!?」
──────どうやら私、少女漫画のヒロインの親友役に成り代わってしまったみたいだ。
0
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
さようならの定型文~身勝手なあなたへ
宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」
――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。
額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。
涙すら出なかった。
なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。
……よりによって、元・男の人生を。
夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。
「さようなら」
だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。
慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。
別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。
だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい?
「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」
はい、あります。盛りだくさんで。
元・男、今・女。
“白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。
-----『白い結婚の行方』シリーズ -----
『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。
悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。
三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。
何度も断罪を回避しようとしたのに!
では、こんな国など出ていきます!
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
彼女が望むなら
mios
恋愛
公爵令嬢と王太子殿下の婚約は円満に解消された。揉めるかと思っていた男爵令嬢リリスは、拍子抜けした。男爵令嬢という身分でも、王妃になれるなんて、予定とは違うが高位貴族は皆好意的だし、王太子殿下の元婚約者も応援してくれている。
リリスは王太子妃教育を受ける為、王妃と会い、そこで常に身につけるようにと、ある首飾りを渡される。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる